プロットなんてなかったんや
暖かい…。柔らかい布団に包まれて、和風っぽさが漂う木の天井が見える。その横には覗き込む存在がいる。
「大丈夫ですか?」
ぼやけていて、顔がしっかり見えない。だけど、輪郭や、髪型は見覚えがある。
「怖い夢、見てた…。」
目を閉じ、少し苦しげに言葉を溢した。
「どんなですか?」
「幻想郷って言う不思議な世界にいきなり来て…天狗とかに追いかけられた夢…。痛くて、苦しくて…。」
「怖かったですね。もう大丈夫ですから今は、ゆっくり休んでください。」
頭を優しく撫でられる。そこで、意識がはっきりと覚醒する。見たことのある顔が見える。そこには、紅い双眼を持ち、黒髪のミドルヘアー、心配そうに見つめている。
「射命丸…さん?」
名前を呼ばれた鴉天狗は、ぱあっと花が咲いたような笑顔になる。
「はい、おはようございます。」
「夢じゃなかったんかーーーい!!!!」
盛大に寝かされていた場所から転げ落ちる俺。
「つっつつ…。」
「だ、大丈夫ですか?」
慌てて射命丸さんが駆け寄ってくれて支えてもらいながらベッドへ戻り、横になる。
「なんとか大丈夫…。ありがとうございます。…って、あれ?ここ妖怪の山?!また戻ったの俺!?」
「あ、いえ、妖怪の山ではありませんよ?永遠亭です。順さんは、川に流されたあと、下流に待機していた蓬莱人とカッパに回収されて、現在蓬莱人の本拠地の永遠亭で、治療中なんです。」
「蓬莱人…?蓬莱人って…ワッツ?」
「蓬莱人とは…、分かりやすく言えば死なない人間です。煮ようが焼こうが切ろうが死ねない人間です。」
「死なない人間かー。なるほどー、分かりやすい。うん。でも、死なない時点で人間じゃねぇじゃねーーかーーーー!!!」
そんな反応を見て、射命丸さんは、クスクス笑う。
「そうですね。でも、だから、ほうらいひと、蓬莱人という種族として分けているんですよ♪」
「な、なるほどな…。まぁ、取り敢えず分かったことにして、何故射命丸さんは、蓬莱人の本拠地にいるんでしょーか?」
「あややや。まるで、居てはいけないみたいですね。…くすん」
ぐすりぐすりとすすり泣き始める射命丸さん。
「あ、いや、そういうわけでは…。」
あ、あぁ。泣かせちゃった。まずい!
「本当に?(くすんくすん」
「はい。(キリッ」
「じゃあ、許します。(けろっ」
「嘘泣きだったんかーーーーい!!!」
くそぉ…。なんかあっちのペースに乗せられてるなぁ。そんな俺の気持ちもいざ知らず良い表情している射命丸さんは、あ、そういえばと話を切り出す。
「何故、私がここにいるか…。っていうことなんですが、実はですねー。ほら、覚えてますか?」
「えーっと、色々ありすぎてかにがなんだか…。」
「もー。」
ぷくーっと頬っぺたを膨らませる射命丸さん。その反応は少しかわいくてなんだか、ほくほくした。
「私は、新聞記者なんです。」
「ほう。」
「文々。新聞へ載せるためのネタを追い求めて、日々探し回っているのです。」
「で?」
なんとなく嫌な予感がした。
「そこで、今回の異変を起こしたあなたを記事のネタにしたいんです!!!」
「…なんでぇ?」
どうしてそうなったんだ?射命丸さん。というか、目に星が見えるほどいい表情してますよ。
「よくよく考えてみてください。あんな急斜面で乗り物に挟まれたり、天狗たちの弾幕をもろに受けて、川に流されても死なない蓬莱人じゃない人間!!これは、ある種の格好のネタですよ!!!」
「人をネタとして見てたんかーーーい!!!!」
思わず、突っ込んでしまう。
「そりゃあ、確かにあの逃走の時、私も力を多少なりとも貸しましたが、その根性は優れたものであると思います!!!」
「…。あれ?あの風、射命丸さんだったんですか?」
「そうですよ?(きょとん」
「あのメモは?」
「私ですが?ゲームみたいで面白かったですか?(どやっ」
「…。」
なんと言ったらいいのだろうか。射命丸さんは、すごくまともな人かと思ったんですが、まともなんて文字はなかったんですね。ええ…。
「お好きにどうぞ。俺は、元の世界に帰る方法を探すので…。」
「帰りたいんですか?」
ずいっと顔を近づける射命丸さん。いきなりだったので思わず、動揺してしまう。しかし、射命丸さんは微笑んでいるけど、どこか不気味だ。
「幻想郷は、外の人たちに忘れられた人とかものとかが来る場所でもあるんですよ。だから、もし戻ってもきっと順さんの居場所なんてないんです。」
「…え…?」
ワスレラレタ?どういうことなんだ?居場所がない?
