1
周囲を見回せば、未だに帝国軍の攻撃による破壊跡が、そこかしこに残されているのが判る。
特に、戦艦「アリゾナ」は、未だに沈没箇所に残されており、共に散った将兵、そして艦娘の墓標として、その場にあり続けていた。
そんなアリゾナの脇を掠めるように、1隻の真新しい戦艦が通過していく。
デザインは、革新的と言えるだろう。
それまでの米戦艦は皆、バスケットボールのゴールを上下に引き伸ばした、所謂「籠マスト」が特徴だった。
しかし、その戦艦はすっきりとした塔状の艦橋が特徴的であり、細い2本煙突と、後部艦橋が中央部分にまとまった、機能的優美さを誇っている。
ノースカロライナ級戦艦2番艦「ワシントン」
それが、その戦艦の名前である。
その「ワシントン」の艦橋に立つ青年は、軍港内部の様子を見て、ため息に近い呟きを漏らす。
「・・・・・・・・・・・・噂には聞いていたけど、これ程とはね」
丁寧にセットされたブロンドの髪を持つ、20代中盤程の青年は、味方が被ったであろう惨状を想像し戦慄する。
アンリ・ステイネス合衆国海軍中佐は、戦艦「ワシントン」艦長として、今日付けで太平洋艦隊に配属されていた。
スラリと整った顔立ちをした青年であり、軍人と言うよりも、ハリウッドあたりで映画俳優でもやって良そうな雰囲気がある。
「沈没した5隻の内、修理可能と判断されたのは『ウェストバージニア』『カリフォルニア』『ネバダ』の3隻のみです。『アリゾナ』は放棄が決定、『オクラホマ』は本国へ曳航の途中、時化に会って転覆、放棄に至りました」
アンリの横に立ち、事務的な口調で報告した少女は、銀色の掛かった髪をベリーショートに切り揃えた、ややスレンダーな体付きの少女である。スラリとしたスタイルで、やや肉付きの薄いせいか、少年のような印象があった。
戦艦「ワシントン」の艦娘は、アンリを見やりながら、報告を続ける。
「ウェウストバージニア達の修理は既に始まっています。もっとも、修理に合わせて近代化改装をするそうなので、戦線復帰がいつになるかは不明ですが・・・・・・」
「成程ね。どうもありがとう」
説明を終えたワシントンに礼を言いつつ、アンリは心の中でもう一つ付け加える。
仮に復帰したとしても、果たして戦艦に働きどころがあるかどうか疑問だった。
たとえば、この「ワシントン」なら、最高速度は28ノットまで可能であり、40センチ砲を9門装備した高速戦艦として竣工している。この艦なら、空母部隊の護衛にしろ、水上砲戦にしろ、あらゆる戦闘をこなす事ができるだろう。
しかし、「ウェストバージニア」以下の戦艦は皆、速力が21ノットと低速である為、空母と行動を共にするのは、事実上不可能である。
では、それらの戦艦群を、司令部はどのように扱うつもりなのか?
「まあ、そこまでは俺が気にするような事でもないか」
そう自分に納得させるように呟くと、アンリはワシントンに振り返った。
既に艦は、指定された部位の場所に到着し、錨を下ろしていた。
「司令部の方に着任の報告に行く、ワシントンも付いて来てくれ」
「判りました。では、すぐに連絡艇の準備をいたします」
そう言って静かに頷くと、ワシントンはアンリに続いて歩き出した。
「現状は、極めて不利だ」
アンリとワシントンを出迎えたレスター・ニミッツ太平洋艦隊司令長官は、開口一番で苦衷を顕にした。
日々の激務のせいか、ニミッツはそうとう疲れが溜まっているようにも見える。
その声にはいかにも張りが無く、一気に老け込んだ印象があった。
「ハルゼーが敵の本土を攻撃する事には成功したが、敵の戦力に打撃を与えた訳ではないからな。依然として、彼我の戦力差は大きいままだ。今、帝国軍が本格的な攻勢に打って出たなら、我が軍の戦力では支えきれんだろう」
「そのような情報があるのですか?」
傍らのワシントンが尋ねる。
太平洋艦隊の現状の戦力をかき集めても、帝国軍の侵攻に対抗できないのは彼女にも判っている。
最悪の場合、このハワイが戦場になる可能性すらあった。
