「ベル君、キミねぇ、返り血を浴びたならシャワーを浴びてきなさいよ」
「すみません・・・」
というかよくあの服の血が落ちたな。
「まったくだぞ?血には感染病があるかも知れないんだぞ?」
「ごめん、シキ」
「分かりゃいいんだよ・・・まあ、無事でよかったよ」
「シキ!」
ベルが感極まって抱き付いて来ようとする。
「やめい!」
俺の平手がベルの後頭部に吸い込まれるように直撃した。
「いったい何があったんだ?」
「えっとね」
それからベルは今日の出来事を話始めた。
普段通っているダンジョンの二階層から一気に五階層まで降りたこと。
足を踏み入れた直後ミノタウルスに遭遇して追いかけられ殺されそうになったときアイズ・ヴァレンシュタインに助けてもらったこと。
「「馬鹿だな(だね)」」
「五階層まで降りるんだったら俺も呼べ二人なら逃げるくらいはできるだろ?」
「シキは寝てたじゃないか!」
「うっ!スマン」
エイナさんがコホンと咳払いして口を開いた。
「えっとアイズ・ヴァレンシュタイン氏だっけ。うーん・・・ギルドとしての情報を漏らすのはご法度なんだけど・・・」
と言ったがその後続けてアイズ・ヴァレンシュタインの事を話始めた。
本名アイズ・ヴァレンシュタイン。
主神ロキが率いる【ロキ・ファミリア】の中枢の一角を担う女剣士。
剣の腕は冒険者でもトップクラス。
二つ名は【剣姫】
バトルジャンキーの所もあるらしくそこからついた二つ名は【戦姫】
「こんなところかな」
「いやいや、ベルが聞きたいのはもっと別だよな?」
「う、うん」
俺がニヤニヤしていうとベルが顔を真っ赤にして頷いた。
「趣味とかそういうのは聞いたことがない・・・っていうかそういう恋愛相談は受け付けてないよ!」
「ああ、エイナさんのいけず」
「というか、俺たちは色恋の前にファミリアをどうにかしないといけねぇだろ?」
「う、うん」
「ほれ、魔石を換金してこい」
「はーい」
ベルはトボトボと魔石を換金する窓口まで歩いていった。
魔石とは魔物を倒すと手に入れられる物だ。
もっとも、俺たちが潜っている低層では欠片程度しか手に入らないがな。
「・・・今日は帰るか」
「うん」
「俺昨日はドロップアイテム結構落ちたから後で回復ポーション分けるぞ?」
「うん、ありがと」
「・・・ベル君、シキ君」
「あっ、はい。何ですか?」
返り際出口まで見送りに来てくれたエイナさんに引き留められた。
「あのね、女性はやっぱり強くて頼りがいのある男の人に魅力を感じるから・・・えっとね、めげずに頑張っていれば、そのね」
「・・・」
「ヴァレンシュタイン氏も強くなったベル君になら振り向いてくれるかもよ?」
ベルはドンドン顔を笑みで満たし駆け出した。
「エイナさん大好きー!!」
「えうっ!?」
ベルはそのまま去っていった。
「あ、そうだ」
「どうしたのシキ君?」
「俺が強くなったら貴女は俺を見てくれるんですか?なんて」
俺はカッコつけて冗談でそう言うとエイナさんは。
「お、お姉さんをからかわないの!」
顔を赤く染めてそう言った。
(ヤバイ、可愛い)
ベルが死にかけたという話をしているとき俺は怖かった。
もちろん、自分がその立場ならというのも考え恐怖した。
しかし、何よりもベルが死んでいたらと考えると嫌な想像が頭の中でぐるぐると渦を巻いていた。
あの時俺を守って死んだ父さんのように。
死んででも誰かを守れるようになりたい。
"正義の味方"になりたい。
俺は俺を救ってくれた父さんにたいして憧れを思い出した。
ドックン。
憧れを思い出した瞬間俺の中で何かが切り替わった様な感じがした。
「というか、お前は待て!」
「フベラ!」
本日三回目の平手打ちがホーム前の扉で炸裂した。