「…おかえりなさい。」
「遅かったじゃない。…で、どうなの?」
妹紅と文はレミリアの部屋の扉から出てきた順を迎える。妹紅は、慌ててなにかを握りつぶし拳のなかで何かを焼いている。仄かに臭う香り。タバコのようだ。
一方、文の表情が少し固くなにか言いたげなようだ。だが、彼女たちにまずは、報告しなければならないと順は思い、口を開いた。
「許可を得た。今回、この件について、紅魔館から協力を得ることが出来た。だがあくまで、全館内を探索可の協力だ。恐らくだけど“戦力的“な支援は行われないだろう。」
しかし、ここで文が順が強調した戦力的という言葉に対し少し、低い声でこう言った。
「ーー戦力的。それもそうでしょう。先ほど、戦力になり得そうだった門番が襲われました。と鴉たちから連絡がにました。鴉達は戦う力が皆無なので、待機命令を出してます。」
「何?!それをもっと早く知りたかった。鴉たちに監視をそのままさせろ。止めなくては!」
順は、文の一言を聞いた瞬間走り出す。が、順の肩を掴む文。
「何故止める。」
彼女の力は強く、順がいくら全力で振り払おうとしてもがっちり掴まれて動けない。
「…生きているか死んでいるかも分からない彼女を救うことは、危険ですからお止めください。落下とかなんだとかの負傷では済まされないです。あなたは、
文は冷たく言い放つ。だが、その裏にある感情、それは忠義でありまた順を気遣う心であり同時に、何か大きな別な意味も含ませているようだった。
「死んでないかもしれないだろ?!生きているかもしれない彼女を見捨てて、今の問題を解決しろと?」
順は、眉を潜め尻目に文を見る。見殺して獲た異変解決など何がいいのだ。救うって約束した。ならば、この紅魔館の現存するメンバーは、護衛対象であり、救うべき人達だ。
「そうです。彼女を助けにいくことは、反対です。死んでいたら何もできません。それに、妖精メイドたちがその事を知った後、一目散に外へ向かいました。でも、倒されてしまうでしょう。…あなたも同様に。私は、あなたが戦うことに反対します。」
「確かに、な。だがな、文。喩え、死体になってるかもしれなくても見捨てることは、お前に言われても、総理大臣に言われても、神様に言われても、俺は決してしない。」
夢で見た、相棒の姿が脳裏によぎる。一緒に戦争を生き延びて除隊したかった。…だが、救えなかった。だから、俺は……。
ズキン
脳に痛みが走り、脳裏に過るのは青い地球。燃えていく足場。ノイズが入ったように聴こえる声を掻き消していくほどの焼けるような痛み。そんな情景を鈍い頭痛が白く塗り潰していく。戻るなと引き込むように。
「目の前で、誰かが死ぬのが嫌なんだ。」
頭痛によって歪む顔。だが、まるでそれは順の中にいる何かが彼の心の殻を破ろうとしているようにも見えた。
文は、困ったように笑う。
「…そう、でしたね。あなたは、いつもそうだった。…止めてもあなたは茨の道を歩いていく。」
「…文?」
「あなたは、いつもそう。外の世界にいたときも、夢のなかでもそう。ここでもそう…。自分を二の次にして誰かの為と誰かの為と…。もう、やめて…あなたが傷付くのをもう、私は見たくなんかない…。」
文の脳裏には、親友を抱き抱え慟哭する人として生きた彼の姿。大切な部下だった天狗を殺されて慟哭するとある天狗の後姿。
「…だがな、文。私は、それでも救いたいんだ。…それこそが私が今、
順は、困ったように笑い返す。文は、やめてと首を横に振る。
「…バカだなー。お前たち。」
妹紅は、めんどくさそうに頭を掻きながら、二人の肩を叩く。
「
「妹紅。」
「藤原さん。」
順と文は、きょとんとしながら妹紅を見る。
「それぞれ色々言いたいこともあるだろうけど、射命丸も、順も。二人ともばらばら。これじゃ、二人とも苦しいでしょ。…射命丸は、順が傷付くのを見たくない。順は、人をなんとしても助けたい。なら、みんなで協力しようよ。私たちは、仲間なんだから。」
妹紅は、瞳を閉じ優しく語りかけ続ける。
