魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"―   作:あじめし

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第7話「序曲」(前編)

第32管理外世界“タイタン”上空。シグナム率いる管理局の空戦魔導師部隊が市街地へ向かう。

 

シグナム「こちら第3航空部隊隊長シグナム。状況は」

魔導師A『空尉!こちらは全滅です。近戦魔導師に加え――あれは…高町なの―――』

シグナム「くそっ。高町…敵に回すと厄介だ。各員、遠隔砲撃に備えつつ、地上に降りるぞ」

魔導師B「了解!」

エリオ「シグナムさん!!」

 

キャロの召喚獣フリードリヒにまたがるエリオが、部隊の先頭を飛ぶシグナムに並ぶ。

 

シグナム「ここからは戦闘空域だ。用心しろ」

エリオ「でも…相手は――」

シグナム「今、高町は管理局の戦技指導官ではない。1人の敵だ」

エリオ「分かってます…」

シグナム「来るぞ!!」

 

高エネルギーの魔法弾が、部隊目がけて襲いかかってくる。

部隊は二手に分かれ、砲弾を避ける。

 

シグナム「対象を視認した。かかれっ!!」

エリオ「……了解!」

 

シグナムとエリオ、数人の魔導師の前には、レイジングハートを構える高町なのはの姿があった。

 

エリオ「なのはさんっ!!!」

 

エリオが先陣を切り、フリードの火炎球がなのはに向けられる。

なのははそれを避けるが、その先にはエリオのストラーダの刃があった。

なのははシールドを張らず、その刃を左手で受け止めた。

 

エリオ「っ!」

シグナム「エリオ!!」

 

シグナムの斬撃がなのはの頭上に振り下ろされるが、ぎりぎりで刃はシールドに阻まれる。

シールドを通して、シグナムの目にはなのはの姿が映っていた。

 

シグナム「どうあってもやる気だな…」

なのは「………」

シグナム「ならばこちらとて、容赦は――」

ネイ「なのは!もう終わりよ!」

 

なのはの背後に、銃剣型デバイス”バハムート”を手にしたネイが現れる。

 

シグナム「ノートルア。お前も来ていたのか」

ネイ「久しぶりね、シグナム。でもね…その名は捨てたわ」

シグナム「貴様の名など、私に知った事ではない」

ネイ「怖いわね。早く逃げなくちゃ」

シグナム「逃がすと思ったのか」

 

なのはとネイの周囲に、10人程の魔導師がやって来る。各人はデバイスを2人に向け、臨戦態勢を取っている。

 

シグナム「投稿しろ。お前たち2人で、この包囲を抜けられると思うな」

ネイ「舐められたものね…!!“雷雲の(とばり) ”!!」

 

高く上げられたバハムートの銃口から魔法弾が放たれ、そこから黒い雲が広がる。

雲が魔導師たちの頭上に浮かび、青白い稲妻が放たれる。

そして稲妻は一斉に、周囲の魔導師に向かって降り注いだ。

 

シグナム「ノートルア!!」

 

シグナムはなのはから離れ、ネイに肉迫する。

バハムートとレヴァンティンの刃が激しくぶつかり合い、火花が散った。

 

ネイ「なのは!周りをお願い!」

シグナム「エリオ!なのはを逃がすな!」

エリオ「はいっ!」

 

ネイとシグナムは、雷の降り注ぐ曇天の中を飛び回る。

 

ネイ「“楓”!!」

シグナム「紫電一閃!!」

 

鋭い真空波と、シグナムの斬撃が激突する。

 

ネイ「流石ね…!」

シグナム「勝負はこれからだ」

ネイ「いいえ。もう終わったわ」

 

シグナムは異変に気づき、一気に高く飛翔した。

彼女が元いた場所を、桜色の砲弾が駆け抜ける。

 

エリオ『シグナム、さん…こちらは…もう持ちません……』

シグナム「残存数は!」

エリオ『僕と、もう1人だけです』

 

シグナムは、遥か遠くへ飛び去って行ったなのはとネイを見ながら、奥歯を噛みしめた。

 

シグナム「戦闘空域を離脱する…!」

 

 

 

 

 

 

『第32管理外世界における戦闘では、管理局魔導師30人以上が負傷、そのうち数人が死亡したものと思われます。尚犯人は未だ捕まっておらず、周辺世界では緊張が高まっています』

 

少女――名はエリア――はベッドのに横たわりながら、テレビ画面に目を向けていた。

 

ハヅキ「窓を開けっ放しではお身体に障りますよ、エリア様」

エリア「ハヅキっ!おかえりなさいっ!」

 

