「手加減しますから、本気でかかってきなさい!」
「出来ればeasyモードで!」
我ながらなんというヘタレっぷり。
「かしこまりました。」
「easyか。無難だな」
森近さんは、ごほん!と咳払いする。
「始め!!!」
♪風の循環 ~ Wind Tour
森近さんの開始の合図を皮切りに俺は、89式小銃の槓桿を引く。すると、ガチャンと弾丸が薬室に装填される金属音が鳴る。
「…安全装置よし。槓桿よし!」
「いきますよ!」
その瞬間、正面から目に見えるほど濃密な風の集合体。所謂衝撃波が地面を這うように飛んでくる。
「ん!?ちょっはやいっ。おうふっ。」
回避しきれずに、俺は直撃を貰う。身体を捻られるような苦痛を感じながら吹っ飛んでいく。が、その際。朝露に濡れる土を掴む。
俺は、身体を捻りながら吹っ飛ばされていく。
「とととっうおお!」
無様に地面に落ち数メートル転がり、89式小銃が少し離れた後方に吹っ飛んでいた。頭を振って、意識を覚醒させ、手に取った土を両耳に押し込む。気休め程度の効果だろうけど銃声から鼓膜を守る耳栓になるだろう。
そんなことしていると目前に文。
「貰います!」
葉団扇を振りかぶる。
「くそ。 」
俺は、即座にベルトから拳銃を引き抜き転がる。
ダァーン!
葉団扇は、俺が体があった場所を地面を叩くすると、地面を通じてわかるほどの衝撃が走った。今のヤバかった。そんな思考を巡らせながら俺は、ベルトからハンドガン用の弾倉を取り出し素早く、拳銃に差し込む。
「逃しません!」
文は、追撃に葉団扇を振るい、カッター状の二本の鎌鼬を左右から挟むようにカーブさせながら放ってくる。
「あぶねっ!」
飛び込み前転を行い、挟み込んでくる鎌鼬を回避しようとする。
「懸命な回避です。ですが、天狗にとって脚は命。ムザムザ犠牲にするのはあまりにも無策。」
左膝を鎌鼬は抉り、血が噴き出す。痛みで顔を歪める。地面に落ち、受け身を取りながら転がり、右膝を地面につき、スライドを引き、両手で拳銃のグリップを祈るように組んで持ち、拳銃の後ろの凹の形状をし、凹の凹みに白い縦線を塗られた照門と呼ばれる部分を銃口の先端に凸の形状をし、凸の出っ張りに白い点が塗られた照星に合わせる。凹凸の白を文に合わせ、狙いトリガーを引くーー!
タァーン!
薬室に装填された弾丸が下ろされたハンマーに叩かれ、火薬が爆発する。バレルに螺旋状に彫られたライフリングにより螺旋回転させられ火花を散らしながら弾丸が銃口から発射され、スライドが後退し金色の空薬筴を排出する。
フュオーーッ!
弾丸が螺旋回転しながら、文に襲いかかる。
「外の世界は速くて良い弾を作りますね。ですが…」
弾丸から身体を守るように葉団扇を横にし、風の障壁を張る。
キィン
金属的な音ともに弾丸が風の障壁によって削られて塵になる。
「……脆いです。」
文は微笑む。その微笑みはいつもとは違う。口許は笑っている。が、赤いその瞳は笑ってはいない。
「まだまだぁ!」
俺は、文を狙って二回トリガーを引き二発の弾丸が発射する。
タァーンタァーン!
発射と同時に、89式小銃に向かって走る。
「牽制射なんて!」
文は、見切ったとばかりに文は地面を蹴って横に飛んで、一発めの弾丸を素早い動きでかわす。
続いて、襲い掛かる弾丸を残像を残しながら文は回避し、そのまま土煙を巻き上げながら俺の方に走ってくる。
「くそ!」
速い。あれで、手をぬいているんだろうな。あの余裕の表情は。
俺は、振り返り立ち姿勢のまま拳銃を構えて一発射撃する。
タァーン!!