「ああ、まだ不確定情報なのだが、最近になって帝国軍、特に海軍の作戦暗号に「MI」と言う文字がよく出てくるようになったのだ。今、情報部が全力を挙げて、その正体の特定を急いでいるところだ」
「MI・・・・・・・・・・・・」
それが何を現す符号なのかは不明だが、頻繁に使用していると言う事は、何らかの重要な物である事は間違いない。
「もし敵が何らかの攻勢に出るようであるなら、君達にも出てもらう事になるだろう。その時は、よろしく頼むぞ」
「「はッ」」
ニミッツに対し、揃って敬礼するアンリとワシントン。
その2人の瞳には、間も無く訪れるであろう帝国海軍との決戦の時が、克明に映し出されていた。
2
南太平洋ビスマルク諸島に、三日月形をした細長い島がある。
地図にはニューブリテン島と言う名の地名の島に、ラバウルと言う名前の泊地がある。
ここが今、南太平洋進出を目論む日本軍の前進基地となっている。
そのラバウルに今、帝国海軍の艦艇が集結していた。
巡洋艦に駆逐艦、それに巡洋戦艦、少し離れた場所には航空母艦の姿がある。
まさに一大戦力と言えるだろう。
それは、帝国海軍の新たなる攻勢を予感させる、壮大な眺めだった。
「・・・・・・・・・・・・以上が、作戦の概要です」
壇上に立った青年士官が、説明を終えて一同を見回す。
呉の連合艦隊司令部から、はるばるこのラバウルまで作戦説明の為に派遣されてきた
その目には、自身の発案に対する絶対的な自身と陶酔が見えるようだ。
黒鳥は連合艦隊の作戦参謀を務め、山本伊佐雄長官の側近中の側近とまで言われている。
あの真珠湾攻撃を具体的に立案したのも、この黒鳥だった。
今や、連合艦隊を事実上動かしているのは、黒鳥だと言う噂まであるくらいである。
そんな黒鳥を見る一同の中に、彰人の姿もあった。
帝都を襲った米機動部隊追撃を断念した後、彰人率いる第11戦隊は、は第2艦隊から一時分派と言う形で、ラバウルに展開する第4艦隊との合流を命じられていた。
第4艦隊は今、とある作戦を発動する為に集結している。
米豪遮断作戦と命名された作戦は、その名の通り、アメリカとオーストラリアの連絡線である南太平洋の島々を攻略、占領する事、両国の連絡線を遮断。同時にオーストラリアに揺さぶりを掛けて、同国を連合軍から脱落させる狙いがあった。
その為の第一歩として、パプア・ニューギニアにあるポート・モレスビーの攻略を目指す、と言うのが今回の作戦だった。
これは、なかなか実用性の高い作戦であると、彰人は考えていた。
もしオーストラリアを連合軍から脱落させる事ができれば、それは単純に敵対勢力が減ると言うだけに留まらない。
オーストラリア自体の兵力はさほど脅威ではない。しかし彼の国は南太平洋に広大な領土を持っており、そこに拠点を築かれれば、帝国に対する一大反抗拠点となり得る。本作戦の成功は、将来的な敵反抗拠点を潰す意味合いもあるのだ。
更に、攻略目標に入っている南太平洋の島々は、艦隊の泊地にも使用でき、ちょうど米太平洋艦隊の根拠地があるハワイを北に臨む形だ。
これで本土と、外部要地であるトラック環礁に駐留する艦隊と合同すれば、将来的には「ハワイ包囲網」とでも言うべき状況が完成する事になる。
つまり、米豪遮断は一石三鳥以上を優に狙える良作と言う訳だ。
しかし、それほどに意義がある作戦にもかかわらず、彰人としては必ずしも安心できずにいた。
問題は、作戦に投入される戦力である。
この作戦の為に、各方面から戦力がかき集められた。
第11戦隊の他にも、重巡洋艦「妙高」「羽黒」から成る第5戦隊、「青葉」「衣笠」「加古」「古鷹」の第6戦隊。果ては、インド洋作戦から帰投したばかりの第5航空戦隊、最新鋭空母「翔鶴」「瑞鶴」まで参加している。
その他にも、第2艦隊から、第11戦隊と共に米機動部隊追撃に当たった「祥鳳」と「瑞鳳」の第4航空戦隊も参陣していた。
元から第4艦隊に所属する艦と合計すると、空母4隻、巡洋戦艦2隻、重巡洋艦6隻、軽巡洋艦3隻、水上機母艦2隻、駆逐艦16隻。合計37隻。これに更に、ラバウルに展開した基地航空隊も戦力として加わる。
錚々たる顔ぶれであり、碌な戦力を持たないオーストラリア海軍程度なら、充分に撃退できる戦力である。
