肩を貸して歩く
「悪いな…順…。お前に世話をかけて…。」
否、貸すという表現は間違っているだろう。引きずっているという表現が正しい。後ろをちらりと見れば、血の跡。
「…弱気になるなよ。俺たちは無敵だ。」
「ああ…。そうだな。」
力無く答える
「…順…。少し、休ませてくれないか?」
「ああ。おら、よっと。」
彼を下ろして壁によりかからさせるような体勢にし、隣に座る。
酷い出血だ。でも、彼は、今の今まで、なぜ生きているのか俺には分からない。
俺たちは、あのとき…住民の復興支援を行っていた安全地域で敵勢力の強襲に遭った。当時の特戦の仲間たちも、復興支援していた他の部隊もどうなったかは、分からない。
生き残ったのは俺達だけだったのかもしれないし、分からない。なんで、俺たちが生き残ったのか…。それは、がむしゃらに戦っていたから分からない。気が付いたときには周囲の敵はすべて
空を見上げれば、空は夕焼け。美しく憎たらしいほど紅い鮮やかな夕焼け
「…あと二キロ歩けば…国に帰れるな。国に帰ったら何する?」
俺は、何処と無く問いかける。彼が元気づくようにできるだけ陽気に。それでも、声は上ずってしまう。結末が頭を過ってしまったから。
「自衛隊を辞めて…郵便局員にでもなろうかね…。誰も傷つけず、人と人との思いを運べる仕事…やってみたいよ。…それに今まで、親父が敷いた
血を口の横から流しながら咳き込む相棒。
「大丈夫か?ほら、しっかりしろ。」
俺は迷彩服で、口の横から流れ出る血を拭う。
「……なんだろう。少し…眠たいな…。」
相棒の目が少しずつ閉じていく。閉じていくのと同時に白目をむき始める。
「おい…。しっかりしろ。おい!!!」
俺は震える手で相棒のほほを叩きながら、見つめる。その瞳からは徐々に光が消えていく。
「しっかりしろ。お前は俺と日本に一緒に帰るんだ!!…なぁ…頼むよ…。俺を、俺を、独りにしないで…。」
「…じゅん…。………おまえが………受け継げ……俺たちの……
その一言に文字通り死力を尽くした相棒の体から力が抜けて相棒の傷口や肛門、口や、目、鼻から鈍い赤い血と鮮血が溢れでて、地面に横たわり、血溜まりに沈んだ彼は安らかな顔だった。
大切な人を失う悲しみが、俺を覆い尽くした。
相棒の言葉、相棒と過ごした時間が目に写っては消えて写っては消えた。相棒とは、もう話せない、共に戦うことも歩むことさえも出来ない。
特戦に共に入り、辛く悲しいときでも渇を入れてくれたり、また支えあっていた彼は、もう帰ってこない。
何故、大切な人ほどすぐに死んでしまい残されてしまうのか…。何故自分が生き残ってしまったのか。
父親も…。
母親も…。
家族のように思っていた特戦の先輩たちや相棒も…なにもかもを失ってしまう。
神を呪い悪魔も呪い天使も呪い、そして、無力な自分を呪った。ヒトを救える力がなかった
「うわぁぁぁぁぁあ!!!!!」
故に
少しずつ視界が白くなっていく。まるでしんしんと降り積もり地面を白く染めていく雪のように。
しかし、その視界に一瞬映るものがあった。
『みつけたよ』
虚ろに微笑む白髪のガリガリの男の子がいた。…その姿はどこかで見たことが…。
『はやく、きてね。』
「お前は…?」
※
チュンチュンチュンチュンチュンチュン
「…。朝か。」
目を開ける。雀の鳴き声が俺を起こしてくれた。暖かく包んでくれる毛布が心地いい。あたりにはすぅーすぅー…と寝息が聴こえる。どうやら、夜通しの宴会だったようだな。
体を動かそうとする。とむにゅっとクッションのようなものを感じる。温かく柔らかい。そして、自分が布団などではなく、肌色の存在が俺の胸板に預けている。
ここで、俺は気づく。
「なんで俺、上裸なんだろう…。というか…!」
急速に意識が覚醒し、それと同時に冷や汗が吹き出す。そっと覆い被さる存在をみる。
胸のもとがはだけて、柔らかそうな胸が、俺の胸板に押し付けられて、もう少しで見えそうで見えない辺りまではだけている文がいる。襲っちゃったのかな?…いや、ないはず。
「ぁぁん……すぅ……すぅ…。」
文を直視しないようにどかし、とりあえず上半身を起こし辺りを見回す。すると…。
「なんだこりゃ…。」
宴会に出ていた少女女性が服をセクシーに着崩して、俺の周りに寝転がっているではないか。
優曇華さんとか、下着がみえ、な…?