「みんなで力を合わせればきっと越えられない壁なんてない。順が傷つきそうになったら文と私が護れば良い。文と私が傷つきそうになったら順が護れば良い。一人は、皆のために皆は一人のために…。私たちは仲間なのだから抱え込んじゃダメ。あと、私を省くな。…二人とも分かった?」
妹紅は、そう言うと二人ににっこりと微笑む。
「はい…。」
文は、少し恥ずかしそうに妹紅と順を見る。妹紅は、言葉を続ける。
「あと!順は、文と私に心配かけないように、ちゃんと自分の背丈を弁えること、良い?」
そう言って人差し指で順のおでこをつつく。
「うん、ごめん。」
「それでいいんだ。順は、私の大切な人。文も、順が大切な人。…だから、みんなでね?」
文と順は、不思議と心が落ち着いていた。妹紅は、すれ違っていた二人の心を橋渡ししたのだ。
「…うん。」
「はい。」
「じゃ、ごちゃごちゃやるのは家に帰ってからにして、目の前のやるべきことをしっかりやろう。」
そう言って、二人の背中を妹紅は力一杯叩く。順は若干体勢を崩しながらも、文と妹紅を見る。
「二人に、お願いしたい。どうか、目の前の人たちを救うために力を貸してほしい。」
「なら、一つだけ約束してください。」
文は、順の瞳を見つめる。夕焼けのような紅い瞳は不安に揺れる。
「ん?」
「命を大切にしてください。」
彼女の心が一言に現れていた。その一言は、順の心にしっかりと届いた。
「…わかった。誓う。この命は自分だけのものではないと。」
順は、そう言うと文に手を差し出す。
「はいっ。…私は、あなたを護る。私はあなたの翼であり劔です。如何なる犠牲を払っても…あなたを必ず御守りします。だから、どうか。」
手を握る文。しかし、順には、それが何かと重なる。誰かと重なる。過去に誰かにそう言われた気がした。
「それでいいの。…さていこう。」
妹紅はにやりと笑い、背中に炎の翼を出現させる。
「遅れをとりましたね。…まさかいいところを持っていかれるとは。」
文は少し笑い、空間に風を集めて葉団扇を作り出す。
「私だって、彼が大切だからね。」
「譲りませんよ?」
そんな二人の間には何か不思議な空気が流れている。悪いものではなく、どちらかというと良い方である。………と思う。
「よっしゃいくぞー!!!」
しかし、そんなことを気にしない順はヤル気満々で銃を両手で持ち銃口を下げて走り出す。
「あっ、ちょっ。…もう、待ちなさい!」
「あややや。…急いだ方がいいでしょう。門番も妖精メイドも殺されてしまうかもしれませんし。」
三人の行く道。それは、霧がかかって見えない。でも、きっと、三人でなら乗り越えられる。順には窓に見える紅い夕焼けは、希望の光にも見えた。
ーー一方その頃。
真っ赤な夕焼け空。そこに佇むナイフの刃のごとき銀色の髪の毛を持ち、もみ上げに三つ網のお下げを下げたショートヘア。
服装はショートスカートの白を基調としたメイド服でホワイトソックスを穿き、黒い革靴を履いている少女。
周りには死骸。嘴や、臓物や、黒い羽根が散乱している。
「脆いわね。」
足元に臥している紅を踏みつける咲夜。踏むと体を痙攣させる紅。彼女は、最早虫の息。
まるでゴミを見るように見下ろす。
「門番さん!」
不意に叫び声が響く。
「あら。」
二匹の妖精メイドが、紅魔館の玄関から飛び出してくる。
「メイド長…。一体何故ですか!?何故、門番さんを…襲ったのですか?」
「門番が門番の役目を果たしていないからお
ーーーーしゅぱぱ。
妖精メイドの二人の目の前に、ナイフが飛んでいき、眼前で止まる。
「なんで…?どうしてなんですか?咲夜様!何故…何故私たちは、門番さんは、死ななければならないのですか?」
「幻想郷は、邪魔なの。」
にこりと笑う咲夜。その笑顔は歪みを感じさせぬほど真っ黒な笑みだった。
「やだ!やだぁあ!!!」
妖精メイド達の目の前に止まっていたナイフがゆっくりと動き出す。
そのときだった。
「はぁっ!!」