ただし、その殆どが今回の作戦に間に合わせるために大急ぎでかき集められた寄せ集めである事は否めない。戦闘行動は愚か、合同訓練すらされていない状態で、果たして統一行動が可能かどうか、不安が残る所である。
「部隊はMO機動部隊とMO攻略部隊、MO遊撃部隊の3群に分かれて行動します。機動部隊の方は「翔鶴」「瑞鶴」が中心となり、予想される敵反抗勢力の撃滅が任務。MO攻略部隊の方は輸送船団を伴い、モレスビーを目指します」
進路としてはニューギニア東部の珊瑚海を通り、ぐるりと回る形で、モレスビーを目指す。
その際に予想される敵勢力の脅威は、モレスビーやタウンズビルに展開する敵航空隊であるが、それを押さえるのが5航戦の役割となる。
そこで黒鳥は、彰人に目を向けた。
「第11戦隊は遊軍扱いだ。機動部隊と攻略部隊の中間に位置し、適宜、状況に合わせて両部隊の援護に入ってくれ」
「判りました」
黒鳥の言葉に、了承の意を伝える彰人。
遊撃部隊扱いと言うなら、却って望むところである。それでこそ第11戦隊の本領を発揮できると言う物だろう。
だが、
この際だから彰人は、作戦に感じている疑問をぶつけてみようと思った。
「万が一、米艦隊が迎撃に現れた場合は、どのように対処する心算ですか?」
問題はそこだった。
作戦参加部隊の戦力は強大であり、弱小のオーストラリア海軍が相手だったら、何の問題も無く蹴散らす事ができるだろう。
しかしもし、米艦隊がこちらの行動を察知して迎撃行動に出て来たとしたら?
寄せ集めの急造艦隊は、連携を取る事もできずに大損害を喰らってしまうのではないか? 彰人としてはそう思わずにはいられなかった。
だが、
「そのような事は考えられない」
黒鳥は言下に言いきった。
それに対し、彰人は訝るような視線を向ける。
「なぜ、そのように言い切れるのですか?」
「なぜって、君」
彰人の質問に対し、黒鳥は小馬鹿にしたような笑みを向けてくる。
まるで、そんな簡単な事も判らないのか、こいつは? とでも言いたげな顔である。
「知っての通り、米軍はつい先日、我が本土に攻撃を仕掛けてきた。あれほどの大作戦の後だ。敵が新たな作戦行動に出る可能性は低いだろう」
自信満々に言い切る黒鳥に、彰人は不審な目を向けた。
根拠が薄いと言わざるを得ない。それでは敵艦隊が出てこないと言う保証にはなっていない。
そう考えた彰人は、更なる反論に出た。
「たとえ大作戦の後でも、敵は必要とあれば出て来るのではないでしょうか?」
オーストラリアの重要性は、敵も理解してくるはず。帝国がオーストラリアを狙っていると判れば、多少無理してでも出て来るのでは、と彰人は考えたのだ。
まして、劣勢な状況で本土空襲などと言う大胆な事をやってのけた米軍だ。どんな手を使ってくるか、判った物ではない。
だが、黒鳥の考えは違うようで、尚も自信たっぷりな態度を崩そうとしなかった。
「それこそあり得んよ。作戦の通達には最高級レベルの暗号を使用している。連中に、それを解読できるとは思えんし、解読が間に合ったとしても、充分な兵力を送る余裕は無いだろう」
確かに、暗号解読は容易な物では無い筈。それを考えれば、黒鳥の言う言葉にも一定の根拠があると言えるのだが・・・・・・・・・・・・
彰人は尚も、不安をぬぐえずにいる。
と、
「11戦隊司令。君の懸念も判らないでもない」
それまで上座にあって、彰人と黒鳥のやり取りを眺めていた人物が口を開いた。
純白の第2種軍装に、中将の階級章を付けた人物は、この中では最高位の指揮官でもある。
「しかし、現状、敵はこちらに対応した動きを見せてはいない。慎重すぎる姿勢は大事だが、必要以上に敵を恐れて、行動を鈍らせるべきではないだろう」
「しかし、未発見の敵艦隊がいる可能性も考慮するべきじゃないですか?」
第11戦隊特信班が収集した情報によれば、現在までに太平洋での活動が確認されている米空母は「ヨークタウン」「ホーネット」「エンタープライズ」「サラトガ」「レンジャー」の5隻。
このうち帝都を襲ったのが「ホーネット」と「エンタープライズ」である事は判っている為、この2隻が出てくる可能性は流石に低いだろう。
