蒼海のRequiem   作:ファルクラム

9 / 116
第8話「帝都初空襲」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは、帝都でも有名な高級料亭である。

 

 政界や財界、軍部の上層部の人間のみが利用でき、しばしば密会や談合等、表には決して出ない、裏社会の集会場としても使用されてきた側面がある。

 

 そこの大広間に今、数人の男達が集まっていた。

 

 純白の第2種軍装を着込んだ海軍士官たち。その胸に輝く階級章は、どれも大佐以上の者を示す高官たちである。

 

 だが、所属はまちまちである。

 

 艦隊を指揮する立場にある提督もいれば、鎮守府の司令官や参謀クラス、更には軍令部や海軍省の者までいた。

 

 彼等に共通して言える事は、皆、どこか陶酔めいた表情を顔に浮かべている事だろう。

 

 居並ぶ誰もが、自分達の存在こそが無上であると信じて、それを疑ってすらいなかった。

 

「順調ではないか、我が軍の作戦は」

 

 少将の階級を付けた男が、上機嫌にそう言った。

 

 彼の言う通り、真珠湾から続く作戦は全て成功裏に終わっている。多少、米軍の抵抗に苦戦を強いられた戦線もあるが、最終的な勝利は日本側に帰している事を考えれば、正に「順調」と言う言葉が相応しかった。

 

「向かうところ敵なしとはこの事よ」

「まさに『無敵皇軍』ですな」

 

 そう言って上機嫌に笑う一同。

 

 誰もが、帝国の快進撃を快く思っているのだ。

 

 米英軍何する物ぞ。

 

 我等がちょっと本気になれば、奴らなどたちまち降伏するに決まっている。

 

 誰もが、そうなる事を信じて疑っていなかった。

 

 しかし、

 

「まだだ」

 

 最も上座に座った男が、厳かな声で言い放った。

 

 他の者達とは明らかに異質な雰囲気を醸し出す男は、年齢は50代前半ほど。他の者達よりも装飾の多い軍服を身に着け、胸には勲章を輝かせている。

 

 それと同時に、今まで談笑していた者達も、居住まいを正して上座へと向き直る。

 

 それだけ、男の存在は際立っていると言って良かった。

 

「御前・・・・・・」

「まだだぞ、諸君」

 

 御前と呼ばれた男は、居並ぶ一同を見回して口を開く。

 

「この程度の事で満足してはならぬ。いずれ我が国は米英をも膝下に従え、世界に覇を唱える強国とのし上がるのだ。今はまだ、その途上の段階にすぎん。我らの理想が成るその日まで、気を緩める事、まかりならんぞ」

 

 その言葉に、一同は一斉に頭を下げる。

 

 御前の声は、彼等にとって天の声にも等しい絶対的な響きを持っている。誰も、この男の声を疑おうとはしないのだ。

 

 その様子を見て、御前も満足そうに頷く。

 

 自身の言葉を至上とし、絶対的に従う無敵の海軍。それこそが、男の理想である。

 

 そしてこれこそが、いずれ作り出される理想国家の礎となり、世界に王道楽土を齎すのだ。

 

「皆、これからよく働いてもらう事となる。今日はささやかながら、私からの激励と思い、大いに楽しんでくれ」

 

 そう言って、御前が手を打ち鳴らす。

 

 すると、廊下で待機していた仲居達が入ってきて、テーブルの上に次々と料理を並べていく。

 

 贅を尽くした料理の数々は、一般的な市民にはめったにお目に掛かる事ができない贅沢な物ばかりである。

 

 それらを目の前にして、宴会は更なる盛り上がりを見せようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼等の士気は高かった。

 

 何しろ開戦以来、一方的に押される状態が続いていただけに、鬱憤は嫌が上でも高まっていたのだ。

 

 それを一気に叩き返せる機会が訪れたとなれば、誰もが高揚して当然の事だった。

 

「ニミッツの奴も、粋な事考えてくれるぜ。こういう戦いを、俺は待ってたんだよ」

 

 上機嫌に腕を組みながら、笑みを交えて呟いたのは、ビル・ハルゼー合衆国海軍少将である。

 