発射される弾丸と排出される空薬筴。
「無駄なことをしますね!」
文は、弾丸を意図も容易く回避する。が、俺は排出された、空薬筴を手で掴む。
ジュゥ
高熱に熱せられた空薬筴は、熱くて痛い。が、反撃の芽は掴み獲った。
文は俺に対して横に薙ぐように葉団扇で殴り付けてくる。
鈍い痛みが走り、俺は吹っ飛ばされる。
「がはっ、かはっ…げほっ…、チャンスは一度きり!」
俺は、咳き込みながら手に握った空薬筴を文に向かって投げる。
「こうだぞ!」
回転しながら宙を舞う空薬筴を狙って拳銃を構え、落下予測地点に向かって射撃する。
タァーン!!!
放たれた弾丸。それは、文を大きく逸れたかのように見えた。
「
その掛け声と共にーー。
キィイイン!
弾丸が空薬筴と衝突する。衝突したことにより弾丸の弾道が屈折し、対面方向ではない横方向から文に向かって襲い掛かる。
「っく!!!」
文は、高速で迫り来る弾丸を、姿勢を引くくし潜り込むように回避する。
結果的に彼女の脚を遅めることに成功し、俺は拳銃のデコッキングレバーと呼ばれる起こされたハンマーを寝かせる装置を引いてハンマーを寝かせ、拳銃を郵便局のユニフォームの後ろポケットに押し込み、89式小銃を拾い、そのままその場に伏せて脚を肩幅に開き、爪先を外側に向け、披筒と呼ばれるバレルを覆う筒を左手で持ち、左肘を地面につけ、右手はグリップを持ちトリガーから指を離し、右肘も地面につけ、銃床と呼ばれる後ろのストック部分に頬をつけ、銃尾面と呼ばれる銃床のけつについたゴム製の部分をしっかり肩に押し付け、構える。この動作を行うのに1秒もかけていない。
「安全装置解除!!」
黒いボディに白い文字で描かれたア・タ・レ・3の安全のアを指す切り替えレバーを連射の
「単発よし!!」
素早く文に狙いをつける。
「ゼロインは合ってないな…!風向き右側後方から、弾道の修正計算。」
小さな穴を覗き混み、銃口の上に突き出ている棒を穴を通して文に合わせる。
ダァーーーン!!!
5.56mm弾は薬室の撃鉄により発火させられ爆発する。その弾丸は、ライフリングを通り、螺旋回転させられ加速し銃口から飛び出す。その瞬間、銃口から弾丸が発射する際に生じる爆発によるマズルフラッシュが噴き出す。が、銃口に取り付けられた消炎制退器により、爆炎は左右の穴に分岐されて噴き出す。
発射されるのと同時に拳銃弾と同じように、空薬筴が排出され、宙を舞う。が、先程とは違うのは、空薬筴の大きさ。小銃は拳銃に比べれば大型の弾。それも貫通力に優れた細長い弾丸だ。
反動も大きい。発射の衝撃で、俺が伏せてしっかり地面に身体を固定していなかったら反動を制御できずに、のけ反っていただろう。初発の反動で俺の89式小銃は、五度程度上を向いた。
音速を超える弾丸は、文が視認する前に、音が聴こえる前に届くだろう。
「あややや。これはまずいですね。」
見えているかのように文はそう呟いた。葉団扇を振るって風の流れを乱し、減速させながら弾道をずらし、カッター状の鎌鼬で螺旋回転しながら飛翔し襲いかかる弾丸を見事に打ち落とす。
「着弾の修正。照門高さ2度、右に3度、照星高さは時間かかるから感覚で合わせる。普通なら、100メートルもない距離で狙いなんて逸れないんだが。流石は風神…弾道を局地的に乱してきやがる。」
俺は、弾丸の弾道が文が纏う風の効力が付近の空間の空気に干渉されて逸らされていることを確認し、照門の左側の円形状のネジを銃口側に一度回し、右側のネジを銃口側に三度回す。
その際をしっかり照門越しに文を見据える。照門に映る黒い点を照星の棒の先端に合わせ、文を狙う。
ダァーーーン!
