魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"― 作:あじめし
第32管理外世界“タイタン”上空。シグナム率いる管理局の空戦魔導師部隊が市街地へ向かう。
シグナム「こちら第3航空部隊隊長シグナム。状況は」
魔導師A『空尉!こちらは全滅です。近戦魔導師に加え――あれは…高町なの―――』
シグナム「くそっ。高町…敵に回すと厄介だ。各員、遠隔砲撃に備えつつ、地上に降りるぞ」
魔導師B「了解!」
エリオ「シグナムさん!!」
キャロの召喚獣フリードリヒにまたがるエリオが、部隊の先頭を飛ぶシグナムに並ぶ。
シグナム「ここからは戦闘空域だ。用心しろ」
エリオ「でも…相手は――」
シグナム「今、高町は管理局の戦技指導官ではない。1人の敵だ」
エリオ「分かってます…」
シグナム「来るぞ!!」
高エネルギーの魔法弾が、部隊目がけて襲いかかってくる。
部隊は二手に分かれ、砲弾を避ける。
シグナム「対象を視認した。かかれっ!!」
エリオ「……了解!」
シグナムとエリオ、数人の魔導師の前には、レイジングハートを構える高町なのはの姿があった。
エリオ「なのはさんっ!!!」
エリオが先陣を切り、フリードの火炎球がなのはに向けられる。
なのははそれを避けるが、その先にはエリオのストラーダの刃があった。
なのははシールドを張らず、その刃を左手で受け止めた。
エリオ「っ!」
シグナム「エリオ!!」
シグナムの斬撃がなのはの頭上に振り下ろされるが、ぎりぎりで刃はシールドに阻まれる。
シールドを通して、シグナムの目にはなのはの姿が映っていた。
シグナム「どうあってもやる気だな…」
なのは「………」
シグナム「ならばこちらとて、容赦は――」
ネイ「なのは!もう終わりよ!」
なのはの背後に、銃剣型デバイス”バハムート”を手にしたネイが現れる。
シグナム「ノートルア。お前も来ていたのか」
ネイ「久しぶりね、シグナム。でもね…その名は捨てたわ」
シグナム「貴様の名など、私に知った事ではない」
ネイ「怖いわね。早く逃げなくちゃ」
シグナム「逃がすと思ったのか」
なのはとネイの周囲に、10人程の魔導師がやって来る。各人はデバイスを2人に向け、臨戦態勢を取っている。
シグナム「投稿しろ。お前たち2人で、この包囲を抜けられると思うな」
ネイ「舐められたものね…!!“雷雲の
高く上げられたバハムートの銃口から魔法弾が放たれ、そこから黒い雲が広がる。
雲が魔導師たちの頭上に浮かび、青白い稲妻が放たれる。
そして稲妻は一斉に、周囲の魔導師に向かって降り注いだ。
シグナム「ノートルア!!」
シグナムはなのはから離れ、ネイに肉迫する。
バハムートとレヴァンティンの刃が激しくぶつかり合い、火花が散った。
ネイ「なのは!周りをお願い!」
シグナム「エリオ!なのはを逃がすな!」
エリオ「はいっ!」
ネイとシグナムは、雷の降り注ぐ曇天の中を飛び回る。
ネイ「“楓”!!」
シグナム「紫電一閃!!」
鋭い真空波と、シグナムの斬撃が激突する。
ネイ「流石ね…!」
シグナム「勝負はこれからだ」
ネイ「いいえ。もう終わったわ」
シグナムは異変に気づき、一気に高く飛翔した。
彼女が元いた場所を、桜色の砲弾が駆け抜ける。
エリオ『シグナム、さん…こちらは…もう持ちません……』
シグナム「残存数は!」
エリオ『僕と、もう1人だけです』
シグナムは、遥か遠くへ飛び去って行ったなのはとネイを見ながら、奥歯を噛みしめた。
シグナム「戦闘空域を離脱する…!」
『第32管理外世界における戦闘では、管理局魔導師30人以上が負傷、そのうち数人が死亡したものと思われます。尚犯人は未だ捕まっておらず、周辺世界では緊張が高まっています』
少女――名はエリア――はベッドのに横たわりながら、テレビ画面に目を向けていた。
ハヅキ「窓を開けっ放しではお身体に障りますよ、エリア様」
エリア「ハヅキっ!おかえりなさいっ!」
