問題児たちと少年魔法剣士(凍結)   作:モグモグラ

3 / 18
※十六夜の見た目描写の修正を行いました.


エピソード❶ ようこそ、箱庭へ①

「どういう事だよ‥‥。」

湖からあがり、そうつぶやきながら濡れた上衣を恨めしげに睨む。

『し、信じられないわ! まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!』

『右に同じだクソッタレ。 場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。 石の中に呼び出された方がまだ親切だ。』

『‥‥。 いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?』

『俺は問題無い。』

『そう。 身勝手ね。』

男女二人の会話が聞こえ、目を向けると先程一緒に落ちてきた3人の内の2人‥‥金髪に‥‥えぇと、あの服は制服か?

制服を着た金髪、ヘッドホンをつけた少年と赤いリボンを頭につけた黒髪の少女が不機嫌そうに服の裾を絞っていた。

その後ろ、三毛猫を抱えた茶髪のあの中で一番年下そうな少女が岸にあがっていた。

三毛猫が全身を震わせ水をはじき、茶髪の少女は他同様に服を絞りながら、

「此処‥‥どこだろう?」

「さぁな。 まぁ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねぇか?」

少女の呟きに少年が応えた。

それらを一瞥し、まずは濡れた服をどうにかしよう。

そう考え、周囲を見回して適当な枝を拾い集める。

「‥‥ファイヤー。」

集めた枝に向かって詠唱。

―――ボッ。と枝に火がついた。

その火に当たり、服を乾かす。

 

「―――私は久遠飛鳥よ。 以後は気をつけて。 それで、そこの猫を抱き抱えてる貴女は?」

「‥‥春日部耀。 以下同文」

「そう。 よろしく春日部さん。 次に、野蛮で凶暴そうな貴方は?」

「高圧的な自己紹介ありがとよ。 見たまんま野蛮で凶暴そうな逆廻十六夜です。 そやそで凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

「そう。 取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君。」

「ハハ、マジかよ。 今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様。」

「楽しみにしてるわ。 ‥‥最後にそこの‥‥って、あら、いつの間に火を炊いたのかしら?」

んっ? あぁ、俺か。

「俺は、ハル=トレヴァース。 ハルとでも呼んでくれ。 それより、お前らもこっちで火に当たったらどうだ。」

3人の方を向き、そう言う。

「あら、そうね。 なら、お言葉に甘えて。」

久遠‥‥飛鳥の言葉を皮切りに3人は焚き火の近くに集まった。

 

 

心からケラケラと笑う逆廻十六夜。

傲慢そうに顔をそむける久遠飛鳥。

我関せず無関心を装う春日部耀。

黒い上衣の濡れを気にしながらも他の三人を観察しているハル=トレヴァース。

そんな彼らを物陰から見てた黒ウサギは思う。

(うわぁ‥‥なんか問題児ばっかりですねぇ‥‥)

召喚しておいてアレだが‥‥と黒ウサギは陰鬱そうに重くため息を吐くのだった。

 

「で、呼びたされたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。 この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

ある程度、服が乾いたあたりで十六夜が苛立たしげに言った。

「ふむ。 確かに説明役がいないのは奇妙だな。」

「そうね。 なんの説明もないままでは動きようがないもの。」

十六夜の言葉にハルと飛鳥が同意を示す。

「‥‥。 この状況に対して落ち着きすぎてるのもどうかと思うけど。」

(全くです。)

こっそり、黒ウサギはツッコミを入れた。

「いや、少なくとも俺はこれよりやばいのにあってるんだが‥‥」

ハルは困り顔で呟いた。

だが、かなりの小声だったからか誰も反応を見せなかった。

(まぁ、悩んでいても仕方ないデス。 これ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか。)

黒ウサギがそう考えたとき、

「―――仕方がねえな。 こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

十六夜がため息混じりに呟いた。

物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を掴まれたように飛び跳ねた。

「なんだ、貴方も気づいてたの?」

「当然。 かくれんぼじゃ負けなしだぜ? そっちの猫抱いてる奴と黒づくめの奴も気づいてたんだろ?」

「あんな分かり易い気配。 バカバカしくて指摘する気にもならないな。」

「風上に立たれたら嫌でもわかる。」

「‥‥へえ? 面白いなお前ら」

軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。 ハルを除く3人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の篭もった冷ややかな視線を、ハルは一周回って呆れの篭もった視線を黒ウサギへ向ける。

黒ウサギはやや怯んだ。

「や、やだなあ皆様。 そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でごさいます。 そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

「断る」

「却下」

「お断りします」

「面倒だから嫌だ」

「あっは、取りつくシマもないですね♪ って、最後の方ひどくないですかっ!?」

黒ウサギがそうツッコミを入れると、最後の発言者であるハルは小さく肩をすくめた。

(肝っ玉は及第点。 ここでNOと言える勝気は買いです。 まあ、扱いにくいのは難点ですけども。)

黒ウサギはおどけつつも、4人へどう接するべきか冷静に考えを張り巡らせている―――

 

(ウサギか。)

俺たちの前に現れたウサギ耳を生やした女性を見ながらそう考える。

てか、本人も黒ウサギとか言ってたし。

と、そこで耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサギ耳を根っこから鷲掴みし、

「えい」

「フギャ!」

力いっぱいに引っ張った。

今の感じからしてあれって本物なんだ。と理解できた。

「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

「好奇心の為せる業」

「自由にも程があります!」

「へえ? このウサ耳って本物なのか?」

そう言い、十六夜も右から掴んで引っ張った。

「‥‥。 じゃあ私も」

「ちょ、ちょっと待―――」

飛鳥も左から引っ張った。

左右から力いっぱいにに引っ張られた黒ウサギの言葉にならない悲鳴が近隣に木霊した。

 

俺? 俺はおもしろそうだったから傍観してた。

それに、俺が入る隙間がなさそうだし。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。