東方変幻録   作:大神 龍

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第三十七話

「どうしようか」

 

 ふと呟く幻魔の前には一人の少女。青い髪で、赤い球の様な飾りが二つ付いている髪留めを使いツインテールにしている。

 

「はぁ…とりあえず、このまま窒息されても困るから引き上げておこうか」

 

 幻魔は川に沈みかけていた少女を抱え上げ、こうなった原因を考える。

 

 

 * * *

 

 

 発端は朝の事。幻魔達は食事をした後、それぞれの自由時間になり、その時幻魔はふと川魚を捕りに行こうとした。

 

 釣竿は落ちていた枝を変化させて、釣り針と糸は持っていた物を利用して作成。エサは川で見つけて釣りを始める。

 

 サラサラと音を立てて流れる川。たまに吹く風に安らぎを感じながら幻魔が眠気と戦い、釣りを続ける。

 

 最低限の3匹を越えてなお釣りを続ける幻魔。

 

「……寝るのもアリか」

 

 座っている地面を変化させて背もたれを作り、寄り掛かって釣りをする。

 

「……久しぶりだな…ここまでのんびりしたのは。なんだかんだ言って忙しかったからな…そもそもここの危険度を決めるのに時間がかかり過ぎてずっと警戒しっぱなしだったからな…はぁ。誰も居ないし、寝よう」

 

 途切れ途切れになっていた意識を手放し、眠り込む。

 

 

 * * *

 

 

 ふと目が覚めると、釣竿が大きくしなり、それと同じくらい大きな力で釣竿が引っ張られていた。

 

「…?…!うおっ!?なんだこれは!?」

 

 咄嗟に釣竿を強く引く。すると、緑色の何かが水面に浮かび上がる。

 

「……カバン?なぜ…?」

 

 しかし、直後再び力強く引っ張られる釣竿。

 

 幻魔は今度は全力で引っ張り上げる。すると、ザッパーンッ!!と大きな音を立ててカバンが釣れる。

 

 

 

 少女付きで。

 

 

 

「……うぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「うるさい!!」

 

 突然悲鳴を上げる少女を反射的に釣竿を振り下ろす。

 

 ドパンッ!!と音を立てて水面に叩きつけられる少女。

 

 数秒後、ぷかぷかと浮かび上がりながら川の流れによって流されていく少女。しかし、釣り針が引っかかっているため、ある程度進んだところで弧を描くように岸へ近づく。

 

 そして、話は冒頭へと戻る。

 

 

 * * *

 

 

「って事で、つれて来た」

 

「アホかッ!!」

 

 山のルールは山の住人に聞くのが一番だ。という事でとりあえず困ったら骸鬼。

 

 突然魚と少女を抱えて帰って来た幻魔を見た骸鬼は気が気ではなかった。

 

「河童をつれて来るなんて…アホかっ!帰して来なさい!!」

 

「フン。拾ったものは最後まで面倒を見る。飼い主の鉄則だぞ?」

 

「そもそも飼う許可をした覚えもないし飼った覚えもないしそもそもそいつは人だ!!飼うな!!」

 

「河童だから人ではないだろ?」

 

「あ~も~こいつはぁ~!!!」

 

 ウガーッ!!と頭を掻き毟りながら叫ぶ骸鬼。

 

「おーい。骸鬼?…って、何か、前も見た事あるような光景」

 

 そういってひょっこり現れたのは萃香。

 

「萃香姐さん…姐さんからも言ってくださいよ。こいつ、河童を捕まえて来たんです」

 

「は?河童?」

 

 萃香が視線を幻魔に向けると、確かに河童を抱えている。

 

「……とりあえず、川に帰してこないとね」

 

「お前もそう言うのか…」

 

 幻魔はため息を吐き、

 

「せめて目が覚めるまで、って言うのはダメか?放置はさすがにどうかと思う」

 

「…いや、それをするにしても川の近くにしてくれ。河童と天狗にはかなり怖がられているからな…出来るだけ離れていたい。宴会の時だけで十分だ」

 

「私はそこらへんどうでも良いんだけどね。骸鬼がこう言ってるから同意しとくよ」

 

「なるほどな。なら、被害は俺だけに留めておこう」

 

「あぁ、そうしておいてくれ」

 

 幻魔はそのまま河童だけを担いで出て行った。

 

「骸鬼?あんた、そんなに他人との関係を気にしてたのかい?」

 

「一応、気にはしてますよ。付き合いにくいですからね。全体的に」

 

「そうかい…まぁ、だからって言って私は態度を変える気は無いけどね」

 

「分かってますよ。俺が勝手にそうしてるだけですから」

 

「そう。なら、それが報われる日が来るのを願ってるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 萃香はそれだけ言うと、出て行ってしまう。

 

「……中々難しいよ…なんせ種族として怖れられてるからな…地道にやっていくさ」

 

 誰に言うでもなく、骸鬼はそう呟くと、とりあえず幻魔の盗って来た魚を持って厨房へ向かう。

 

 

 * * *

 

 

「ほら、起きろ。さすがに寝すぎだ」

 

 ペチペチ、と頬を叩く幻魔。

 

「ぅ……うぐぅ…………ハッ!!」

 

 目を開いた少女は、幻魔の姿を見ると同時に急いで距離を取る。

 

「に、人間!?なんでここにいるの!?」

 

「鬼と天狗に許可を貰ったが?ダメだったか?」

 

「あの鬼と天狗から許可…?人間が!?そんな訳無い!さては人間じゃないな!!」

 

「……人間だよ。紛れも無く。それで、具合は大丈夫か?気持ち悪かったりしないか?」

 

「ひゅい?そ、それは大丈夫だけど……なんで?」

 

「そりゃ釣り針に引っかかったんだからな。カバンに」

 

「カバン!?うわわわわ!!穴とか開いてない!?大丈夫!?」

 

 必死の形相で彼女はカバンを見回し、

 

「よ、よかった…穴は開いてない…ふひゅぅ…全く。心配させないでくれよ」

 

「いや、そっちが勝手に慌てたんだろ?それじゃ、私はもう行くぞ」

 

「ひゅい?もう行くの?」

 

「あぁ。用はもうないからな。それとも、お前は私に何かあるのか?」

 

「え?あ~…名前くらい、教えてくれても良いかなぁって思って」

 

「…黒焔幻魔。お前は?」

 

「河城にとり。よろしくね」

 

「あぁ、よろしく。って事で私はもう行く。何かあったら鬼の村の骸鬼の家まで来てくれ。しばらくは居る予定だ」

 

「骸鬼さんの家か…なら大丈夫。あの人は鬼の中で一番安全だからな!」

 

「そうなのか…あぁ、あいつの性格と村から少し離れた所に家が建ってるって事が原因か」

 

「じゃ、またな!幻魔!」

 

「おう。またな。にとり」

 

 そうして、二人は別れるのだった。

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