眼球を射抜き、脳髄をも蹂躙しようとするナイフが突然あらぬ方向へと飛んでいく。
「文、よくやった。文のお陰で3名の生存者を確認。確保に入るぞ。」
妖精メイド達の後ろから聴こえる声、先程の郵便局員、順だ。
「ん?お前、何処かで会ったか?」
順は、目を細め咲夜を見る。記憶にはないが、遠い過去に、何処かで出逢った気がした。しかし、その思考は彼女の周りの風景を見て掻き消される。
「…鴉達が派手にやられてるね。射命丸の鴉?」
妹紅は咲夜の周りに散らばる鴉達の死骸を見つめる。
「……。」
文は無言で頷き、悲しげな表情を浮かべながら唇を結ぶ。
「文。」
順は、文の背中をそっと撫でて慰める。
「私は、鴉には外の監視以外は命令していなかった…。なんで?どうして、私の鴉達が死んでいるの?」
「文、あとで詳しく聞かせてくれ。今は、目の前のあいつを倒そう。」
順は、文の肩を数回叩き、咲夜を睨み付ける。
「ようやく出てきたのね。待ち焦がれたわ。」
咲夜は不気味な笑みを浮かべる。
「どうだっていい。紅さんと、鴉達をやったのはお前か?」
「そうよ?勝手に向かってきたから殺した。あ
咲夜は、数本のナイフをスカートの中から抜いて、指と指の間に挟み込みにやりと笑いつつ刃を舐める。
「貴様を生かせと依頼主は希望だったが…お前を殺してやる。命を踏みにじったお前を…殺してやる!」
89式小銃を構え叫ぶ順。
「命を踏みにじる。それは、あなたも言えるのではないかしら?あなたは、外の世界でたくさんの私たちの同胞を殺した。ねぇ、
順に挑発的な笑みを浮かべる咲夜。その瞳からは、恨みと憎しみが籠められているのを感じる。順もまた、何かに惹かれるように負の感情の炎を心に宿し始める。
何故だかは、わからない。だが、こいつは殺さなければならない。こいつを世界から削除しなければならないと。歪んだ笑みの奥にある。瞳の奥にある何者かの本性を感じ取っていた。
「いい瞳ね。流石は、私達と同族。入れ物が違っても中身は変わらないわね。御母様に造られた……」
「
咲夜の言葉を遮るように、順が、発砲する。
殺さねばならないと放った一発の銃弾は紅い一本の線となり、黄昏から漆黒の夜へと沈んでいく紅魔館の中庭を駆け抜ける。
ーーーカツーン
だが咲夜に当たることはなかった。彼女の体を銃弾が通り過ぎ、木に銃弾の弾頭が突き刺さる。
「なっ…。」
「うふふふっ。本当に忌々しい。…さあ、ゲームといきましょう。私は屋敷の中にいる。一週間以内に、私を見つけて御覧なさい。」
咲夜の体が、霧となり順達の横を駆け抜け、屋敷に入っていく。
「くそ!!!逃げるのか!?おい!!!」
順が叫びながら、通り抜けていった咲夜を追いかけようとする。
「馬鹿野郎!」
妹紅の拳が順の顔面にヒットし、吹っ飛ばされる。
「ぐふっふーっ…はっ…かはぁ…。」
順が喘ぎながら顔を押さえて悶える。
「まずは、怪我人の回収よ。…何があんたをそうさせてるかは知らない。けど、自分がやろうとしたことを投げ出して他のことをすることなんて許さない。」
順を無理矢理起こして叱る妹紅。成すべきことを忘れるな。お前が成そうと決めたことを忘れるなと。
「…。すまない。妹紅。目が覚めた。俺は、錯乱していたようだ。なすべきことを見失いそうになった。」
「確りしてよね。…全く。」
妹紅は順の背中を叩き、ため息をつく。
次に、文の肩を叩き手を差し出す。
「射命丸もしっかりして。
妹紅はたくさんの悲しむ人間を見てきた。それは、当事者としてではなく第三者として。古くからの争いも見てきた。平安時代から明治維新の頃までの間、死をたくさん見てきた。死に悲しむ人を見てきた。死の重みは死なない人間だからこそ理解している。
だから、当事者でなくても死を見つめてきた第三者としてだが死を見つめてきた自分なら、死の悲しみに暮れる誰かを励ますことはできる筈。
その想いが妹紅にはあった。
「…妹紅さん。」
文が妹紅を名で呼ぶ。それは、とても小さいものに見えるけど大きいもの。