 彼は今、彼の旗艦「エンタープライズ」と共に、目標深く接近していた。

 

 この作戦は必ずしも、戦術的、戦略的に意義がある作戦とは言い難い。僅か十数機の爆撃を繰り出したところで、敵に与える損害などたかが知れている事だろう。

 

 意義があるとすれば政略的な側面が強い。何しろ、一方的に叩かれる側だった合衆国が、曲がりなりにも反撃に成功し敵に一矢報いたとなれば、宣伝材料としては最高すぎるくらいだ。

 

 味方の士気は大いに上がり、敵を慌てふためかせる事もできる。

 

 何より、極上の痛快さが魅力的だった。

 

 目を転じれば、「エンタープライズ」の左舷側には、僚艦「ホーネット」が航行している。

 

 同じヨークタウン級航空母艦の姉妹艦に所属する「ホーネット」と「エンタープライズ」。ホーネットは次女で、エンタープライズが末の三女に相当する。

 

 今回の主役は「ホーネット」の方であり、「エンタープライズ」は「ホーネット」の護衛役として追随ていた。

 

 その「ホーネット」の飛行甲板では、今まさに攻撃隊が発艦しようとしている光景が見える。

 

「待っていろ、ジャップ共。このハルゼー様が目に物を見せてやるからな」

 

 そう呟くと、ハルゼーは獰猛な瞳を、進路前方にある標的へ容赦なく注いだ。

 

 

 

 

 

 一方、その「エンタープライズ」の飛行甲板では、1人の少女が待機中のパイロットへ、怒り顔で突進していくところだった。

 

 小柄な少女である。顔立ちも体型に違わず幼さを残しており、着ている軍服などは明らかにサイズが合っておらず、だぶだぶな印象があった。

 

 少女は目当てのパイロットの前に立つと、長いツインテール髪を逆立て、問答無用で怒りを爆発させる。

 

「ちょっとギャレットッ あたしの事無視するなって言っているでしょうが!! 何でさっさと先に行っちゃうのよ!!」

 

 呼ばれて、ギャレット・ハミル中尉は、面倒くさそうに振り返る。

 

 この「エンタープライズ」の戦闘機隊に所属する青年は、毎度のやり取りに辟易しつつも、律儀に少女に答えてやる。

 

「あのなエンター、お前がグースカとイビキ掻いて寝てるから、起こさないでおいてやったんだぞ。いわば俺の親切心だ。それくらいわかれよ」

「イビキなんて掻いてない!!」

 

 ギャレットの言葉に、空母「エンタープライズ」の艦娘は、両腕を振り回して怒りの咆哮を上げる。

 

 ヨークタウン型の末妹だけあり、その体格には幼さが残っている少女である。

 

 それでいて、誰が名付けたのかは知らないが、愛称は「ビッグE」だったりするから、世の中判らない物である。

 

「ビッグ(笑)E」

「『カッコワライカッコトジル』って言うなー!!」

 

 叫びまくるエンタープライズ。

 

 その様子を、周りにいるパイロットや整備員達は微笑ましそうに眺めている。

 

 この艦の名物「艦娘ショートコント」は、いつ始まるか判らない為、偶然居合わせた人間にとっては、ラッキーな事だった。

 

「だいたいギャレットは、いつもいつもあたしを子供扱いして!!」

「まあ、そう怒るなって。ほれ、アイスクリームやるから」

「ほんと!? わーい!!」

 

 受け取ったアイスクリームを、笑顔で頬張るエンタープライズ。

 

 そして、

 

「ハッ!?」

「ニヤリ」

 

 自分が担がれた事にエンタープライズが気付いたのは、全部食い終わった後だった。

 

「ギャ、ギャレットの、馬鹿―!!」

「乗せられるお前が悪いんだよ」

 

 殴り掛かってくるエンタープライズをヒョイヒョイとかわしまくるギャレット。

 

 とても、乾坤一擲の大作戦を前にした光景には思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フワフワとした感触に身を委ねると、幸せな気分になれる。

 

 何と言うか、何もせずに海に浮かび、波に揺られているような物だ。

 

 心地よい感触はいつまでも続き、そのまま舞い上がりそうになる程だった。

 