更に「サラトガ」は、今年初頭に伊6潜水艦が雷撃し、撃沈には追い込めなかったものの大破させる事には成功している。これも出てくる可能性は低い。
しかし残る2隻。「ヨークタウン」と「レンジャー」については、未だに動向が掴めていない。
もし、この2隻が南太平洋に展開しており、こちらの動きを察知して出てくるような事態にでもなれば、艦隊は無警戒に航行している所を奇襲されかねない。
「いずれにせよ、それは憶測にすぎん」
彰人の言葉を、黒鳥は言下に斬り捨てた。
「井上提督も言われたとおり、必要以上に敵を恐れるような言動は味方の士気低下にもつながる為、慎んでもらいたい」
「・・・・・・・・・・・・判りました」
彰人としては尚も言いたい事はあったが、最高指揮官とGFの派遣参謀が太鼓判を押している以上、1個戦隊司令官がいくら反論したところで意味はないだろう。
結局のところ、それ以上反論する材料も見つからず、彰人は沈黙する以外になかった。
強烈な日差しが、燦々と降り注ぐ。
否、「燦々」などと言う、長閑な言葉では飾れまい。
正しく「ギラギラ」といったところだ。
日陰にいないと、本気でミイラにでもなりそうな照り付けである。
「暑い・・・・・・・・・・・・」
絞り出すような声が、少女の口から吐き出される。
もっとも、その声からして、干からびているようにひび割れている辺り、状況の深刻さは大変な物であるらしい事が判る。
ラバウルの海岸にて、3人の少女がパラソルを開き、並んで座り込んでいた。
中の1人、島風が、耐えかねたように腕を振り回した。
「あついあついあついあつい、アッツーーーーーーーイ!!」
「お願いだから、言わないで、余計に熱くなるから」
脱力気味に答えたのは黒姫である。
長い三つ編みの髪を地面にたらしながら、こちらもうなだれたようにして暑さに耐えている。
南国ラバウル。その日差しは、艦娘達にとっても耐え難いほどの苦痛となっていた。
「だって、暑いんだからしょうがないでしょ」
言い募る島風。そこには、常に溌剌さは感じられず、よく言って「脱水症状のウサギ」と言った風情である。
「島風ちゃんは良いでしょ、そんな薄着してるんだし」
そう言うと、黒姫はジト目で島風を睨む。
黒姫の言う通り、島風の服装は、姫神や黒姫と同じセーラー服仕様だが、上はお腹を大胆に出した仕様で可愛らしいおへそがしっかりと見えている上、スカートも股下辺りまでの短い物である。
おまけにスカートの下に穿いているパンツは、ありえない程に布面積が少なく、瑞々しいお尻が、ほぼ丸見えに近い。
本人曰く、「だって、この方が速いから」との事らしい。
花も恥じらう乙女なのだから、もう少し慎みを持ってほしいと思うのだが。
と、
「くー・・・・・・・・・・・・」
静かな声が、2人の傍らから聞こえてきた。
振り返る黒姫と島風。
そこには、彼女達の旗艦が、幸せそうな寝息を立ててスヤスヤと眠っていた。
その姿に、唖然とする黒姫と島風。
「・・・・・・・・・・・・ヒメちゃんってさ、何でどこででも寝れる訳?」
「お姉ちゃんだから・・・・・・」
呆れ気味に姫神を見る2人。
見れば、この陽気にも拘らず、姫神は全く寝苦しそうな様子を見せていない。時折吹く海風が、少女のポニーテールを揺らし、どこか牧歌的な雰囲気すらあった。
こと「寝る」と言う事に関して、姫神ほど才能に恵まれた者もいないだろう。
それにしても、
幸せそうに眠る姫神を見て、2人は顔を見合わせる。
自分達がこんなにも暑さで四苦八苦している横で、グースカ眠られていると、理不尽な怒りが湧いてくる。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
互いに顔を見合わせる。
そして、
ザッパーンッ
巨大な水柱が立ち上る。
「!? !? !?」
水の中から顔を出した姫神は、何が起きたのか判らない、といった感じに顔を出して周囲を見回している。
一方の黒姫と島風はと言えば、してやったりとばかりにハイタッチを交わしている。いかにも「いたずら大成功」と言った風情である。
