黒白の英雄譚   作:夜空 太陽(新アカ)

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四話

「楽しんでますか?」

 

「・・・圧倒されています」

 

「ああ、というかドリア旨いな」

 

「ふっふーん、ミアお母さんの料理は世界一です!」

 

「ああ、世界一と言っても良いかもしれない!」

 

「シキテンション高いね」

 

「まあな、人間旨いもん食ったら楽しくなんなきゃな」

 

そんな話をしているとざわめき声が聞こえてくる。

 

『おい・・・あれ』

『ああ、えれぇ上玉だな・・・』

『ちげぇ! エンブレムを見ろ』

『げっ、ロキファミリアかよ』

『あれが巨人殺しのファミリア……第一級冒険者のオールスターか』

『どれが噂の【剣姫】だ?』

 

「ここって【ロキ・ファミリア】の方も利用するんですね。」

 

「【ロキ・ファミリア】さんはうちのお得意さんなんです。彼等の主神であるロキ様に、私達のお店がいたく気に入れられてしまって。」

 

ロキ・ファミリアの人達が円卓の席に座ると赤毛糸目の男性?いや、女性・・・にして胸が残念な神様と思われる人が叫び出した。

 

ヘスティアは見た目幼女なのにあのバストだぞ!?

 

神なのに何であんな格差が!・・・グスン

 

「余計なお世話じゃぁ!」

 

「どうしたの?」

 

「胸のことで馬鹿にされた気がしてなぁ」

 

「ペチャパイも需要あるって・・・」

 

「アイズたん。それ誰が言ったんや?」

 

ロキは黒い笑みを浮かべそう言った。

 

「ベート」

 

「はぁ!?それ言わねぇ約束だろ!」

 

「よっしゃあ、ダンジョン遠征みんなごくろうさん!今日は宴や!飲めぇ!後でベートは覚えときぃ!」

 

「ひぃ!?」

 

ふと金髪のヒューマンの女の子が目に入った。

 

彼女がアイズ・ヴァレンシュタインさんか。

 

いつか、ベルを助けてくれたお礼を言わないとな。

 

「そ、そうだ、アイズ! お前のあの話、みんなに聞かせてやれよ!」

 

アイズさんの斜め向かいに座っていた獣人の男が、何か話をせがんでいるようだった。

 

「・・・あの話?」

 

「ほら、あれだって! 帰る途中で何匹か逃がしたミノタウロス! 最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!? そんで、ククッ・・・あん時いたトマト野郎が傑作だったじゃねぇか!」

 

ガタッ!

 

「あの野郎!」

 

俺が立ち上がり文句を言いに行こうとするとベルが俺の手首を握り制した。

 

「大丈夫だから」

 

・・・大丈夫じゃねぇだろ。

 

ベルは歯を強く噛み締めているのを唇の間から伺える。

 

左手はズボンの膝を握りしめている。

 

奴等に目を移すと金髪の少年が幹部達の席で何も言わずにジョッキを傾けていた。

 

無言を貫くその姿は苛立っているようにも昔を懐かしんでいるようにも見えた。

 

「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきたのを返り討ちにしたら、すぐに集団で逃げ出していったアレ?」

 

「そうだよ、それそれ! 奇跡見てぇにどんどん上がっていきやがってよ、俺達が泡食って追い掛けていったやつ!こっちは帰りで疲れてたってのによぉ」

 

全ての事象が俺の脳内で繋がった。

 

じゃあ、ベルが怯えたのも死にかけたのもコイツ等のせいじゃねぇか。

 

「それでな、居たんだよ。如何にも駆け出しって感じのひょろくせガキが!」

 

・・・ふざけるな

 

「いま、思い出しても笑えるぜ! 兎みてぇに追い詰められた挙げ句、情けなくブルッちまってよ! 顔とか超ひきつってやがんの!」

 

・・・黙れ

 

「ふむぅ? それでその子どうなったん?」

 

「アイズが間一髪ってところでミノを細切れにしてやったんだよ、なっ?」

 

・・・その汚ねぇ口を閉じやがれ

 

「それでそいつ、牛のくっせぇ血浴びてよ・・・真っ赤なトマトにっくっ!ひー!腹痛ぇよ!」

 

「うわぁ・・・」

 

「アイズ!あれ狙ってやったんだろ? そうだろ? そうだって言ってくれよ頼むからよぉ!」

 

「・・・そんなこと、ないです」

 

