「……キリが無い…というより、増えている感じですね
ぼそりと、尽きない死霊の群を見て呟く幻魔。
「それならそっちを倒さないと終わらないじゃないですか!!」
一刻も早く幽霊から逃げたいリブラは、本気で聖属性単体魔法で一匹ずつ確実に潰しながら叫ぶ。
「いえ…そんなはずはないんですが…魂が尽きれば魔法を行使できないはず……いや、待て…ここには死者の魂が漂い続けているのか?」
「じゃあ手短に倒してきてくださいよ!?」
「仕方ない…リブラさん。後は任せましたよ」
「えぇ!?あ、後で絶対助けに来てくださいよ!?でないと死んじゃいますからね!?」
「分かってますよ」
幻魔はそう言うと、姿を消す。
「もっと早く気付いて下されば、もっと早く終わったはずなのに!!全力でやりますからね!!」
瞬時に腰に付けていたポーチから弓を取り出すと、魔力で創り出した弓をつがえ、放つ。
「あぁ…30分が限界ですからね…!?」
その呟きは、誰にも届くことは無かった。
* * *
「……黒幕は貴方でしょうか」
門の上に降り立ち、すでに中へと侵入している人物に目を向ける。
黒いフード付きローブ。横幅が大きく、普通の人間の三倍近くはあるのではないだろうか。その姿は、あからさまに怪しかった。
「紅魔の犬か…用は無いな」
声色からして男。心底どうでもよさそうに、そいつは言い放った。
「それでは、我が主にご用でしょうか?」
「いや、その娘さ。吸血鬼の赤子は高く売れるからなぁ…」
「そうですか…」
直後、幻魔は両手にナイフを持ち、
「では、貴様には我が主に代わり、私が刑を下そう。死霊操るモノよ。死者を弄び、我が主を愚弄し、主の子をさらおうとした愚か者よ。己の無能さを、己の無力さを、己の愚行を後悔しながら死に逝くがよい。死刑だ!」
投げられる四本のナイフ。
一瞬にして男の元まで届くと同時、ローブの内側から出て来たゾンビがそれを防ぐ。
「ハハハ!対策は当然だろう!?貫通は出来ないようだな!!」
「そうだな。代わりと言ってはなんだが、『凍れ』」
幻魔の言葉と同時、ゾンビは凍てつき、再度投げつけられたナイフによって砕け散る。
「どうやら、そのローブの下はゾンビの様だな。それにしても、今ので倒れるフリをしないとは、よほど自信があるようだ。だが、遊びはしない。貴様が紅魔館へ挑んだこと、後悔させよう。死してなお、転生してなお、月を見るたび思い出せ、紅魔の恐怖を」
門から飛び降り、地面に降り立つ。
「馬鹿にするなよ?俺だって何も無策で吸血鬼の元に来るほど無謀じゃないぞ」
「知っている。そして対処は終わっている。死者の軍勢?命令されなければ意味の無い軍勢など、埃同然…いや。埃にすら劣る。私に傷を追わせたいのなら、リッチでも連れて来るが良い」
「なッ…!?で、でたらめを!!来い!我が軍!!」
男が叫ぶ。
しかし、何かが動くような気配はしない。
「フン…言われねば気付けない。貴様、本当に死霊術師か?」
「グッ……まだだ!!終わってない!!行け!!」
男の言葉と共にローブの内側から現れたのは、骨だけの犬。
「骨の犬…スカルドッグといった所か?だが、その程度で倒せると?」
「フンッ!ならば、やってみるが良い!!」
「…そうだな。行くぞ」
一歩。踏み出したと思った時には、すでに犬の隣にいて、ナイフを頭部に突き刺し、地面に縫い付けると、更に一歩踏み出し、男の正面に来る。
「屍となれ、死霊術師。貴様に命乞いは許されない」
「ひ、ひぃぃ!?」
それが男の最期の言葉となった。
* * *
「ご主人、終わりました。直に幽霊も消えるかと」
「そうか…で、原因は分かったのか?」
「はい。どうやら死霊術師がいたようで、それが原因で湧き続けていたようです。狙いはレミリアお嬢様とフランお嬢様だったようで、粛清しておきました」
「ふむ…売買が目的か…私の所を狙うとは…どうやら、徹底的に潰す必要がありそうだ」
幽霊が見える範囲にいなくなると、疲れているであろう雪花を支えるプレジール。
「取りあえず、今は図書館に戻ろう。あぁ、それと、潰す時は私とお前の二人だ。良いな?」
「えぇ、分かっております。やる事は、見せていい様なものではありませんから…」
「分かっているなら良い。さぁ、行こうか」
そう言って、幻魔達は図書館へと飛ぶ。
* * *
図書館に行くと、ちょうどイーラが最後の、妙に大きな幽霊を吹き飛ばしたところだった。
「あぁ、戻って来たか。どうだった?」
「根源は潰しました。死霊の群も用意していたようですが、命令を受けておらず、ただの人形だったので一掃しておきました。後は幽霊さえ消し去れれば一応は問題は無いと思われます」
「ほぅ?中々早いじゃないか」
「お褒めにあずかり光栄です」
幻魔は一礼し、
「それでは、リブラを迎えに行ってまいります」
「あぁ、行って来い」
イーラに言われ、幻魔は転移する。
* * *
「リブラ。大丈夫ですか?」
「すでに限界ですよ!?」
迫りくる幽霊を弓で射落としつつ、弓の射程よりも手前に来た幽霊は蹴り飛ばしていた。
「て、手伝って下さいよ!!」
「そうですね。手伝いましょうか」
数枚のカードを取り出し、幽霊の頭にトランプが突き刺さると、その幽霊たちは光の粒子となって消えていく。
「はぁ…はぁ…あと少し遅かったら私は幽霊にやられてましたよ!!なんでもっと早く来てくれなかったんですか!!」
「色々あったんです。仕方ないでしょう?」
「むぐぐ…なら仕方ないです。よし。図書館に戻りましょう!!」
「はい。戻りましょうか」
そう言って、二人は図書館へと転移する。