どんな過ちも犯さない人は、常に何事も為さない人である。 byフェルプス
そこは中国の華南に存在するベトナムとの国境に面する森林であった場所。本来は熱帯気候によってうっそうと茂った木々が存在してであろうその場所は現在、あたり一面が焼き払われた様な状況になっていた。草木が余すことなく焼き払われ、露出した地面からも煙が上がっていた。
「まさかこんなことになるなんてね………」
そこに居たのは体中余すところなく痛々しい火傷に覆われた少女であった。腕や足の一部に至っては既に炭化しており、本来であれば冥土送りを免れないような状況であったが、彼女の体は急速に再生を続けていて、彼女はいたって落ち着いていた雰囲気をまとっていた。
「何が不満なのだ人間の娘よ。全ての火を司る我を人の身でありながら葬り去ったのだ。如何様な不義が存在するというのだ」
その少女の前にたたずむのはニ面ニ臂という人間であればあり得ない外見をした男であった。彼は自身の体が消滅しようとしているのに、至って平然としていた。
「自分が非常識人の仲間入りをしてしまったこと対して不満が在るのよ。だから自分を責めているだけ。貴方に何か言いたいわけじゃないわ」
彼女は自らを攻め立てるような口調で返答を返した。
「ふふ、今度の子は随分と自罰的なのね。そう自分を責め立てることは無いわ。どのような過程、結果であろうと私たちの子供になる様な人間は少なからず、常識の輪にとらわれない様な型破り子たちばかりなのだから」
「ほう、汝が我ら天上の神々に反旗を翻す蛮勇なる者たちの支援者か。パンドラよ。汝が此の地に将来されたということは遂に新たなる愚者が遂に誕生するということか。風のうわさで知ってはいたが感慨深いものだな」
その男は自らを死にゆく運命に導いた存在のことを何故か誇らしげ語っていた。
「ええ、勿論天上の神々を打ち倒した超越者たる存在を神殺しとして新生させるのが私の役目ですもの。さあ天地の火の具現者たる貴方様からその子に祝福をあげてちょうだい」
女は高らかに声を上げた。
「よかろう、我を倒した蛮勇にして、不遜なる存在に祝福を与えてやる。草薙静香よ汝は、森羅万象、天地の火を統べ、神々の代弁者でもある我の至高の権能を簒奪する最初の神殺しだ。如何なるものよりも強くあれ。貴様の死は次こそは私が与えてやる。その時まで我が火と炎を操り敵を屠り続けるがよい」
こうして非常識な一族に生まれ、非常識な兄を持つ、自らも非常識な少女草薙静香は神殺しとして新生を果たした。しかし、この時彼女の心に在ったのは諦念だけだった。
(普通の常識人だったはずなのに、なんで私こんなことになったんだろう。はぁぁ~~)
ありがとうございました。