「はぁ、何か面白いことないかなぁ.......」
夜空を見上げながら一人の少年が呟く。
何も変わらない日々を、何も起こらないことに不満を感じながら生きてきて。
分かってはいた。
何か大きな事件に巻き込まれたりすることなんか普通はないって事ぐらい。
でも、せっかく面白い
自分がどんなことをどこまでできるのか知りたかった。
「........ん?」
ヒュウ、と。風が吹いた。
「........え、なんで?」
封書が空から降ってくるということに少々驚きつつ手に取ってみる。
封書には達筆でこう書かれていた。『高島和之殿へ』と。
「空から俺宛に手紙?まぁいいや」
手紙の封を切り、文章を読む。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その
◇
「うわっ」
急に視界が開けた。
見えるのは、見たこともない風景。
地平線が見え、その先には世界の果てとも思える断崖絶壁。
さらに、下には縮尺を見間違えるほどに巨大な天幕に覆われた未知の都市。
て、下?
下に都市ってまさかおい......。
下に都市が見えて、なおかつその先が見える高さに放り出される=なすすべなく落下。
あっ、これ駄目だわ.....。
なんか奇跡みたいなのおきてくんないと確実に死ぬ....。
というかとりあえず言わしてくれ。
「ど....何処だよここ!?」
そして上空4000mから落下した四人と一匹は湖に落ちた。
◆
はぁ、まったく酷いことするなぁ。音からして、俺の他に三人かな。というか落下地点が湖だったからって全員濡れた以外に被害がないっておかしいだろ。結構な高さから落ちたはずなんだけど。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙げ句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
えっ、いやそれおかしいよね。石の中だと動けないよね。
「..........。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
だよね。そうだよね。
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
いや、問題ないっておかしくね?てか、それで納得するんかい.....。
二人の男女が互いに鼻を鳴らし、服の端を絞り始める。
あ、忘れてた。俺も服絞らなきゃ。
「此処......どこだだろう?」
「さぁな。まぁ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねぇか?」
と、さっきもう一人の少女と言い争っていた男が応えた。
というか、あの金髪は地毛なのだろうか?気になるんだが。
そんなことを思ってるとジロリ、と睨まれた。
が、その視線はスルーする。
「まず間違いないだろうが、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。───私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「..........春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。で、どこにでもいそうな黒髪の貴方は?」
自己紹だと....。なんて言えばいいんだろ?わかんないや。まぁ、適当でいいか。
「高島和之だ。面倒くさいから以下略」
「そう。よろしく高島君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義者と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
面倒くさそうにあくびをする高島和之。
そんな彼らを物陰から見ていた黒ウサギは思う。
(うわぁ.......なんか問題児ばっかりみたいですねぇ......)
そう思った黒ウサギは陰鬱そうに重くため息を吐いた。
◆
少ししても誰も出てこない。
せめてここの説明をしてくれる人ぐらい出てきてほしいものだが。
そんなことを思っていると十六夜が苛立たしげに言った。
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「いやいや、お前らこの状況で落ち着きすぎじゃねぇ?」
「.......。それは貴方もだと思う」
(全くです)
説明をする人はいるにはいるのだが、四人が落ち着き過ぎているので出るべきタイミングが計れないのだ。
(まぁ、悩んでいても仕方がないデス。これ以上不満が噴出する前にお腹をくくりますか)
四人が様々な罵詈雑言を浴びせている様を見ると怖気づきそうになるが、此処は我慢である。
しかし、黒ウサギがそんなことを覚悟していると、十六夜がふと、ため息交じりに呟いた。
「───仕方がねぇな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」
黒ウサギはまるで心臓を掴まれたかのように跳び跳ねた。
「なんだ、貴方も気付いてたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの二人も気付いていたんだろ?」
「風が吹いているからねぇ」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「........へぇ?面白いなお前ら」
十六夜は軽薄そうに笑っているが目は笑ってない。四人は理不尽な召集を受けた腹いせも込めて、殺気を籠めた冷ややかな視線を黒ウサギに向けた。
「や、やだなぁ御四人様。そんな狼みたいな怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便にお話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「死ねばいい」
「あっは、取りつくシマもないですね♪というか最後の方酷くありませんか!?」
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。
なんか値踏みされてる気がするんだけど気のせいかなぁ?というか春日部に気付いてないのか?
「えい?」
「フギャ!」
春日部が力いっぱい引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります」
「へぇこのウサ耳って本物なのか?」
「..........。じゃあ私も」
十六夜が右から、飛鳥が左から掴んだ。
黒ウサギは俺の方を見て助けを求めてきたが
「まぁ、がんば」
その希望は儚く散りゆき、黒ウサギの絶叫が近隣に木霊した。
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