欲しいのは、力とそれを扱える知識と経験、簡単に手に入る物ではないのは充分に理解している。
俺の生きていく家庭で邪魔になる存在、幻影旅団抹殺には必要な物が腐るほど存在している。
まず優先事項なのは【念】の修得、これを絶対に覚えなければならない。
早ければ早いほうがいい、経験、知識をより多く蓄えられる。
なら、どうする、答えは念を使える者に師事して貰うのが手っ取り早い。
なら、誰に、答えは今この集落にいる、ハンターに師事して貰う。
俺には今運が向いている、ご都合主義に乗っかるか。
しかし運は離れる、次が上手く行く何て事はわからない。うまく事が運べばいいが、人間落ちる時はトコトン落ちる。
落ちたらそこでお終い、這い上がれるなんてそれこそ無理だ、まるで夢のような話し、それが現実だ。
悲しいかな、俺が選べる選択肢が複数あるなんて、そんな贅沢な物は存在しない。
だが乗っている時にそれに便乗するべきかもしれない。
当たって砕けろ、砕けるのは絶対に嫌だが、俺にとれる手段がない。
相手にメリットのない一方的なお願いなんて、もし逆の立場なら「うるせぇ死ね」で終わってしまう。
だから土下座でも何でもしてやる。
頭を地面にこすりつけるだけで目的に近付く事が出来るのだ、いくらでもやってやるぐらいの気持ちを持っている。
修練場でクラピカと朝の鍛錬を終えた後、俺はその事をクラピカに話した。
クラピカは誰かの元で鍛える事を、何の迷いもなく頷き賛成してくれた。
原作前のクラピカはどう考えていたかは知らないが、今のクラピカは自分の弱さを知っており。
自分達2人だけで鍛えても、いずれ限界が来る事も理解しているのだ。
それに冷静さを保っているクラピカはトコトン鋭い、俺がクラピカに弟子入りの事を言って来るのが、多分わかっていたんだと思う。
「いいのか本当に?」
「僕はアルベルに付いて行くよ、それに前に約束したよね」
「そうだな」
「違うよ、アルベル」
「え?」
クラピカは何かを決心をしたような顔で、俺を真っ直ぐに見つめてくる。
俺の本心を打ち明けてから、顔には出していかったが、心の中で葛藤していたのはわかっていた。
クラピカは優しい、あれだけ憎しみを抱いている相手を殺す、ではなく捕まえる、と無意識に言ってしまうほど優しい奴だ。長年一緒にいる俺が一番知っている
そんな葛藤があったのかさえわからない程、クラピカの顔には一切迷いがなかった。
「僕に言ったじゃないか、傍にいるって、どこにも行かないって」
「あれか……」
あの時勢いで言ったが、今思うと、とんでもないセリフだよな。
決して男に言っていいセリフじゃない。
臭いセリフ過ぎて鳥肌が立って来る。
「嘘つきだよね、アルベルってさ」
「そうか?」
「うん、あの時言った事は嘘でもいいよ、でも決めたんだ」
「何を?」
「今度は僕が約束するよ、 僕はアルベルの傍にいるし、僕はどこにも行かない」
「は?」
予想外のクラピカの言葉に、俺はポカーンと口を開けたまま放心状態になった、かなり間抜けな姿だったはず。
そんな間抜け面がおかしかったのか、クスリと笑い、嬉しそうに続けた。
「約束だからね? 僕は破るつもりはいよ」
なにを言っているんだコイツは、人の事言えんが、よくそんな恥ずかしいセリフがいえるな。
珍しく年相応に、いたずらっ子みたいに笑うクラピカに、俺は何も言う事ができず、ただただ黙ってクラピカを見ていた。
「おおう、やはりここにおったか」
変な空気が漂っている修練場に、バレチノがやって来た。
「どうしたんですか、バレチノさん?」
「話したい事があるんじゃが、ちょっと良いかの?」
「俺達は構いませんけど、何か大事な話しなんですか?」
「クラピカの家に行ってから話そう、テルミも待たせておるしの」
俺とクラピカはバレチノの後を付いて行く。
何の話しだ、そろそろ集落から下りる事を言うつもりか、なら行動に移さなければならない。
クラピカの家に戻ると、どこから持ってきたのかわからない、ティーセットで優雅に紅茶を飲んでいるテルミがいた。
「待たせたの」
「いえいえ、皆さんを待っている間に、美味しい紅茶を飲む事ができましたので、
お気になさらずに」
「うむ、まず2人共座れ、話しはそれからじゃ」
「はい」
「ういっす」
