1
その人物の到着を、彰人と姫神は待っていた。
帝国全土を激震させた「六・一六事件」(現時点では、まだ名称は定められていない)の発生から一夜明け、呉軍港は徐々にだが落ち着きを取り戻そうとしていた。
当初、クーデター派は連合艦隊内部にまで入り込み、東京を制圧した本隊と呼応して連合艦隊の掌握をも行おうとした。
もっとも、それは彰人と、彼の親友である亡き中西寅彦の献身的な活躍によって水際で阻止され、不発に終わったのだが。
一方、呉鎮守府でも若干の混乱が生じていた。やはり、騒ぎに乗じて決起しようと言う輩がいたのだ。
だが、呉は海軍最大の根拠地とは言え、翻ってみれば地方の一拠点に過ぎない。いかに反乱軍が強大とは言え、たかだか2万の兵力では帝都近郊を制圧するだけで精いっぱいだったようだ。
呉鎮守府の反乱は連合艦隊の制圧と連動させるつもりだったようだが、その連合艦隊側の制圧が発生前に鎮圧されてしまった為、なし崩し的に鎮守府で決起の時を待っていた者達も制圧されたのだった。
こうして、帝国海軍最強の実働部隊は、クーデター発生に際して行動権を奪われると言う、最悪の事態は免れたのだ。
だが、それによっていささかも事態が好転していないのも事実である。
東京近郊は未だに愛国臨時政府を僭称する反乱軍に押さえられている。
しかも、彰人の耳には既に、最悪の情報が舞い込んできていた。
第3次マリアナ沖海戦以後、帝都近郊を守護する名目で横須賀に配備された「帝都警備海上部隊」が、反乱軍の側に付いたのだ。
同部隊には、姫神の親友にして、帝国海軍最強の戦艦「信濃」が所属している。
現状、あの艦に勝てる艦は、連合艦隊には無い。勿論、「姫神」とて例外ではない。
正に最悪の状況と言って良かった。
その状況を打破する為、彰人は一計を案じる事にした。
「彰人・・・・・・・・・・・・」
傍らの姫神が、話しかけてくる。
対して、彰人は無言のまま微笑を浮かべると、優しく巡戦少女の頭を撫でてやる。
これから始まるのは、恐らく過去最悪と言っても良い、凄惨な戦いだ。
帝国軍同士が相打つ、骨肉の戦い。
どちらが勝っても、帝国には傷しか残らない事は目に見えている。
しかし、やらなくてはならない。
クーデター派が主張する聖戦の完遂など、もはや望める状況ではない。
戦い続ければ、いずれ帝国は負ける。そして、国が亡びる事になる。
滅びへの道を食い止める事ができるとすれば、それは今しかなかった。
やがて、
司令官室の扉がノックされる。どうやら、待ち望んだ客が到着したらしかった。
「どうぞ」
彰人が声を掛けると、小柄な人影が室内に足を踏み入れるのが見えた。
髪を短く切った、表情にあどけなさの残る可愛らしい少女である。
だが彰人は彼女の存在こそが、この馬鹿げた戦いを終わらせる切り札になると考えていた。
「よく来てくれたね」
少女に対して、彰人は優しく語りかける。
「君に頼みたい事がある。やってくれるかな?」
問いかける彰人に対し、
少女はコクンと、頷きを返した。
2
帝都全域に愛国臨時政府軍の兵士達が立ち並び、物々しい殺気が東京全体を包み込んでいる状況。
その一種異様な状況の中、帝国ホテルのスイートルームに総司令本部を設置した愛国臨時政府の首脳たちは、全員がホテルの玄関前に集合、一糸乱さず整然と整列。敷かれた赤絨毯を取り囲んでいた。
やがて、
1台の外国製自動車が、軍用バイク2台の先導を受ける形でロータリーに侵入してきた。
全員が一斉に敬礼を送る中、
彼等の首魁たる人物が、後部扉を開いてゆっくりと姿を現した。
「お待ちしておりました、殿下」
「うむ」
永野修の挨拶に頷きを返す富士宮康弘。
今や、この東京の王とでも言うべき立場になった男は、自身を取り巻く幕僚達と共にホテル内に入ると、その足で司令部へと赴いた。
