魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"―   作:あじめし

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第1話「予兆」(後編)

??「冗談だろ…」

なのは「もう逃げられないよ。さぁ、その女の子を解放して投降しなさい」

 

暗い路地裏を抜け、男はビルに囲まれた広場に出る。

しかし逃げた男の前に立ちはだかったのは―――

 

??「管理局のエース・オブ・エーズが相手かよ。悪い冗談だ」

 

高町なのは一等空尉。

その眼は男の一挙一動を見逃さない、鋭くも感情のこもった眼だ。

 

??「でも投降はできねぇな!」

 

男は右腕で抱えていた女の子をゴミ置き場に放り投げたが、気絶しているためか、女の子は声一つ出さない。

 

なのは「ヴィヴィオっ!!」

 

思わず彼女は、いとしい娘の名を叫ぶも、すぐに冷静さを取り戻して目の前の敵に集中する。

 

??「来い!!“イフリート”!!」

 

男の両腕に赤い籠手が現われた。

それは渦巻く炎を帯びており、男を中心に熱波が放たれる。近くにあった水溜りが一瞬で蒸発したほどだ。

 

??「俺の名はカイル。灼熱を操りし者だ!」

 

カイルが拳を地面にぶつける。すると、なのはが立っている場所周辺のコンクリートが砕け、そこから火柱が上がった。

 

カイル「俺のファイア・ポールを避けるかよ!」

なのは「レイジングハート!」『All right!』

 

更に地面から現れた数本の火柱が、一斉になのはを襲う。

なのはは空高く跳び上がり、それをかわす。火柱は互いに衝突し、巨大な爆発が起こった。なのはといえど耐えられる温度ではない。

 

カイル「逃がしたか。だがなっ!ファイア・スプラッシュ!!」

 

空高く飛翔したなのはに対し、カイルは大量の火の玉を放った。

なのはは素早く反応し、シールドによってそれを防ぐ。

 

カイル「甘ぇっ!」

 

その瞬間、火の玉が軌道を変え、防御の行き届かないなのはの背後を狙った。

 

なのは「っ!!」

 

なのはの前後を襲った火の玉同士がぶつかり合い、大きな爆発を起こした。

 

カイル「もう終わりかよ。つまらねぇ女だ」

なのは「…ディバイン・バスター」

 

カイルが黒煙の中に桜色の光を垣間見た頃には、既に魔法砲撃がカイルに直撃していた。

倒れたカイルは、なのはを囲むように展開された無数の小型シールドに呆気に取られていた。

 

カイル「あ、あれを…防ぎやがったのか…」

なのは「こちら高町。犯人を確保、拘束します」

 

なのはがカイルに近づきながら、バインドで動きを縛る。

 

カイル「ふっ…はははは!かかったな!オーバードライブ発動!!」

 

拘束されたカイルの傍に、小さな赤い火の球体が姿を表す。

なのははその球体の中心に、凄まじいエネルギーが込められていることに気付いた。

 

カイル「デッドマンズ・エクスプロージョン!!」

 

 

 

 

シャーリー『魔法反応!なのはさんのレイジングハートと、不明術式の魔法です。敵の魔法のせいか…周辺の気

 

温が急上昇しています!』

フェイト「今向かってる!なのは……!」

 

その時、フェイトが遠方から肉眼で確認できるほどの、巨大な爆発が起こった。

それどころか、フェイトの飛行を妨害するほどのとてつもない熱風が広がっている。爆弾並の破壊力である。

爆心地に近づくほど、むせ返るような黒煙と塵が空に舞っており、フェイトすら状況を確認できずにいた。

しかしほのかに青白い光を、フェイトは見た。

そして汗ばむほどの熱気を吹き飛ばすように、ひどく冷たい風がフェイトの頬に触れた。

 

なのは「………え?」

カイル「嘘…だろ…」

 

なのはとカイルを隔てるように、分厚い氷の壁が現われていた。

爆発の影響で溶けかかってはいるが、決して崩れることはなかった。

 

???「ぎりぎりね。高町空尉、ここからは私が」

 

2人の真上から、銀色の長い髪を揺らした魔導師が舞い降りる。

 

カイル「て、てめぇは――」

???「動くなっ!」

 

彼女は銃剣型のデバイスを構える。その銃口から魔法弾が放たれる。

弾丸はカイルの足元に沈み、そこから数本の細い氷柱が現われた。

氷柱はカイルの両足を貫く。出血は無いものの、魔法ダメージが彼の魔力を奪っている。

 

カイル「うっ…畜生っ!!」

???「その両手もね」

 

さらに地面から突き出た氷柱はカイルの両腕に突き刺さり、カイルは完全に身動きを封じられた。

 

???「本部報告。容疑者を拘束」

カイル「……いい気に、なりやがって。俺はな…お前らに捕まったりはしねーんだよっ!!」

 

気温が一気に上がる。その中心はカイルの腹だった。

 

カイル「消し飛べっ!!!」

ネイ「させないっ!!」

 

カイルが自爆をしようとした刹那、カイルの周囲に氷のドームが形作られる。

そしてその中心でカイルの体内の魔力が一気に放出、爆発した。

 

ネイ「くっ…!!バハムート!粘りなさい!!」

なのは「レイジングハート!シールド展開!!」

 

超高熱によって内側からどんどん解かされるドームに、更なる氷の壁と、なのはの魔法壁が重ねられていく。

やがて氷の壁が中心の空洞をも飲み込み、巨大な氷塊が完成した。

 

???「大事な尋問対象が…」

なのは「ヴィヴィオ!」

 

なのははゴミ山に埋もれたヴィヴィオを抱き上げた。

幸い、軽い擦り傷程度であった。

 

フェイト「なのはっ!!」

なのは「フェイトちゃん!」

フェイト「ヴィヴィオは?」

なのは「見ての通り、安心だよ」

フェイト「心配になって来てみたけど――って、ネイ!?」

???「ふふっ。お久しぶり」

 

彼女の名は、ネイ・ノートルア。

管理局本局の執務官である。なのはとフェイトの一つ上の年齢だ。

 

なのは「ありがとうございますっ!でも…まさか、こんな所で再開するとは」

ネイ「なのは、腕にぶった?ついでに太った?」

なのは「そ、そんなことっ!」

ネイ「じょーだんよ。ちゃんとリミッター外していれば造作なく防げたでしょ?」

なのは「でも…ありがとうございます」

ネイ「敬語なんて必要ない。一つしか違わないし」

なのは「そ、そうだね。あはは」

ネイ「それじゃ、私は別の仕事に向かうから。事後処理はよろしくね。さようなら」

 

ネイは冷気を残して飛び去っていった。

 

フェイト「ヴィヴィオ、無事みたいでよかった」

なのは「うん。でも、さっきの男が自爆する前。ネイさんが防いでくれなかったら…」

 

カイルが自爆する直前、なのははヴィヴィオを庇うように防御態勢をとっていた。

もしカイルの自爆が成功していれば、なのはも無事ではなかっただろう。

 

なのは「犯人の目的…何だったのかな…」

 

なのはの視線は、溶けかかった巨大な氷塊に向けられた。

氷塊に埋もれているカイルの肉体は、もはや元来の姿が想像できない黒い何かと化していた。

 

フェイト「もう1人の男は拘束して管理局に引き渡した。明日から重要な手がかりになると思う」

なのは「私は教導でそっちに関われないけど…よろしくね、フェイトちゃん」

フェイト「任せて、なのは」

 

今はまだ、誰も知らない。

この些細な事件が災厄の始まりであることを。

 

 

 

――――第2話へ続く

 

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