魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"―   作:あじめし

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第1話「予兆」(前編)

『忌み血だ!』

『汚れた血!』

『人間以下め!』

『生きる価値なんてない!』

俺が変えてやる。

こんな世界、絶対に間違ってる。

――――だから俺は―――

 

少年「………」

男の子A「か、身体が…勝手に動いてる!」

男の子B「う、うわぁぁぁ!!」

 

2人の男の子は取っ組み合い、殴り合いを始めた。

しかし互いに憎しみの表情は無い。

あるのは“恐怖”だけだった。

 

少女「…どうなってるの…?」

少年「…見てよ、姉さん。オレが命令したら始めちゃったんだ」

少女「…何を命令したって言うの?」

「死ぬまで殴り合ってろって」

 

少年の周りには10人以上の子供がいた。

そしてその誰もが、互いを殴りつけ合っていた。

 

少年「姉さん。俺、この世界に刃向うよ」

 

今はまだ、誰も知らない。

この少年と彼の“能力”が、全世界を揺るがすことを―――

 

 

 

魔法少女リリカルなのは――Mission Code-N――

第1話「予兆」

 

 

 

ゲンヤ・ナカジマ「航空魔導師はまだか!?このままじゃ沈んじまうぞ!」

 

激しい雨の降る午後10時47分。

航行中だった客船が沈没しかけている状況だった。

 

隊員「災害担当の魔導師が救助に向かいましたが…」

ゲンヤ「こんな早さで沈没するなんて予想外だった。突入した陸戦魔導師じゃ手に負えねーぞ」

隊員「そういえば…三佐のお子さんも」

ゲンヤ「今は任務中だ。だが…」

???『救助部隊本部はこちらですか?』

ゲンヤ「そうだ。誰だ?」

???『私は時空管理局本局所属の航空魔導師です。近くに来ていたので救助活動の救援に』

ゲンヤ「そいつは助かる。急いで客船に向かってくれ。名前は?」

???『私は―――』

 

 

 

後方半分が沈没した客船の内部にて、スバル・ナカジマは取り残された乗客の捜索にあたっていた。

 

スバル「誰かー!誰かいませんか?」

隊員『ナカジマ陸士!乗客全員の救命ボート乗船を確認しました」

スバル「了解!すぐに戻ります」

 

しかしその瞬間、水圧に耐えられなくなった扉が粉砕され、大量の海水がスバルを目がけて襲いかかった。

スバルは素早く反応してシールドを展開するが、激流を抑えるのは困難だった。

 

スバル「このままじゃ…水に呑まれる…!」

 

基本的に水中での活動に慣れていないスバルにとって、水に満たされた閉鎖空間に追いやられることは死を意味していた。

 

スバル(こんなところで…死ねないのに…!)

 

その時のスバルの脳裏によぎったのは、幼い彼女を危機から救った魔導師の姿だった。

 

???「目を開けてもいいわよ」

スバル「…え?」

 

スバルの目に前にひろっがていたのは、スバルを襲うはずの激流が凍りついている光景。

銀色の髪をなびかせる女性の魔導師が、スバルの目の前に立っていた。

長い銃身の先に30センチ程のナイフを取り付けた、銃剣型デバイスを構えている。

 

スバル「すごい…」

???「見とれている暇はないでしょ?さぁ、脱出口を開いて。壁破りは得意でしょ?」

スバル「は、はい!……ディバイン、バスター!」

 

天井に空まで一直線の穴を開け、スバルは救助に来た航空魔導師と共に客船からの脱出に成功した。

彼女はスバルを抱えながら、蒼い瞳を優しげに向ける。

 

???「大丈夫?」

スバル「あの、助けていただいてありがとうございました。私は災害担当部隊所属のスバル・ナカジマ陸士です」

???「私は―――って、ごめん!ちょっと急がなくっちゃ!」

スバル「え、え!?」

 

彼女はスバルを救助隊の船に預け、すぐに空に上がった。

 

???「じゃあね!」

 

彼女は冷たい空気をまといながら、空の彼方へと飛び去って行った。

スバルはその魔導士に、ある人物と重なる面影を見た。

同じように彼女の命を救った彼女―――高町なのはと。

 

 

 

 

ティア「はいはいはい。もうその話はおしまい。いい加減聞き飽きたんだけど?」

スバル「ごめんごめん。なんかテンション上がっちゃって」

ティア「まぁ、久しぶりの休みだしね。無理ないわよ」

 

