東方変幻録   作:大神 龍

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第十話

 暗く湿った地下牢を進む。鉄格子の向こうには白骨化した人間だったモノが転がっていたり肉が少し残っていたりする遺体があったが、肉の残っている遺体には鼠がびっしりと張り付いてかじっていた。

 

 幻魔はその鼠達がプレジールを襲わないか少し不安だったが、とりあえず自分の主を信じて進んでいく。

 

 しばらく歩いていると微かは呼吸音が聞こえた。それは本当にか細く、常人ならば気付けないであろう程か細い息遣い。彼がその音に気付けたのは彼自身が人間としての枠を超えているからなのであろう。

 

「ご主人。この音、聞こえますか?呼吸音なのですが」

 

「ん……まぁ、一応聞こえるな」

 

「見に行ってみますか?」

 

「そうだな」

 

 二人は音の正体を目指して歩きはじめる。

 

 

 * * *

 

 

 しばらく歩くと、血の匂いがし始める。

 

 おそらく、この先にいるのだろう。そう確信する。

 

 

 

 更に進むと、ある鉄格子の向こうから呼吸音が聞こえた。

 

 そこは別段他の牢と変わりは無かった。

 

 しかし、その先にはここまで見なかった生きた人間がいた。

 

 その人間は少女のようだった。だが、全身血塗れな所を見ると、かなり悲惨な目にあったのだろう。と容易に想像できる。更に言えば、幻魔はその痛みも理解できた。が、今はその事は置いておくとしよう。

 

 服は布一枚というもはや服とは呼べない、ただのボロ布というのが相応しい様なモノを着ていた。髪色は血塗れて分かりにくいが、おそらく青髪だった。両手足には醜い鎖があり、それは壁に繋がれていた。

 

「……ご主人。どうしますか?」

 

「…呼吸はしてる。傷は深い。血も少ない。そんな人間が前にいる。貴様はそんな奴を見てどう行動する?」

 

「それは、行動で示せばいいという事でしょうか」

 

「そうだ。さぁ、やってみろ」

 

「御意に」

 

 瞬間、銀のナイフで鉄格子を切り裂くと、瞬時に少女に近づき、カードを一枚使い傷を完治させ、鎖をナイフで断ち切ると、カードを使い水を生み出して少女を汚していた血を洗い流す。そして、更にもう一枚使い一気に乾かすと、虚空から毛布を取り出して少女を包む。

 

 そこまでやってからプレジールの方へ向き直り、

 

「これでよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、それでいい。お前はその優しさを忘れるな」

 

「……はい」

 

 儚げは笑みを浮かべそう言うプレジールに気圧されて幻魔は頷く。

 

「よし。もう行くか」

 

「良いんですか?一人で」

 

「十分だ。それに、大勢いてもお前らの手が回らんだろう?」

 

「いや、どうにかなると思いますが…」

 

「もし出来るとしても、お前らは人間だ。それで倒れられても困るからな」

 

「…………」

 

 人間。さて、人間という枠に幻魔は、クレアは収まるのだろうか。否、収まらない。もう人間はやめている。だが、それでも彼は自分達の事を人間という。正直、本音を隠すのが下手だと思った。おそらく彼はただ単に自分達に負担をかけまいとしているのだろう。城の城主としては優しすぎる。だが、否、だからこそ、彼はプレジールの事を羨望の眼差しで見るのだった。

 

「さぁ、行くぞ」

 

「御意に」

 

 彼らは歩きだす。自身の帰る場所へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 城に着くと、門の前にクレアが立っていた。その周りに大量の吸血鬼の遺骸を侍らせて。

 

 彼らがクレアの近くに降りたつと、クレアは深くお辞儀をする。

 

「お帰りなさいませ。ご主人様。この者達はご主人様の留守の間にこの城へと入ろうとした不届き者共です。完全に掃除を終わらせておらずすいません」

 

「いや、良くこの城を守ってくれた」

 

「ありがたきお言葉。して、そちらの子供は?」

 

「あぁ、今日からこの城で働いてもらおうかと思ってな。とにかく、先に城内へ入ろう」

 

「了解しました」

 

 プレジールに言われ、門を開くクレア。プレジール達はその門をくぐり城内へと入って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 謁見の間とでも言うのだろうか。あのだだっ広い空間のくせに奥の方にある階段の上に椅子があるだけという正直空間の無駄遣いと言ってやりたいような場所にプレジールとクレア、幻魔が集まっていた。

 

 プレジールは主だからなのだろう、椅子に座っており、二人は階段の下で跪いていた。

 

 重苦しい空気の中、ついにプレジールが口を開き――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、疲れた。クレア、幻魔。二人とも楽にしていいぞ。正直あの口調をこれ以上続けたくない」

 

 

 威厳なんて無かった。プレジールの表情から一発で本気で疲れているのだと分かるくらいのだらけた様子だ。それを見たクレアは、

 

「プレジール様。ちょっとスイッチ切るの早すぎません?」

 

 もう少し遅かったらよかったのか?とか思わなくもないが、たぶんそう言う話じゃない。

 

「いや、ハッキリ言って幻魔が来た手前かっこつけたくてこの口調を続けていたが、もう疲れたんだ。せめてあの少女が起きるまでこの状態でいさせてくれ」

 

 もう本当に限界そうだった。

 

「あの、ご主人。もう寝ますか?正直ご主人の生活サイクルは吸血鬼的には最悪なのでは?」

 

 昼前には起きて真夜中になる前には寝ている彼は、確かに吸血鬼としてはかなりひどい生活をしている。人間で言うなら昼夜逆転の生活に近いのだろう。いや、人間の中には確かにそう言う生活をしている人もいなくはないと思うが、吸血鬼にとっては致命的にも等しいだろう。

 

「幻魔。それは言うな。私自身も自覚しているがアレはもはや癖なんだ」

 

 癖で済まして良いのか?と幻魔は思うが、彼がそれで良いというなら良いんだろう。

 

「そうですか。では、彼女が起きるまで私達もここで待機という事でよろしいのですね?」

 

「解散にするか。真夜中も過ぎたからな」

 

 即答。本当に威厳の欠片も残ってないように見える。というか、これが彼自身なんだろうな。と幻魔は思った。

 

「よし。皆自室に戻れ。これは城主命令だ。ほら、行った行った」

 

「はぁ……わかりました。では失礼させていただきます」

 

「明日には威厳戻しておいてくださいよ~」

 

 プレジールの発言に弦間はあくまでも執事のように振る舞い、クレアは友人のように答えてその場を立ち去る。

 

 誰もいなくなった謁見の間で、プレジールは椅子の背もたれに体重をかけて呟く。

 

「明日は少し疲れそうだな」

 

 そう言って彼は体を蝙蝠に変え自室に戻るのだった。




 プレジールのカリスマがブレイクしたらああなる。正直こうなるなんて考えもしなかったよ!!(`・ω・´)ドヤッ

 それにしても謁見の間に対する突っ込みがひどすぎる。いや、自分が思ってた事なんだけどね?それでもほら、どう見てもひどい(@_@;)

 では、次回も頑張りますぜ!(`・ω・´)
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