魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"―   作:あじめし

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第5話「堕落」(後編)

ルナディアの左手がなのはの額に触れる。

 

ルナディア「“神の声”!!」

 

なのはは一瞬、身体をびくつかせて、間もなく立ち上がった。

 

ルナディア「ふっ…ふふふふふ!できた…私の最高傑作だ」

エーリヒ「なのはっ!!」

 

廊下の向こうからエーリヒが走って来た。

エーリヒは、なのはの足もとに広がる血の跡と、血を流しながら立ち上がる彼女を見て青ざめた。

 

ルナディア「やぁ、遅かったじゃないか」

エーリヒ「お、オレ…だと?」

 

エーリヒは、目の前に立つ男を見て驚きを隠せなかった。

自分をまったく同じ顔した男がいるという現実。それは記憶を失う前の"本来"の自分を見ているのかもしれないとエーリヒを錯覚させた。

 

ルナディア「そうとも。お前は私の片割れだからね」

エーリヒ「何を言ってる!それにアンタ!なのはの友達じゃなかったのかよ!」

ネイ「そうね。友達の“ふり”はしていたわね」

エーリヒ「てめぇら…来い、ヴァルファーレ!」

ルナディア「魔法の使い方も忘れさせておけばよかったか。さぁ、なのは。この男を殺してくれ」

なのは「……」

 

なのはは無言でレイジングハートをエーリヒに向けた。

 

エーリヒ「ど、どいうこと――」

なのは「バレルショット」

エーリヒ「ぐあぁ!!」

なのは「ディバイン…」

エーリヒ「やめろなのは!」

なのは「バスター」

 

砲撃は片膝をついていたエーリヒに直撃した。

かなりの至近距離で放たれたため、なのは自身へのダメージも大きく、なのはの傷口から血が噴き出した。

 

ルナディア「流石だ…美しき悪魔よ」

エーリヒ「む、無茶しやがって…なのは…!」

ネイ「これ以上動かすと、彼女の身体が壊れてしまうわ」

ルナディア「それもそうだ。さて、止めは…ハヅキ、頼んだぞ」

ハヅキ「し、しかし…陛下。この方は」

ネイ「私がやる」

ハヅキ「ネイ様…」

エーリヒ「この…裏切り者…!」

ネイ「終わりよ」

エーリヒ「…へへ、どうかな」

 

エーリヒは微かな笑みと共に光となって消えた。

そして、光と共にエーリヒは、ルナディアの目の前に現れた。

 

ルナディア「なっ!」

ハヅキ「陛下っ!」

エーリヒ「覚悟し――」

 

その時、エーリヒの頭の中に無数のビジョンが現われた。

それはエーリヒの幼少期のものでもあり、ごく最近のものでもあった。

つまりそれは、彼の“記憶”だったのだ。

 

エーリヒ「うあぁぁぁ!!!」

ルナディア「…そうか。“神の声”の効力がついに切れたか」

エーリヒ「な、何だ…今のは」

ルナディア「どうやらもう一度する必要が――」

シグナム「紫電一閃!!」

ヴィータ「ギガントハンマー!!」

 

ルナディアの背後に、壁を突き破って突如現れたシグナムとヴィータが迫る。

 

ネイ「くっ!!」

ハヅキ「陛下!お下がりください!」

 

ネイとハヅキが、ルナディアを庇うように間に入る。

ルナディアはエーリヒを置き去りにしたまま、なのはを引き連れて距離を取る。シグナムたちの攻撃を防ぎ切ったネイとハヅキも、ルナディアに続く。

 

シグナム「投降しろ」

ヴィータ「なのはっ!今助けに――」

エリーヒ「待て!」

 

一歩前に出たヴィータに、なのはが砲撃を放った。

 

ヴィータ「え――」

シグナム「ヴィータ!」

 

シグナムのレヴァンティンが、ぎりぎり砲撃を受け止めて事なきを得た。しかしヴィータは、何か恐ろしいものを見たように身体を強張らせ。唖然としていた。

 

ルナディア「撤収だ。もうここに用はない」

ハヅキ「暴!」

ネイ「フレイムウォール」

 

ネイは炎の壁を出現させ、それがハヅキの神龍が起こした強風によって、さらに激しく燃え上がった。

 

エーリヒ「待ちやがれ…ちくしょう!!」

シグナム「今のは、ノートルア執務官ではないのか」

エーリヒ「奴は裏切り者だったんだ…それに、なのはが…連れて行かれた…!」

ヴィータ「ど、どいうことだよ…なのはーっ!!」

シグナム「行くなヴィータ!その壁の中を抜ければ、お前でもただでは済まないぞ」

ヴィータ「くそっ!!あいつらっ!」

 

炎の壁によって遮られたその向こう。

なのははルナディアたちと共に去って行った。

 

 

 

ティアナ「ぐっ!」

 

ティアナの左手に刺さった氷柱が血で真っ赤に染まった。

 

キリエ「うふふ…痛みに苦しむ可愛いお顔。そういう表情、大好きよ」

マオ「キリエ~、陛下が戻れだって」

キリエ「いいところだったのだけど…すぐ済ませるわ」

 

キリエの銀色の翼から、直径10センチほどの氷柱が現われた。

 

キリエ「死になさい」

ティアナ(やばいっ!)

フェイト「はぁっ!」

 

間一髪、フェイトがその間に割って入り、飛ばされた氷柱を切り裂いた。

 

キリエ「……マオ、ネイお姉様から連絡よ。さ、帰りましょう」

マオ「おっけ~。ばいば~い」

 

マオはキリエの腕につかまり、二人は破壊された天井から外へと飛び去って行った。

 

フェイト「はぁはぁ……」

ティアナ「すみません、フェイトさん。手まといで…」

フェイト「ううん、そんなことない。彼女たち、相当強いよ」

シャマル「テスタロッサちゃん!」

フェイト「シャマルさん…」

シャマル「ちょうど遠方の任務帰りで…ごめんなさい、力になれなくて」

フェイト「ティアナの治療をお願いします。あと…あの方たちの」

 

ロビーに倒れる大勢の管理局員。その中には、襲撃にきたルカリテ捜索隊のメンバーも混ざっていた。

 

シャマル「酷い……あ、シグナム、ヴィータちゃん!」

 

シグナムはぼろぼろのスバルを抱え、ヴィータはずっと俯いたままやって来た。

そして、その後ろにはふらつきながら歩くエーリヒがいた。

 

シグナム「スバルの治療を頼む。まだ息はある」

ティアナ「スバル…!」

シャマル「ヴィータちゃん…どうかしたの…?」

ヴィータ「―――った」

シャマル「え?」

ヴィータ「なのはが……連れて行かれちまった…!」

フェイト「そ、そんな……」

 

フェイトの手からバルディッシュが落ちた。

 

エーリヒ「…安心しろ、なのはは絶対に死なない」

シグナム「どういう意味だ」

エーリヒ「兄さん…ルナディアは、なのはを操って利用する気なんだよ」

フェイト「エーリヒ…もしかして」

エーリヒ「あぁ…戻ったんだ…俺の記憶が」

 

 

―――第6話へ続く

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