耀と飛鳥が盛り上がり、俺も小さく微笑を浮かべる。
そんな状況の中、そっちのけにされたガルドが取り繕うかのように大きく咳払いをした。
「失礼ですが、りゆ「ああ、そうだ。 ガルド氏? 1つ疑問があってね、答えてもらえるか?」 ‥‥なんです? ミスター。」
言葉を遮ったというのに紳士だな。 まあ、それがいつまで続くだろうか。
「 貴方は両者合意のもとでコミュニティを 大きくしたと言った。これはコミュニティ自体がチップになってるって解釈するが…………ジン。こういう事は珍しくないのか?」
「やむを得ない状況なら希に。 しかし、これはコミュニティの存続をかけたかなりレアなケースです。」
ジンがそう答えたとき、ガルドの額にうっすらと冷や汗が浮かんだのを見逃さない。
「おっと、どこへ行くんだ?」
席を立とうとしたガルドにハルはそう聞いた。
「そうよ。 まだ貴方から話を聞いてないわ。 貴方はそこに座って、私の質問に答え続けなさい。」
飛鳥の言葉に、ガルドの身体は本人の意思と関係なく椅子にヒビが入る勢いで座り込んだ。
その様子に驚いた猫耳の店員が慌ててハル達の元へ駆け寄る。
「お、お客さん! 当店での揉め事は控えてくださ――――」
「ちょうどいい。 貴女も第三者として聞いていってくれないか。 おそらく、面白いことが聞けるだろうし。」
ハルの言葉に首を傾げる猫耳の店員を制して、飛鳥は口を開く。
「教えてくださるかしら? どうして貴方が強制的にコミュニティを賭けあうような大勝負を続けることができたのかしら。」
ガルドは悲鳴を上げそうな顔になるが、口は意に反しことばを紡ぐ。
その様子に周りの人間もその異変に気づき始めた。
彼女、久遠飛鳥の命令には‥‥逆らうことが出来ないのだと。
「き、強制させる方法は様々だ。 一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫すること。 これに動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった。」
「まあ、そんなところね。 貴方のような小者らしい堅実な手ね。 けどそんな違法で吸収したコミュニティが貴方の元で従順に働いてくれるかしら?」
「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質にとってある。」
飛鳥の片眉がピクリと動いた。 周囲もその言葉に息を呑む。 ハルも顔にこそは出さなかったがガルドに対する嫌悪感を感じていた。
「てそう。 ますます外道ね。 それで、その子供達は何処に幽閉されてるの?」
「もう殺した。」
その答えにその場の空気が瞬時に凍りついた。
ジンも、店員も、耀も、飛鳥でさえ一瞬耳を疑い思考を停止させた。 ハルは‥‥顔をしかめ、小さく舌打ちをした。
ただ一人、ガルドだけは命令されたままに言葉を紡ぎ続ける。
「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭に来て思わず殺した。 それ以降は自重しようと思っていたが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。 それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。 けど身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。 始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食」
「――――もういい。 黙ってその口を閉じろ。」
飛鳥が耐えかね、口を開こうとしたその時、椅子から立ち上がったハルがガルドの頬を片手で挟み込み無理やり開けないようにし、片腕の力だけでその巨体を持ち上げていた。 飛鳥は彼が座れという命令で固定されているガルドをそのまま持ち上げられたことに驚いた。 飛鳥の力は支配の力である。 彼女の言葉は 力を持ち今までの彼女の経験からするとたとえどんな外敵要因があろうともその命令は実行され続ける。が、ハルは命令により椅子に座り続けるガルドの体を立ち上がらせていた。
「素晴らしいな。 罪のないガキを拉致った上でうるさいから殺した‥‥。 殺すに値するクズっぷりだ。」
飄々とした様子が一切無い、怒りがはっきりと感じられる声色でハルはつぶやき、腰のホルダーから抜いた黒い刃の短剣を片手に握った。
「じゃあな。」
一言、言いハルは短剣を振り上げた。
「っ! ハルくんやめなさい。」
刃が喉へ届く寸前、飛鳥がハルへそう命令をすると振り下ろす手が止まり、ハルはガルドの体を地面へ放り投げた。
