振るわれる拳。幻魔は即座に日本刀で斬り上げるが、サーヴェに当たる寸前で刃が停止する。
一瞬驚くが瞬時に日本刀から手を離すと左手で相手の拳を掴みそのまま力任せに引き寄せ、右手でしっかりと刀を固定する。
サーヴェはすぐに幻魔の真意を見抜き、全力で身体を捻り刀を回避。
だが幻魔はそれを狙っていたのか、日本刀から右手を離すと首を掴み、ドォン!!という爆発音と共に爆炎が発生し、サーヴェの顔を隠す。
幻魔はそのまま体を少し下げ、右手を離すとバク転の要領でサーヴェに蹴りを放つ。
サーヴェはその蹴りでふわりと宙に浮く。
幻魔は着地すると同時に前へと出てサーヴェの腹部に正拳突きを叩き込む。
バチィッ!!と音が鳴り、サーヴェの全身に青白い光が一瞬走り、正拳突きの勢いでサーヴェは吹き飛ぶ。
二、三度バウンドし、勢いよくサーヴェは壁にぶつかる。
「っててて……刀を止めただけじゃダメか…じゃあ次は何を止め――――
言葉は最後まで続かない。
いつの間にか眼前に迫っていたカードを反射的に腕で防御すると同時に失敗したとサーヴェは気付く。
しかしもう遅い。
カードは鎌鼬へと姿を変えサーヴェを切り刻む。
「ッァ…!!」
神経を外側へと引きずり出されたような痛みにサーヴェは顔をゆがめるが、その痛みを気合いで捻じ伏せると、彼は幻魔を見――――
「――――どこを見ている?」
ドゴッ!!と鈍い音がし、うなじに強烈な一撃が入る。
それにより視界が一瞬白く染まり意識が途切れかける。
もはや痛みすらも遠い向こうに感じられるほどの状況で、しかしそれでも彼は笑う。
「ハッハァ!!まだだな!!」
勢いよく回し蹴りを放つが、幻魔の左手に受け止められ、しかもしっかりと掴まれ引っ張られると、そのまま幻魔はハンマー投げの様に回り出し、投げ飛ばす。
「ぅ…ぉぉぉぉぉおおああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!??」
ドゴォォォォォォォォォンッッッ!!!と轟音を発しながらサーヴェは城に激突し、崩れ落ちる。
「……しまった…壁にへこみを作ってしまった…」
幻魔は投げた後に気付くが、後で直せばいいかと考え、相手を見据える。
「ハァ…!ハァ…!!ちくしょう…最初に油断しすぎた…これは一度仕切り直した方が良いか…?」
ぶつぶつと呟き、サーヴェは考え直すが、
「いや、まだ戦えるな…」
すぐに結論を出し、立ち上がる。
「まだ、やるんですか?」
「もちろん…僕はまだ負けを認めない…!!」
「……そうですか。では――――
『あなたはもう太陽を見る事は無い』」
ゆらり、と幻魔の姿がブレる。
咄嗟にサーヴェは幻魔に能力を使うが、ゴッ!!と鈍い音の後、サーヴェはその場に崩れ落ちる。
ザッザッとわざと音を立てるように歩き、サーヴェの前に来ると、幻魔はサーヴェを見下ろす。
「もう能力は大体解けた。停止というよりも保持に近い。ということは『保つ能力』というところか。ただ、それなら自身の状態や相手の状態を保つ方が効果的だろうが…生命には何か制約が掛かっているみたいだな」
サーヴェは幻魔の言葉に絶句する。
「(なんで…どこでばれた!?)」
「刀を止めた瞬間だ」
ドクンッ!とサーヴェの心臓が大きく跳ねる。
「(読まれた…?心の中を…!?)」
「なぜ読まれたか…そう思っているなら大間違いだ。私は人心を読む事は出来ないさ。ただ、観察してはじき出した答えを言うと皆決まってそういうからな。だから、私は相手が質問する前に答える。自分の手の内を全て見破られた絶望を味合わせるためにな」
ぞっとする。彼の言葉に、ではない。彼の表情に、だ。
幻魔は薄らと、笑っていた。子供の様に。だが、それはまるで虫を潰す子供の様な笑顔だ。
だからこそ、サーヴェは恐怖した。
だからこそ、サーヴェは…
「その余裕が、命取りだぁァァァァァ!!!」
幻魔の喉を切り裂こうと手刀を繰り出し――――
「――――だからお前は私に勝てない」
無情にも、幻魔のつま先で地面を蹴り、そこから発生した前面への爆発でサーヴェは吹き飛ばされる。
「ガアアァァァァァァァァッ!!!!!」
数mも吹き飛び、門の前で止まる。
「ゲホッ…ゲホッ…っつ~……だけど、これで完成した…ハハハハハッ!!俺の勝ちだ!!」
瞬間、光り出す大地。それは五芒星を描いており――――
「コレは…魔法陣!?」
「アハハハハッ!!さぁ喰らえ!焼かれろ!!『神の裁き』起動!!刃向かうモノに制裁を!!」
サーヴェの声に呼応するように魔法陣は一際大きく輝き――――
――――ドゴオォォォォォォォォォォッ!!!
爆発音。そして、近くなら目を閉じていようと失明させるほどの凶悪な光。最後に全てを飲み込む白い炎。その炎はまるで全てを浄化せんと紅魔城を食い尽くす。
光が消え、広い炎が消えた後、幻魔は目を開ける。
そこは全てが炎とは真逆の黒。目の前に立つのはサーヴェ。だが、その体に傷は無い。だが、右手が戻っていない所を見るに、完全な回復ではないようだった。
「…浄化の炎…効果は自身の敵の殲滅と自身及び味方の治癒か」
幻魔はすぐにその効果を察し、だが威力とコストを鑑みて再発動の可能性はほぼ皆無に近いと考える。
「今日は、もう終わりにするよ。じゃあね!!」
それだけ言うと、彼はその場から消え去る。
「…仕留め損ねたか。また、会う事になるんだろうな」
それだけ呟くと、彼は城へと目を向けるのだった。