鎌鼬を放ち、防御体制になっていた文だが再び放たれた弾丸を残像を残しながら横っ飛びで、回避する。
そして、そのまま飛び上がり俺に向かって上空からの所謂飛び蹴りを仕掛けてくる。風に揺らされる文の服とスカート。
「くっ!!」
やはり、天狗速い。俺は、即座に横に転がり文の飛び蹴りを回避し、そのまま銃にア・タ・レ・3の安全装置のアに切り替えレバーを合わせ、銃床を右手で上から鷲掴み、左手で披筒を上から鷲掴む。
外した文は、即座に追撃の体勢に移行し葉団扇で薙ぎ払い、俺に襲い掛かる。
ガキィーン
89式小銃のてっぺんの部分で文の打撃を凌ぐ。が、やや吹っ飛ばされ後退りする。
「やあああ!!!」
俺は、雄叫びを挙げて右足で踏み込み、身体を左に捻りながら銃床の後方部分で文に殴りかかる。
「遠距離タイプかと思ったのですが、やります…ねっ!!」
「弾撃てるだけじゃ、自衛隊にはなれないのよ。無論武道だけでもダメ。」
文は、葉団扇で俺の攻撃を受け流す。今度は、俺は身体を前に突き出しながら、銃尾で文を打撃しようとする。
全体重を乗せた一撃を防ぐ文。少し吹っ飛ばされ、距離が開く。
「三点射ッ」
俺は、衝いた勢いを活かし左手の鷲掴んでいた披筒を持ち換え、銃床を鷲掴んでいた右手をグリップに持ち換える。ア・タ・レ・3の3点射の
ダダダァーン!
小気味よく発射された3発連射の弾丸。反動で銃身は5度程度上を向き、弾丸はやや上右、上左、上真っ直ぐと、上に向かって少し弾が散る。
「あややや!!」
キィンキキィン!
文は、風の障壁を発生させ、少し吹っ飛ばされながら弾丸を防ぐ。
「これなら、どうでしょう?」
文は、符を掲げる。紅葉色の美しい色の符。
文の瞳が光り姿勢を低くする。その光景には、何かデジャブのようなものを感じる。過去に見たことがある。そんな構えだ。
文の体に風が集まる。それは、二重三重にも文の身体を包み、目にみえるほどの風だった。
…いや、違う。風なんて生易しいものではない。あれは、
「猿田彦の…。」
俺は、口走った。何を、なぜ俺はこんな言葉を。そんなとき、隣に
『血が争えないですね。…鞍馬様。あれの本質は、台風。私の名を騙る風。回避してもあれは容易に空間を切り裂いて来ます。周りの低気圧を喰らい、膨らむ台風のように。故に、回避などは不可。』
「お前は、一体何者だ。」
『私の正体など、既に知っているではありませんか、我が主。っと、こんなことをしている暇はありません。あれを凌ぐのです。逃げずに…。立ち向かうのです。嵐に立ち向かう船の様に。乗り越えさえすればさすれば…。』
「わかった。お前の言う通りにしてやる。凌ぐ術を教えてくれ。」
俺は、吹き荒れる風に飛ばされそうになる帽子を銃を持つ手とは反対の手で押さえる。
『簡単に教えたらつまらないです』
「なんてこったい。」
「覚悟は出来たようですね。」
文はふふっ、と楽しそうに笑う。
「逃げてもこの攻撃は避けられない。何かあるはず。」
そう言って俺は、89式小銃を構える。そのとき、俺は脳内にある光景が過る。
それは一人の牝の天狗が、誰かを守ろうとして、幾多の人間たちの軍勢に立ち向かっていく後ろ姿。
「突風…【猿田彦の…先導】!!」
ズブァーーン!
