東方変幻録   作:大神 龍

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第三十三話

 移動は一瞬。その場にいた人物たちはその移動に気付けなかった。

 

 本人たちを除いて。

 

 ルーミアは軽く前に出る。それだけでナイフは躱される。

 

「テレポート如き、目で追えるくらいに遅いわ」

 

「ッ!!」

 

 瞬間、放たれた闇の刃が地面から噴き出る。

 

 幻魔は数瞬の差で刃の有効範囲内から転移で脱出するが、息つく暇も無く、闇で作られた槍が飛んでくる。

 

 即座にナイフで軌道を逸らすが、反撃に転じる隙すらなく、闇で作られた剣が振るわれる。

 

 瞬時にナイフで剣を防ぎ、左手でナイフをルーミアに突き立てる。が、

 

 ガィンッ!!と金属音と共にナイフが弾かれ、地面に刺さらずに噴き出た闇に喰われて消える。

 

「爆発程度、かすり傷にすらならないけど、爆風と煙がちょっと邪魔だから消させてもらったわ」

 

「ばれてるって事か…!!」

 

 幻魔は苦笑いをするが、瞬時に真面目な顔に戻り、言葉を紡ぐ。

 

「『現想』解放」

 

 言葉と共に幻魔の周囲に無数のナイフを生み出し、両手にもナイフを持って突撃する。

 

「数を増やしたって事?でも、そんな幻影(ニセモノ)で勝てると思われてるなら心外ね。鬼と同じにしないで」

 

 (つち)のような形をした闇が生み出したナイフごと幻魔を叩き潰す。

 

 数瞬の無音の後、爆音が地面を伝って響く。

 

「はぁ……期待外れも良い所ね」

 

 そう言ってルーミアは左手を後ろへと振るう。

 

 キィンッ!!と軽い音が響き、闇でコーティングされた爪でナイフを掴まれていた。

 

「転移を単発で使うのは愚策よ。もう少し複雑にしないと。例えば――――」

 

 言いながら無造作に右手を振り――――

 

「――――今みたいのかな。効かないけど」

 

 幻魔が出現するとともに無造作に振るわれていたはずの右手によってナイフを叩き落とされる。

 

「殺気を隠しきれてないわよ。迅真はそこらへんは大丈夫だったけど、迅真の場合はそもそも私を殺す気が無かったから何とも言えないけどね」

 

「うるさい!!『幻葬』解放!!」

 

 言葉と共に展開されていた闇がかき消される。

 

「能力をかき消すような能力使用?それとも、幻想を葬るのかしら?」

 

 にやりと笑いながらルーミアは考察を述べる。

 

「(ほとんど正解だ…クソッ!!)」

 

 『幻葬』。文字通り、幻を葬る力。変幻の幻の部分の力だ。能力など、非現実的な力を一時的に消す力。だが、これにはかなりの体力を消費する。

 

 実際、闇を消しておけるのなんて数分だろう。だからこそ幻魔は全力の一撃を振るい続ける。

 

「ほらほら。届いてないわよ?もう少しキレのある動きをしなさい」

 

 へらへら笑いながらルーミアは言い、幻魔は、更に速度を上げる。

 

「(あいつそっくりな笑みをしやがって…)」

 

 地面と上空に一本ずつナイフを投げ、地面に投げたナイフがルーミアの影に刺さると同時にルーミアの動きが一瞬止まる。

 

 その一瞬を逃さず、ナイフをルーミアに突き立てる。

 

 しかし、ナイフが届く前に地面に刺さったナイフが砕け散り、突き刺そうと伸ばしていた腕を蹴り飛ばされる。

 

 だが、すぐさま反対の手でナイフを振るう。

 

 まさか更に押して来るとは思っておらず、ルーミアは一瞬反応が遅れ、反射的に左手で掴む。

 

「ふふ。まさか距離を取ろうとしないなんてね。ちょっと想定外」

 

「どうせ…効かないだろうに」

 

「さぁね?」

 

 直後、幻魔が手を離すと同時にナイフは肥大化し、破裂すると同時に中から無数の茨が飛び出す。

 

 その茨はルーミアを縛り付け、地面に繋ぎとめる。

 

「『聖者の茨』……妖怪の類を束縛する茨…効くなんて思ってないがな」

 

 言いながら幻魔は右手に持ったナイフをルーミアの心臓部に向かって突き立てる。

 

 

 

 

 

 

 しかし、

 

 

 

 

 

 

「まだ甘い」

 

 ルーミアの言葉を疑問に思う事すらままならないまま、突如突き出て来た()()に吹き飛ばされる。

 

「ッ!?」

 

 闇ではなく、地面に吹き飛ばされたことに困惑しながら空中で体勢を立て直し、ナイフを投擲する。

 

 だが、ナイフは急激に膨れ上がった茨に突き刺さる。

 

「別に……闇を消したって言っても、表面上だけなのよ。『内部にある闇』までは消せない。だからこういう事ができるのよ」

 

 にやりと笑ってそう言うルーミア。

 

 幻魔は舌打ちをしながら更なる武器を解放する。

 

「『現葬』解放……消え去れ!」

 

 直後、地面が消失し、無数の銀のナイフが代わりの様に敷き詰められていた。

 

 ルーミアは一瞬驚くも、あえてそのまま落ちる。

 

 ガシャァァン!と金属音を立ててルーミアは着地する。

 

 瞬間、表面のナイフが溶岩へと変化し、更にその下のナイフが強烈な暴風へと変わり、瞬時に竜巻になってルーミアを飲み込む。

 

 しかし、それで終わらず、更に幻魔はナイフを投げつける。

 

 それは竜巻に当たると同時に放電し、竜巻は雷を纏って威力が増す。

 

 そして、竜巻は1分もしないうちに霧散する。

 

「いやいや……さすがにちょっと痛かったかな。じゃ、やる気出すわよ」

 

 そう言うと、ルーミアはリボンに手をかけ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――刹那、あらゆる反応速度を超越し、幻魔の身体は闇に飲み込まれて消えたのだった。




 テレポートが目で追えるって言ってますけど、実際は転移の際の霊力の残滓を目で追ってる感じです。それはそれですごいような気が…
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