ぶわっ!!!
そんな効果音が正しいと言えるほどの冷や汗。乙女の大事な部分を見てしまったのだ。これは、ただでは済まされないだろう。
「のぁぁぁぁあ!!!!!」
現実を受け入れられず俺は悲鳴をあげてしまう。その悲鳴に気付いた文が、うとうとと目を覚ます。
「んっんんんっ…じゅんひゃま…如何なされました…?」
「ど、ど、ど、どうしたも…こうしたもないよ…。ど、ど、どうしてみんなスカートとか下半身穿いてないの?!なのなの?!」
「なんだよじゅん…。うるさいぞ~。」
寝惚け眼の藤原さんが、強引に抱き寄せてぎゅっとしてくる。
あわわわわわわわ!!!!!!!文ほどではないが、形のいい…って解説できない。恥ずかしくて。
「ぞんびさんより…わたしですよねー…ふふふっ…」
寝惚け眼ではあるが、文は強引に俺の体を引っ張る。が、藤原さんの力が強いのかぐぐぐっと引っ張れない。
「むー…。もう、おこった。てんぐをあまくみにゃいでくださぁい…。」
文は葉団扇を右手の中に呼び出し振り上げる。…が眠気が勝ったのかそのまま眠ってしまい…。
ブォン!
当然振り上げられた腕は力を失えば下ろされるわけで、風が何故か俺に対してのみ起き、俺は…勢い良く吹き飛ばされる!
「なんでぇええ?!!」
ばこーん!
良い音奏でて家の壁を突き破り俺は、一瞬で人間の里の上空まで吹き飛ばされる。上半身半裸の男が家の壁を突き破って飛ばされるのはシュールだろう。
雄大な山々から見える美しき日の出。ここがかつて自然と調和しあった日本であったとこの時思い出す。でも、俺が生きているなかでこんな日本っぽい風景はみたことはない。だから、思い出すという言葉は、間違っている。が、この肉体は覚えていなくとも、魂は覚えてるって気がした。
「これが、原風景という奴なのか?」
日の光に照らされた山々は、大きな影を作り、その姿を大地に映し雲は日の光を裂き、数多の光の線を創り出す。風が吹けば紅葉が山々から吹き上げられ、俺の身体を優しく撫でながら空に舞う。
「美しいなぁ…。」
俺は、ため息をついた。目から涙が溢れてきた。こんなに、美しい風景を見ることができたのだから。こんなに、昔の
そしてーーー飛ばされたはいいがどうやって降りたら良いのかわからなくて、俺は涙が溢れてきたって感じでもあった。
「何回目だぁぁ!!叫ぶのはぁぁあ!!!死ぬ!死ぬ!死ぬ!!死んじゃうってえええ!!!」
あー、なんかこれ、HALO降下思い出すなぁ…。パラシュートがあれば…。パラシュートパラシュートォオオ!!