スバルとティアナ・ランスター執務官補佐の2人はスバルのアパートの一室で食卓を囲んでいた。

食卓と言っても、宅配ピザとスナック菓子、ペットボトルのジュースだ。

 

ティア「だからって、延々と同じ人の話されても困るんだけどね」

スバル「だってぇ~すごく格好良かったんだもん」

ティア「はぁ…もうあんまりしつこいから、教えてあげる。私、その人知ってるわよ」

スバル「どぅええええ!!!???ほ、ほんとに?」

ティア「知ってるわ。本局じゃ知らない人はいないんじゃない?」

スバル「そうなの!?私たちが起動六課にいる時から有名だった?」

ティア「そりゃそうよ。本局魔導師じゃ実力ナンバー1。随分前、なのささんに模擬戦で勝ってるらしいし」

スバル「全然知らなかった…」

ティア「こっちはこっちで忙しかったしね。あ、メール……スバル、フェイトさん今日は来られないって」

スバル「えぇ~。せっかくみんなでお休みだったのに~」

ティア「でもキャロとエリオは別の人に送ってもらうってさ」

スバル「ホント!?じゃあ追加で何か頼んでおかないとね――――」

 

 

 

 

夜の摩天楼の空、金色の閃光が駆け抜ける。

 

フェイト「シャーリー!位置データを」

シャーリー『特定できました』

フェイト「相手はやっぱり車。だったら追いつける」

シャーリー『でも…このエリアでの魔法使用はフェイトさんのランクでは高過ぎて不可能です』

フェイト『大丈夫。こっちには仲間もいるから。皆さんっ!犯人は車で逃走中。位置データを送りますので2班に分かれて包囲、戦闘制限エリアから離すように追ってください。その後は私に任せてください』

 

フェイト・T・ハラオウンは、ビル群の隙間を縫うように空を飛んでいた。

フェイトのサイドを飛行していた4人の魔導師が2つに分かれ、ビルの合間に消えていく。

 

魔導師A『執務官っ!A班は犯人を確認しました』

魔導師B『こちらも視認。包囲にかかります』

 

4人の魔導師が威嚇射撃をしながら逃走車を追い詰めていく。その結果、逃走車はビルに囲まれた倉庫近くに停車した。

そこから2つの黒い影が現われ、倉庫の中へと消えていった。

 

魔導師A『執務官、犯人の姿を見失いました』

フェイト「大丈夫。もう見つけたから」

 

暗闇の中、フェイトは2つの影と対峙していた。

 

??「くそっ!先回りされてたのか」

???「先に行け。ここは俺が何とかする」

??「分かった。頼んだぜっ」

フェイト「待てっ!」

???「おっと、あんたの相手は俺だ」

 

一方の男が倉庫の奥へと消え、もう一方は杖のようなものから金色の光線を放ち、倉庫の天井の一部を破壊した。

大量の埃やごみが舞い、フェイトは逃走犯を見失ってしまう。

しかし、杖を持つ方の男が倉庫の出口から外に出ようとしていることを、フェイトは認めた。

 

フェイト「待て!!」

魔導師A『執務官!倉庫から杖を持った男が飛び出してきました!』

フェイト「追って下さい!方向は?」

魔導師B『今地下鉄駅への階段を下りています。奴め、人ごみに紛れる気か!?』

 

フェイトは走って男を追うこととなり、その間の足止めを仲間に指示した。

 

魔導師B『逃走犯を発見!貸しロッカーエリアの前で包囲し――うぐぁ!』

 

フェイトが現場にたどり着いた時には、2人の魔導士が倒されていた。

彼女は男と対面しながら、バルディッシュ“ハーケンフォーム”を構える。

 

フェイト「…魔導師か」

???「いかにも。さぁ、始めようか」

フェイト「時間はかけない」

???「それは俺次第ってね」

フェイト「いいえ」

 

それは一瞬の出来事。

フェイトの姿が男の視界から消え、男の後ろへと回りこんでいた。

 

フェイト「はぁっ!」

 

金色の鎌が振り下ろされ、男の背中を縦一文字に斬り裂く。

 

???「嘘…だろ…」

フェイト「誘拐の罪で逮捕します。シャーリー、こっちは確保した。片方は?」

シャーリー『たった今逃走犯に接触。安心して、こっちは―――』

 

逃走犯を追っている者の名前を聞き、フェイト小さな笑みを浮かべた。

 

フェイト「じゃあ、安心だ」

 

 

――――後編へ続く

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