「さて・・・・・・・・・・・・・・」
フカフカのソファーに腰掛けながら、富士宮は一同を見回して口を開いた。
長テーブルには永野、杉本を始め、愛国臨時政府の幹部たちが顔を揃え、テーブルの上には贅を尽くした料理と酒の数々が、これでもかと並べられている。
全て、永野達が富士宮の来訪に合わせてホテル側に供出させた物である。
山海の珍味を取りそろえ、最高級の酒が並べられたテーブルの光景は、帝国の一般家庭では絶対にお目に掛かれない物である。ましてか、戦時下で物価も上がっている状況においては尚更と言えよう。
合衆国軍の空襲によって家を焼かれ、路上で生活を余儀なくされている都民もいる事を考えれば、とんでもない贅沢であると言える。
だが、彼等はそのような事は一切気にも留めず、富士宮の「お言葉」を待っていた。
「皆、ここまでご苦労だった。ひとまず、我らの存在を帝国全土に明らかにし、正当性を世に知らしめることはできたと思う」
「既に帝都内における主要箇所は全て制圧完了しております。我等に抵抗する勢力は、今のところありません」
永野の言葉に、富士宮は満足そうに頷きを返した。
彼等の計画は順調だった。
この日の為に愛国臨時政府軍は周到に準備を進めてきたのだ。
帝都を制圧した彼等は、各街道を封鎖すると同時に都内各所に部隊を配置、厳戒態勢を敷いている。
彼等の目的は都内の治安維持と同時に、未だに行方を晦ませている井上成重、豊田玄武、鈴木勘太郎と言った「君側の奸」達の捜索にある。
彼等は是非とも生きたまま捕え、現政府が進めている対米講和が誤りであるかを認めさせる必要があった。
対米講和を阻止して戦争を継続。そして対米戦の勝利こそが、彼等の目的である。
これは帝国の威信を世界に示す為に必要な措置であり、その為ならば全国民が命を掛けなくてはならない。
彼等はそう、固く信じていた。
「ともかく、鈴木、井上、豊田の輩は早急に見つけ出すのだ。いかに昭和維新を成功させたとしても、奴等に小うるさく蠢動されたのではかなわんからな」
「心得ました」
頷いてから、永野は付け加えるようにして言った。
「それと殿下、一つ気になる事がございます」
「何だ?」
永野の言葉に、富士宮はピクリと眉を動かして尋ねた。
対して、永野は恐懼して答える。
「実は、呉で決起するはずだった部隊と連絡がつかなくなっております。予定では、もう既に決起成功の報告が来てるはずだったのですが・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
黙り込む富士宮。
その胸には、一抹の懸念がよぎった。
連絡が来ないと言う事は、何らかのトラブルが起こった可能性を示唆している。
最悪の可能性が、一同の脳裏によぎる。
「もしや・・・・・・失敗したか?」
「まさか」
富士宮が齎された言葉に、永野は引きつったような笑みを返す。
もし連合艦隊の制圧に失敗していたとしたら、それは愛国臨時政府にとって由々しき事態である。
長く続いた戦争によって消耗したとは言え、連合艦隊は帝国海軍最大の実働部隊である。そして、火力においては間違いなく帝国陸海軍合わせて最強の部隊である。
空母5隻、戦艦・巡戦5隻を基幹戦力とする連合艦隊は、間違いなく愛国臨時政府にとって最大の脅威だった。
「なに、心配はいりませんよ殿下」
永野は何かを思い出したように、笑みを浮かべて言った。
「我等には『信濃』がいます。帝国海軍、いや世界最強の戦艦がね。既に黒鳥が『信濃』に着任し指揮に当たっています。仮に連合艦隊が『反乱』を起こして攻め込んで来たとしても、撃退は充分可能であると判断します」
その永野の言葉に、居並ぶ一同が安堵の息を漏らすのが聞こえた。