『鞍馬様。天狗の御力を御使いください。』
何処からともなく聴こえる声!隣を見ると、死にそうになったときにホイホイ出てくる死んだ目をした文似の彼女が…。
「これが現実逃避か!?」
『ホントに死にますよ。』
「使えって言われても使い方なんて解らねえよ!!!」
『心に従え。』
「ジン○マン?!ガ○ンダムUCかよ!?」
『大事な部分が隠れていませんよバナナ味君。』
「それでも!…って何言わせんじゃ!!!」
俺は、肩甲骨の辺りに力を入れる。
文の翼に似た黒翼が俺の肩甲骨の部分が変形していき、骨が砕けたり、くっついたりして痛々しいメキメキ音をたてながら生えてくる。
「うおーーー!!!」
バサバサバサ!!
翼を勢い良く羽ばたかせて、飛ぼうと躍起になる…。が、飛べない。
『あ、鞍馬様、羽団扇なかったんですね。』
「無いとどうなの~?」
『…翔べません。』
「まじかー……。ファッキュー!!!!」
聴こえてくる声に殺意がわいたよ。大事なことを知らなかったから。助かると思った自分がバカだったから。
そうこうしていると、地面が近づいてくる。もう無理。ショック死するぜ?むりむりむり!!!飛んで!飛んで飛んでえええええ!!!
バサバサバサ
五メートル。
バサバサバサ
四メートル。
……あっ。もういいや。死んだ。
俺は、翼を動かすことをやめて諦めて目を固く閉じた。
さらだばー!!俺の人生!アデュー!
「……。…あれ?」
しかし、せっかく身構えたのに死の時は来ない。即死だったから死ぬ瞬間すらわからなかった?
しかし、音も聴こえる。風の音も聴こえる。
ファサッ
羽音も…聴こえる?
目を開ける。数メートル眼下に地上が広がっている。
「ふぅー…。危ない。」
聞きなれた声が聴こえる。上を見ると…。
「大丈夫ですか?順さま。」
「文さん!」
俺を地面直撃寸前で背中から抱き締めて拾ってくれた文が見えた。
「ごめんなさい。私がとんだ御無礼を…。」
「うん。家のなかでは葉団扇を使うなよ?」
「その様にします。あ、でも、助けなくてもきっと順さまは生きていましたよ?」
「その根拠はなんぞい。」
「何となく?」
「だと思ったよ。そんなこと言ってるとおっぱい触るぞ。」
ふひひっと気持ち悪く笑うと、文は少し声を上擦りながら
「じ、じゅ、順さんの、え…えっち。」
そう言って少し、抱き締める力を強めてきた。苦しいぞ。あと、背中に胸が…。
「順さん、あのすごく我が儘なことお願いしても良いですか?」
「ん?ああ。」
少しの沈黙。彼女は何かしらの決心をしたように、話始める。
「…あの家に、私も住みたいです。」
「え?でも、文は妖怪の山の…。」
そこまで言おうとしたとき、文は俺の言葉を遮る。
「…どうしても、ダメなら…他の家を探します。出来れば順さんの家に…。」
「…え?それは、どういう?」
「そういうことです。」
文の様子が少しおかしい。…そこで、俺は妖怪の山での八意先生の言葉を思い出す。
『彼女は、天狗よ?組織の一員。だから、助けを求めたら、それこそ天狗たちの長、大天狗様の耳に入って、逃げることができなくなるわ。それに…仮に協力したとしたら…。天狗たちからバッシングやペナルティを受けることとなるわ。頼ることは即ち難しいの。(1件目参照』
「…まさか…。お前…」
俺はことの重大さに気づいてしまった。俺のせいで文を妖怪の山から
「なんで、今までだまっていたの…。俺のせいで、文は酷い目にあっていたのをなんで隠してたの?どうし…」
「あれ?違う勘違いしている?…まぁ、間違ってはいないですね。」
文は、抱き締める力を強め俺の言葉を遮る。
「…順さんを妖怪の山から救うときに決めたんです。…私は、自分の心に従って活きるって。」
文の声は温かみがある。同時になにか他の感情が混ざっているようにも感じた。俺にはわからない。ただ何となく感じただけだった。
「ふふっ。あなたは、まだ幼い雛。それが今の状況には良いでしょうっ♪…現状は私には良くありませんが、膠着にもっていけば…ぶつぶつ…私好みに……。ぶつぶつ」
どうしたんだろ。なにかぶつぶつ言っているけど…。気にしないでおこう。うん。
下を眺めていると、香霖堂の店の前を掃除している。森近さんが見える。
「森近さーん!」
大きな声を出して手を振ると、ちらりとこちらを見て少し控えめに手をあげて挨拶をしてくれた。
