目を覚ますと、目の前には星が輝いていた。
力を込めると、体が動く。先ほど使った技は副作用で身体が動かなくなるのだが、動くという事はかなりの時間が経っているのだろうと思う。もちろん、目の前に星空が広がってる時点でそれは分かり切ってはいるが。
「……なんで、無傷なんだ?」
「結界の事、知ってるんじゃないの?」
声に反応して立ち上がりつつ身構えると、そこにいたのはなぜか座っているルーミアだった。
「…私が知っているのは、死ぬほどの攻撃を受けても死なないだけの結界。ただ、強制的に叩き起こされるから気絶する事も出来ずに永遠と苦しむって奴だ。もちろん、結界を解いても傷は治らないからそのまま死ぬ」
「随分とまぁ恐ろしい結界ね。だから改良することになったのねぇ…」
「ってことは、もう効果が全然違うんだな?」
「貴方の説明と比べればほとんどね」
ルーミアはそう言って立ち上がる。
「まず、この結界は決闘用の結界。この結界内で死んだ場合、結界外へと無傷の状態で放り出す。ただ、無傷とはいっても死ぬほどの衝撃を受けた直後だから気絶してるわ」
「本気で戦って、誤って殺さない為の結界って事か」
「そんなところね。それで、他に聞きたいことは?」
「……薙浪迅真。あいつの情報」
「……私にそれを聞くなんて、本当に肝が据わってるというかなんというか……いいわ。教えてあげる。っていっても、すでに死んでる人間を語るなんてそんなに意味は無いと思うけどね」
「知りたいだけだ。それとも、それすらも許せないか?」
「えぇ、許せないわね。まぁ、説明するけど。簡単な説明で良いんでしょ?」
「問題ない。むしろ、起承転結の起と結だけで構わない」
「分かったわ。ある日の夜に出会って、色々あって千年と数百年後くらいに死んじゃったわ。それが大体300年前くらいかな。もっと前かもしれないけど」
「なるほど…って、本当に簡潔だな」
「それで十分だからね。多くを語る必要なんてないわ」
「そうか……分かった。後は……特にないな」
「そう。ならいいわ」
ルーミアはそう言うと、どこかへと歩いて行ってしまう。
「……さてと。ここはどこか…少し見回ってみるか」
幻魔はそう呟くと、立ち上がって彼方此方を見ながら歩いて行く。
* * *
「…やってしまった」
そう嘆く幻魔の周囲には天狗の群れ。
「夜だから見難いんだよ……はぁ、それ以前に負けたばかりでへこんでいるというのに……」
「かかれぇ!!」
「ったく。覚悟はできてるんだろうな?」
襲い掛かって来た一人の白狼天狗。大ぶりの袈裟斬。
だが、即座につまむ様に人差し指と親指で掴むと、刀の形状のまま爆弾へと変え、その白狼天狗を蹴り上げる。
チュドォンッ!!と轟音を立てて爆炎が広がり、近くにいた他の天狗を巻き込む。
続いた二撃目は突き。だが、攻撃はそれだけでなく、周囲から緑色の弾丸の様なものまで飛んでくる。
「妖力弾か…初めて――――でもないか。主の槍だって同じだろう」
呟きながらも突きを回避しながら妖力弾をナイフで撃ち落としていく。
「ふむ。ナイフが不足してるな…」
盾が飛んできたので掴もうとするが、瞬時にその下に隠されていた刀に気付き、一度叩き落とす。
そして、その盾を投げて来た白狼天狗はそのまま殴り掛かってくる。
「へぇ?刀が無くても戦うのか」
拳を逸らしながら幻魔が言う。
「この山を守る者としては当然だ!」
「そうか…その心意気、なかなかいいな。その心を忘れるな」
「言われるまでも無い!!」
おそらく全力の蹴り。山を何十、何百と駆け回って来たその脚力は、並の人間なら一撃で息絶える。幻魔がくらっても致命傷とまでは行かなくとも、大怪我はするであろう。
だから、幻魔は前へと出る。
「ッ!!」
「力が入らないだろう?」
直後、よろけると同時に脳天に振り降ろされた肘を避けることが出来ず、その白狼天狗は意識を手放す。
「ふぅ…次は誰――――っ!!」
言葉を最後まで紡ぐより早く速く、その拳は放たれる。
咄嗟に体を反る事で回避するが、続けて振り下ろされた拳。
「っつぁ!!」
両腕を使い拳を逸らしながら自分自身も移動し、何とか回避。しかし、体勢を立て直せず、そのまま地面に倒れ込む。
すぐさま立ち上がって時には無数の弾幕に囲まれていた。
「…別に、転移しても問題ないか」
気付くと同時に転移。弾幕の群れを回避するが、代わりに天狗の群れの中に飛び込んでしまった。
瞬間、妖力弾が放たれるが、すぐさま上空へと跳躍して逃げる。
が、何時の間にかすでに攻撃に入っていた天狗の踵落としが迫っていた。
咄嗟にカードを取り出し、上空だけへ向けた爆風を発生させ、天狗を吹き飛ばす。
「危ない…しかし、中々バカにできないな。信念が強い。さすがに私じゃあ先に疲労して倒れるか…どうしたものか」
言っている間にも、天狗の攻撃は続く。が、数分後、
「そこまでだ」
声が響くと同時、天狗たちの動きが一斉に止まる。
後ろから出て来たのは一人の男。着ている服の柄までは分からないが、和服だろう。
「ふむ。君が侵入者か。ふふ。やる事があの男に似ていて驚いたな。まぁ良い。お前達。昔のあの侵入者と同じことをする。構わないな」
「て、天魔様!良いのですか!?」
「当たり前だ。それに、止められないだろう?」
「い、いえ!おそらくどうにかなったかと!」
「ふん。それならば、私が勝てるだろう?それとも、私はお前達より弱いと?」
「そ、そんな事は…!」
「良い。分かっている。とにかく下がっておれ」
「は…はい」
意見を言っていた天狗は苦い顔をしながらも下がる。
「さて。待たせてしまったな。私の名は恂覇。君は?」
「黒焔幻魔。今は旅人だ」
「そうか…本当に似ているな。それで、準備はよろしいか?」
「あぁ、問題ない。どこからでもかかって来な」
「では、行かせてもらおう」
瞬間、恂覇の姿は掻き消えた。