魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"― 作:あじめし
……ここは、どこだ?
ん?体の自由が利かない。拘束されてるらしい。
こりゃ目隠しか。随分窮屈なことになってるな。
はやて「どうや?気がついたか?」
???「…最悪の目覚めだったぜ」
はやて「そうやね。すみません、目隠しとってもらえます?」
後ろに立っていた誰かがオレの目隠しを外す。
久しぶりに目に入った光、そしてガラス越しの目の前に立つ女性。
???「ふっ。若い女の子が尋問官だなんて、俺は運がいい」
はやて「最初に言っておくね。手加減はせーへんよ?」
魔法戦記リリカルなのは――Mission Code-N――
第2話「疑念」
はやて「名前は?」
エーリヒ「エーリヒ。悪いがファミリーネームは無い」
少し長めの黒髪に、男性にしては白い肌。前髪から覗かせる瞳は、紫色の輝きを放っていた。
はやて「それで、目的は何だったんや?」
八神はやての眼はいつもと変わらないようでいて、実は違う。
犯罪者を目の前にするとき、彼女の眼は優しげに見えながらも恐ろしいまでに対象の一挙一動から目を離さない。
それは獲物を目の前にした狩人の様。
エーリヒ「そんなにじっと見つめられると、どきどきするんだけど」
はやて「あの女の子を誘拐した理由は?」
エーリヒ「……金が欲しかったんだよ。高町なのはっては高給取りだろ?それなりの身代金でも大丈夫だと思ったんだよ」
はやて「君、魔導師やろ?なのにあのなのはちゃんに喧嘩売る真似するなんて、大金のためでもリスクが大きない?」
エーリヒ「あの人は教導だろ?誘拐犯捜査には出て来ないと思ってたさ。そしたら他にも強そうなねーちゃんばっかり…そりゃないぜ」
はやて「仲間は死んじゃったよ……うちらを憎くないん?」
エーリヒ「あれはネットでつい最近知り合った単なる共犯者さ。会話なんてほとんどしてないしな」
はやて「そう…」
エーリヒ「なぁ、オレの方から質問してもいいかい?」
はやて「答えられることには答えるよ」
エーリヒ「おっぱい、何カップ?」
はやて「………」
エーリヒ「……怒った?」
はやて「ううん。ちょっとびっくりしただけや。もしかして、そういうことに興味あるん?」
エーリヒ「もちろんだ。オレは男だからな。特におっぱいは大好きだ」
はやて「うちも大好きや。同僚とか部下の成長を見るんが楽しみでな」
エーリヒ「分かるぜ。あと家族な。いやぁ…最近は妹の成長が急すぎてね。兄としては気がかりでならなくてさー」
はやて「へぇ、妹さんおるんやね」
エーリヒ「…あ」
はやて「おしゃべりが過ぎるんよ。お金は妹さんのためか?」
エーリヒ「まぁそれも一因だな。うちは貧乏でね。金が必要なんだよ」
はやて「だったらきちんと働いたらえーやん。魔導師なら管理局で働けるよ?」
エーリヒ「……管理局でなんて働くかよ」
はやて「…今日は帰るよ。またね」
エーリヒ「おう。次はおっぱい談義で盛り上がろうぜ。そうだ、俺はCカップが一番のタイプなんだよ。今度Cカップの女性でも連れて来てくれ」
はやて「……ほなね」
はやてが面会室から出て行ったのと同時に、再びエーリヒの視界は遮られた。
ロッサ「首尾はどうだい?」
はやて「まだ何とも。そうや。もう一度、彼が捕まった時の報告書、見せてくれるか?」
ヴェロッサ・アコース捜査官から受け取った書類を読むうち、はやての中で“ある疑念”が生まれた。
―――1週間後
なのは「そこっ!隊列が乱れてるよっ!」
演習場の上空で、なのはの声が響く。
そして爆音。壮絶な模擬戦が繰り広げられていた。
なのは「そんなんじゃシールドを破れないよ。もっと強く!」
複数の新人魔導師を前に、単身攻撃を防ぎ続け、正確な射撃で新人たちの身体に付いているターゲットを破壊していく。
なのは「はい、B班は全滅。まぁ、昨日より全然よかったよ」
新人たち「ありがとうございますっ!」
なのは「じゃあ、次はC班の―」
ネイ「へぇ。新人教導って昔とだいぶ変わったのね…」
新人たちの視線を受けながら、ネイ・ノートルアがなのはのもとへやって来た。
バリアジャケット姿、左手に銃剣型のデバイスを持った姿は、いつでも戦闘可能な態勢である。
新人A「おい、あれ…本局のネイ・ノートルア執務官じゃないか?」
新人B「本当だ…直接見たの初めてだよ!」
なのは「ネイさん、見てたんですか?」
ネイ「この班の模擬戦をちょっとね。私たちの頃とはだいぶ変わってるみたいね」
なのは「そうですね。新しい教導カリキュラムを導入してからは」
ネイ「そうよね。私なんてしょっちゅう怒鳴られたし、歩き方一つで指導されたもの」
なのは「今はもう少し緩くなりましたね。もっと伸び伸びと戦闘スキルを中心に指導していく感じに」
ネイ「さすが、新カリキュラム提案者本人に言われると説得力が違うわね」
なのは「そうですか?えへへ」
ネイ「ねぇ、私も混ぜてくれない?」
なのは「ネイさんが?」
ネイ「最近はデスクワークばっかり。運動もしたいのよね。最近太った気がするし…」
なのは「分かりました。じゃあ、せっかくですから集団戦の模擬戦やろっか!」
なのはは新人たちを2つに分け、それぞれの隊長をなのは、ネイとした。
なのは「目的は私たちに付いているこれ。ターゲットを破壊すること。私とネイ空尉は直接の戦闘をしないで自衛と指揮に専念するから、頼っちゃだめだよ?」
ネイ「みんな、よろしくね」
なのは「それじゃ…用意、スタートっ!」
ネイ「ええ。行くわよ、バハムート!」『Oui,mademoiselle』
ネイの持つ銃剣型デバイス「バハムート」の声を合図に、2班は一旦、演習場の両極に広がり、そこから戦闘を開始した。
なのは「左が手薄だよ!そこを狙って!」
ネイ「弾幕よろしく。そう簡単に落ちないわよ、なのは」
いくら新人ばかりの模擬戦と言えど、なのはは久しぶりに興奮していた。
それは魔導師の性と言うのだろうか。
自分と同等、それ以上の実力を持つ魔導師を前に、なのはの眼には普段とは一味違った輝きがあった。
フェイト「はぁ…二人とも」
自家用車でネイの迎えに来ていたフェイトは、演習場で飛び回る二人の魔導師を前にため息をついていた。
フェイト(でも…楽しそうだね)
模擬戦好き。シグナムとの模擬戦を楽しむフェイトに向かってなのはが言った言葉だった。
起動六課時代も、周りからよく言われたものだ。シグナムとフェイトはバトルマニアだと。
フェイト(なのはだって、結構好きなくせに)
フェイトは知っていた。
よく模擬戦を申し込んでくるシグナムを苦手としていたなのはも、長い間手応えのある戦闘をしていない最近は何か物足りない気分だということを。
フェイト「あっ…」
ついさっきまで、なのはとネイは互いを攻撃することは無かったが、ネイの射撃を機に直接の戦闘を始めた。
フェイト「まったくもう…新人たちが戸惑ってるじゃない。行こうか、バルディッシュ」
車から降りたフェイトはバリアジャケットに身を包み、演習場へと飛んで行った。
―――後編へ続く