魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"― 作:あじめし
燃え盛る建物の中で、ネイ・ノートルアは苦しげに声を振り絞った。
ネイ「敵の…狙いは……誘拐事件の……関係、者…」
フェイト「しゃべらないでっ!すぐに救護が来るから」
ネイ「は、やては…きっと……何かに、気付いて…。事件の…真相に…!」
……………
…………
……
ある病室の中。フェイトは目を覚まさないネイを前に、数日前の会話を思い出していた。
ティア「じゃあフェイトさん…管理局内にスパイがいるっていうんですか?」
急遽出向先から帰還したティアナは、臨時の捜査本部に配置された。
指揮官のはやて、補佐となるはずだったネイの代わりに、今はフェイトが指揮を執っている。
フェイト「捜査本部や、その主要メンバーを直接狙ったことから、予測できる。犯人たちは、はやてたち捜査本部が誘拐事件の裏にある何かに辿り着くことを恐れたんだ」
ティア「そう、ですよね。そうじゃなかったら…捜査本部の人間を全て殺して、捜査データを抹消するだなんて」
フェイト「この件は二人で秘密裏に捜査しよう。記録はなるべく取らないで。取る場合は管理局の手が届かないところで」
ティア「分かりました。うまくやります」
フェイト「本当に信用できる人にだけ、スパイの件は話そう」
ティア「…はい」
スバルにも一応、気を付けるように言った方がいいか、とティアナは考えていた。
ティア「それじゃ私、一度現場に行ってみます」
フェイト「うん。気を付けて」
ティアナが病室を出て行った後、フェイトはノートパソコンで管理局のデータベースにアクセスした。
その画面に映し出されていたのは、第13拘置所だった。
フェイトは早速、捜査を開始した。
最初の目的地は第13拘置所。ある重要参考人が収容されている場所である。
エーリヒ「…………」
フェイト「こんにちは」
エーリヒ「…面会?」
フェイト「正確には尋問です」
エーリヒ「そうか…やっぱり捕まったのか。それにしても、最初に尋問してくれるは綺麗な女の人がよかったよ。強面のおっさんが最初なんて悲しかったぜ」
フェイト「…え?」
エーリヒ「…な、何だよ、その面喰ったような顔は」
フェイト(最初にこの男を尋問したのって、たしかはやてのはずじゃ…)
ヴェロッサ「無駄だよ、フェイト。こいつから引き出せる情報は何もない」
フェイト「アコース査察官…それに…」
クロノ「久しぶりだな、フェイト」
フェイト「お兄―クロノ提督。どうしてここに?」
クロノ「はやてはこの男から情報を得たらしいからな。尋問に来たのさ」
ヴェロッサ「しかし驚いたよ。この男、殆どの記憶が消えてるんだ」
エーリヒ「おい…どういうことだ?オレの記憶が消えてるって…」
クロノ「なのはから聞いた話だと、この男にそっくりな顔をした男が何かしたらしいが」
エーリヒ「オレと同じ顔?い、意味が分からない」
フェイト「魔法、なのかな?」
クロノ「見当がつかん。だが、この世に人の記憶を調べることは出来ても、操作することができる魔法なんて存在しないはずだ」
ヴェロッサ「それこそロストロギア絡みだろうね」
クロノ「そうではないことを祈ろう。フェイト、これはロッサが、残ったこの男の記憶を見て手がかりになりそうなものをピックアップしたリストだ。捜査に使ってくれ」
フェイト「ありがとうございます」
ヴェロッサ「いえいえ。それじゃ、僕たちは帰ろうかな。次の予定もあることだし」
クロノ「ああ。そうだ、フェイト」
フェイト「ん?」
クロノ「これは事件とは関係のないことだが、なのはに会ってやれないか?最近様子が変に見える」
フェイト「…うん。なのは、JS事件の時でさえ撃墜されなかったのに、今回は手も足も出なかったって。多分焦ってるんだと思う」
クロノ「お前がサポートしてやれ。一番の親友だからな」
フェイト「うん。じゃあね」
クロノ「ああ」
険しい顔つきを崩さないまま、クロノとヴェロッサは面会室を後にした。
それからフェイトは、クロノに渡された書類に目を通した。
そこにはヴェロッサの捜査結果だけでなく、エーリヒの個人データ検索の結果や、誘拐事件の現場の状況なども記されていた。
フェイト(でも肝心の捜査資料は本部ごと無くなった。それを知ってるはやても意識が戻らない…)
エーリヒ「……だんまりなんて退屈だな…」
フェイト「どうして女の子をさらったの?」
エーリヒ「…分からない。思い出せないんだ」
フェイト「…そう。ところで、あなたは魔法を使えるの?」
エーリヒ「多少はな」
フェイト「デバイスは?所持品にそれらしい物は無いみたいだけど」
エーリヒ「デバイス?あぁ、あんたらが戦う時に使う武器か」
フェイト「魔導師なら持っているでしょ?」
エーリヒ「分からんが、すぐに出そうと思えば、出せる」
フェイト「どういう意味?」
エーリヒ「俺が使う魔法は、おそらく…あんたらの言う魔法とは、全く違うのかもしれない」
―――第4話へ続く