「ん」
夕焼けも暗闇に染まる寸前、午後七時になるという頃エイナは自身の住んでいるギルドの集合住宅の自室で目を覚ました。
(あれ?私、商店街に居たはずじゃ?)
「目が覚めたか」
エイナの部屋に隣接するキッチンからシキが顔を除かせた。
「シ、シキ君!?」
「勝手に邪魔してるぞ」
シキは何事もないようにそう言った。
「な、何でシキ君が・・・」
「お前、商店街で急に倒れたんだよ。ギルドの集合住宅に住んでるのは知ってたから運んできた。鍵は大家に借りた」
シキは林檎を擦りおろすと皿に盛り付ける。
蛇口を捻りホームに一旦帰り持ってきた料理道具の一つのおろし金を洗った。
「そ、そうなんだ」
「ほら、今お粥作ってるから少し腹に入れとけ。急に熱いの入れると胃がビックリするからな」
エイナはシキから差し出された林檎の皿を受け取りスプーンで林檎を口に含む。
「甘い」
「そっか、熱は無さそうだな」
シキはそっとエイナの額に手を当てた。
「え!?何するの!」
「熱は計んないとダメだろ?えっと、37度ちょいって所か。熱も下がったな」
エイナは顔を真っ赤に染めてしまった。
「おい!また熱くなったぞ!?」
「大丈夫だから!」
「お、おう。じゃあ、お粥を仕上げてくる」
シキはそう言ってキッチンに戻っていった。
シキside
「ふう、どうしたんだっての」
俺はお粥の鍋を見ながらそう呟いた。
そうだ、塩入れないと。
しかし、塩が入っていただろう容器には塩がなかった。
「エイナー塩借りるぞ」
俺は棚を開けながら言った。
「いいよー」
エイナの声が部屋越しに聞こえた。
「えっと、これか?」
塩を探していると見つけてはいけないものを見つけてしまった。
『絶対に痩せる!これで理想のエルフに!【エルフ青汁】』
よし、俺は何も見てない。
見てないったら見てない。
と言うか、絶対に騙されてるぞ。
ってこれ一袋しか使ってないぞ。
「不味かったんだろうな・・・」
俺はそれ以降無言で調理を進めた。
「美味しかったよ・・・確かに美味しかった・・・。けど・・・っ!」
エイナはお粥を食べ終えた後そう悔しげに呟いた。
「お、おい。どうした」
「なんで・・・何でシキ君が私より料理上手なの・・・」
「は?」
『覚えておけよシキ。旨すぎる男の料理は時に女のプライドをズタズタにするんだ』
「ああ、こういう意味だったのか」
父さんの一言を思い出した。
あの時は父さんの料理が壊滅的だった言い訳かと思ったんだが。
まさか本当だとはな。
「なんか、すまん」
「謝らないで・・・惨めになるから」
「悪い」
俺はエイナが食べ終わった後の食器を片付けた。
洗い物も済んで戻ってくる。
「あ、そうだ。エイナ今日泊まるから」
「うん・・・って、ええ!?なんで!」
「弱ってるお前放っておけないだろ。お前少し体調よくなると無茶しそうになるし」
「・・・」
エイナは否定しなかった。
自分にも思い当たる節が有るのだろう。
「まあ、お前が嫌ってんなら帰るけど」
「嫌って訳じゃないけど・・・」
「なら、いいか?」
「うん・・・分かった」
エイナは仕方なくといった表情で肯定した。
「でも、シキ君の分の布団を出さなきゃ・・・」
「いや、俺はタオルケットでもあれば大丈夫だ」
「タオルケットならタンスの一番上に・・・あ!絶対に三段目を開けないでね!」
エイナはタンスの一番上を指差して言った。
三段目に何があるんだ?
・・・下着か?
「分かった」
俺は三段目を開けたい気持ちを押さえ一番目を開けてタオルケットを取り出した。
「もう、寝るか」
「うん。そうだね」
俺が証明の魔道具のスイッチを切ると部屋の光源は月の光のみになった。
「お休み」
エイナの声がした。
「ああ、お休み」
と、小さく返した。
その後、すーすー、と寝息を立てる音だけが聞こえたので俺は目を瞑った。
エイナside
私が眠る演技をすると直ぐにシキ君は眠りに就いた。
私は物音を立てずに布団から出てタオルケットにくるまって眠るシキ君を見た。
寝息を立てながら眠るシキ君はいつもの大人びた雰囲気とはガラリと変わり年相応・・・いや、それ以上に子供っぽい寝顔をしていた。
「いつも、頑張ってるんだよね」
たぶんシキ君は『自分が頑張らないといけない』と無意識に気を張ってしまっているんだろう。
きっとこの寝顔こそが本来のシキ君なのだろう。
イタズラ好きで子供っぽいそれこそがシキ君の本当の正確なのだと思う。
そんな16歳の少年が19の私と遜色ない・・・いや、私より大人びているのは、きっと誰よりもシッカリしなきゃいけないと思ってしまっているからなのだろう。
「シキ君は頑張ってるんだよね」
私はシキ君の頭を軽く撫でた。
その髪はサラサラでちょっと羨ましかった。
私はこっそりとシキ君の前髪を上げて・・・。
「大好きだよ・・・シキ君」
そう言って彼の額にキスをした。
本当は唇にしたかったけど恥ずかしかったので額にした。
「それに・・・唇は起きてるときが良いな」
私は物音を立てず布団に戻っていた。
最初の一分くらいは恥ずかしくて寝れなかったが、やはり体が休息を求めているのか直ぐに眠りに就いた。
シキは夜の中、目を開けた。
これが意味することは明確だ。
つまり、シキは起きていた。
エイナに頭を撫でられたときも。
エイナが額にキスしたときも。
起きてるときに唇にキスをしたいと言ったときも。
シキは顔を赤くしないために全力を注いでいたために顔が赤くなりばれることはなかった。
「起きてるよバカ」
シキは一言そう呟いた。
その一言は幸運にも誰にも届かず夜の闇に消えた。
次の日、起きたシキはエイナが起きるのを待ってから何事もなかったようにベル達の元へ向かった。
はっ!
六巻の内容でアポロンがソーマファミリアを連れてきて2対1を申し込んできてアイズとフィンにシキとベルが1日だけなら何でも言うことを聞くという条件で連合を組むことになり。
ヘスティア・ロキ連合対アポロン・ソーマ連合
という構図が浮かんだ!
勇者「蹂躙せよ!」