成程、「信濃」さえいれば安心だ。
我等の義挙が侵される事は無い。
そんな安堵の空気が支配されていった。
「良かろう」
富士宮は重々しく頷く。
仮に連合艦隊の制圧に失敗したいたとしたら、愛国臨時政府にとって致命的な事態になりかねない。
しかし同時に、富士宮もそこまで事態を悲観している訳ではない。
ともかく、作戦は一部を除いて順調なのだ。
絶対に安心できる状態では無いとは言え、「信濃」がいる限り、仮に連合艦隊が来たとしても簡単に手出しできないであろう事は疑いなかった。
「では、これより作戦を第2段階に移行する」
富士宮の言葉に、一同は感嘆の声を上げる。
第2段階とはすなわち、いよいよ愛国臨時政府の代表が皇居に参内し、天皇に謁見する事で自分達の正当性を奏上するのだ。
これにより、愛国臨時政府は「臨時」の2文字が除かれ、晴れて帝国を代表する正当な政治政体となる。
そうすれば、仮に富士宮派に属さない者達が反旗を翻したとしても、こちらは錦の御旗を掲げで堂々と進軍し、「賊軍」を処罰する事ができるのだ。
「皆の者。我らの勝利は、もうすぐそこまで来ている。どうか悲願を達成するその日まで、精進してもらいたい」
富士宮の言葉に、揃って首を垂れる一同。
彼等は今まさに、絶頂の瞬間にいると言っても過言ではなかった。
3
呉軍港に停泊している連合艦隊ではクーデター騒ぎが収束し、反乱軍部隊の鎮守府への引き渡しも完了した事で、改めて今後の対応について協議が始まった。
連合艦隊司令部要員を始め、第2艦隊司令部要員、各戦隊司令官と旗艦艦長、及び艦娘達が、第2艦隊旗艦「姫神」の会議室に集い、険しい顔を突き合わせていた。
本来、この手の会議は連合艦隊旗艦である「瑞鶴」に各メンバーを招集して行うべきところである。
しかし、時間が惜しいと考えた小沢は、なるべくリアルタイムに情報収集を行う為、通信能力が高く、更に彰人直属の情報収集解析部隊である「特信班」が常駐している「姫神」を会議の場へと選んだのだ。
その判断は正しかった。
特信班は連合艦隊司令部が把握している以上の情報を既に得ており、東京近郊の状況等が続々と会議の場にもたらされてきたのだ。
それらを踏まえた上で、会議は進められていった。
「迷う事はありません。すぐに東京沖に出撃し、我らの武威を持って反乱軍と対峙しましょう!!」
血気盛んな幕僚が、鼻息も荒く主張した。
「我等が東京沖で砲門を向け、無言の圧力を掛ければ、反乱軍にとっては相当な威圧になる筈です。上手くすれば、実際に砲門を開かずとも敵の士気をくじく事ができるかもしれません!!」
その幕僚の言葉に、賛同の声が多数上がる。
彼等の主張にも、一定の説得力がある。
忘れもしない9年前の「二・二六事件」の際、連合艦隊は「長門」「陸奥」以下連合艦隊主力を東京湾に出撃させ、砲門を市街地に向ける事で反乱部隊に無言の圧力を加え、クーデターの早期解決に活躍している。
今回も、その戦訓を再現しようと言うのだが、
「それは、難しいだろうな」
小沢が険しい表情のまま答えた。
その視線が、チラッと彰人へ向けられる。
頷きを返すと、彰人は一同を見回して口を開いた。
「『信濃』が、クーデター派に加わって行動しています。残念ながら、悪戯に僕達が出て行っても『無言の圧力を加える』と言う訳にはいかないでしょうね」
その言葉に、一同の間に戦慄が走った。
信濃が、
あの最強戦艦が、
「大和」「武蔵」亡き今、帝国海軍の切り札たる「信濃」が、賊軍に回っているとは。
予想外すぎる事態に、皆が戦慄を隠せない。
とりわけ、強いショックを受けているのは、彰人の傍らに座っている姫神だった事だろう。
姫神にとって親友である信濃。
その信濃が反乱軍に加わるとは。