そんな空間が裂けるかのような音がした。文が地面を蹴った音だ。翼を広げ、文の周りには竜巻を横倒しにしたような風の渦がシェルターのように渦巻いている。触れたモノがシュレッターにかけられた紙のように粉砕されているのがわかる。
本当は、高速なのだろう。だけど、ゆっくりに見える。所謂、人間て極度の緊張感を与えられると時間がゆっくりになる。例えるなら、車に轢かれそうになるあの寸前の状況だ。
「やってやる。」
退いてはダメだ。なにかあるはずだ。あれに対抗できる
ふと、隣を見る。
「そうか!お前か。」
『御名答。霊力を回してください。鞍馬様。』
俺は右手を突きだす。すると、手の内に黒い符が現れる。そこには、二文字で
その符が光輝く。
俺は、彼女を自分の力を送る。すると、薄かった彼女が徐々にはっきりとした輪郭になり、その姿を現世に現すと同時に符は弾け飛び。俺を中心に半径50メートルに円形の古代天狗文字が描かれた緑色の光の環が現れる。いわゆる魔方陣というやつだ。
【呼符「
そう名前が浮かんだ。
「…召喚系のスペルカード…。面白くなってきたな。伝説に関わった人物を呼び寄せたか。」
森近さんは、そう呟く。
彼女は、死んだ瞳のまま腰に差した刀を抜く。死んだ瞳であっても彼女は、真っ直ぐに文を捉え、猿田彦の先導を正面から受ける。
「なっ!あなたは写真の?」
文と彼女がぶつかり合い、風の衝撃波が起こり、ザァーンと辺りの草が刈られる。
「今の貴方には鞍馬様を御守りする資格はございません。」
「言いますね。」
文は受け止める彼女の刃を蹴り、ひらりとバック宙返りし、距離を取る。
「まさか、順さんが使い魔を使用するとは思いませんでした。(…私を使ってほしかった…。ボソッ」
文は、彼女を面白そうに見つめる。赤い瞳で彼女を。
彼女は、品定めするように見つめる。青い瞳で文を。
「鞍馬天狗様の誓いに従い、死を越えて
「陽動を頼む。」
そう言って、俺は89式小銃を構える。
「勅命。我が刀と誇りに賭けて必ずや勝利を!」
俺は、一人では絶対勝てないだろう。だが、何かの力が働いて、彼女が
猿田彦は見た感じ、鴉天狗。文と同格の
「さぁ、第2ラウンドと行きましょうか。妖怪の山の鴉天狗。うら若き天狗。」
にやりと彼女は笑う。
「外の世界の天狗とはしばらく戦っていなかったので楽しみです。ですが、順さんは私の
♪ レトロスペクティブ京都
「はぁ!!!」
最初に動いたのは、猿田彦。
望月に似た金色の柄を持ち、黒い葉団扇の紋様の鍔に、紅い刀身の刀を構えて飛ぶ。
「やぁ!!」
ガキィーン!
文は、その刀を葉団扇で受け止めて風を発生させ、猿田彦を吹っ飛ばす。
「いきます!紅葉…」
文は、猿田彦との距離を取ったのち、葉団扇を振るおうとする。
ダァーン!
このタイミングで、俺は十分な距離を取り、伏せて89式小銃で狙いをつけ、射撃を行う。
「っと!なるほど、この天狗のサポート弾幕ということですか…!気が抜けない。」
キィン!
弾は文に当たることなく、展開された風の障壁に磨り潰される。
「私がいることも御忘れなく。」
そう言って、猿田彦は文に対して刀を振るい、刀から鎌鼬を発射する。
「順さんと記事のことしか考えていないので忘れてましたよっと!」
文は、鎌鼬を回避しふふんと楽しそうに笑う。そして、鴉の絵が描かれた符を取りだし発動する。
【鴉符「暗夜のデイメア」】
ガシャーーン!
