東方変幻録   作:大神 龍

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第四十一話

 それは、夏の昼ごろの事だった。

 

「そろそろ出て行くぞ」

 

「は?」

 

 唐突だった。

 

 幻魔は骸鬼にそう言い、立ち上がる。

 

「ふぅん…じゃあ、見送りしないとね」

 

 なぜか毎日来ていたルーミア。

 

 ちなみに、すでに数十年と経過している。

 

 その間、特に何かあった訳でも無く、ただぼんやりと過ごしていただけだ。

 

「いつ行くの?」

 

「もう行こうかと考えてたんだが…今の時間帯は向こうは深夜。別に行っても良いんだが、そろそろ寝る頃だからな。どうせなら向こうが夕暮れ時くらいが良いかと思って」

 

「なるほどね。それで、結局いつなのよ」

 

「深夜12時~1時だな。まだ時間はある。それで、何かしようと考えてたんだ」

 

「なぁ、それさ。お前の寝る時間がすごい事になりそうだぞ?」

 

「問題ない。そこらへんは能力でどうにかなる」

 

「そう言う問題じゃないって。貴方の精神がそれで良くても、貴方の身体はどうなのよ」

 

「そんな事を言われても、どうにかするしかないだろ。それに、これ以上世話になるのも悪いしな」

 

「そうか。じゃあ、とりあえず今は休んでおけよ。昼寝でもしてりゃあ夜に出て行っても元気でいられるだろうよ」

 

「それも、そうか。なら俺は寝かせてもらうよ」

 

 そう言って、幻魔は外へ出て行く。

 

「…ルーミアさん?最近良く飯を食べに来てますが、鳳花姐さん困ってません?」

 

「ん~…羨ましがってはいたわね。『なんでお前だけ行くんだよ!』って。だったら一社に来たらいいのに。って言ったら『それは恥ずかしくて無理だ!!』って文句言うからいつも置いて来てるわ」

 

「えぇ~…姐さん、何やってるんですか…」

 

「萃香も勇儀も同じだと思うけどね」

 

「いや、なんであの二人も?」

 

「…三人とも、骸鬼が相手とか、骨が折れるわねぇ」

 

「え!?なんで!?なんで俺呆れたような目で見られてるの!?」

 

「分からないなら諦めなさい」

 

「や、やめてくれ!そんな目を向けないでッ!?」

 

 とても意味深な笑みを浮かべるルーミアに、悲鳴を上げる骸鬼なのだった。

 

 

 * * *

 

 

「おや。何をしているんだい?」

 

「あぁ、鳳花達か。別に、散歩をしてるだけさ」

 

「そうかい。じゃ、私は骸鬼の家にでも行って来ようかね」

 

「心が折れないように頑張れよ。あの鈍感に気付かせるには強引なくらいがちょうどいい」

 

「「「え?」」」

 

 鳳花、萃香、勇儀は同時に振り返り、去って行く幻魔の後姿を見つめるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「幻魔さん?何をしているのです?」

 

「ん?あぁ、文か」

 

「あれ?私、名乗りましたっけ?」

 

「……知ってるって事は、たぶん名乗ったんだよ。そういう事にしておけ」

 

「はあ…?まぁ良いです。幻魔さんがそう言うのならそうなんでしょう。憶えてない私に反論は出来ません」

 

「あぁ、それでいい。で。私が何をしているのか。だったな」

 

「えぇ。そうですそうです。珍しくこんな所まで足を運んでいるのが気になって」

 

 文が言うこんな所というのは、滝のそばにある岩場、という事だ。

 

「前に来た時に気に入ってな。ここだと景色がかなり良いんだ。文もここに来てみれば分かる」

 

 言われるままに文は降りてくる。

 

「ん~…確かに景色は良いですが、少し肌寒くないですか?」

 

「そりゃ、これだけ大きな清涼剤があればな」

 

 幻魔が指差すのは真横にある玄武の沢の大滝。

 

「むむむ…でも、まだ本格的な夏には入ってませんからね。ここはもう少し経ってから来るようにしましょう。私にはちょっと無理です」

 

「そうか。じゃあまたな」

 

「えぇ。また会いましょう」

 

 文はそれだけ言って飛んで行ってしまう。

 

「慌ただしいな。さて。じゃあ寝るかな」

 

 幻魔はそう呟き、壁に寄り掛かって昼寝を始める。

 

 

 * * *

 

 

「……~ぃ…………~い……お~い、起きろ盟友」

 

「んあ?」

 

 頬を叩かれて目が覚めると、すでに周りは暗く、そばの滝の音が心地よい音を出しており、夜空には星々が美しく輝いていた。

 

「まだ寝ぼけているのか盟友」

 

「あ~……にとりか?」

 

 にとり。そう呼ばれた少女は幻魔から離れると、ため息を吐く。

 

「盟友。何をしてるんだい?もう夜遅くだよ」

 

「あぁ、そりゃすまない。昼寝をしてたらすっかり熟睡してたみたいだ。起こしてくれてありがとう」

 

「礼には及ばないよ。盟友には良く助けてもらうしね」

 

「何かした覚えはないんだが…まぁ良いか。それで、用があったのか?」

 

「いいや?何もないよ。ただ、盟友がここにいるのを見かけて見に来ただけ。ダメだったかい?」

 

「いや、大丈夫だ。むしろ助かったよ。寝過ごしたら意味ないからな」

 

「どこかに行く予定だったの?」

 

「ここに来る前の場所へ。あくまでも旅行だからな。むしろもっと早く戻った方が良かったんだろうさ。さて、にとり。これからしばらく会えないだろうが、お前がいつかとんでもない発明をするのを待ってるぞ」

 

「言われなくても、もちろんやるさ」

 

 二人は拳を出しあい、軽く小突くと、

 

「じゃあな。また会おう」

 

「うん。またね」

 

 幻魔はそう言って転移するのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ただいま」

 

「お帰り」

 

 返事をしたのは一人。骸鬼だけだ。

 

「行くのか?」

 

「行くよ。一応挨拶はした。もし誰かに俺の居場所を聞かれたら、適当に答えておいてくれ」

 

「あぁ、分かったよ。じゃあな幻魔。またいつか」

 

「またいつか」

 

 それだけ言い残し、彼は消え去った。




 にとりと何時出会ったんだって?……それはまた別の機会で…
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