魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"― 作:あじめし
局内に鳴り響いた警報を聞いて本部入口に向かったフェイトとティアナ。
そこには予想だにしない光景が広がっていた。
フェイト「どういう…ことなの?」
ティアナ「この人たちって…」
フェイト「ええ。ルカリテで行方不明になった局員よ」
ルカリテで行方不明になった部隊員が戦闘態勢で本部に乗り込み、攻撃を始めていた。
しかも躊躇なく、淡々と射撃を繰り返していた。
マオ「おっとっと。ここから先は行かせられないよ~」
フェイトが振り向いた先には、マオとキリエが立っていた。
ティアナ「この先、室内演習場にはスバルとなのはさん、ノートルア執務官がいるはずです。ここは私たちが応対しましょう!」
マオ「スバルって、さっきのスクラップ?」
ティアナ「っ!お前…スバルに何したっ!!」
キリエ「いちいち相手を刺激しないで。面倒でしょう?」
マオ「ごめ~ん。こいつらは殺しちゃっていいんだよね~?」
キリエ「ええ。でももったいない。せっかく可愛いコばっかりなのに」
フェイト「ティアナ!」
ティアナ「はいっ!」
2人はクロスミラージュとバルディッシュを起動させ、臨戦態勢に入った。
キリエ「ではこちらも…羽ばたきなさい“シヴァ”!!」
キリエの背中から、銀色に輝く氷の翼が現れた。
フェイト(なのは、聞こえる?)
なのは『フェイトちゃん?今どこ?』
フェイト(本部入口のロビー。魔導師二人と対面してる。ネイとスバルは?
なのは『2人とは別れて、ロビーに向かってる』
フェイト(こっちは大丈夫。スバルとネイが危ないかもしれない。念のため向かってあげて)
なのは『待って…こっちも遭遇した。敵の魔導士と』
なのはの前にはハヅキが立っていた。
ハヅキ「また会いましたね、高町なのは」
なのは「今度は負けないよ。レイジングハート、エクシードモード」
ハヅキ「今回は本気ですか」
なのは「あなたを逮捕する」
ハヅキ「また倒して差し上げます」
ネイ「待ちなさい、ハヅキ」
ハヅキの後方から近づいて来る人影。
ネイ・ノートルアがそこにいた。
しかしなのはの知っているネイとは、雰囲気も、眼の色も異なっていた。
なのは「ね、ネイさん!?スバルは――」
ネイ「スバルなら、もう死んだわ」
なのは「どういう、こと…?まさか…」
ネイ「そう、私がフェイトの言う所の、スパイよ。捜査本部を燃やしたのも、メンバーを殺したのも私。それに―――」
なのは「はやてちゃんを…襲ったのも?」
ネイ「ええ。彼女の乗っていた車に爆弾を仕掛けたのも、私」
なのは「そんな…嘘ですよね!?ネイさんが、裏切ったなんて…!」
ネイ「…裏切り?それは心外ね。私は一瞬たりとも管理局の味方になったつもりは無いわ」
なのは「どうして…?一緒に模擬戦もしたし、色々な話もした。なのに…!」
ネイ「それはネイ・ノートルアがしてきたこと。私はね…違うのよ。ネイ・ノートルアじゃない」
なのは「じゃあ―」
ネイ「…バハムート!」
ネイの左手に銃剣が握られた。
ネイ「私の名はネイ・ノイヴァシュタイン。今は無き皇族の末裔よ」
なのは「レイジングハート!」
高速の射撃―バレルショットがネイに向かう。
ネイ「ぬるい」
氷塊が地面からそそり立ち、防がれる。しかしその頃にはなのはは別の場所へと移動していた。
なのは「ディバイン…バスター!」
ネイ「ちっ!」
さらに大きな氷塊が現われるが、砲撃に耐えられず粉々に爆散した。そのまま壁を突き破り、濃い粉塵が舞った。
ネイ「早いわね。それほどの砲撃なのに」
なのは「…あなたとの模擬戦で掴んだものだよ!」
ネイ「そう。じゃあ私も、最近覚えたことでもやってみようかな」
その瞬間、砕け散って床に散乱した小さな氷塊が、なのは目がけて飛んでいった。
なのは「うっ!!」
無数の氷がなのはの身体に突き刺さる。しかしほとんどはバリアジャケットで守られていた。
ネイ「もっと大きい塊だったら…死んでいたかもね」
なのは「…お互い様だよ」
その時、ネイの背後から魔法弾が放たれ、ネイの背中に当たった。
ネイ「くっ…そのようね…」
なのは「ディバインシューター!」
なのはの周囲に桜色の球体が現われ、そこから射撃が繰り出された。
ネイ「それは当たらない!」
なのは「だったら…アクセル!」