ハヅキは開いている窓を閉め、ベッドの横の椅子に腰かけた。

 

ハヅキ「ニュースですか?」

エリア「この時間はニュースしかやってないから、つい見ちゃうんだ。この事件、知ってる?」

 

テレビ画面には、時空管理局の幹部らの記者会見の様子が映っていた。

 

管理局中将『時空管理局は本日、本局執務官ネイ・ノートルア、並びに本局戦技教導官高町なのは一等空尉の第1級広域次元犯罪者としての指名手配を決定しました。罪状は管理局反逆罪。500人体制の捜査本部を設置します』

記者『先日のジェイル・スカリエッティ脱獄もその2名が関わっているのでしょうか?』

管理局中将『不確定情報ですのでお話しできません』

 

ハヅキ「初耳です。大変な事件ですね」

エリア「…うん」

ハヅキ「エリア様、お身体の調子が悪いのですか?」

エリア「ううん。ただね、世間は大変なことになってるなぁって」

ハヅキ「……そうでした、エリア様にお話があるのです。とても喜ばしいお話ですよ」

エリア「本当?」

ハヅキ「はい。しばらく目をつむっていてください」

エリア「うん」

ルナディア「エリー」

エリア「…その声、ルナ兄さま?」

ルナディア「正解。目を開けていいよ」

エリア「兄さま…おかえりなさい…!」

ルナディア「ああ。ただ今」

 

エリアはベットから飛び起き、横に立つルナディアの胸に飛び込んだ。

 

ルナディア「元気そうで良かった」

エリア「でも…寂しかった」

ルナディア「ごめんよ。仕事が溜まっていてね。ようやく終わったんだ」

エリア「ううん、いいの。帰って来てくれただけで嬉しいから」

マオ「あ~エリーが甘えんぼモードになったぞ~」

エリア「マオ!キリエ姉さま!」

キリエ「久しぶりね、エリア」

エリア「ってことは、カイルさんと…エーリヒ兄さまも?」

マオ「えっと、それは…」

ルナディア「カイルはまたしばらく帰って来られないんだ。でもエリアによろしく言っておいてくれと言われたよ」

エリア「そうなんだ…。じゃあ、エーリヒ兄さまは?」

ルナディア「あいつはもう少したら帰ってくるさ。安心するといい。じゃあちょっと出てくるから。マオ、キリエ、エリアの話し相手を頼んだぞ」

マオ「うんっ。ねぇ~ねぇ~トランプやろ~よ」

 

 

屋敷の外、エリアの部屋が見える場所に彼女は立っていた。

 

ネイ「………」

ルナディア「見ていたの?」

ネイ「あの子、随分成長したわね」

ルナディア「でも幼い頃の面影が残っているだろう?」

ネイ「そうね。成長したとはいえ、まだ15だもの」

ルナディア「…姉さん、済まないが―」

ネイ「いいわ、分ってる。覚悟はしていたから」

ルナディア「もう少し、待っていてくれ。必ず、姉さんが堂々とエリアに真実を語れる世界を創ってみせる」

ネイ「ううん、待つだけじゃない。私も手伝うわ。その方が早いでしょ?」

ルナディア「ありがとう、姉さん」

ネイ「ところで、あの二人は?」

ルナディア「近くのマンションの一室を借りた。そこにいる」

ネイ「早くエリアの身体を」

ルナディア「ああ。今から病院を制圧してくる。そこで彼に治療をしてもらおう」

ネイ「彼は信用できるの?“神の声”を使った方が」

ルナディア「いや、奴は自分の得になることには忠実だ。褒美はたくさん用意してある」

ネイ「そう。それともう一つ、なのはのことだけど」

ルナディア「彼女がどうかした?」

ネイ「もう、いいんじゃない?彼女の役目は終わったじゃない。“神の声”の効力が切れる前にいっそ殺してしまえば――」

ルナディア「それは…憐み?」

ネイ「…別に、そういうわけじゃない」

ルナディア「じゃあ聞こう。彼女の役目は何だ?」

ネイ「それは…一時的な戦力。それに、管理局内に衝撃を与えるとか…」

ルナディア「違う。間違っているよ、姉さん。彼女はずっとオレの人形さ。決して終わることは無い」

ネイ「こだわるのね」

ルナディア「だって、滑稽じゃないか。管理局のエースが管理局の人間を殺していく。最高の光景だ。そして最後は…みんな壊れてお終いさ」

 

 

―――後編に続く

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