青褪めた表情の巡戦少女を痛ましげに見ながら、彰人は続ける。
「幸い、帝都警備海上部隊は、『信濃』以外は駆逐艦が4隻いるのみ。つまり、どうにかして『信濃』さえ無力化できれば、連合艦隊を東京湾に入れる事も可能になります」
とは言え、それが難しい事は、発言した彰人自身がよく判っていた。
連合艦隊が出撃したのを知れば当然、反乱軍は「信濃」を用いて阻止行動に出て来るだろう。
勿論、数において圧倒的に勝っている連合艦隊なら、(犠牲さえ度外視すれば)最終的に「信濃」を捕捉、無力化に追い込む事は不可能ではない。
だが、敵も恐らく、その可能性に気付いている。
彰人なら間違いなく、「信濃」を東京湾の中から出さず、湾口付近に布陣する事を選択する。
そうすれば、単縦陣で湾口を通過してくる艦を、「信濃」1隻で迎え撃つ事が可能になるからだ。
湾口付近は水深も浅く、大型艦船が通れる航路も限られる。待ち伏せには持って来いだった。
言わば、三国志演義における長板橋の張飛である。この場合、張飛が「信濃」。なぎ倒される哀れな曹操軍兵士が連合艦隊と言う訳だ。
「航空攻撃を掛けましょう」
そう主張したのは、連合艦隊航空参謀の原田実中佐だった。
「我が精鋭の航空部隊で『信濃』に空爆を仕掛け、彼女が外海に出る前に行動力を奪ってしまうのです」
原田の主張が通れば、確かに理想的な状況になるだろう。
それは言わば、真珠湾攻撃の再現であり、確実性の高い作戦案である事は、他ならぬ帝国海軍自身の手で証明されている。
ただし、それにはたった一つ、どうしてもクリアできない障害があった。
「無理だ」
小沢は力無く首を振った。
「先の第3次マリアナ沖海戦において、我が母艦航空部隊は甚大な損害を受け、現在再建中だ。とてもではないが、作戦に投入できる状態ではない」
これについては小沢自身、一抹の責任を感じている。
南太平洋海戦以後、機動部隊の責任者として航空部隊の再建問題に取り組み、海軍航空隊を戦闘機中心の体勢に組み替えたのは、他ならぬ小沢自身である。
その戦闘機中心の体制は、必然的に艦攻、艦爆隊の縮小を招いたのは事実である。
それでも少数精鋭型の部隊編成を行い、第3次マリアナ沖海戦において多大な戦果を上げたのだが、その数少ない精鋭も第3次マリアナ沖海戦で払底してしまった。
戦闘機中心体制は今でも間違っていなかったと思っている小沢だが、それが今、裏目に出ているのも、紛れもない事実である。
それに、
彰人としては、もう一つの理由もあり、航空部隊の積極的投入には乗り気ではなかった。
それは、潜在的な反乱軍の存在である。
現在までのところ、帝国軍の勢力は3つに分けられると、彰人は考えている。
1つは、言うまでも無く愛国臨時政府軍。明確にクーデター派に属している者達。これは富士宮派閥を中心に、東京近郊に集結している。
そして2つ目が連合艦隊など、クーデター軍に与する事無く、現政府の意向を支持する正規軍。
そして、最後の3つ目が去就を定めず、動静を見守っている者達だ。
更に3つ目の存在は、大きく2つに分ける事ができる。
つまり、本当にどうすべきか迷って静観している者達と、反乱軍がいざと言う時の予備兵力として、正規軍内部に潜伏させている者達である。
この「潜在的反乱軍」がどれくらいいて、どこにいるのか、それを実際に調べる事は不可能に近い。
もし敵が航空部隊の一部をも掌握していたとして、それが連合艦隊の阻止行動に出て来れば、空中で帝国軍同士が相打つ凄惨な光景が現出される事になる。
特に航空機同士の空中戦の場合、誰何も無しに突然始まり乱戦になる場合が多い。敵味方も判らないまま互いに空中に接近し、いきなり攻撃を加えられる。あるいは、敵と勘違いして味方同士で同士討ちをしてしまう可能性すらあった。