全員席に付いたのを確認したバレチノは、一度ゴホンと咳払いをして、語り始めた。
その内容は、原作前にクラピカが辿るはずだった物に近いのかもしない。
バレチノは俺とクラピカを保護し、信頼できる知り合いの施設に預ける事だった。
バレチノはそこそこ稼いでいる、稼いだ額の大半をその施設に出資し、親がいなくても立派に育つように、様々な教育を施しているらしい。
なぜ、そこまでして子供によくしているのかわからない。
しかしバレチノは想像以上の善人だ、原作クラピカがハンターの職に、あれだけの思いを持つのもわからんではない。
だが、そんな悠長な事してられない、俺の目的を達成させるには、そんな施設で時間を無駄にする事はできない。
「どうする? お前たちなら、文句なしで施設に入れるぞ」
俺はクラピカを見て、任せるよ、の呟きを聞いてバレチノに答えた。
「とてもいい話しですが、すみません」
俺は頭を下げる。
「やっぱりの、そんな気がしておったわ」
何がおかしいのか、バレチノが笑った。
「せっかくのお話し、申し訳ありません」
「かまわんよ、それとーーーー思ってもない事で謝らんでいい」
「何がでしょうか?」
笑っていたはずのバレチノの顔付きが鋭くなり、俺を睨む。
敵意のある視線に、俺は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「ふむ、大人を甘く見るなよ若僧……、すみませんと口に出しているが、
それは本心ではなかろう? 悪いとは思ってもいないくせにの、
お前のその癖が、俺は気に入らんな」
見透かされた、舐めていたバレチノを。
俺は黙ってしまい、何も言い返す事ができなかった。
何か言いたそうなクラピカを手で静止させる。
「彼には悪気はないようですから、その辺りでおやめない、
誰しも本心を隠すの当然の事です。あまり目くじら立てるのはよくありませんね」
沈黙を破ったのは予想外にテルミだった、まさか俺をフォローしてくれるとは。
「テルミ、お前は相変わらずじゃな、しかしこの小僧は危うい、
いずれ自分が付いた嘘で全てを壊しかねん、なら注意するのが大人の仕事じゃ」
「偽善的ですね、嫌いではありませんが、好きでもありません」
「なら、黙っておれ」
「やれやれ、あなたがそれを注意したとしても、人の本質は短期間で治る物じゃあ
りませんよ、これ以上無意味な説教を続けるのは時間の無駄です、そう無駄です」
「……ふん」
バレチノは機嫌を悪くしたのか、鼻息をならし、そっぽを向いた。
「アルベル君、話せるとこまで話して下さい、話したくなければ結構ですがね」
やはりこの人は苦手だ、何もかも知っているような言い方、笑顔の裏に何かがある、気味が悪い。
どちらにしろ言わねばならない事だった、ちょうどいい、もう俺は止まれないんだ。
「わかりました、クラピカもいいな」
「うん、アルベルに任せるよ」
俺は話した、幻影旅団の事も、力が欲しい事を、弟子にして欲しい事も。
「最初からそう言えばよかったんじゃ、しかし復讐のための力か…」
「反対ですか?」
「そんな事は言わん、復讐したければしたらいい、良いか悪いとは関係ない。
人が成長するのは理由は何にしろ、目的が必要だと俺は思っておる
よく復讐はイカンとか言う奴こそ信頼できん、それをなす信念、意思を
貫き通し、目的の先に何を見るか、それこそ成長を促す物だと思っておる」
「バレチノさん」
「しかし、弟子か……、俺は無理じゃな、人に師事する事は苦手だしの」
悩むバレチノを俺をよそに、俺はもう1人この場にいるハンターを見た。
「テルミさん、お願いします、俺達をあなたの弟子にしてください。
ブラックリストハンターである、あなたにお願いしたいんです!」
椅子から降り、頭を下げる。
ブラックリストハンターとは、凶悪な犯罪者の賞金首を専門に捕縛する、スペシャリスト。
捕まえるのは殺すより難しい、それを実現させるまでの力が俺達には必要だ。
最初から決めていたハンター証を見た時から、ブラックリストハンターのテルミに、最初から俺は何とかして弟子にして貰う事を。
テルミの人間性何か関係ない、強くなれる可能性が高い方に付く、俺自身の感情なんて二の次だ。
いきなりそう言われたテルミは、大した感情の揺れも見せずに、貼り付いた笑顔をピクリと動かす事もなかった。