 ゆっくりと、その感触に身を沈めて行き・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「みきゅッ」

 

 子猫のようなくしゃみと共に、姫神は至福の座から転がり落ちた。

 

 普段、割と茫洋とした態度でいる事の多い少女が、珍しく、狼狽したように目を見開いていた。

 

 日課となっている、お昼寝をしている最中、唐突に鼻の頭がくすぐったくなり、先ほどのくしゃみに直結。眠りの園から強制的に引き戻されたわけだ。

 

 恨みがましく見つめる視線の先には、笑顔の少女の顔があった。

 

「ニシシシ」

「・・・・・・何か用ですか、島風?」

 

 どうやら、犯人は目の前の少女らしい。

 

 島風の手には、猫じゃらしのように束ねられた、彼女自身の髪の毛が握られていた。

 

 寝ている所をたたき起こされたせいで、不機嫌そうに言う姫神に対し、島風は面白そうに笑っている。

 

 島風が第11戦隊に配属されて数日。こうした悪戯の類は、これまでに何度かあった。

 

 昼寝中にたたき起こされること数回。おかげで、姫神はその度に不機嫌そうにしているのだった。

 

「ねえねえ、天気良いんだし。どっか遊びに行こうよ」

「結構です。こういう日は寝るに限ります」

 

 そう言うと、姫神は場所を変えるべく立ち上がり、島風に背を向けて歩き出す。

 

 どこか、島風がいない場所でゆっくりと眠りたい気分である。

 

 しかし現在までのところ、その試みが成功した事は無い。

 

 島風も案外目ざとく、どこで寝ていようが見つかってしまい、先ほどのように「奇襲」を喰らってしまうのだった。

 

「じゃあさ、じゃあさ、駆けっこしようよッ あたし超速いよ!!」

「1人でやってください」

「ぶー、ヒメちゃん、つまんない」

 

 頬を膨らませる島風。

 

 流石に言い過ぎたと思ったのか、姫神は足を止めて振り返った。

 

 沖合には、平たい甲板を持つ2隻の空母、第4航空戦隊の「祥鳳」と「瑞鳳」が停泊しているのが見える。元々は高速給油艦として建造された「剣埼」と「高崎」を空母に改装した艦である。タンカーからの改装である為、搭載機数は30機と少ないが、速力は28ノット出せる為、主力艦隊にも追随が可能である。

 

 同じ高速給油艦の「大鯨」も現在、空母に改装すべくドッグへ入渠していた。

 

 そんな光景を横に見ながら、姫神は島風をジト目で見やる。

 

「そんなに遊びたいなら、クロでも誘えばいいじゃないですか」

「クロちゃんとも遊びたいけど、ヒメちゃんとも遊びたいの!!」

 

 ガーッと腕を振り回す島風に、姫神は嘆息する。

 

 同じ第11戦隊に配属されたのが、こんな姦しい艦娘だとは思わなかった。

 

 島風と共に、これから戦っていかなくちゃいけないのかと思うと、姫神としては気が重くなるのだった。

 

 この手の事は今まで黒姫にまかせっきりだったので尚更である。

 

「とにかく、あなたに付き合う気はありません。そんなの暇なら、誰か他に・・・・・・・・・・・・」

 

 姫神がそう言いかけた時だった。

 

 突如、けたたましい警報が、鎮守府内部に轟き渡った。

 

 思わず、動きを止める姫神と島風。

 

「な、なに?」

「さあ・・・・・・・・・・・・」

 

 揃って首をかしげる2人。

 

 なぜ、このような警報が聞こえるのか? そもそも、この警報の正体は何なのか?

