俺たちの住居である聖堂の地下に帰るとベルが爆睡していた。
「ただいまヘスティア」
「おかえり・・・ってどうしたんだい!?」
ヘスティアが振り向き俺を見た瞬間そう言った。
「ん?何が?」
「何がって血だらけじゃないか!」
「血だらけ?・・・あ」
よくよく考えてみれば傷は塞いで貰ったが服に着いた血や戦闘中着いた血はそのままだった。
「ちょっとベルを馬鹿にした奴と喧嘩しただけだ。傷も同じファミリアの奴がすまなかったと回復魔法をかけてくれたよ」
「よかったよ、その喧嘩したって言う相手のレベルは?まあ、Lv.1高くてもLv.2ってとこだろうけ「Lv.5」ど・・・はぁ!?」
ヘスティアは驚愕のあまり口が閉じれなくなっている。
「き、君は馬鹿か!Lv.1がLv.5に勝てるわけないだろ!?」
「いや、一応勝ってきたぞ?」
「ふぇ!?」
「まあ、相手は酔ってたしさんざん挑発したから・・・もちろん手加減はしていたからギリギリ勝てたんだけどな。精々level2の中位くらいの力だったと思う。ぶっちゃけもうやりたくない」
「そこでまたやりたいって言ったらただのMだよ!?マゾだよ!?」
マゾってなんぞや?
「ボクはシキ君にもベル君にも死んでほしくないんだ。せめて死ぬなら天寿全うして幸せに死んでおくれよ」
「はぁ、アホ。お前みたいなおっちょこちょい残して簡単に死ねるかよ。化けて出てでもお前の面倒見てやるし、そもそもまだ死ぬ気なんてサラサラねぇよ」
俺はヘスティアを安心させようと頭を撫でながらそう言った。
「シキ君!」
ヘスティアは俺の名前を呼ぶと俺に抱きついてくる。
「はいはい、ヘスティアは甘えん坊だな」
俺は苦笑しながらもヘスティアの頭を撫でる。
少しするとヘスティアは俺から離れて真顔になって俺に向き合った。
「いったいベル君に何があったんだい?」
俺はヘスティアに全てを話した。
「そっか、ベル君はそれで・・・」
「多分、あの着の身着のままでダンジョンに行ったんだろう」
「そっか・・・シキ君ありがとう」
「えっ・・・怒ってないのか?」
「いいや!不満タラタラさ!でもね君はベル君なら帰ってくるって分かってたんだよね」
「ああ、あいつは・・・ベルは絶対に強くなって帰ってくるそう思っていた」
「だからさ。君はベル君を本気で信じていた。だからお咎め無しさ。あのムカツク【ロキ】のファミリアの構成員を殴ってくれたしね!」
「ヘスティアお前本当は後半メインだろ」
「バレたか」
テヘっとヘスティアは右拳を自信の頭に軽く当てる。
あざとかわいい。
今日はステイタスが口頭で告げられた。
力: G 265→F 315
耐久:H 128→G 295
器用:H 165→G 235
敏捷:H 158→G 223
魔力:I 0
《魔法》
【】
《スキル》
【】
やはり、早すぎる。
それがヘスティアからステイタスを聞いて俺が思ったことだ。
ヘスティアは安全策を取らせるためにステイタスを少なく教える事はあっても多くは教えないだろう。
一番にベルと俺を心配してくれる。
ヘスティアはそういう奴だ。
一ヶ月近くも一緒にいれば自然と分かる。
「とまぁ、熟練度がすごい勢いで延びているわけ。何か心当たりはある?」
「俺は昨日Lv.5の冒険者と戦って勝った。ベルは?」
「え?シキ!何やってるの!?って勝った!?」
「まあ、ベロベロに酔ってたし」
「それでもおかしいよ!?」
「いいから、お前は?」
「昨日は一応六階層まで・・・」
「ふーん」
ベルの言葉を聞いたヘスティアが頭を捻る。
「どうしたんですか神様?」
「いやね、シキ君のを聞いたら大したことに感じられないんだ」
「ほっとけ」
「シキはそのLv.5の人にどうやって勝ったの?」
「ん?相手の顎蹴っ飛ばして脳揺らした」
「あはは、笑えないね」
「うるせ」
「はぁ・・・本題に入ろう。今の君達は理由はハッキリしないけど、恐ろしく成長するのが早い。どこまで続くかわからないけど、言っちゃえば成長期だ」
「は、はいっ」
「ああ」
「・・・これはボク個人の見解に過ぎないけどね。君達には才能があると思う。冒険者としての器量も、素質も、君達は兼ね備えちゃってる」
それは日頃ベルに対して俺が思っていることを代弁していた。
俺は父さんという師事する相手がいたがベルには自分を鍛えてくれる存在がいなかったと自分でも言っていた。
一度、俺が格闘技を教えようかと聞いたときベルは俺に負担がかかるから良いと言って辞退した。
今、思うと無理矢理にでも覚えさせておけばよかったと思うときがある。
「君達はきっと強くなる。そして君達自身も、今よりも強くなりたいと望んでいる」
「・・・はい」
「・・・ああ」
「だったら、約束して欲しい。無理はしないって・・・命は一度失ったらもう戻らないんだ」
「神様・・・僕は・・・」
「強くなりたいっていう君の意志をボクは否定しない・・・尊重するし、応援もする・・・手伝いも惜しまないし、力も貸そう・・・だから・・・もう、ボクを一人きりにしないでおくれよ」
瞬間、ヘスティアの顔が悲しみや不安が要り混ざったように歪む。
俺は心の奥に棘が刺さったような感覚を感じた。
ヘスティアのこんな顔は初めて見た。
ここまで明確に悲しみを隠していない顔は初めて見た。
ベルと俺がダンジョンで怪我をして帰ってきたときも不安なのを隠して笑顔作っていた。
「馬鹿、少し前にも言ったろ?俺は天寿全うしてやるってよ。世界に寿命はここまでだって言われるまで死ぬ気はサラサラねぇよ」
「そうです。 無茶、しません。必死になって強くなりにいきますけど・・・絶対に神様に寂しい思いはさせません。心配、させません」
「その答えが聞ければ、もう安心かな」
ヘスティアは食器棚の【ヘスティアの紙倉庫】と書かれた紙が張ってある引き出しを漁ると一枚の封筒を取り出した。
ちなみに書いたのは俺だ。
食事係は俺だから食器棚は綺麗にしておきたいときにヘスティアがいつの間にか紙を入れてたので間違えないようにメモ用紙に書いて付けておいた。
「あ!お金払うの忘れてた!ダンジョンに行く前に寄らなくちゃ!」
「俺が代わりに払っておいたけどシルが心配してたから行った方がいいだろうな」
「あ、そうだボクは数日ほど部屋を留守にするよ。ちょっと友人のパーティーに行ってくるよ」
「だったら行ってきてください。友達は大切ですし」
「だな、そう言えば俺も数日ほどダンジョンに潜らないから」
「え、何で!?」
「ちょっと金稼いでくる」
「ああ、成る程」
ベルが分からず頭を捻っている横で俺とヘスティアはアイコンタクトをした。
さて、行くか!
面接に!
『冒険者依頼
怪物祭の屋台を盛り上げろ!
食べ物の屋台のみ。
面接で料理を作り認められれば屋台を出す権利が与えられる。
報酬はその屋台の利益の三分の二
俺がガネーシャだ!
ガネーシャ・ファミリア"印"』