以上の理由により、航空部隊の投入は可能な限り控えるべき、と言うのが彰人の考えだった。
「あの、こういうのはどうでしょう?」
連合艦隊幕僚の1人が手を上げた。
「彼等は実際に『信濃』を掌握したとは限りません。もしかしたら信濃を拘束なりなんなりして、自分達だけで艦を動かしている可能性もあるのではないでしょうか? それなら、信濃本人を奪還できれば、あるいはそれで無力化も可能なのではないでしょうか?」
確かに、それができれば理想的と言えるのだが、
「残念ですが、その可能性は低いです」
突然発言したのは、彰人の横に座っている姫神だった。
彰人自身も驚きの表情を浮かべる中、姫神は淡々とした調子で語り始めた。
「艦が全力性能を発揮する為には、艦娘の存在が不可欠です。反乱軍が『信濃』を動かしていると言う事は、信濃本人も反乱軍側に付いた、と見た方がいいと思います」
「彼女の言う通りだ」
小沢が少女を掩護するように口を開いた。
「それに、どのみちこうなった以上、最悪の事態を想定して動かないといかんだろう。甘い考えで事に臨んで、足元を掬われるような事態は避けたい」
これ以後、話は「信濃本人が反乱軍に与している」と言う前提で、全ての話が進められていった。
その間、姫神が憂いを帯びた表情でうつむいていたのを、彰人は見逃さなかった。
姫神が今、心の中で思っていた事は、激しい「後悔」である。
兆候はあったのだ。
「信濃」が連合艦隊の編成から外され、帝都警備海上部隊なる新編成部隊に配属された事は、明らかにこうなる事を予定したための措置だったと言える。
つまり、今回の計画は明らかに、周到に準備された上で行われたと言う事になる。
更に、少し前になるが、姫神は信濃が、黒鳥陽介と共に歩いているのを見かけた事がある。
その時は少し違和感を感じたくらいで特に気にしなかったのだが、思えばあの頃から、信濃は富士宮派に取り込まれていたのかもしれない。
事ここに至るまで何ら手を打たなかった事が、今日の事態を招いているかと思うと、臍の1つも噛みたくなる姫神であった。
「・・・・・・・・・・・・1つ、提案があります」
意見が出そろったところで、彰人は口を開いた。
「上手く行けば、『信濃』を無力化した上で、連合艦隊を無傷のまま東京湾に入れる事も不可能ではないかもしれません」
「言ってみろ」
小沢が先を促す。
正直、議論100出れど、どれも決め手に欠ける物ばかりだった。その為小沢としては、藁をもすがりたい心境なのである。
「その前に一つ、この作戦を実行するに当たり、条件があります」
「条件?」
彰人は頷くと、作戦の説明に入った。
会議を終えたメンバーが、次々と会議室を後にする。
そんな中、部屋を出てきた彰人と姫神を見て、駆け寄ってくる少女達があった。
「提督ッ」
「ヒメちゃん!!」
響と島風である。
この2人もまた、信濃とは親友同士。どうやら会議には出席できなかったものの、気になったので外で待っていたようだ。
「ヒメちゃん。どうなったの? やっぱり出撃するの?」
「はい」
勢い込んで尋ねてくる島風に対し、姫神も硬い表情で頷きを返す。
誰もが、これから起こる戦いがつらく苦しい物になる事を予想しているのだ。
「提督、やはり信濃は・・・・・・」
「うん。どうやら間違いないみたい」
尋ねる響に、彰人も険しい表情で頷く。
親友が敵に回る。
いかに戦争中とはいえ、これ程辛い事は他に無いだろう。
まして彼女達は軍艦の化身たる艦娘。戦う事を運命づけられた存在である。
勝っても負けても、彼女達には辛い結果になるのは間違いない。
その事を、否が応でも噛みしめる彰人。
そんな思いとは裏腹に、連合艦隊が出撃する時は、刻一刻と迫りくるのだった。
第103話「愛国者たち」 終わり