「おや、自分ですか?、今までの流れだとバレチノに頼むと思っていたのですが」
「お願いします、僕とアルベルは強くならないダメなんです!」
テルミの言動からは、全く感情を読み取れない。
「ほう、いいんじゃないか、お前確か弟子が既におったろ?」
「あれは例外ですよ」
テルミは困りましたね、と全然困ってなさそうに、ポリポリとこめかみをかく。
必死にテルミに頭を下げる、最近人に頭下げすぎだな、でもこれしか出来る事は俺にもクラピカにもない、ただ頭を下げるだけ。
了承の返事を聞けるまで頭を上げるつもりはない、粘りまくってやる。
「テルミよ、弟子にしてやれ、少し鍛錬の様子を見たが、
2人ともセンスはあるようだしの、お前の弟子にもいい刺激になるじゃろ」
「まったく、他人事だと思って好き勝手言いますね」
「事実じゃろ? 俺が今度仕事手伝ってやるし、弟子にしてやれ、
2人とも弟子にするって、言うまで動かん気だぞ」
「そのようですね、仕方ありません、まず2人とも顔を上げて下さい」
テルミの弟子入りにたいする、肯定とも否定とも取れない言葉を聞き、俺とクラピカは頭を上げた。
「ふぅー、気持ちは理解しました、ですが生半可な事ではないですよ。
ブラックリストハンターと動向するという事は、危険が付き物です。
私自身も色々やって来てますから、相当な人間から恨みを持たれてますし、
どんな事があるかわかりません、それでもいいのですか?」
「はい、耐えてみせます」
「僕はアルベルと一緒なら、どんな事でも耐えれるます。
アルベルと一緒ならどんな困難だって、立ち向かえる自信があります」
クラピカぁ……、その発言は問題あるのではなかろうか。
「いいでしょう、しかし3点ほど条件があります」
条件だと、何かムチャな事言われたらヤバいな。
「条件とは?」
「一つは自分の弟子となるのなら、2人には自分の仕事を手伝だって貰います」
「はい、大丈夫です」
「僕もです」
それぐらいがちょうどいい、俺達が進む道は険しい程がいい、それを糧にしてやる。
「2つ目は、自分の指示に従ってもらいます。ただし無理だと判断したら、
断ってくれても結構です」
無理だと判断したら断っていいとは、俺達を試すって事か、やってやる。
「最後は一番簡単だと思います、多分ですが……、それはーーー」
一瞬だが、テルミの笑顔が歪んだように見えた。
最後の条件に俺とクラピカは驚きを隠せなかった、まぁ頑張ります、としか言えなかったのだ。
「許可しましょう、今日からあなた達は自分の弟子です。
条件はしっかり守って貰います、特に最後の条件は頑張って下さい」
「はい、頑張ります」
「僕も頑張ります」
進めた、後は俺次第でどう転ぶかわからない。
正直テルミがこんなに簡単に、返事をしてくれるとは思ってなかった。
テルミの言動は全て芝居がかってる、バレバレなのに、それがワザとなのかわからない。
どうもテルミは、俺達2人が弟子入りをお願いした事すら、わかっていた気がする。
全てテルミの計算通りに進んだ気がしてしょうがない、根拠のない勘だが。そんな予感が俺につきまとう。
「話しは纏まったようじゃな、なら俺は明日にはこの集落から下りて、
街に行くとしようかの、テルミはどうするんじゃ?」
「自分も明日には下りるつもりですよ、それでは最初の指示です、
2人とも出発の準備を整えて下さい、やる事が多いでしょうが、
期限は明日の朝までです、しばらくここには帰って来れないでしょうから、
悔いが残らないようにしときなさい、いいですね?」
明日かよ、と思ったが、俺とクラピカは師匠となったテルミに頭を下げ、クラピカの家から出た。
とりあえず、持っていく荷物を纏めなくてはいけない。
「ありがとう、クラピカ、俺のわがまま聞いてくれて」
「アルベルって馬鹿だよね」
「なにぃ!」
「朝言ったよね、僕はアルベルに付いて行くって」
クラピカもテルミの異常性を気付いているはずだ、俺より鋭いクラピカが、テルミの芝居がかった言動に疑問を持つのは当然だ。
「ところで渡したい物があるだけど」
「いきなりだな、何かくれんのか?」
「倉庫に置いてあるから、取りに行こう、ついでに持って行く物もあるしね」
「なら、さっさと行こうぜ」
「うん」
倉庫に付いたら、クラピカが一番手間にある木箱から、包装されている何かを取り出した。