「今日は開店が早いですね。行ってみますか?」
「うん。この前は迷惑かけちゃったから…。ちゃんとお詫びしないと。」
「わかりました。順さん、霖之助さんのことを気に入ったんですね。」
文の問いかけに俺は、少し力強くうなずく。
「うん。あの店にいれば、外の世界のことを思い出せるから。」
「そう、ですか…。…わかりました。」
文は、ゆっくり高度を落として行き、香霖堂の入り口に降り立つ。店主の森近さんが穏やかに微笑む。
「いらっしゃい。」
「森近さん。先日は、流血騒動すいません。」
頭を下げる。
「汚れ落とすのに苦労したが…。大丈夫だよ。…というか見事な羽だね。」
「あ、すいません。畳んでおきます。」
パタパタ動かして畳んでいこうとするが、うまく畳めない。
「順さん。こうやって畳むんです。」
そう言って、翼に手を少し添えて畳んでくれる。
「っ。ぅっ…。」
くすぐったくて少しぞくぞくする。というか、なんだか気持ちいい。
「あやややや。へ、変な声を出さないでくださいっ。」
「…ご、ごめん。」
慌てて謝ると、森近さんがフッと笑う。
「こんなところで立ち話もあれだ。朝茶でも出してやろう。入りたまえ。」
そう言って森近さんは、店の中に入っていく。
「お邪魔します。」
「お言葉に甘えます。」
俺たちは、香霖堂の中に入っていく。店内は、相変わらず外の世界にある道具が並んでいる。
「あはは、懐かしいなぁ。」
そう言って俺は、近くにあった連載が終了し、忘れ去られた漫画を取り出す。
「…順さん。」
文は、少し悲しげな表情をしている。なんで?何でそんな表情を?
「これ、かなり面白いんだよ?」
そう言って、俺はその漫画を開く。内容は…。えっと…。なんだっけ。
「……。」
文。そんな悲しそうな顔するなよ頼むから。
「い、今、思い出すから!ちょっと待って!」
思い出そうとする。が、なんだ?この違和感は。見たことがある筈なのに、知っている筈なのに、言葉が出てこない。
「…よかったらそれ一冊買って読みましょう。順さんが、面白い漫画というのなら間違いありませんからっ。」
そんな俺の様子を見て何を思ったのかは知らないけど文は、微笑んでくれた。
「あ、ありがとう!でもいいのかい?お金を使っちゃって。」
俺は、少し先行きが不安だった。生活のこともだ。
「それの漫画のことなら、サービスしてあげよう。」
声がする方を振り向く。そこには、89式小銃を持つ森近さんがいる。
「…え?」
「君が晴れて幻想郷の一員となった記念として。」
そう言って、89式小銃を差し出してくる。
「幻想郷の一員に…。って、郵便局を作るまでの間ですからね?」
そう言って受けとる。これは、人間の里での警護のアルバイトに使えるだろう。
「分かっているよ。あと、弾倉ね。」
そう言って六本の
「そして、拳銃と、拳銃の弾。」
続いて森近さんは、ポケットから黒い拳銃と、拳銃の弾を込めた細い弾倉を四本差し出してくる。
ん?なんでこれを拳銃だと知っていたんだ?しかも、9㎜拳銃…?P220じゃないか。金属製のスライドには桜の刻印。そのとなりにはWと彫られている。
因みに、この刻印は識別のためのものでもある。
陸上自衛隊は桜にW
海上自衛隊は桜と錨にW
航空自衛隊は桜と翼にW
「これは、桜にWだから、陸上自衛隊仕様か。」
俺は、グリップの底に付けられた弾倉を外す装置を引き、弾倉が抜けているか確認する。
「安全面での知識があるんですね。」
「霖之助さんは道具の用途が解る能力がありますので。」
文は、少し瞳からハイライトを消して声を低くして説明してくれた。
文の様子が変だな。そんなことを思いつつ。俺は、拳銃も受け取り香霖堂に二回目に入ったときを思い出す。
「あのとき、本当は分かっていたんですか?」
「君は、察しがいいね。その通りだよ。」
瞳を閉じて笑う彼は、どこか意地悪さを感じさせた。が、どちらかと言うといたずらっ子のような笑みだ。
「何故、あのとき俺に訊いたんですか?」
「さぁ?なんとなくじゃないかな。」
彼は、これ以上は答えないよ?という雰囲気を出している。
…まぁいいか。今は、気にしないでおこう。そう思い、俺は自らが受け取った銃を眺める。
【じゅん は 弱射撃に 九ミリ拳銃 。 強射撃に 89式小銃 を 使えるよう に なった !▼】
テッテレー!