「それにだぜっ? そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ……ぶっくく。うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんの!」

 

「・・・くっ」

 

ベルはこれまでに無いくらい強く歯を強く噛み締める。

 

「アハハハハハッ! そりゃほんまに傑作やぁ! 冒険者怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー!」

 

「ふ、ふふっ・・・ご、ごめんなさい。アイズっ、流石に我慢出来ない・・・!」

 

「・・・」

 

「あぁん、ほら、そんな怖い目しないの! 可愛い顔が台無しだぞー?」

 

「しかしまぁ、久々にあんな情けねぇ奴を見ちまって、胸糞悪くなったな。野郎のくせに泣くわ泣くわ」

 

「・・・あらぁ〜」

 

「ほんとざまぁねぇよな。ったく、泣き喚くくらいだったら最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての。ドン引きだぜ、なぁアイズ?」

 

・・・じゃあ、テメェには弱かった時期はなかったのか。テメェはLv.1すっ飛ばして今の力を手に入れたのかよ。

 

「ああいう奴がいるから、俺達の品位が下がるっていうかよ、勘弁して欲しいぜ」

 

「いい加減そのうるさい口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪する事はあれ、酒の肴にする権利などない。恥を知れ」

 

「おーおー、流石エルフ様々、誇り高いこって、でもよ、そんな救えねぇヤツを擁護して何になるってんだ? それはてめぇの失敗をてめぇで誤魔化すための、ただの自己満足だろ? ゴミと言って何が悪い」

 

「これ、やめぇ。ベートもリヴェリアも。酒がマズぅなるわ」

 

「アイズはどう思うよ? 自分の目の前で震え上がるだけの情けねぇ野郎を。

あれが俺達と同じ冒険者を名乗ってるんだぜ?」

 

「あの状況じゃ、しょうがなかったと思います」

 

「何だよ、いい子ちゃんぶっちまってよ。・・・質問を変えるぜ? あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」

 

「・・・ベート。君、酔ってるの?」

 

「るせぇよ。ほら、アイズ選べよ。雌のお前はどっちの雄に尻尾を振って、どっちの雄に滅茶苦茶にされてぇんだ?」

 

「・・・私は、そんな事を言うベートさんとだけは、ごめんです」

 

「無様だな」

 

「黙れババァッ。じゃあ、何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのかよ?」

 

「・・・っ」

 

・・・ふざけんなよ。女の子が恋愛沙汰聞かれて答えれるわけねぇだろ。

ましてや夫婦沙汰なら本当の夫婦以外には言えねぇだろうが!

 

「はっ、そんなはずねぇよなぁ。自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りしてる雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありはしねぇ。

“他ならないお前がそれを認めねぇ”」

 

 

 

 

 

「雑魚じゃ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ」

 

俺の腕を握っていたベルの手から力が抜けた。

 

次の瞬間ベルは店から出て商店街を駆け抜けた。

 

「「ベル(さん)!」」

 

シルはベルを追って行ったが俺にはやることがある。

 

「なんだぁ、食い逃げかァ?」

 

「うっわぁ・・・ミア母ちゃんの店で食い逃げするなんて、命知らずなやっちゃなぁ・・・」

 

ベルが・・・アイツがムカついてるのはあの狼野郎じゃない自分自身にムカついているんだ。

 

馬鹿にされてそいつがムカツクって心の狭い奴じゃねぇ。

 

ベルは一皮剥けて・・・心を強くして帰ってくる。

 

だったら俺のやることは一つだけだ。

 

「女将さん」

 

「ミア・グランドだよ」

 

「ミアさん」

 

「なんだい?」

 

「少し暴れます」

 

「あんな野郎でもLv.5だ。勝てるのかい?」

 

「関係ないですよ。俺は父さんに約束したんです"正義の味方"になるって大切な人を守れる人間になるって。・・・まぁ九割は私怨ですけど」

 

「ふん、さすがゼクスの息子だね。・・・気を付けな」

 

「はい」

 

俺はムカつく狼野郎に向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい」

 

「んあ?テメェ誰だよ・・・グハァ!」

 

俺は狼野郎の灰色のジャケットの襟を掴み引き寄せ殴り飛ばした。

 

「テメェが雑魚雑魚言ってるLv.1に殴り飛ばされされた気分はどうだ!」

 

「んだと!」

 

「来いよ、思いやがり発情犬!調教してやる!」

 

 




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