魔法少女リリカルなのは―Mission Code"N"―   作:あじめし

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第4話「進化」(中編)

2週間近い日々を、なのはは教導よりも模擬選に費やしていた。

今、なのはは演習場の上空で、2週間ぶりに現場復帰したネイと模擬選を繰り広げていた。

 

ネイ「ブリザードレイン!」

 

雨のように細かい氷柱が、なのはの頭上から降り注ぐ。

 

なのは「当たらないっ!」

 

なのはのレイジングハートとネイのバハムートがぶつかり、火花が散った。

 

ネイ「よく今の攻撃を避けたわね」

なのは「この攻撃、結構自信あったんだけどなぁ」

ネイ「だったら…別の攻撃も見せてっ!」

 

互いに距離を取り、体勢を立て直す。

激しい戦いに双方とも肩で息をしているが、表情は晴れやかで楽しげだった。

 

なのは「レイジングハート。新バリエーション、行ってみよう!」

『All right!!』

 

 

 

 

エーリヒ「随分楽しそうだな、あのお二人さん」

フェイト「…エーリヒ」

 

演習場の空を見上げるフェイトに、エーリヒは肩を並べた。

積極的な捜査協力、ヴェロッサも認める記憶消失の件など、エーリヒは捜査協力者として一時的な保釈が認められた。

 

エーリヒ「一昨日、白衣を着た連中に俺の魔法を見せてきた」

フェイト「ありがとう」

エーリヒ「感謝なんていいさ。元はオレが悪い」

フェイト「ううん。おかげで色々なことが分かったみたい」

 

その一つが、エーリヒとカイルが使用した魔法についてだった。

 

フェイト「ミッド式や現代ベルカ式とも異なる方式、か」

エーリヒ「まぁルーツは古代ベルカに似ているらしいけどな。俺も詳しくは知らない」

フェイト「どうして話してくれたの?」

エーリヒ「…さぁな。別に捕まっちまったし、もし黒幕がいたとしても、そいつがどうなろうと関係ないってのもあったし、何より」

フェイト「何より?」

エーリヒ「感じるんだ。事件捜査に協力することを望んでいる自分をな」

フェイト「きっと記憶を失う前のエーリヒがそうだったんだよ」

エーリヒ「何でだろうな」

 

エーリヒは記憶を失ったことを悲観していなかった。

管理局に提供できたはずの情報を全て失ったことは別として、彼にとって記憶を失ったことは幸運だった。

エーリヒは、自分が単純な誘拐犯だとは思っていない。

何か邪悪な企てをしていたのかもしれない。

その企みに加担していたのかもしれない。

そんなかつての自分を忘れられたことを、エーリヒは密かに喜ばしく思っていた。

 

エーリヒ「フェイト、その…オレを最初に尋問したって言う…」

フェイト「八神二佐のこと?」

エーリヒ「そうだ。その人はまだ?」

フェイト「もう1週間経ったよ。意識が戻る兆しは無いって」

エーリヒ「…そうか。本当に申し訳なく思ってる」

フェイト「今は謝らなくてもいい。全てが分かって、その時――」

エーリヒ「謝るどころか、殺されるかもな」

フェイト「そんなことはっ」

エーリヒ「例えば、あのコ」

 

エーリヒが指さす先。そこには制服姿のにヴォルケンリッターを構えるヴィータの姿があった。

 

ヴィータ「おい、そろそろ時間だぞ」

エーリヒ「冗談じゃねぇ。お嬢ちゃんみたいな目つき悪いコじゃやりにくい」

ヴィータ「何か怪しいことしやがったらすぐ潰す。覚悟しとけ」

エーリヒ「へいへい」

 

それから3人は演習場へ入って行った。

 

 

 

ネイ「ふぅ…今日はこのくらいね」

なのは「はい。付き合ってくれてありがとうございます」

ネイ「ううん。私もいい勉強になってるから」

 

模擬戦を終えた二人は、フェイト、エーリヒ、ヴィータの所へ降下した。

フェイトとヴィータはバリアジャケットに身を包んでいる。

 

ネイ「…あなたが、誘拐犯?」

エーリヒ「どうも」

ネイ「……そういえばお披露目会だったわね」

エーリヒ「何だか大ごとになってるな。ただ模擬戦を通して俺の魔法を見せるだけだってのに」

フェイト「今回の地上本部襲撃事件に関わる人だけでなく、管理局員のほとんどが知ってるよ」

エーリヒ「参ったな。大それたものなんて見せられないぞ」

ヴィータ「どーだっていい。とりあえず全力で来い」

 