「俺を忘れる人間なんているもんか。これでも、キャラの濃さでは絶対忘れられないって言われているんだぞ!」
その言葉に、少し悲しげに哀れそうに見つめる射命丸さん。
「…ここに迷い込んだ者たち誰しもがそう思っていたでしょうね。…だけど、大抵の人は妖怪に殺されたり野垂死んでいます。生き延びて帰ったとしても…また…。…取り敢えず、今は休んでください。順さんには休息が必要なんです。まぁ、死ぬほどの思いをさせてしまった私がいう台詞ではないですが…。」
そう言って射命丸さんは近づけた顔を離し、ベッドの横に座り優しく俺の頭を撫でてくれた。ちらりと見ると先程の悲しさや哀れみを含んだ色は無い純粋な笑顔に戻っていた。
コンコンガチャ…
そのタイミングを見計らって青と赤の服を継ぎ合わせたような服を着て、銀髪。長い後ろ髪を編んでいて、茶色の瞳で、母性を感じさせる胸があり、射命丸さんよりも大人びている女性が入ってくる。
「あら、起きたのね。」
「聞き覚えがある声ですがもしかして…。」
御名答♪と一言弾ませウィンクしながら、その女性は自己紹介を始める。
「此処永遠亭で医者をしている八意永琳よ。えーりん先生とでも呼んでいいわよ。」
「八意先生、この度はますます御世話になってすいません。」
そんな軽いのりに対し、俺は世話になったこと、貰った恩の大きさから恐縮してしまう。
「別に、そんなに固くならなくていいのよ?彼女(射命丸)と同じように自然に接してくれたほうが、こちらも接しやすいから。」
そんな気にしないでいいのよーと言った反応をしながら、手をフリフリ振る。
「は、はぁ…。善処します。」
やっぱり固いなぁ、俺。バカ真面目も良いところだ。
「それにしても、一週間ぶりの起床ね。」
「一週間?!また、一週間?!寝てたの?!」
「そうよ?山の上から高い場所から自由落下して水に叩き付けられて激流に飲まれてその怪我で済んだのだから、ある種の奇跡よ。」
「確かに…まさか、俺、不死身説?!」
「それは、無いとは思うわ。でも、治りが早いのは事実かも。一週間前の重傷の傷がもう既に治ってきているから。」
「きっぱりと言われるとまたへこむなぁ。あれ?でも、妖怪の山の滞在期間と合わせると…。二週間風呂入ってねぇーーーー!!!」
「(注目するべきことはそこではない気がするけど…)そういうことになるかもしれないけど、一応布で拭いたりはしておいたわ。」
「あ、ありがとうございま…」
…ん?待てよ?ってことはだ、八意先生は…俺のを…。顔がみるみるうちに真っ赤になっていき、耳から蒸気が噴き出す。
ピィィイィッ!!!
「ぎゃぁぁぁぁ!!!お婿に行けないいいいぃいい!!!」
断末魔を挙げて、俺は布団を被り、ごろごろ転がる。そんな光景を見ている二人は、心のそこから『純粋だなぁ…』と思い、微笑ましく見ている。暫し転がる俺を観察し終えた八意先生は、部屋に掛けられた時計を見る。
「さて、そろそろ私は元の仕事に戻るとするわ。この薬、朝昼晩しっかり飲むように。わかったわね?」
そう言うと、八意先生は錠剤が入った小瓶をベッドの横の机に置く。何も書かれていないようだ。
「あれ?包帯とかの切ったり縫い付けたりの処置はしないのですか?」
射命丸さんは、少し首をかしげて問いかけた。
「ええ…。"その必要が無いほど治りが早いから"外科的な処置は終わりなの。あとはその薬を1錠水無しで何日か飲むだけで良くなるわ。でも、16時間以上は起きてちゃダメよ?身体に悪いから。」
「は、はい。わかりました。」
医者として心配してくれてるようなので素直に従うとしよう。
「よろしいっ♪早く治すのよ。」
八意先生は、そう言うと部屋から出ていこうとすると、射命丸さんも腰かけているベッドから立ち上がる。
「あややや…。私もお邪魔になるとあれなのでそろそろおいとまりします。明日また取材(お見舞い)に参りますのでちゃんと考えていてくださいねっ!」
そう言い残し、八意先生と一緒に射命丸さんも部屋から出ていく。
バタン
二人が居なくなった病室は少し、寂しいものがあった。
「薬を飲んで、休んでおくか。」
ふう…。とため息をつき、錠剤を口に入れ飲む。すると、急に眠たくなる。
不思議な感覚だ。まるで夢を見ているようなそんな感じだった。
だけど、眠れない。そんなときだった。
~♪~♪
歌声が聴こえる…。
何処からだろう?どこ…。
その時、ベッドから抜け出し無意識に歩き始めていた。
◆ ◆ ◆
「順さんが居ないです師匠!!!」
未だに郵便局っぽいのがないですが、なんというかそのうち書きますんで、取り敢えず頑張りますぅ