外門をくぐり、石造りの通路を通り箱庭の幕下に出た。
ジン、飛鳥、耀、俺、それとヨウの連れてる三毛猫の四人と一匹が幕下へ出ると、頭上から眩しい光が降り注いだ。
見上げてみると、太陽が見える。
「? おかしいな。 俺らは天幕の中に入った筈だろ? なぜ太陽が見えるんだ? 」
確か、空から落下してるときは天幕の中は見えなかった筈だ。
その疑問にジンが答えた。
「箱庭も覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。 そもそもあの天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されてますから。」
日の光が苦手な種族のために、か。
そんな奴らと言ったら限られるな。
「それはなんとも気になる話ね。 この都市には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」
「え、居ますけど。」
皮肉げに言った飛鳥へジンは肯定した。
やっぱりいるのか。
「‥‥。 そう。」
飛鳥は複雑な表情をした。
俺も、その答えを聞き、別に吸血鬼は嫌いではないが彼らの脅威を知ってるし、そもそも一緒に住めそうには無いと感じてる為小さく苦笑した。
噴水広場の方へ目を向ける。
(へえ、あの彫像。 かなりの名工の作品だろうな。)
噴水の彫像を眺め感想を浮かべる。
「うん。 そうだね。」
「ん?」
「あら、何か言った?」
耀が唐突に言葉を発したので顔をそちらへ向ける。
「‥‥。 別に。」
アスカの問いかけにさっき聞こえた優しさが混ざる声音とは対照的な声で返してきた。
(まさか、霊体が見えるとかそんな類の子なのか?)
知り合いにもいたから対して珍しくないが。
飛鳥も返事を聞いてからの追求はせず、目の前の賑わう広場へ目を向けた。
噴水近くには清潔感のあるシャレた感じのカフェテラスが幾つかあった。
「お勧めの店はあるかしら?」
「す、すいません。 段取りは黒ウサギに任せていたので‥‥よかったらお好きなみせを選んでください。」
ああ、黒ウサギはイザヨイの捕獲に行ったんだったな。
「それは太っ腹なことね。」
俺らは近くにあったカフェテラスに座ることにした。
席に座ると注文を取るために店の奥から猫耳を生やした少女が飛びててきた。
「いらっしゃいませー。 御注文はどうしますか?」
ジンが紅茶と緑茶、それと軽食をいくつか注文した。
「はいはーい。 ティーセット4つとネコマンマですね。」
ん? なんか増えてないか?と目を少女へ向ける。
ジンも飛鳥も不可解そうに首を傾げており、ヨウだけは驚きを見せていた。
「三毛猫の言葉、分かるの?」
猫?と目を三毛猫の方へ移す。
(ええと、コイツのことだよな?)
それ以外いなさそうだし。
耀の質問に猫耳娘はさも当然と言った感じで答えた。
「そりゃ分かりますよー私は猫族なんですから。 お歳のわりに綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスさせてもらいますよー。」
三毛猫と猫耳娘がおそらく会話したのだろう後、猫耳娘は店内に戻った。
それを見送った耀は嬉しそうに笑い、三毛猫をなでた。
「‥‥箱庭ってすごいね、三毛猫。 私以外に三毛猫の言葉が分かる人がいたよ。」
そう三毛猫へ話しかける耀へ飛鳥は動揺した様子で話しかけた。
「ちょ、ちょっと待って。 貴女もしかして猫と会話ができるの?」
その質問に耀は頷いた。
「それってほかの動物でも可能なのか?」
そう質問する。
「うん。 生きているなら誰とでも話は出来る。」
「それは‥‥なるほど。」
なんだ霊体ではないか。 うん、安心した。
「貴方はあまり驚かないのね。」
「まあ、死霊と話せるヤツとかが友人にいるし、そいつに比べたらまともな方だし。」
飛鳥へそう返す。
ちなみにそいつは数少ない同年代の友人だ。
「そ、そんな人がいるの?」
「ああ、根はいい奴だ。 ただ、少し暴走はするが。」
なんでアイツ、メイド服に異様なこだわり見せるのかなぁ‥‥。 俺は理解できなかった。
「そ、そうですか‥‥」
3人に驚いた顔をされた。
その後、耀から話を聞いたら、ほぼすべての動物と会話が出来るらしいことが分かった。
「し、しかし全ての種と会話が可能なら心強いギフトですね。 この箱庭において幻獣との言語の壁というのは大きいですから。」
そうなのか。
「そうなんだ。」
ジンがしてくれた説明によると猫とかウサギの一部は意思疎通が可能だが幻獣は他とは独立した種で同種かそれなりのギフトが無ければ意思疎通が難しいとの事だ。 耀が持つ力がどれだけすごいか。 種族間の意思疎通の齟齬によるトラブルを知ってる俺としては羨ましいと素直に感じた。
「そう‥‥春日部さんは素敵な力があるのね。
羨ましいわ。」
笑いかけられ困っよたように耀はアタマをかいた。
対照に飛鳥は憂鬱そうな声と表情で呟いていた。
会って少ししか経ってないがその表情は彼女らしくないと感じた。
「久遠さんは。」
「飛鳥で良いわ。 よろしくね春日部さん、それと、ハルくん? 貴方もね。」
「う、うん。 飛鳥はどんな力を持ってるの?」
「あ、ああ。」
くん付けで呼ばれたことないから驚いた。と言葉に詰まる。
「私? 私の力は‥‥」
耀の質問に答えにくそうな感じでも説明しようと飛鳥が口を開きかけた時、それを遮る声がした。
「おんやぁ? 誰かと思えば東区最底辺のコミュニティ゙名無しの権兵衛゙のリーダー、ジン君じゃないですか。 今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」
品の欠片もない声の方へ目を向けると2m以上ある体をピチピチのタキシードで包んだ男がいた。 ジンの名を呼んでたので、知り合いかと目をジンへ向けるとジンは顔を顰めていた。
その様子からあの男を嫌がってるようだ。
「僕らのコミュニティばノーネーム゙です。 ゙フォレスト・ガロ゙のガルド=ガスパー」
あの下品な男はガルドというのか。
「黙れ、この名無しめ。 聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。 コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ。 ――――そう思わないかい、お嬢様方。」
最後の方をこちらへ向け言ったガルドは許可もなく空席に勢いよく腰をおろした。
「失礼、ミスタ。 同席をするならば名と一言添えるのが礼儀と思うのだが。」
飛鳥と耀がガルドへ冷ややかな態度で返す中、一応の礼儀でガルドへそう言う。
「ああ? おっと失礼した。 私は箱庭上層に陣取るコミュニティ゙六百六十六の獣゙の傘下である「烏合の衆の」コミュニティのリーダーをしている、ってマテやごラァ!! 誰か烏合の衆だ小僧オォ!!!」
ジンに横槍を入れられあっさりと着けてた仮面が剥がれた。
耳元まで裂けた口に肉食獣の如き牙と瞳が激しい怒りとともにジンへ向けられたのでいざという時ように魔法を行使できるようにしておく。
「口慎めや小僧ォ‥‥紳士で通っている俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ‥‥?」
紳‥‥士? どこが? そうつっこみたかったがガマンだ。