どうやら二人で共謀して、姫神を海に叩き込んだようだ。
「お姉ちゃん、目、覚めた?」
「暑いからね、ちょっと涼んだ方が良いよー」
大爆笑する黒姫と島風。
対して、
「・・・・・・・・・・・・」
姫神は波をかき分けながら、無言のまま岸へと上がる。
そして、
ガシッ ガシッ
両手で二人の襟首を掴んだ。
「えっと、ヒメちゃん?」
「あの・・・・・・」
不穏な雰囲気を見せる姫神に、恐る恐ると言った感じに声を掛ける2人。
「・・・・・・・・・・・・そんなに暑いなら、二人も海に入れば良いでしょう」
対して、姫神は完全に座りきった目をしている。趣味のお昼寝をとんでもない方法で中断させられた事で、かなりご立腹の様子である。
普段、大人しいせいか、妙な凄味がある。
「い、いや、私達も、そろそろ帰ろうかな~って思ってたんだけど・・・・・・」
「帰ってラムネでも・・・・・・・・・・・・」
そう言って逃げようとする島風と黒姫。
だが、それを許す程、今の姫神は優しくない。
「遠慮しなくて良いですよ」
言うが早いか、姫神は容赦なく、二人を海の中へと叩き込んだ。
「何やってるんですか、もう・・・・・・」
「「「面目ないです」」」
水浸しになって座り込んでいる3人を見下ろしながら、腰に手を当てた小柄な少女が嘆息する。
髪をポニーテールに結い、白地の着物に赤い袴を穿いた少女は、困った顔で3人を見る。
少女は、航空母艦「瑞鳳」の艦娘である。
横須賀沖で本土を急襲した米艦隊を追撃した後、姫神達と共に。このラバウルへとやって来たのである。
米空母追撃戦で共闘した関係から、第11戦隊の面々とはすっかり打ち解けた関係になっていた。
「『間宮』の出張店でもあれば、行ってアイスでも食べるんだけどね」
「ラバウルじゃ無理じゃないですか。まだ」
瑞鳳の言う通り、ラバウルは占領したばかりであり、まだ設備が充分とは言い難い。
取りあえず、飛行場や港湾施設、司令部施設の建設は最優先で行われたが、娯楽施設の建設については、当分先になる見通しである。
そこへ、司令部のある方向から、こちらに向かって歩いてくる少女の姿があった。
長い髪をストレートに下ろした少女は、顔立ちが瑞鳳と似ているが、こちらはやや大人びたような印象がある。
「瑞鳳、タオル借りて来たわよ」
「ああ、ありがとう、祥鳳」
姉が差し出したタオルを受け取る瑞鳳。
祥鳳は瑞鳳の姉。祥鳳型航空母艦の1番艦に当たる。
今は姉妹で第4航空戦隊を形成。出撃の時に備えていた。
瑞鳳から受け取ったタオルを被る3人。
それにしても、
「何か、すごいね・・・・・・」
「うん。特盛だよね」
「『ばいんばいん』ですね」
黒姫、島風、姫神が視線を集中させる祥鳳。
その祥鳳の胸元、掛け合わせた着物の下では、大胆にもサラシのみの状態で露出している。その為、その豊かな胸の大きさは、否が応でも強調されているのだ。
そんな大胆な恰好をしている祥鳳もだが、どうしても視線は胸へと吸い寄せられてしまうのだ。
まして、自分達に無い
「あ、あの、そう見られると、流石に恥ずかしいんですけど・・・・・・・・・・・・」
と、自分の胸を隠すような仕草で、視線から逃げる祥鳳。
だったら、もうちょっと恰好に気を使え、と言いたくもなるが、それを言ったら完全に負けである事は言うまでも無いだろう。
まこと
「まあ、でも、悲観するほどでもないかもねー」
島風の言葉と共に、一同がくるっと視線を向ける先に佇む、祥鳳の妹君。
「な、何ですか?」
自身に向けられた視線に、戸惑う瑞鳳。
その胸は、傍らの姉の持つふくよかな盛り上がりと比して、美しいまでに平坦な水平線を刻んでいた。
そんな瑞鳳の肩を、黒姫と姫神の巡戦姉妹がポンと叩く。
「まあ何て言うか、元気出して、ね」
「私は元気ですよ!?」
「大丈夫です。信じていれば奇跡は起きます」
「何ですか奇跡って!? て言うか、
ラバウルの青い空に、瑞鳳の絶叫が木霊する。
その悲痛な叫び声は、南国の暑い日差しの中へと吸い込まれていくのだった。
第11話「南国戦線熱闘中」 終わり