「…泣きたいです。でも、あとでにします。事件を解決してから、一杯泣きます。だから、…私を応援してね。…みんな。」
文は、涙を腕で拭きながら差し出された手を取り、立ち上がり、鴉たちの死骸にそう告げる。
不意に紅魔館の敷地内に女性と男性の笑い声が響く。
屋敷の周りが、霧とは違う何かの結界によって囲まれる。
そして、死したはずの鴉達がのたうちまわりながら、数匹ずつ集まっていく。
「悪夢です!!悪夢が来ました!」
妖精メイドたちが叫ぶ。
「悪夢?…悪夢ってなんだ?というか、鴉達が…。」
「恐ろしい怪物達が屋敷を闊歩する時間なんです。メイド長がおかしくなってから日に日にクリーチャーの数が増えてきてるんです。」
「…なるほど。つまり、ヤバいのか…。」
ーーーーバキバキ
鴉達の体と体が変形し、合体し、たくさんの鴉の顔がついた球体となる。
「ああ、そんな!」
文が思わず鴉達に走りそうになる、が身体が動かない。強力な魔力によって押さえつけられているようだ。
「っ!動けない!」
文は何度も叫びながら暴れる。
「金縛りっ!」
妖精メイド達ももがこうとするが指先一つ動かない。
「紅さん!」
しかし、妖怪たちのなかで、金縛りの影響を受けていない人物がいた。
「じ、順ッ!いくな!」
順が、地面に伏している紅に向かって走っていく。
その真横で、めきょめきょと鴉達の肉塊の化け物が生まれていく。球体だったそれの鴉の顔全てから触手が吹き出し、それがぴちぴちと音を発てて地面を叩く。
「毎度おおおおお!!!」
順は、89式小銃を握り込みながら踏み込んで振りかぶり…。
「様ァですぅ!!」
「ガァー₩&:,!-」
渾身の力を込めて89式小銃で薙ぎ払うように、鴉達の集合体の化け物を殴り飛ばす。
鴉の声と金切り声が合わさったような鳴き声をあげて、それは、紅から離れていくように転がっていく。
紅の頭の方へと近づき両脇をしっかり掴み、紅の体と自分の体を密着させるようにして持ち上げ、紅の右手を自分の首にかけながら屈んで一度紅の体を自分の背中に乗せて担ぎ上げる。
その際、順は左手で右足の膝の後ろから抱えるようにし、紅の右手を左手で掴み、がっちり固定し走り出す。
しかし、転がっていった鴉達の集合体が、変形し両手を生やして這うように追いかけてくる。
「うぉ?!」
順は、絶対振り向いてはならないということだけわかった。肉をまな板に叩きつけるような足音が迫ってくる。
「くそ、まずい!」
背後から迫る鴉達の集合体の化け物。
「はっ……はっ……」
振り返ってはならない。走れ、走れと順は駆けていく。
「くそ!」
両手に炎を灯し、両手のひらから小さな炎の弾を発射する。
当てたは良いが、鴉達の集合体の化け物には効いていないのか怯むことなく順を追いかけている。
文もまた、自身の風を操る程度の能力で弾を作り出そうとするが、上手く作り出すことが出来ない。あの鴉達の集合体の化け物も力を封じられているようだ。
「くっせめて、追い風に!」
文は、風弾を作るのをやめ、順の脚に風の力を微力ながら付加し、移動速度を速める。
妹紅はちらりと空を見る。日は沈み、月が昇る。皮肉にも満月で美しい夜だ。
「憎たらしい。」
妹紅は、そう呟いた。
最早、打つ手無しかと思われたその時だった。
突如として、鴉達の集合体の化け物を狙うように地面に青い魔方陣が複数形成され、空に浮かぶ月が眩く光り、青白い月の光線が霧を切り裂き化け物に向かって降り注ぐ。
「あ、あれは、パチュリー様のサイレントセレナッ!」
順は、降り注ぐ光線を掻い潜りながらただ走る。
「郵便局建てるまで死ねるかァァ!」
絶叫しながら。
「‡ヱヱ¶ヱヱヶ♯!!!」
光線の雨に撃たれた鴉達の化け物は、四散五裂しながら一体一体の巨大な一つ目玉をもった化け鴉になり逃げ回る。
「!動ける!」
妹紅達は、鴉達の集合体の化け物が散った瞬間に金縛りが解ける。
「順!」
「順さん!!」
二人は、彼の名前を呼ぶ。光を逃れながら化け鴉達が順と、文たちに向かって突っ込んでくる。
