東方変幻録   作:大神 龍

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第五十五話

 外は雲一つない晴天だった。

 

「いやぁ…こんな日に外出したら不味いのが何人かいるね!でも気分が良い!!」

 

「いつかクレアさんは反逆しそうで怖いですよ」

 

「ん~……今は予定はないね」

 

「入る可能性はあるんですね」

 

 幻魔はため息を吐き、門を見る。

 

 そこには、人の形をした何かが逆さまになって吊り下げられている。

 

「二百年干されて形を保っているとは…中々やりますね…」

 

「能力でどうにかしてるんじゃない?」

 

「なるほど…それもありますか」

 

 囚われてからずっと干され続けているにも関わらず死んでいないのはそのためか。と納得し、クレアの後ろを歩く。

 

「昼は基本何もないのよね…何かあっても良いのに。面白くないよね」

 

「それは、そういう要望ですか?それなら門の外側に行きますが」

 

「あ、それは幻魔だけで十分よ」

 

 キッパリと断られる幻魔。納得がいかないが、別にいいか。と考え、散歩のついでに庭の雑草を抜いて行く。

 

「あ~…そう言えば、庭の係って誰だっけ」

 

「美鈴です。まぁ、本業の門番が忙しいのでやれてないので私が主にやってますが」

 

「リブラちゃんは?」

 

「やってますよ。自分の所だけは」

 

「あ~…全体じゃなくて自分の使ってる部分だけ掃除してるのね…まぁ、あそこは雑草すら凶悪に変化するからそれだけで十分だけどさ」

 

 変な栄養剤をうっかり撒いてしまったらしく、現在彼女の区画は十年ほど前から封鎖状態となっており、入ったモノは虫はおろか、人間すらも捕食されてしまうらしい。生ごみを放り込むと勝手に処理してくれて助かるのだが、する度にリブラに首を絞められる。

 

「幻魔もあそこに入って雑草抜いたりするの?」

 

「えぇ…どうしようもならなくなった時に呼ばれます。それ以外は自力でどうにかしているらしいのですが、許可なしに入るなと言われてはどうしようもありません」

 

「まぁ、リブラちゃんが楽しそうだから良いんじゃない?」

 

「そこが一番怖い所なんですけどね…」

 

 リブラが楽しそうにしていると、大抵その後に被害が幻魔に向かって来るので、たまったものではない。

 

「クレアさんは何か知りませんか?」

 

「ん~…リブラちゃんは私には何も教えてくれないからな~…この館で一番リブラちゃんを知ってるのは幻魔じゃない?」

 

「え…?いやいや、まさか、そんな訳無いでしょう?」

 

「いやぁ…案外冗談じゃ無いのよね~…プレジール様もよく分かってないみたいだし。この館につれて来たのはプレジール様のはずなんだけどね~」

 

「なんですかそれは…一体どうやってつれて来たんですか…」

 

「それが、秘密だって言って教えてくれないのよね~…一体どんな悪い事をしたのかしら」

 

「瞬時に悪い事だと決めつける貴方は酷いと思いますよ」

 

「もぅ…だってそんな気しかしないんだもん」

 

「だとしてもハッキリ言わないでしょうが普通は」

 

「そんなものかな?」

 

 主を侮辱して無事でいるあたり、彼女はそれほどまでに失うには惜しい人材なのだろう。

 

「よっし。飽きたし、帰ろっかな」

 

「また唐突な…」

 

 自由奔放なクレアに呆れ、ため息を吐く。

 

「まぁ、幻魔が残りたいなら居ても良いよ?私は戻るから。じゃあね~」

 

「えぇ、また後で。私は少し美鈴の方を見て行きますよ」

 

 そう言って、幻魔はクレアと別れる。

 

「ふぅ…差し入れは持ってきましたが、まぁ、また何かあるんでしょうね」

 

 そう言って、先ほどのクッキーが入っている包みを見ながら思う。

 

 最近、ヴァンパイアハンターがこの屋敷を襲って来る事が多くなった。名が売れて来たのだろうと思わなくもないが、たぶん自分も原因の一つだろう。と思わなくもない。

 

「『紅魔の魔狼』って…私が一体何をしたんですか…」

 

 いつの間にか生まれていた二つ名。たまに美鈴を倒してくる無謀者を容赦なく叩き潰していただけなのだが、その時の姿から付いた――――らしい。生存者などいなかったはずなのだが、一体誰がそれを伝えられたのだろうか。

 

 とりあえず、手土産のクッキーを手に門へと向かう。

 

「美鈴。大丈夫ですか?」

 

「あ、幻魔さん。どうかしたんですか?」

 

 門から顔を出した幻魔に気付き、向かって来ていた賊を蹴り飛ばしてこちらを向く。

 

「あぁ、いえ、取り込み中ですか。今度はどこからですか?」

 

「ん~…無名ですかね。名乗ってませんでしたし」

 

「名乗らずに襲い掛かるとは…礼儀がなってないんですね」

 

「全くですよねぇ…」

 

 美鈴は地面に崩れ落ちてるハンター達を縛り上げ、壁際に放り捨てる。

 

「それで、何の用でしょうか?」

 

「特にこれといった用は無いんですが、先ほどクレアさんと作ったクッキーを渡そうと思って。要ります?」

 

「え!?良いんですか!?ありがとうございます!!」

 

 美鈴はそう言って幻魔からクッキーを受け取る。

 

「お菓子なんて何時ぶりでしょうか…!本当にありがとうございます!!」

 

「それほど喜んでくれると嬉しいですね…作り甲斐があります」

 

「それはまた作ってくれるって事ですか!?」

 

「気が向いたらですよ。まぁ、しばらくはやり続けるかもしれませんが」

 

「やったぁ!!これで後5年は頑張れる!!」

 

「そこまでですか。嫌な気はしないので良いですが。これからもがんばってくださいよ」

 

「任せてください!!」

 

 威勢のいい美鈴の返事を聞いてから幻魔は館へと戻るのだった。

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