「これは・・・」
ダンジョンから帰るとベルが寝ていた。
そこは大して問題ではない。
寝る前にベルが読んでいた本が問題なのだ。
「『ゴブリンでもわかる現代魔法』ね」
これは、あれだ。
昔、父さんに読まされた。
俺の読んだやつは『ドラゴンでもわかる古代魔法』だったな。
どっちも教えちゃいけないだろ。
「ベルは何を願ったんだ?」
俺が魔法に願ったのは『父さんのように強くなりたい。いつか偽物の俺が本物になるための力』だった。
そろそろ起こすか。
「ベル起きろ」
「ん・・・シキ?」
ベルが気怠そうに目を開けた。
「おはよう。いい夢見たか?」
「うーん。あんまり覚えてないや」
「そっか」
ヘスティアがベルのステイタスを更新していると。
「魔法が・・・」
「は?」
「どうしたんだ?」
「ベル君に魔法が発現した」
ヘスティアは驚愕に顔を染めて言った。
「やっ「まあ、魔導書読んだしな」へ?」
「シキ君。今なんて言ったんだい?」
「ん?魔導書のことか?」
「魔導書・・・どうしよう」
「ちなみに魔導書って幾らなんだ?」
俺は父さんの前に居たファミリアのメンバーに貰ったのを読ませてもらった。
「少なくとも七千万ヴァリス以上」
「燃やすか」
「ええ!?ダメだよシキ!」
ふざけるな!もう二億も借金があるのにこれ以上増やせるか!
「明日豊暁の女主人に行ってくる」
「ああ、逝ってこい」
「何かおかしくない!?」
夜寝ているとベルが外に出ていった。
「やっぱり、魔法を試しに行ったのか」
俺が行かなくても何とかなるだろうが・・・。
「はぁ、仕方ない」
俺はコート・オブ・ヘスティアの軽装部分以外を装備しヘスティアを起こさないようにダンジョンへと向かった。
七階層に到達した頃ベルの気配を感じた。
しかし、それに気づくと同時に他の人間の気配を感じた。
「
俺は弓と矢を投影して構え近づいていく。
「動くな!」
「・・・動かないで」
俺の声と聞き覚えのある声が重なった。
「アイ・・・ズ?」
「・・・シキ?」
そこには二週間ほど前に出会った少女が居た。
アイズは剣を構えていた。
・・・ベルを膝に乗せながら。
「何してんだ?」
「償い」
「は?」
償い?
「この子を怖がらせた。この子を貶した」
「お前が貶したわけじゃないだろ」
実際アイズが貶したわけではない。
悪いのは
「悪いのは狼野郎だろ」
「それでも」
アイズはベルの髪を撫でながら言った。
ベルを見つめる瞳には後ろめたさがあった。
───ああ、アイズはベルとは違った純粋さの持ち主なんだ。
例えるならベルの純粋さは少年特有の純粋さだ。
何もかもを良い方向に考えてしまう。
そんな純粋さだ。
それに対してアイズの純粋さは赤ん坊のような純粋のような気がする。
自分の感情に真っ直ぐなんだ。
それはきっと、良い方向にも
俺はダンジョンの壁に背中を当ててベルが起きるのを待っている。
二時間ほどが経っただろうか。
あれから二時間。
そろそろ、深夜三時くらいか。
小腹が空いてきたな。
「握り飯でも持ってくれば良かったか?」
「お腹空いたね」
「悪い聞こえてたか?」
くぅー
可愛らしい音が聞こえてきた。
アイズの腹から。
アイズの顔を見ると真っ赤になって顔を伏せていた。
「くくく」
「・・・笑わないで」
「悪い悪い。ベルが目覚めたら三人で飯でも行くか?」
「・・・ジャガ丸くん」
あの屋台は九時からだったな。
「ジャガ丸くんだったらまた今度だな」
「・・・うん。楽しみにしている」
アイズがベルの髪をもう一度撫でる。
「おかあさん」
『〇〇〇〇〇』
ベルの言った母という言葉により過去の記憶が一瞬蘇り言葉を思い出す前に消え去った。
輪郭しか分からないが綺麗な女性。
それが母親だということは分かっている。
五歳より前の記憶。
つまり、
ついでに言うと俺の本名はシキではない。
シキという名は父さんが着けてくれたものだ。
しかし、本名を知っても俺はシキと名乗るだろう。
それだけこの名前には愛着がある。
「ごめんね。私は君のお母さんじゃない・・・」
「・・・え」
ベルの顔を見るとうっすらと瞳を開いていた。
「起きたかな・・・?」
「目、覚ましたか」
ベルはゆっくりと上半身を起こすと。
「幻覚?」
「・・・幻覚じゃないよ」
アイズがむっ、と頬を膨らませていった。
俺はそれを端から見て笑っていた。
「だぁあああああああああああああ!?」
「あ、逃げた」
ベルは顔を真っ赤にすると全力で駆け出していった。
「・・・何で、いつも逃げちゃうの?」
アイズの寂しそうな声がダンジョンへと消えていった。
シキの本名は原作によって伏線の具合が変わっていきます。
自分はWeb版を読んでないので展開を知りません。
まあ、クライマックスになったら回収すると思います。
本名もちゃんと考えてはあります。