なんか、ラッパの音が聞こえた気がしたがまあいいだろう。とりあえず貰った弾倉をどこにしまおう。ベルトに差しておく。ベルトが広がってしまうから早めに弾倉をいれる袋。弾納が欲しいところだ。
「そうだ、順さん。私と、弾幕ごっこしませんか?」
文は、先程の表情から一変し少し明るい口調で誘ってくれる。
「やだなぁ…。俺は、戦うのは苦手なんだよね…。」
「大丈夫です。これは、戦いではなく遊びですから。」
文は、そういうと俺の背中を押して香霖堂の外に連れていく。
「どれ、僕も組んだ銃がちゃんと合っているか見てみたいし観戦がてら審判させてもらおうか。」
森近さんも、乗り気のようだ。止めてくれてもいいんだが…。
「順くん。弾幕ごっこが出来れば、妖怪と死ぬまで戦わなくて済むんだよ?そう考えれば覚えておいて損はないよ。だが、一部の妖怪は弾幕ごっこのルールに従わずに殺し合いを求めることがあるが。」
「なるほど?門番の勤務中にそんな妖怪と会わないことを祈っておこう。」
香霖堂の目の前にて、文は距離を取り、黒い文字で"場"と書かれた白い符を何処からか取りだして掲げる。
「ルールは、複数あります。まずは、単線ルール。」
すると、地面が輝きの人間一人分の太さの線が十数メートルに渡って引かれる。
「この線以外の場所は動いちゃダメです。というか、出ようと思っても出れません。」
ほう?為石にやってみようか。足を線の外に向けて出そうとしてみる。が、出そうとすることも出来ない。
「強固な結界で外界と遮断されているので、出れないんです。つまり、私たちは、前と後ろと、飛ぶことしかできません。」
「へー。なんかゲームみたい。」
「でしょう?これは、ゲームなんです。そして、このルールの面白さは…。」
文の言葉に続いて、森近さんが説明し始める。
「元祖と違ってアクション要素が激しい。所謂、右左に回避することの出来ない戦いだから、如何にコンボを稼いで相手を倒していくかっていうのが大事になる。」
「あと、他のルールでも共通ですが、
そう言って文は、自分が持つカードを風から出現させて見せてくれる。紅葉扇風とやらとか、人間禁制の道やら、霊撃やらのカードがある。なんだこれ。
「羽交い締めが出来ないじゃないの。」
「良く良く考えてみてください?順さんがうら若き乙女たちの胸ぐらを掴んで殴り付ける光景を。」
想像してみる。例えば、藤原さんだ。胸ぐらを掴んでみよう。
…顔面を燃やされるだろうな。こう、嫐りがいがあるぜー的な感じで。というか、この幻想郷に住んでる人たちやばすぎるだろう。周り見れば天狗!妖怪!超人!不死身の人間!なんなんだよ妖怪戦争かよ。
「おーい。帰ってきてー。」
不意に肩を叩かれて、我にかえるとそこに文がいる。
「そんな想像しているみたいな色気のある反応しないですから!」
どんな想像してるとお前は想像してたんだ?
