ここらあたりから多分、ハルが本格的に動き始めます。
工房、と呼ばれてる場所で耀の治療を終え、部屋に運んだ後、自分も多少の治療をしてもらったあと、治療に使ったギフトを見せてもらった。
「ふむ。俺には扱えそうにないな。」元々、攻撃特化型だったが、道具も治療系は使えないとはな。いやはや困ったな。
まあいいや。と思考を切り替える。
「それで、耀の怪我は三日もあれば治るんだったか? 良かったよ。」
「Yes♪ ただハルさんに応急処置をしていただいたとはいえ、出血が多かったので増血を施しました。」
「すまなかったな。もうちょっと早くに助けられればヨウも無事で済んだな。」
「そ、そんなことありませんよ!」
そう、黒ウサギが口を開きかけた時、工房内に音を立てずに入ってきてたヤツが口を開いた。
「主。主は未来予知は出来ないはずだろう? 過ぎたことは仕方ない。」
「!?」気づいてなかったみたいで黒ウサギが驚いてる中、そいつこと、フェンリルに苦笑する。
「いやはや、それはそうなんだがな、フェンリル? それでも注意してれば済んだと思ってな。」
「だから、過ぎ去った事は気にしても仕方がない。」
はいはい。そうだな。
「な、何で氷狼(フェンリル)がこちらに!? それにハルさんのことを、あ、主と呼びましたが」
復活したと思ったら、質問はひとつずつにして欲しい。
「月のウサギ。初めまして、でいいか。我は主、ハル=トレヴァースの忠実なる僕。フェンリルだ。」
「使い魔だよ。呼びかけて連れてきた。」
説明めんどいからフェンリルに丸投げしよ。
〜フェンリルside〜
ハルに丸投げされて黒ウサギへの説明を終えたフェンリルは、丸投げしてきた主を探していた。
(あの気まぐれ主。一体全体どこへ行ったのか? おそらく敷地からは出てないと思うが‥‥)いつもの事ながら、と小さくため息のような仕草をし、ハルの匂いを辿り、屋敷内へ入った。
「ここか。主の自室ではないが、ここから匂いがする。」
こちらに呼び出された時に送られた主の記憶だと、ここはヨウとかいう小娘の部屋か。とつぶやき、フェンリルは自身を冷気に変化させ、ドアの隙間から内部へ入った。
〜sideアウト〜
「様子見に来たが、大丈夫そうだな。」
「うん。ハルのおかげ。」
十六夜達の入れ違いで耀の見舞いしに来たが、元気そうだな。
顔色も良さそうだし、しばらく安静にしていれば良くなるだろう。
「別に大したことはした覚えは無いが? 治療したのは黒ウサギだしな。」俺はただ応急処置をしただけだ。
「黒ウサギは、『ハルさんが応急処置をしてくれたから助けられました!』って言ってた。」
そんなこと言ってたのか。黒ウサギ。
「そうか?」そう言われたなら、俺のおかげなんだろうか? よく分からない。
「まあ‥‥、元気そうだし、安心したよ。」確認も終えたし、そろそろ部屋に戻ろうか?
頭の中で考えてると、近くにフェンリルの気配を察知。こっちに向かってきてるな。
「ああ、そうだ。ちょうどいいし、耀に紹介しようか。」
首を傾げる耀から視線を外し、ドアから入ってきた冷気が形を作るのを待つ。
「!」
耀が驚きを見せるなか、フェンリルに言う。
「フェンリル。ちょうどいいところに来たわけだし、彼女に自己紹介を」
「ふむ。了解した。我は、フェンリル。以後よろしく、といったところか。」短いなぁ。まあこいつらしいが。
「よ、よろしく。私は、」
「生憎と、主から記憶の共有をされているから名乗らなくていい。」
いい終え、フェンリルはこちらに目をよこしてきた。
「他に指示は?」
「特には。自由にしていてくれ。用ができたら呼ぶ。」
「了解した。」
他にやって欲しい事は無いのでそう伝え、そろそろお暇させてもらう。
「それじゃ、耀。またな。」
そう言って部屋を後にする。
「さてと、来客のお相手の助太刀でもしに行きますか。」十六夜一人でも大丈夫かもしれないが一応な。
フェンリルは、置いてきたがたぶんどうにかしてくれる。
中庭に向かっていると、異変を感じ取った。
「ん? あれは‥‥」
中庭、屋敷寄りの位置に居る黒ウサギと十六夜、それと石化した吸血鬼。
反対位置に翼の生えた靴を履いた騎士達。
「‥‥なるほど。」聴覚を強化して会話を拾ったが明らかに揉めてるな。騎士達は敵意を二人に向けてるし。となれば、やることは決まってる。
「ふん。こんな下層に本拠を構えるコミュニティに「ちょいと失礼」な、何だ!? きさっ」言葉を遮ったことを謝りつつ、忍び寄るために掛けていた認識阻害魔法を解除して男に電撃を流して気絶させる。
「よう。十六夜と黒ウサギ。」俺に気づいていたのか、ニヤニヤとした笑みを浮かべるイザヨイと驚いて怒りを雲散霧消させてる黒ウサギに声を掛ける。
「き、貴様!! どこから「うるさい」 ぐぼぉっ!」
「今、俺は十六夜達に話しかけたんだから待っとけよ。」周囲に電撃を流し、気絶させた騎士達を地面から土を柱のように生やして作った檻に閉じ込め、仕上げに土を金属に変換させる。
「さてと、何を聞こうとしたんだったか?」まあいいか。