東方変幻録   作:大神 龍

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第四十話

 数度の斬撃。しかし、鳳花はその全てを防ぎ、足払いを放つ。

 

 幻魔はそれを鳳花の隣を跳ぶようにして避け、背後からナイフを投げつつ、そのまま後ろの萃香にナイフを突き立て――――

 

 

 ピタリッ。と、突然かざされた手のひらの前で止まる。

 

 

「おいおい、萃香姐さんはもうちょっと戦闘はさせられねえ。代わりに俺たちが相手だ」

 

 いつの間にか、萃香は気を失っていた。おそらく茨が原因だろう。

 

 幻魔はそれに気付くと茨の拘束を解き、拘束が解かれた萃香は闇に飲み込まれ、ルーミアの横に放り出される。

 

 それを横目に確認した幻魔は骸鬼に斬りかかる。

 

「おっと!!忘れて貰っちゃあ困るね!!」

 

 声が響くよりも少し早く、幻魔が腕を引くと同時に鼻先を掠める踵落とし。

 

「クククッ…アハハハハハハハ!!良いぜ良いぜ…皆まとめて葬ってやる」

 

 今の踵落としが引き金だったのか、幻魔の様子がおかしくなる。

 

「『悪魔の刃(デビル・エッジ)』」

 

 声と共に幻魔。直後、骸鬼は右足がチクリとまるで紙か何かでこすったような痛みに襲われる。

 

 気になり見てみると、痛みの割にはとんでもない量の血が出ている。

 

 瞬間、鳳花は咄嗟に背後を右拳で殴っていた。

 

 バフッと音を立て、しかしまるで空気を殴ったかのように感触がほとんどない。

 

 しかし、腕を引っ込めるときにその腕に螺旋状(らせんじょう)の痛みを感じる。

 

 やはり、それも骸鬼と一緒で、痛みとは比べ物にならないくらいの血が流れている。

 

「『魂の痛み(ソウル・ペイン)』」

 

 姿は無かった。ただ声だけが響き――――突然現れた青い炎が彼らの目の前をゆらゆらと漂う。

 

 それは、一人ずつ、一つずつあり、何をするでもなくただフワフワと浮いていた。

 

 気味が悪い。何かをするわけでもないのに自分の周りを飛び回り、揺れる炎。不安な気持ちでいると、あざ笑うかのように炎が大きくなったり小さくなったりする。

 

 耐えきれなくなった勇儀は思わずその青い炎を殴り――――

 

 

 内部から出血して倒れ込む。

 

 

「……まさか、これは俺達の命の灯とでも言いたいのか?」

 

「ははは…まさか…ありえるね」

 

 苦笑いするも、シャレにならない。もしそうなのだとしたら、コレは完全に内部への直接攻撃なうえに、自分とは別の存在のため、二人の能力で守れない。つまり、弱点を常にさらけ出した状態なわけだ。

 

「『輝く影(グロウ・シャドー)』」

 

 声と共に今度は自分たちの影が光り出す。

 

「おいおい…まさかの必中か!?」

 

「いや、これなら能力でどうとでも!!」

 

 地面――――自身の影から飛び出す輝く影。それは彼らの能力によって――――鳳花の場合は弾かれ、骸鬼の場合は止められ――――ダメージを与える事は出来ない。

 

「なんだ?いきなりどうしてこんな弱い技を――――!!」

 

 二人はほぼ同時に気付くが、鳳花は遅れ――――

 

 

 弾かれた刃がむき出しになっていた鳳花の魂を貫く。

 

 

「カハッ!!」

 

 血を吐き、彼女は倒れる。

 

 何とか間に合った骸鬼は魂に迫っていた刃を全て止め、事無きを得る。

 

「チッ!いい加減出て来いよ!!」

 

 骸鬼の声に反応するようにゆらりと陽炎の如く現れる幻魔。

 

「こっからは一対一の勝負だ。かかって来いよ」

 

「ハハハハハハッ!行くぞ?『闇の狩人(ドゥンケル・イェーガー)』」

 

 真っ黒なロングコートに真紅のスカーフ。まるで乾いた血の様に黒ずんだ赤い髪色をし、両手に煌めく銀のナイフを持つ幻魔。

 

 黒の残像を残し姿を消す幻魔。

 

 骸鬼は瞬時に能力を発動させるが、しかし、幻魔は発動よりも早く速く骸鬼の左腕を裂く。

 

「っぁ!?」

 

 一撃。しかもかすり傷。だが、感じる痛みは異常なほどだった。

 

「狩人は武器に毒を仕込む。確実に獲物を狩るために」

 

 骸鬼はあまりの痛みによろめき、一歩下がる。

 

 直後、全身に鋭い痛みが走り、身体が動かなくなる。

 

「狩人は罠を仕掛ける。獲物を逃がさないために」

 

 ふと、影が差す。それは、骸鬼の敗北を意味した。

 

「狩人は刃を振りかざす。獲物に止めを刺すために」

 

 そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――意識は途切れた。

 

 

 * * *

 

 

「ん~……まぁ、それなりの戦いではあったけど、ほぼ一方的な戦い――――いや、殲滅ね。良いのは最初だけ、か」

 

 ルーミアはつまらなそうに隣で倒れている四人を見る。

 

「能力を使わせたらダメな感じ。まぁ、正面から叩き割るだけの力があるなら良いんだけど、鳳花達にはちょっと役不足かな。精神を鍛えないと無理だね」

 

 ただ、あくまでもそれは幻魔の創り出している幻覚を打ち破るために必要なだけである。

 

「詠唱をしてるけど、アレはフェイク。実際は詠唱なんかいらないけど、あえて隙のように見せてる。まぁ、誰も気付いてないけど。で、彼の纏ってる衣装はほとんど幻覚。けど、質量もあるし効果もあるから見えないと逆に対策が出来ない。効果は誰も生身で殴ってないから分からないけどね。ただ、あのナイフとカードはたぶん本物。どこから取り出してるのか。またはどれだけあるのかも不明だけど、厄介な事この上ない。しかも発生するのは何かわからないと来た」

 

「私の考察はそこまでだ。そこから先は脳内に留めておけ」

 

 独り言を続けるルーミア。しかし、それは背後に現れた幻魔に止められる。

 

「え~?別にいいじゃない。合ってる保証はないんだし。それとも当たってるの?」

 

「さぁな。だが、気に食わないのは確かだ」

 

「そう。じゃあやめるわ」

 

 あっさりと引き下がるルーミア。少し不思議に思うが、特に気にはしなかった。

 

「さてと。じゃあ私は帰るわ。骸鬼を運んで行ってよ?他三人は私が運んでいくから」

 

「あぁ、分かった」

 

 ルーミアはそれだけ言うと、闇を使って鳳花、萃香、勇儀の三人を運んでいく。

 

 幻魔はそれを見送った後、骸鬼を担いで帰るのだった。

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