魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"― 作:あじめし
クロノ「酷いものだな」
ヴェロッサ「そうだね。かなりの被害が出たそうだし」
クロノ「そうじゃない。あれだよ」
地上本部内のカフェテリアの窓の向こう。クロノが指さす先。
戦技教導官が新人を相手に模擬戦を繰り広げていた。
ヴェロッサ「あれ…なのはちゃんかい?」
クロノ「一瞬分からなかっただろ」
ヴェロッサ「信じられないよ…あんな戦い方」
クロノ「乱暴で刺々しい。あれじゃ教導にならないぞ」
ヴェロッサ「やっぱり、この前のテロの件で…」
クロノ「焦っているんだろうな。未知の敵との戦いで」
クロノは知っている。
力を求めすぎること。必ずと言っていいほど、それは悲劇をもたらすということを。
魔法戦記リリカルなのは――Mission Code"N"――
第4話「進化」
なのは「そこっ!隊形がなってないよっ!もっと機敏に動いて!」
新人A「きょ、教導官…これ以上は…」
なのは「…無理だって思うなら帰っていいよ。足手まといになる」
新人A「そ、そんな…」
ヴィータ「なのはっ!!」
なのは「っ!?…ヴィータ、ちゃん?」
ヴィータ「お前ら、今日の演習は終わりだ。なのは、ちょっと来い」
戸惑う新人たちをそのままに、二人はロッカールームへとやって来ていた。
ヴィータ「なのは…最近おかしいぞ。こんなんじゃ新人が潰れちまう」
なのは「ヴィータちゃん…私、甘かったのかもしれない」
ヴィータ「は?」
なのは「拘置所警備の魔導師、ほとんどが私の新人教導を受けてた。なのに、襲撃者に手も足も出なかったって」
ヴィータ「…自分の指導が悪かったってか?」
なのは「そうに決まってる!私、油断してたのかもしれない。JS事件の時もそう。誰もが戦えるように―」
ヴィータ「それ以上言うんじゃねぇっ!!」
ヴィータの拳がロッカーの扉を打った。
ヴィータ「お前が苦しんで、考えた結果なんだろ?何でそれを簡単に否定しちまうんだよ!」
なのは「……ごめん」
ヴィータ「誰も弱くなんてねーんだ。お前だって――」
なのは「私は…弱い」
ヴィータ「え…?なのは…」
なのは「ヴィータちゃんの言う通り、私どうかしてた。誰も弱くなんてないよね。みんな、いろんな壁を越えてどんどん強くなる。絶対にね。でも…私は、もう止まっちゃったんだよ」
ヴィータ「何言ってんだよ!お前はエースの中のエースって言われてる魔導師だろ?弱気になってんじゃねーよ」
なのは「そのエースがあんな簡単にやられていいの!?」
ヴィータ「…気にし過ぎなんだよ」
なのは「はやてちゃんが殺されかけた」
ヴィータ「っ!!」
なのは「その犯人を取り逃がすなんて…許されないよ、私の弱さは」
ヴィータ「…だから何だってんだ」
なのは「私は…強くなってみせる」
シグナム「それはいい覚悟だ、高町」
ロッカールームの出入り口に立っていたのはシグナムだった。
ヴィータ「お前、なんでここに」
シグナム「お前が演習を見かけた途端に飛び出したと聞いて、もしやと思って来てのだ。ところで高町」
なのは「シグナムさん。私と一対一の模擬戦をしてください。もちろん本気で」
シグナム「…いいだろう。付いて来い」
ヴィータ「お、おい!お前ら何言ってるんだよ!」
シグナム「黙れヴィータ。これは高町自身の問題だ。お前に口を出す権利は無い」
なのは「そうだよ。大丈夫。怪我はしないようにするから」
微笑んでヴィータを肩に手を置き、なのははシグナムと共にロッカールームを後にした。
一人残されたヴィータはしばらく立ち尽くしていたが、我に戻って二人を追いかけた。
拘置所から地上本部へ戻って来たフェイトの目に映ったのは、管理局員の成す人だかりだった。
フェイト「あの、一体ここで何が?」
局員A「ハラオウン執務官。あれを見てください」
フェイトは人だかりの理由をすぐに理解した。
演習場の空。そこには二つの影。
フェイト「シグナム…なのは!」
局員A「久しぶりのすごい模擬戦だって、みんな大騒ぎですよ」
フェイト「どうしてこんなこと…!」
ヴィータ「フェイト!」
フェイト「ヴィータ…」
ヴィータ「悪ぃ…あいつら行かせちまって」
フェイト「ううん。私が止めてくるから」
ネイ「それは無粋ってものじゃない?フェイト」
フェイト「ネイっ!!」
フェイトとヴィータの目の前には、車椅子姿のネイがいた。
フェイト「いつ目覚めたの!?」
ネイ「2時間ほど前ね。屋上でのんびりしてたら二人の模擬戦見かけて来てみたのよ」
ヴィータ「ノートルア、お前はなのはを止めようって思わねーのかよ」
ネイ「それがなのは自身のためになるのなら。でもそうじゃない。今のなのはには必要なのよ」
ヴィータ「だけど…!」
ネイ「なのはは成長を続けるわ。いや、進化って言う方がいいかしら」
ネイは空を見上げて笑っていた。
とても嬉しそうに。
なのはが強くなる。それを祝福しているような表情だった。
ネイ「なのは…あなたは強くなれる」
―――中編へ続く