「ごめんなさい。天狗道の開風ッ!」
「インペリシャブルシューティングッ!」
妹紅の身体が炎に包まれ首のない火の鳥となる。飛翔し順に取り憑き巨大な火の翼で順の後ろをしっかりガードする。文は竜巻を乱射して順達を援護し、自分達を護る。
「速く!」
妖精メイド達が、急げと腕を振る。漸く着いた順は文の足元に、紅の下敷きになるように倒れる。
「くっふぅ…。出来ればスタミナも妖怪化して欲しいものだ…。」
「人間とそう変わらない身体能力で妖怪担いで往復約200メートルを全速力で走れれば充分人間離れしてますよ。」
ふふふと、文は順の頭を撫でる。
「ほら、早く立て!安全なところまで行かなきゃならないんだから!」
妹紅は順の背中から離れ、人間の姿に戻り、ぐったりする紅を持ち上げる。
「それもそうですが、よいしょっと。」
文が、順の手を持ち自分の方に肩に手を回す。
「くっ、すまない。文。…はぁ…はぁ…。」
順は、まだ息を切らせている。半ば、引きずられるように文に連れていかれる。なんとも情けない。
「早く!化け鴉達が来ます!」
妖精メイドの二人が、交互に掌からレーザーを放って化け鴉達を焼き払いつつ、接近してきた化け鴉達を槍で薙ぎ払う。
「ヶ゛ヱヱヱΧΧ!!」
断末魔を上げながら、化け鴉達は、また館の中を飛び回る。
「私が先導するわ!!着いてきて」
「私は、援護ですね。」
妖精メイドの二人の内一人が先導し、もう一人は一番最後尾にて、迎撃をしている。
順は、ベルトから9mm拳銃を引き抜き構える。だが、この鴉達は文の仲間ではないのか?そう思うと撃とうとする手が震え始める。
…この光景を何処かで見たことがある。
『順…。俺を…撃て。』
「…隊長。」
そんな言葉を溢した。
「私も罪を被ります。」
文が優しく、順がもつ拳銃に手を添える。
「…文。」
「解っています。あなたが、思い出しそうなことぐらい。」
困ったように笑う彼女。その笑顔はかつての自分と重なった。
二人の手が絡み合い、トリガーを二人で引き、一発の発砲音が紅魔館に響く。
それは、過去の扉の鍵を抉じ開ける音にも聴こえた。
順たちは、鴉達を撃退しながら安全地帯であると思われる図書館へと導かれながら走る。
階段を下り地下通路を走り抜けると突き当たりに、大きな扉木の扉があるのが見える。
「あと少しで到着です!」
扉が、ごごごごとゆっくりと開きはじめる。そこには、耳がコウモリの翼で、背中から黒いコウモリの翼を生やし、紅い長い髪。白いワイシャツの上に黒のベストとネクタイ。黒いロングスカートを着て革靴を履いた魅力溢れる女性的な体型の少女が扉を押して開く。
「小悪魔さん!」
小悪魔と呼ばれた少女が、順達の後ろから迫る化け鴉達の集団に手を向ける。
「散りなさい…フレスベルク…!」
そう言っているのが聞き取れた。
「フレス…ベルク?」
そう呟きながら順は、小悪魔の隣をすり抜けていく。
小悪魔は、順たちが通り過ぎたのを確認すると、掌から赤い大きな球を放射状に何発も発射し、牽制しながら扉を閉める。
「っぅ!ぉ!!!」
文以外は、転がるように床に倒れ仰向けになり、荒くなった息を漏らしていた。
「残念。無事だったのね。」
そんな順たちに冷ややかな言葉が投げ掛けられた。
◇
「なんのおと?」
翼の芯に色とりどりの宝石のようなものが付いた翼を持つ少女が眠りから目を覚ます。
少女は、不思議そうに固く閉ざされた扉を見た。
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大変御待たせしましたー。毎度様です真戒です。
こんなことも書きたいな~とかそんなこと考えながら、んー。これじゃあ面白くないナ~を延々と繰り返して楽しくかいてました。
次話にて、いよいよ動かない図書館が登場します。
…本当は、手紙渡したらはい、終わりで済ませようとしたんだけど、なんか冒険物かきたくなっちゃった。
是非また読んでください。
では!