隔離されていたはずのこの戦場に無数の鴉が結界を決壊させて集まってくる。
「ほう。なるほど、数の陽動ですか…。くすっ。ノってきました。しかし、鞍馬様の魔力も少しずつ底が見えてきていますね。早めに決めないと…。」
猿田彦は愉しそうに笑う。
突撃してくる鴉たちを回避ながら刃を振るい、回避と同時に真っ二つに切り裂く。
切り裂かれた鴉は墜落し、地面に落ちて紅葉となる。
「くそ、眩暈が…。」
ダァーン!ダァーン!
俺は、9mm拳銃を引き抜き、襲い掛かってくる鴉を狙って攻撃する。狙っている俺の視界が揺らぐ。気だるさと、眩暈でまともに狙えない。
「くそ。拳銃、弾倉1つ。」
悪態をついていると、円形の陣の外側に、文が移動しているのが見えた。
「現世再臨の陣の外に…。」
猿田彦は、少し悪態をつきながら円形の陣の外にいる文に対して刀を一閃し、鎌鼬を発射する。が、陣から鎌鼬が出た瞬間に消失する。
「やっぱりですか。どうも怪しいと思ったんです。ここから外は順さんの射撃しか脅威がない。つまり…。ふふっ。」
「…これはまずいですね。」
悔しげな表情を浮かべる猿田彦。
「決めさせていただきます!!同じ天狗として、美しくより力強く。」
そう言うと、文は赤い閃光が符のなかを駆け抜けまわっている符を出す。
「鞍馬様っ!」
こちらに向かって、猿田彦が走る。対する文の身体は、赤い光に包まれ、翼には濃密な風の刃を纏う。姿勢を低くし、瞳を赤く輝かす。
「幻想風靡!!!」
ビュォーーーッ!!!!
風が走り抜けた気がした。その瞬間。赤い閃光の線が無数に見える。
「鞍馬様だけでも!」
シュババババババババババババッ!!!!!
閃光と見間違うほどの速さで移動する文は、風を纏った翼と、自身の妖力を纏って身体を強化した肉体で赤い線を作りながら俺に向かって突進してくる。が、それを寸でのところで猿田彦が刀で受け流し、時には自身の身を使い俺を護ろうとする。
ズガガガガガガガガガガ!!!!
ドサッ
何が起きたかわからなかった。瞬きをした瞬間、傷だらけの猿田彦が刀を地面に刺してその地面に伏せていた。
「ご、御無事ですか…?く、鞍馬様…。」
「猿田彦!」
俺は、地面に伏した猿田彦のことを仰向けにし、抱き上げる。
「バカ野郎…。無茶しやがって…。」
「あなたは、あのときもこうやって私を介抱してくださいましたね。…娘を守れなかったときも…。」
ふふ。と力無く笑い彼女は俺の頬に手を添え微笑む。
「…ゆっくり、休んでくれ。」
「…はいっ…。おやすみなさい。」
そう頷く彼女は足元から緑色の光の粉となり消滅する。それと同時に魔方陣も消失した。
「降参ですか?」
文は、こちらを見つめて微笑む。降伏しなさいと。
「負けると分かっていても…戦って負ける…!」
余裕がある表情から一変し、焦る文。恐らく、降参すると思っていたのだろう。
「もう無理ですよそんな状態では…!!」
文は止めようとする。わかっているわかっているとも。でも、部下がやられて一矢報いず倒れるのは、天狗としても、人間としても終わっているだろう?負けると分かっていても…。
「さぁ、行くぜ。」
俺は、89式小銃を持って立ち上がる。
覚束無い足取りで、文に向かって走る。いや、千鳥足で半ば無理矢理歩いている感じだろう。
「うおおおおお…!」
銃尾で殴り付けようとした次の瞬間、殴り付けるはずだった銃を落とされ、文に正面から抱き締められていた。
「…引き分けです。私も霊力枯渇で…。」
温かい感覚に包まれて俺は、微睡みに沈む。
「ひ、き…わけだと……そんな、はず…。」