「兎に角、このレーンからは出られないです。このことを忘れなく。」
こほんと咳払いし、話を続けていく。
「次に、元祖。」
白地に赤い文字で元祖と書かれている札を出す。
すると、結界が一キロ先くらいまで伸び、幅が50メートルほどになる。
すると、そこに鴉等の文の遣い魔がその進路を塞いでいく。
「これが、元祖。」
「シューティングゲームみたいだな。」
結界は外の景色を透明なガラスを通して見える感じ。敵は、カラフルな光の弾丸を撃っている。
「そうです。これが、元祖。」
なんだろう。まるで…。
ザザ
砂嵐が視界を過ると、そこには戦場が見えた。戦車の主砲の咆哮、迫撃砲の洗礼、歩兵の横隊。
違う。…違う!!俺は、郵便局員だ!!もう、戦場に
違う。俺は、戦場ではない。この光景は…。違う…違…。
ザザザッ
何故だろう。なぜ、こんなに記憶が混線しているのだろう。おかしい。時おり現れる天狗の記憶といい、戦場に出ていた頃の記憶といい…。俺は…。
「順さん。大丈夫ですか?顔色が優れませんよ。」
「…あ、いや。寝不足で。」
文は、心配してこちらに近づいてきて、俺の肩に手を乗せる。
「辛いときは、楽しいことを思い浮かべてください。…郵便局で働き始めたこと、憧れた課長に会ったこと。」
そう言って後ろに彼女は周りそっと抱き締めてくる。彼女からは秋の匂いを感じた。
「弾幕ごっこは、戦争じゃないです。遊びです。心を形にする遊びです。辛かったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと、悔しかったこと、怒りたかったこと。」
嬉しかったこと…か、相棒に出会えたこと、郵便局に勤めれたこと、課長に誉められたこと。
悲しかったこと…相棒の死。仲間の死、課長に怒られたこと、ゆうパックを無くしたこと、ここから帰れないこと。
怒りたかったこと…事故で車が大破して怖い思いしたのに補填もなんもしないあの隙間妖怪のこと。以上!
悔しかったこと…無力な自分。相棒と死ねれば良かったのに死ねなかった自分。そして…。
誰かを犠牲にして生き残る自分。
「その全てを籠めて撃つことが、根本です。勿論、美しく…です。順さん、私に思いをぶつけてください。」
文は、そう言って黒字に白い文字で場と描かれた符を掲げる。すると、香霖堂の周囲半径100メートルに円形で地面に結界の壁が産み出される。。
「…気を遣って戦わせないって選択肢はないんだね。」
「ええっ♪あなたは、向かい合う必要がある二つの
やれやれ、君は…一体何を知っているんだ?
「…わかったよ。怪我しても知らないかんな。」
「ええ。」
文は俺から離れて、ひらりとバック宙返りし距離を取る。
「さて、そろそろ存在が忘れられそうだから僕が、射命丸に代わってルールを説明しよう。このフィールドは複数あるルールのうちの一つ天地戦。言わばこの店の周りが戦場!本来二回ダウンを奪った方の勝ちだけど、今回は特別ルールとして一回ダウンさせたほうが勝者だ。飛ぶこともあり走るのもあり。格闘戦もあり。ただし、掴みはスペルカード」
…。なるほどな。分かってきたよ。
「幻想郷の文屋。射命丸文。」
名乗るのが礼儀…なのか。なるほど。
「では、神楽郵便局一周集配営業部集荷センター所属ランクA有。順。」
89式小銃の銃口を下に向けて安全装置を確認し、弾倉を入れる。
避けられない戦闘。否、弾幕戦か…。
久々の戦闘で俺は、冷や汗をかいていた。
上服着てねえじゃん俺…←半裸マン
お待たせしましたぁ!!!すいやせーん!書いてたのですが、なかなか内容が纏まらなくてですね。いやはや。
お気に入りや、いつも読んでくださるかたありがとうございます。
次回は、戦闘パートです!