「はい、これ」
クラピカがそれを持って来て、俺に手渡した。
「何これ? ちょっと重いか」
「開けてみてよ」
俺は包装をほどき、中から出てきた物を手に取った。
「籠手、鉄の籠手か? 鉄にしては軽いな?」
「鉄じゃないよ、ある地方で取れる特殊な鉱物の削って作った物らしい、
硬度も硬く、鉄より軽いから使い勝手はいいと思う。
かなり珍しい鉱物だから、市場にもなかなか出回ってないって話し」
籠手を触って見た感じかなり頑丈だ、しかも重いと言っても苦にならないレベル、こういう物に興味はないが、かなり良い物だと思う。
内側に、変な模様のような字が沢山書かれてるが、これはデザインなのか? 見覚えがあるんだが忘れてしまった。
「これをどこで?」
「父さんが若い時に使ってたのを、あんな事がある以前に僕が貰ってたんだ」
「いいのか? そんな大事な物、俺が貰って?」
「いいよ、前にアルベルと稽古した時、何か武器を持った方がいいって
言ったでしょ、あれからこの父さんの籠手を思い出して、渡そうと思って
たんだけど、バレチノさんやテルミさんが来たから、渡すのが遅れちゃったんだ」
「そうか、ありがとう」
「どういたしまして」
何か爽やかだな、これが若さか?
ちょっとこれ付けてみるか、ガチャガチャと籠手を弄っていると。
「アルベル、付けてみたい気持ちはわかるけど、先に荷物を纏めようよ」
「あ、そうか、スマン」
「うん、ゆっくりやったら日が暮れそうだしね、街まで長いから体も休めないと」
「おう、わかった」
結局明日の準備が終わる頃には、日が暮れていた。
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「こうなる事が全部わかっておったな、テルミ」
「フフッ、何の事でしょうか」
テルミは紅茶の入ったカップを手に取り、口を付け、わずかに残っていた紅茶を全て飲み干した。
「白をきりおって、最初からおかしかったんじゃ、幻影旅団の手掛かりを探すために
、付いて来たのかと思ったが、数日立っても手掛かりを探す気配すらない、
何をしているかと思えば、ずっとアルベルを観察していただけ」
テルミは大袈裟に両手を上げ、万歳のポーズをとる、人を馬鹿にした様子にバレチノは僅かに苛立つ。
「バレてましたか、お手上げです、さすが抜け目がないですね」
「あの子達が生き残っておったのも、知っておったのか?」
「さぁ、どうでしょう、知っていたのかもしれませんね」
バレチノが机を叩き、机がそのショックでギシギシと軋む。
「まぁそう怒らずに、勘違いして貰っては困ります」
「何がじゃ」
「自分はあの2人を利用して、何かしようとか思っていません、強いて言えば、
気になっただけです、あの2人、いえ、アルベル君のほうがです」
「個人的に言わせて貰うがあの小僧は好かん、危うすぎるんじゃ、気付いておったろ、いずれあの小僧は一線を越え外道に堕ちる、後押しした俺が言えた立場じゃないが、アレを育てるつもりか?」
テルミは答えない。
ただ笑っている、その顔からは、長年の人生経験を持つ、バレチノですらわからない程に何も伝わって来なかった。
「ちっ、お前のそういう所が俺は嫌い何じゃ」
「すみません、秘密と言うことで勘弁していただけませんか?」
「ふん、どちらにせよ、お前とあの2人が選んだことじゃからの、俺が心配するのも
お節介がすぎるの……」
「別にとって食おうなんて思ってません、少しばかり大変な目にあうだけです」
「当然じゃな、ハンターの弟子はそういうもんじゃしな」
バレチノが笑う、テルミは僅かに目を細め何かを考えだす。
それはアルベルとクラピカの事かもしれない、それはテルミにしかわからない。
「ああそう言えば、台所にお酒がありましたが飲みますか?」
「いらん、今はそういう気分ではない」
「なら自分だけ頂きましょう、今の自分は凄く気分がいいんです」
「珍しいの……」
「ええ、あえて言うなら、探し物がやっと見つかったって感じですね」
普段、感情を表情に出さないテルミが誰にでもわかるぐらい、色濃く笑っている。
それが逆に不気味でバレチノは何を見つけた、と聞けなかった。
次の話しでクルタ族の集落から移動です。
およそ10話かけてやっとです展開遅くて申し訳ない。