ヴォルケンリッターの先端がエーリヒの眼前に迫る。

その先のヴィータの鋭い視線がエーリヒに突き刺さっていた。

 

エーリヒ「言われなくとも。模擬戦で死にたくないんで」

フェイト「ヴィータ、私が止めたら、その時点で終了ね?」

ヴィータ「分かってる。それじゃ、やるか」

エーリヒ「はいよ。こいつ、外してくれ」

 

フェイトによってエーリヒの手首にはめられた魔力減退装置が外され、エーリヒは腕をぶんぶんと振り回した。

 

エーリヒ「いやぁ、久しぶりに解放されたな。それじゃ、やりますか」

 

エーリヒは右腕を挙げ、目を閉じた。

 

エーリヒ「起きろ、ヴァルファーレ!」

 

その瞬間、エーリヒを包むように光が起こった。

光が消えた時には、彼の右手には白と金の杖が握られていた。

 

エーリヒ「これがあんたらの言うデバイスだろ?」

ネイ「見たことないわね。何もないところからデバイスを出せるなんて。他に使える人はいるの?」

エーリヒ「さぁな」

ネイ「一人は死んだわよ」

エーリヒ「…な、何!?今、何て…」

ネイ「炎の魔法を使っていたかカイルという男は死んだわ。誘拐事件の後ね」

エーリヒ「…誰が殺した」

ネイ「私よ」

フェイト「ちょ、ネイ…」

エーリヒ「安心してくれ。仇を取ろうなんて思わねーよ。なんせ、そいつのことは全く記憶にないんでな。さてお嬢ちゃん、始めようぜ」

ヴィータ「…ああ」

 

エーリヒとヴィータは同時に空へと上がった。数メートルの距離を取ったまま互いを見据えている。

 

ヴィータ「行くぞ…」

エーリヒ「いつでもどうぞ」

ヴィータ「アイゼン!まずは軽くだ!」

エーリヒ「ヴァルファーレ、久しぶりの戦闘だがよろしくな」

ヴィータ「シュワルベフリーゲン!」

 

魔導エネルギーをまとった3つの鉄球が、一斉にエーリヒを襲う。

 

エーリヒ「その程度は余裕だな」

 

金色のバリアがエーリヒを包み、鉄球を遮断した。

 

エーリヒ「一応言っておく。オレの魔法は防御、補助が主だ。攻撃は苦手なんでよろしく」

ヴィータ「奇遇だな。防御破りはあたしとアイゼンの十八番だっ!」

 

一瞬で距離を縮め、グラーフアイゼンがエーリヒのバリアにめり込んだ。

 

エーリヒ「こ、こいつはキツい攻撃だぜ。でも…甘いな。ヴァルファーレ!」

 

エーリヒの身体がほんのりと輝き、光となって姿を消した。

 

ヴィータ「くそっ…どこに」

エーリヒ「知ってるかい?光は物凄く早く伝わるんだ」

ヴィータ「っ!?」

 

突如ヴィータの背後に現れたエーリヒ。ヴィータは反応こそしたものの、エーリヒの打撃攻撃で軽くふき飛ばされた。

 

エーリヒ「少しは本気出してくれるか?こちとら適当にやって様子見なんて余裕ないんだ」

ヴィータ「お前…少しはやるな。だったら!」

 

グラーフアイゼンがラケーテンフォルムへと変わり、ジェット噴射が唸りを上げる。

 

ヴィータ「ラケーテン――」

フェイト「そこまでっ!」

エーリヒ「ふぅ…助かった」

ヴィータ「早すぎねーか?まだ全然…」

フェイト「1体1はここまで。次は2体2のタッグ戦」

エーリヒ「まだやるのかよ…」

フェイト「エーリヒ。あなたは高町空尉と組んでもらいます」

エーリヒ「高町って…」

なのは「よろしく」

エーリヒ「……アンタ、俺がさらおうとした女の子の保護者だったんだろ?今更だけど本当に申し訳――」

なのは「今は模擬戦。関係ないよ」

エーリヒ(こりゃ相当怒ってるね…)

フェイト「こっちは私とヴィータ空尉。それじゃ、2on2の始めよう」

 

 

―――後編へ続く

 

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