アクセルスフィアから放たれる光線がさらに太く、速くなった。
ネイ「そんなもの!」
ネイは氷塊を使って防ごうとするが、光線は氷塊をいとも簡単に突き破ってネイの肩、腹、腕に当たった。
ネイ「うっ…くっ…!」
ハヅキ「ネイ様!」
ネイ「手出しは無用よ、ハヅキ」
なのは「ディバイン…」
よろけるネイに狙いを定め、なのははディバインバスターのチャージに入った。
ネイ「…いいわ。本気を見せてあげる。ネルヴァニア式、発動!!」
ネイの足元に、なのはの見たことの無い魔方陣が現れた。
それは、エーリヒの魔法から感じるエネルギーに酷似していた。
そして突如、なのはのバリアジャケットが発火し、なのはのチャージを妨げようとしたのだ。
なのは「これは…!」
なのはの脳裏によぎるのは、ヴィヴィオを誘拐した男の魔法。
なのは「どうして…」
ネイ「燃えつきなさい!」
炎は一気に燃え上がり、なのはの全身を包んだ。
しかしなのはは全身から魔力を放出して炎を消すことができた。
だが、立て続けになのはの身体を、見えない刃が襲った。
なのは「うっ!!こ、この技…!」
ネイ「知ってるわよね?このコに見せてもらったでしょ!」
それは紛れもない、なのはがハヅキから受けた攻撃――“楓”だった。
しかし、今それを放ったのはハヅキではなかった。
なのは「まさか…」
ネイ「そう…そのまさかよ!」
ネイが銃剣を地面に着いた瞬間、電撃が地を伝ってなのはに流れ、彼女をを苦しめた。
なのははその場に倒れ伏した。ネイはそれをじっと見据えている。
なのは「氷の魔法は…ほんの、一部…?」
ネイ「正解」
なのは「…く…動け…」
ネイ「無様なものね。散々力を求めて、その結果がこれよ。私を前にみっともなく倒れてる。これが現実よ」
なのは「まだ……負け、てない…!」
ネイ「あなたの負けよ、高町なのは」
ルナディア「そうとも。キミは敗れた」
なのは「っ!!エ…エーリヒ!?」
ネイの後ろから現れる青年。
なのはは自分の何度も模擬戦を重ねた相手の顔をそこに見た。
ルナディア「残念。私はエーリヒではない。エーリヒの兄、ルナディア・ノイヴァシュタイン」
ネイ「……久しいわね」
ルナディア「完璧な任務だったよ、姐さん」
ルナディアは倒れるなのはの傍らにしゃがみこんだ。
なのは「あなたたち…エーリヒさんも……家族なの?」
ルナディア「そうとも。我々4姉弟は神に選ばれし、皇帝の一族だ」
なのは「ここで、あなたたちを捕まえる!!」
なのはは立ち上がり、ルナディアをバインドで拘束する。
ハヅキ「陛下!」
迫るハヅキの頭上から、桜色の閃光が降りかかる。
いつの間にか設置されていたスフィアからの砲撃は、ハヅキの身体を押しつぶした。
ハヅキ「ぐっ!」
ネイ「まだ懲りないのね、なのはっ!!」
ネイが銃剣の切っ先を、なのはに向けて突進してくる。
なのははぎりぎりで刃を防ぐも、体勢を立て直したハヅキが斬りかかる。
なのは「うあぁっ!!!」
なのはの背中を、刃が斜めに切り裂いた。
ネイ「待って、これ以上は殺すことになる」
ハヅキ「申し訳ございません」
ネイはルナディアに近づき、バインドを砕いた。
彼は再び、倒れたなのはに近づいた。蔑むような目つきで、足元のなのはを見下ろす。
ルナディア「キミが負けた理由、それは一つだ。分かるね?」
なのは「わ、私は……」
ルナディア「キミは弱い。無力なんだよ」
なのは「ち、違う…」
ルナディア「違わないよ。これは絶対さ。変えようのない事実だ。でも…キミは力を得られない訳じゃない。キミはもっと大きな、強い力を手にできるんだよ」
なのは「そんな、の…」
ルナディア「力が、欲しいのだろう?」
その囁きに、なのはの眼は見開かれた。
ルナディア「大事なもの。親友、あるいは愛娘、あるいは愛しき人。それを全部守るには、力が必要なんだよ」
ヴィヴィオの笑顔、スバルやティアナを始めとする教え子たち、フェイトとはやての姿がなのはの目に浮かぶ。
なのは「私は……私は…」
ルナディア「求めるんだ、力を。求めるのなら…私があげよう。キミに守る力を」
なのは「あなたなんかに……!」
ルナディア「私には出来るんだよ。なに、キミが私に従うというのなら今すぐにでもね」
なのは「う、嘘…」
ルナディア「本当さ」
ルナディアの左手がなのはの額に触れる。
ルナディア「“神の声”!!」
―――後編に続く