魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"― 作:あじめし
はやては、エーリヒとの会見の後、地上本部にある自分のオフィスに居た。
そこで、次元間通話装置を使って、本局の無限書庫司書長であるユーノ・スクライアに連絡を取った。
ユーノ『はやてが言った通り、こちらで調べれば良いんだね?』
はやて「うん。最初にも言ったけど、あくまで内密にね」
ユーノ『分かった。……はやて、何か危ないことに関わってない?』
はやて「まだ詳しいことはユーノ君にも話せない…ごめんな」
ユーノ『ううん。しかるべき時に聞かせてくれれば良いんだよ。それじゃ、何か見つけたら連絡するよ』
ユーノとの通話を終え、はやては地上本部を後にした。
それから信頼できる部下が運転する車に乗って、帰宅の途についた。
はやて(彼の手紙が真実なら……)
はやては、その日の朝に回収した“黄色い紙”を懐から取り出す。
エーリヒとの会話の中で、彼が回りくどい形で伝えてきたメッセージ。まさかCカップが表す数字――アンダーとトップの差“15”センチが、彼が拘束された駅の貸ロッカーのナンバーを示しているとは、はやても面食らった。
もちろん他にも“15”を示す暗号はあったから気付いたものの。
はやて(早く手を打たないと…)
はやてが握りしめる紙には、彼が伝えようとした“恐るべき計画”の全貌が綴られていた。
もしこれがすべて事実であるならば、管理局…いや、この世界にとって、とてつもない災いがもたらされてしまう。
リィン『はやてちゃん!』
はやては、融合デバイスのリィンフォースⅡからの念話に応答した。
リイン『はやてちゃん!?今どこですか?』
はやて「今帰る途中やけど…何かあったん?」
リイン『たった今連絡があったですよ。はやてちゃんの家が火事だって』
はやて「家って…クラナガンの!?」
リイン『はいです…それから、地上本部の捜査本部が…』
はやて「ヴィヴィオ誘拐事件のか!?」
リイン『誰かに燃やされたみたいです。怪我人も…大分いるみたいで…』
その瞬間、はやての脳裏にある情景が浮かんだ。
それは、あまりにも唐突で、
あまりにも恐ろしい想像だった。
はやて「車、道から外れて!」
部下「え、でも…」
はやて「いいから早――――」
はやては悟った。
気づくのが遅すぎたと。
最後にできたことと言えば、
前方に背を向けシートの後ろに隠れるようにして身を屈める程度だった。
巨大な爆発音が、夜の交差点で空気を揺らした。
魔法戦記リリカルなのは――Mission Code-N――
第3話「抹消」
さかのぼること15分前、地上本部の局員食堂にて。
スバル「ふぃ~今日の訓練疲れた~」
部下「そんなだらしない顔、他の隊員には見せないでくださいよ。それでは、失礼します!」
スバル「分かってるぅ~。また明日!」
キャロ「その声…もしかしてスバルさんですか?」
後ろからやって来たのはスバルにとっては懐かしい顔ぶれだった。
スバル「キャロっ!久しぶり~!」
エリオ「お久しぶりです、スバルさん」
スバル「エリオ!二人揃って地上本部に来るなんて、珍しいね。お休み?」
エリオ「本部に用事があって。それで途中で寄ったんです」
スバル「そっかぁ。この前は都合つかなくなって会えなかったもんね」
キャロ「すみません…私が迷子になっちゃって」
スバル「まったく、キャロらしいなぁ」
エリオ「ティアさんはお元気ですか?」
スバル「もうバリバリの執務官だよ。今は別世界で任務だって」
エリオ「そうですか。こっちはこっちで色々―」
局員A「きゃーっ!!!」
スバル「何!?」
スバルが悲鳴のする方を見ると、食事中だった女性局員が胸を押さえ、苦しんでいた。
局員A「ねぇ、ねぇってば!大丈夫!?」
隣にいた局員が必死に呼びかけるが、女性局員は苦しみ続け、ついに動かなくなった。
局員B「うっ!」
今度は別の場所から声がした。
そこでも同じように食事中の局員が苦しみ始め、動かなくなった。
スバル「エリオ!キャロ!まだ何も食べていない?」
エリオ「ま、まだ何も。ねぇ、キャロ?」
キャロ「う、うん」
シャマル「みんな落ち着いてっ!医療局の者です!」
慌てた様子で食堂に現れたのはシャマルだった。
それと同時に、3人目の被害者が現われた。
シャマル「私の声が聞こえますか?」
局員C「あ…がっ……」
シャマル「……皆さん!食堂から出ないで!すぐに捜査官が来ますから」
それからすぐ、数人の執務官と補佐官が食堂にやって来た。
局員D「お、おい!あれ見ろ!」
ある局員が大声をあげて窓をを指さした。
その先に見えるのは、隣りのビルの窓から煙が上がっている様子だった。
キャロ「大変!火事ですよね?」
スバル「消火に行かないと!」
フェイト「スバルっ!!」
スバル「フェイトさん!?」
フェイト「事情は説明しておくから、スバルは事務局の消火に向かって!」
スバル「は、はい!」
フェイト「エリオとキャロも手伝いに行ってくれる?」
エリオ・キャロ「はいっ!」
シャーリー『フェイトさん!緊急伝令です!』
フェイト「こっちはもう現場だよ」
シャーリー『別件なんです!第13拘置所に襲撃者が現われました!その鎮圧に向かってください!』
フェイト「13…あの誘拐犯の?」
ドーン!
その時、食堂近くの隊舎から爆発音が響いた。
フェイト「こっちもまずいよ…!隊舎が爆破されてる…」
なのは「フェイトちゃん!」
フェイト「なのは!」
教導の事務作業帰りのなのはも、事態を察知してやって来ていた。
なのは「拘置所の方は任せて。フェイトちゃんはこっちをお願い!」
フェイト「う、うんっ!」
なのは「じゃあ…行ってくる」
なのはは食堂の窓ガラスを突き破り、空へと上がって行った。
フェイト「シャーリー、拘置所にはなのはが向かったよ。私は局内を回ってみる」
シャーリー『気を付けてください。さっきの報告だと、局内だけで5か所で爆発が起きてます。いずれも…被害者ありです』
フェイト「誰かが侵入したのかもしれない。すぐに向かう!」
フェイトは爆発が起きた隊舎へと向かった。
そこは、ヴィヴィオ誘拐事件の捜査本部が設置されている建物であった。
ドーン!
フェイト「爆発!?」
音のする方へフェイトは走った。
次第に黒煙と煙臭さがフェイトの鼻をさす。
局員E「げほっ!げほっ!」
フェイト「大丈夫ですか!?」
局員E「室内に、まだ、人が…!」
真っ黒な煙は、捜査本部が置かれている部屋から溢れ出していた。
フェイト「分かりました。誰か聞こえますか?!」
濃い煙の中をフェイトは進む。
ネイ「フェイ、ト?」
フェイト「ネイっ!!」
燃え盛る扉の前で、ネイ・ノートルアはうつ伏せで倒れていた。
フェイトが抱き起こしたネイの衣服は、黒焦げで所々が灰のようになっていた。
そしてフェイトの手に、ねっとりとした血の感触が伝わって来た。
ネイ「私、は…大丈、夫。それより……」
フェイト「しゃべっちゃダメ!すぐに医療班を呼ぶから」
ネイ「早く…行っ…て……は、はや…てが…」
フェイト「はやて?」
ネイ「はやてが……危ない…!」
―――中編へ続く