ハヅキは開いている窓を閉め、ベッドの横の椅子に腰かけた。
ハヅキ「ニュースですか?」
エリア「この時間はニュースしかやってないから、つい見ちゃうんだ。この事件、知ってる?」
テレビ画面には、時空管理局の幹部らの記者会見の様子が映っていた。
管理局中将『時空管理局は本日、本局執務官ネイ・ノートルア、並びに本局戦技教導官高町なのは一等空尉の第1級広域次元犯罪者としての指名手配を決定しました。罪状は管理局反逆罪。500人体制の捜査本部を設置します』
記者『先日のジェイル・スカリエッティ脱獄もその2名が関わっているのでしょうか?』
管理局中将『不確定情報ですのでお話しできません』
ハヅキ「初耳です。大変な事件ですね」
エリア「…うん」
ハヅキ「エリア様、お身体の調子が悪いのですか?」
エリア「ううん。ただね、世間は大変なことになってるなぁって」
ハヅキ「……そうでした、エリア様にお話があるのです。とても喜ばしいお話ですよ」
エリア「本当?」
ハヅキ「はい。しばらく目をつむっていてください」
エリア「うん」
ルナディア「エリー」
エリア「…その声、ルナ兄さま?」
ルナディア「正解。目を開けていいよ」
エリア「兄さま…おかえりなさい…!」
ルナディア「ああ。ただ今」
エリアはベットから飛び起き、横に立つルナディアの胸に飛び込んだ。
ルナディア「元気そうで良かった」
エリア「でも…寂しかった」
ルナディア「ごめんよ。仕事が溜まっていてね。ようやく終わったんだ」
エリア「ううん、いいの。帰って来てくれただけで嬉しいから」
マオ「あ~エリーが甘えんぼモードになったぞ~」
エリア「マオ!キリエ姉さま!」
キリエ「久しぶりね、エリア」
エリア「ってことは、カイルさんと…エーリヒ兄さまも?」
マオ「えっと、それは…」
ルナディア「カイルはまたしばらく帰って来られないんだ。でもエリアによろしく言っておいてくれと言われたよ」
エリア「そうなんだ…。じゃあ、エーリヒ兄さまは?」
ルナディア「あいつはもう少したら帰ってくるさ。安心するといい。じゃあちょっと出てくるから。マオ、キリエ、エリアの話し相手を頼んだぞ」
マオ「うんっ。ねぇ~ねぇ~トランプやろ~よ」
屋敷の外、エリアの部屋が見える場所に彼女は立っていた。
ネイ「………」
ルナディア「見ていたの?」
ネイ「あの子、随分成長したわね」
ルナディア「でも幼い頃の面影が残っているだろう?」
ネイ「そうね。成長したとはいえ、まだ15だもの」
ルナディア「…姉さん、済まないが―」
ネイ「いいわ、分ってる。覚悟はしていたから」
ルナディア「もう少し、待っていてくれ。必ず、姉さんが堂々とエリアに真実を語れる世界を創ってみせる」
ネイ「ううん、待つだけじゃない。私も手伝うわ。その方が早いでしょ?」
ルナディア「ありがとう、姉さん」
ネイ「ところで、あの二人は?」
ルナディア「近くのマンションの一室を借りた。そこにいる」
ネイ「早くエリアの身体を」
ルナディア「ああ。今から病院を制圧してくる。そこで彼に治療をしてもらおう」
ネイ「彼は信用できるの?“神の声”を使った方が」
ルナディア「いや、奴は自分の得になることには忠実だ。褒美はたくさん用意してある」
ネイ「そう。それともう一つ、なのはのことだけど」
ルナディア「彼女がどうかした?」
ネイ「もう、いいんじゃない?彼女の役目は終わったじゃない。“神の声”の効力が切れる前にいっそ殺してしまえば――」
ルナディア「それは…憐み?」
ネイ「…別に、そういうわけじゃない」
ルナディア「じゃあ聞こう。彼女の役目は何だ?」
ネイ「それは…一時的な戦力。それに、管理局内に衝撃を与えるとか…」
ルナディア「違う。間違っているよ、姉さん。彼女はずっとオレの人形さ。決して終わることは無い」
ネイ「こだわるのね」
ルナディア「だって、滑稽じゃないか。管理局のエースが管理局の人間を殺していく。最高の光景だ。そして最後は…みんな壊れてお終いさ」
―――後編に続く