 

 周囲で作業中の作業員たちも、手を止めて戸惑ったように顔を見合わせている。

 

 誰もが、起こっている事態に対する認識が追いつかないのだ。

 

 何か、重大な事態が起こっているのかもしれない。

 

 そう思いつつも誰もが、まるで他人事のように警報を聞いている。

 

 その時だった。

 

「ヒメちゃん、あれ!!」

 

 島風が指差した方角に、姫神は視線を向ける。

 

 ほぼ同時に、周囲の職員たちも振り仰いだ。

 

 果たして、そこには、

 

 中高度を真っ直ぐにこちらに向かってくる、大型の航空機が、不気味な影を落としていた。

 

 両翼に1基ずつエンジンを装備した双発機。恐らく爆撃機か何かだと思われる。

 

 しかも、

 

「あれはッ・・・・・・・・・・・・」

 

 姫神は、驚愕の為に言葉が続かなかった。

 

 姫神の視線の先、

 

 向かってくる航空機の主翼に描かれたマーク。

 

 それは、白い星の形をしていた。

 

 間違いなく、米軍の機体である。

 

「敵っ!?」

 

 思わず声を上げる姫神。

 

 馬鹿なッ

 

 姫神の声を聴いた誰もが、信じられない面持ちで、それを見上げる。

 

 なぜ、本土に敵がいるのか?

 

 どうやって、ここまで侵入して来たと言うのか?

 

 そんな姫神達をあざ笑うかのように、星のマークを付けた大型爆撃機は、高速で飛び去って行く。

 

 一瞬遅れて吹き荒れる風が、姫神と島風のスカートや髪を大きくはためかせる。

 

 誰もが呆然とする中、

 

 姫神はいち早く動いた。

 

「行きましょう、島風」

「あ、ちょっとヒメちゃん!?」

 

 未だに戸惑い気味の島風の手を取って駆け出す姫神。

 

 あの飛行機が何者で、何処から来たのか、などは一切後回しだ。

 

 今は帝国海軍所属の艦娘として、一刻も早く成すべき事が存在していた。

 

 

 

 

 

 艦娘専用の短艇に乗り、横須賀港に停泊中の第11戦隊旗艦「姫神」に戻った姫神と島風は、すぐさま艦橋に駆けあがる。

 

 すると既にそこには、事態を聞きつけて集まったらしい、彰人と京介それに黒姫の姿があった。

 

「あ、ヒメお姉ちゃんッ 島風ちゃんもッ 一緒だったんだ」

「クロ、いったい何があったのですか?」

 

 駆け寄ってくる黒姫の手を取りつつ、姫神は視線を彰人へと向ける。

 

 その彰人も、普段の温和な顔に、険しい表情を張り付けているのが判る。

 

「よく聞いてくれ姫神」

 

 神妙な口調で、言葉を紡ぐ彰人。

 

 その声と表情から、何か尋常ではない事態が起こっているのではないか、と言う事が理解できた。

 

 そして、

 

 その考えは、杞憂ではなかった。

 

 彰人の口から飛び出してきた言葉は、姫神たちの予想をはるかに上回っていたのだ。

 

「帝都が、空襲を受けた」

 

 その言葉が、衝撃波となって一同を襲う。

 

 帝都が、

 

 最も安全で、防備も万全の筈の帝都に、敵の侵入を許したと言うのか・・・・・・

 

「帝都だけじゃないぜ。今の所、この横須賀に、名古屋、川崎、神戸も爆撃を受けている」

 

 京介も、苦虫を潰したような表情で告げる。

 

 同時多発的に発生した米軍の本土攻撃。

 

 それにより、帝国全軍が大混乱に陥っていた。

 

 だが、疑問も残る。

 

 まず、敵はいったい、どこから来たと言うのか? それになぜ、事前に察知する事ができなかったのか?

 

「提督」

 

 京介の言葉を受け、姫神は口を開く。

 

「ここに来る前、双発の爆撃機を見た」

「双発? 一式陸攻や、九六式じゃなくて?」

 

 彰人の質問に、姫神は頷きを返す。

 

 日本海軍も正式運用している一式陸上攻撃機や九六式陸上攻撃機も、双発を採用している。

 

 だが、あの時の機体は、それらとは間違いなく異なるシルエットを持っていた。

 

「それにさー 星のマークがついてるの見たよ」

 

 島風が姫神の言葉を補足しながら大きく手を振り回す。どうやら、その時の興奮を再現しているようだ。

 

 米軍爆撃機による空襲。これはほぼ、確定情報と言って良いかもしれない。

 

 しかし、まだ疑問は残っていた。

 

「そんな馬鹿な。双発の機体って言ったら、陸上機だろ? そんなもん、どっから飛んできたんだよ?」

 

 疑問を投げかけたのは京介だった。

 

 彼の疑問はもっともである。

 

 双発の機体は、基本的に陸上基地での運用を目指して設計された物である。

 

 しかし現在、日本本土、それも太平洋側の東京や横須賀を爆撃できる米軍拠点は存在しない。いったい、彼等はどこから飛んできたと言うのか?