「本当に…あなたは。…れてしまい…す……。」
ー【決着】ー
*
「…。」
目が覚める。どうやら布団に寝かされてしまったようだ。隣には、正座した文が優しく微笑んでいる。
「おはようございます。順さん♪」
「…あれ、負けちゃったんだ。俺。」
気だるさと直後の記憶を思い出す。
「いいえ。引き分けです。」
「そんなはずは…。」
瞳を閉じ首を横にゆっくり振る文。
「パワーダウンとスペルカードが使えない、魔方陣外は移動不可、及び魔方陣外への射撃貫通不可と言う制約で、
「そうか、彼女パワーダウンしていたんだ。」
俺が、未熟だからかな。同じクラスだと思っていた。
「でも。初めてのスペルカード戦としては十分すぎる戦果です。体術も、射撃も、順さんは筋がいいですよ。あとは鍛練です。」
文は、俺の心を汲み取ったのかそう言って俺の頭を優しく撫でてくれる。
「んっ。ありがと。」
なんだろう。文に撫でられるのは心のそこから気持ちがいいと感じる。目を細めてその感覚を楽しむ。
「あやっ!!!」
文は、固まる。そして、なんだかわからない葛藤を始めた。
「…な、なんでしょう、こう…きゅん…と……」
??どうしたのだろうか。
「お、起きたんだね。」
森近さんが、ひょこっと現れる。
「あ、すいません。お部屋御借りしちゃって。」
「大丈夫だよ。寧ろあのまま店の前で寝られた方が迷惑だから。」
ふふっと彼は楽しげに笑った。
「あ、彼起きたんですか?」
森近さんの後ろから声が聴こえる。
「ああ、妖夢さん。ちょっ、押さないで、倒れるっ。」
森近さんが、前のめりに倒れて、その後ろからは、人魂を連れた白髪おかっぱ頭の緑色のスカートを穿いた少女がいる。
「あ、すいません。森近さん。」
少女は、少し慌てたように森近さんを起こして部屋に上がり込んでくる。
「妖夢さん。彼は疲れています。」
文は、少し不機嫌そうに言う。
「すすいません。つい、先ほどの戦いを拝見させてもらって興奮してしまいまして。」
「えっと、どちら様?」
俺の言葉に「私としたことが」そんな表情をするおかっぱ頭の妖夢と呼ばれる少女。
「申し遅れました。私は、冥界で庭師をしている魂魄妖夢と申します。あなたの噂は予々聞いています。順さん。」
なんだか、変な気持ちだな。相手のことは知らないけど相手は俺を知っていると言うことが。
「あの、妖夢さん。彼は疲れています…。ご用件は後程でお願いします。」
「わかりました。また、あとでお伺いします。それでは、またいずれ。」
少しバツ悪そうに魂魄さんは、部屋からでていき扉のところで一礼する。頭をあげてクスリと笑い楽しそうな表情を浮かべて出ていく。
「なんだったんだ。」
「少し、鴉たちに調べさせます?」
文はそう言うと鴉を呼ぼうと葉団扇を取り出す。
「いや、大丈夫だ。今は、別のことを調べてほしい。」
その言葉を察した文。葉団扇で、口許を隠し少し真剣な表情になる。
「…なるほど。順さんの思惑が解りました。が、妖怪の山に派遣した偵察の鴉は帰ってません。もしかしたら…。」
「なるほど。わかった。…偵察と情報の収集を念を入れて。……はっ!俺は、一体何を。」
クスリと笑う文。
「
「まさか。そんなのは無いさ。」
そんなこんなで、幻想郷での新たな一日が始まった。
お気に入りの登録と、評価ありがとうございます。順くんの賑やかなキャラを崩さないように煩くなりすぎないように書いてみました。
上手く書けているといいな。
89式小銃の操作方法を何故知っているか…って聞かれたら秘密ですと答えます。
ふふっ。人には書けないことがあるんです。
順くんカリスマスキル説。