「‥‥はぁ。」
そのすぐ後、動けるようになったハルは小さくため息をつき、短剣をホルダーへ戻した。
たった一瞬で命令という拘束を破ったハルへ驚きながらも飛鳥はハルを諌めるように言った。
「ハルくん。 落ち着きなさい。」
「ああ。 わるかった、それと助かった。 アスカが止めてくれたおかげで頭が冷えた。」
「一体全体どうしたのよ? 確かにさっきの話は聞くに耐えない話だし起こるのは当然と思うわ。 けど、流石に殺そうとするまでは思わないわよ。」
「そうだな。 早計すぎたな。」
反省したようにつぶやくハルは椅子には座らず、テーブルに寄りかかるような姿勢でガルドに目を向けた。
「ジン君。 今の証言で箱庭の法がこの外道を捌くことはできるかしら?」
「厳しいです。 吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが‥‥裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げたしてしまえば、それまでです。」
それはある意味では裁きと言えなくもない。 リーダーであるガルドがコミュニティを去れば、烏合の衆でしかない゙フォレス・ガロ゙が瓦解するのはめに見えている。
しかしそんな事では飛鳥は満足できなかった。
「そう。 なら仕方ないわ。」
飛鳥は苛立たしげに指をパチンと鳴らした。
それが合図だったのだろう。 ガルドを縛りつけていた力が消えるのが感じられた。
体の自由を取り戻したガルドは起き上がり、怒り狂ったように雄叫びを上げた。
「こ‥‥この小娘どもがァァァァァ!!」
雄叫びとともにその身体が激変した。 巨躯を包むタキシード(パツパツ)は膨張する後背筋によりはじけ飛び、体毛は黒と黄色のストライプ模様に変色した。
変貌した姿には見覚えがあった。
(ワータイガー、か。)
人狼の派生種の一つだ。 虎の匂いがプンプンするからもしや、と思ってたのが見事に当たったな。
「テメェら、どういうつもりか知らねぇが‥‥俺の上に誰が居るかわかってんだろうなァ!! 箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!! 俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ! その意味が――――」「黙りなさい。 私の話はまだ終わってないわ。」
ガチン、と再びガルドは勢い良く口は黙った。 だが、身体は動くのでガルドは丸太のような太い剛腕を飛鳥に振り上げ、襲いかかろうとしていた。
割って入ろうか。と考えた時先客がいた。
今まで聞く立場になってた耀が割って入り腕を伸ばした。
「喧嘩はダメ。」
耀が腕を掴み、更に腕を回すようにガルドの巨躯を回転させ押さえつけた。
「ギッ‥‥!」
「へえ。」
細腕に似合わない力だな。 そう関心し微笑を浮かべる。
飛鳥も飛鳥で楽しげに笑っていた。
「さてと、ガルド。 別に俺は手前の上に誰がいようとも興味はない。 ジンだっては気にはしないだろう。 なんせ、彼の最終目標は、コミュニティを潰しだ打倒魔王゙だしな。」
ハルの発言にジンは大きく息を呑んだ。 内心では魔王の名が出た時は恐怖に負けそうになっていたジンだか、自分達の目標をハルに問われて我に返る。
「‥‥はい。 僕達の最終目標は、魔王を倒して僕らの誇りと仲間を取り戻すこと。 いまさらそんな脅しには屈しません。」
「そういうこと。 つまり貴方には破滅以外のどんな道も残されていないのよ。」
「く‥‥くそ‥‥!」
理屈は不明だが、耀に組み伏せられたガルドは身動きできず地に伏せている。
その様子に飛鳥は少し機嫌を取り戻し、足先でガルドの顎を持ち上げるといたずらっぽい笑顔で話を切り出す。
さて、飛鳥はどんな面白い事を言うか。 楽しみだ。
「だけどね。 私は貴方のコミュニティが瓦解する程度の事では満足できないの。 貴方のような外道はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ。 ――――そこで皆に提案なのだけれど。」
飛鳥の言葉に頷いてたジンや店員達は、互いに顔を見合わせ首を傾げた。
(ああ、そう言う事か。) 飛鳥が何をいいたいか予想でき、イタズラを思いついた子供のような笑みを小さく浮かべる。
飛鳥は足先を離し、今度は細長い女性らしい奇麗な指先でガルドの顎を掴んだ。
「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。 貴方の゙フォレス・ガロ゙存続どノーネーム゙の誇りと魂を賭けて、ね。」
そう言った。
こうして見ると、この主人公って十六夜に性格似てそうだと思った。