 

 敵は未知の超長距離爆撃機(たとえばハワイか、アラスカのアンカレッジあたりから直接飛んでこれる程の)の開発に成功したのか、あるいはどこか帝国海軍が把握していない場所に秘密基地を建設していたのか?

 

 だが、どちらも現実的とは言い難かった。

 

 少し考え込んでから、彰人は顔を上げた。

 

「・・・・・・空母だね。消去法で行けば、多分それしか考えられない」

「え、空母って、それこそあり得ないんじゃないかな?」

 

 断言するような彰人の言葉に、黒姫が反論する。

 

「大きい陸上機を空母から飛ばすなんて無理だよ。それに、収容するときはどうするの? 発艦ができても着艦ができないんじゃ、片道攻撃になっちゃうよ」

「アメリカは、航空機の開発にも力を入れている。中には、空母から発艦が可能な爆撃機があるのかもしれない。それに、飛行機は海に捨てて搭乗員だけ、パラシュート降下なり海面着水させるなりして収容する手もある」

 

 この時、彰人の予想は一部を除いて的中していた。

 

 アメリカ軍は16機の陸上機、ノースアメリカンB-25ミッチェルを空母「ホーネット」に搭載し、日本近海まで密かに接近、主要都市に爆撃を加える作戦を敢行していた。

 

 これが所謂「帝都初空襲」である。

 

 使用機種にB-25が選ばれたのは、彰人が予想した通り、ギリギリ空母の飛行甲板から発進できる翼長だったからに他ならない。

 

 ただ一つ、彰人が予想しきれなかったのは、彼等が空母への回収を前提にはしていない、と言う事だった。

 

 爆撃を終えたB-25は、そのまま帝国本土を飛び越えて日本海へ抜け、中国奥地にある友軍の基地へと着陸する手はずとなっていた。

 

 だが、この作戦に、一部狂いが生じていた。

 

 攻撃隊を放つ予定地点に到着する前に、ハルゼー率いる第8任務部隊は、日本軍の洋上監視艇に発見されてしまったのだ。

 

 洋上監視艇は巡洋艦の砲撃で撃沈したもものの、その間に通報を許してしまった。その為、予定地点よりも手前でB-25を放たねばならなくなってしまったのだ。

 

 もっとも、その報告は、未だに第11戦隊の方まで届けられていなかったが。

 

 その時だった。

 

「旗艦『愛宕』より信号ッ 読みます《第2艦隊全艦、出撃用意成せ》!!」

 

 どうやら、第2艦隊司令部の方でも、何らかの事態に備える方針を固めた様子だ。

 

 しかし、全てが後手に回りすぎている。

 

 対応があまりにも、泥縄式になりすぎているのが気に食わなかった。

 

「提督、どうしました?」

 

 考え込む彰人に、姫神が静かな瞳を向けて尋ねてくる。

 

 そんな少女に頷きを返しながら、彰人は自身の考えを纏めていく。

 

 このまま一方的に叩かれるだけ叩かれたまま敵を逃してしまうのは、あまりにも間抜けすぎる上に、敵を喜ばせるだけである。

 

 ならば、こちらから仕掛けるのも一つの手だろう。

 

「姫神、『愛宕』に意見具申して」

「はい?」

 

 訝る姫神に、彰人は自身の考えを披露する。

 

 このままで済ませる心算は無い。

 

 指示を終えた彰人は、スッと目を細め、西の空、敵艦隊がいるであろう方角を睨みつける。

 

 帝国海軍は、やられたら倍以上にしてやり返すのだと言う事を、存分に見せつけてやらないといけなかった。

 

 

 

 

 

第8話「帝都初空襲」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。