東方変幻録   作:大神 龍

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 しばらくぶりです。あけおめ期間は遥か遠くに行ってしまいました…すみません…!
 やっぱりスランプは抜けきってないですが、ゆっくりとまた書いていこうと思います。
 では、どうぞ!


第六十四話

「少し遠出してみますか」

 

 図書館で、ふとそんなことを呟く。

 その言葉に反応したのは当然の様にリブラ。目を輝かせながらすぐさま聞き返す。

 

「遠出!? どこに行くんですか!? どこに行くんですか!?」

「落ち着きなさい。そんなすぐには行けませんから」

「ハッ! す、すみません、取り乱しました…」

 

 ここ最近にしては珍しく暴走したリブラを落ち着かせる。

 

「で、どこに行くんですか?」

 

 幻魔はその質問に何と答えようか少し考え、

 

「ロンドン…とかどうでしょうか?」

「ロンドン!?」

 

 即座に再び目を輝かせるリブラ。

 

「ロンドン! 寒暖差により発生する濃霧と急激な工業技術の発展により発生した有害な霧のため、付いた渾名(あだな)は『霧の都』! 更に今現在『切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)』という残虐殺人鬼がいるというあのロンドンですか!?」

 

 正直ここまで目を輝かせながら語ると思っていなかった幻魔は、「まぁ、喜んでくれているのならいいか」と切り替える事にした。

 

「一応クレアさんと主に伝えてきます。それまでに支度を終わらせておいてくださいよ」

「はい! 任せておいてください! 10秒で終わらせます!!」

 

 そう言うと、リブラはポケットの中から小さな透き通った青い宝石を取り出して地面に叩きつけると、強い光と共にその場から消える。

 幻魔はそれを確認すると、転移して、その場を後にする。

 

 

 * * *

 

 

 クレアとプレジールに伝えた後に正門へ行くと、すでにリブラがしっかりと防寒具を着込み、猫の形をした青いバッグを背負って美鈴と一緒に並んで待っていた。

 美鈴はいつもと変わらないチャイナドレスと帽子なのだが、寒くないのだろうか。彼女にそれを聞くと、「修行の一環です」と言うので、気にしないようにはしているが。

 

「お待たせしました。美鈴。留守を頼みますよ」

「行ってきますね!」

「いってらっしゃいませ。留守は任せてください。しっかり守り切りますよ」

「えぇ、信頼してますよ」

 

 そう言って幻魔が美鈴に微笑み、リブラが幻魔に掴まると同時に転移する。

 

 

 * * *

 

 

 昼間でも霧は出ているようで、適当な路地に転移したものの、視界は白んでいた。

 

「ふわぁぁ…ロンドン…! 夢のロンドンなんですね!? 真っ白な霧ですよ。霧! 排気ガスとかで猛毒だなんて聞きましたけど、実際はそれほどでもないんですね!」

「何言ってるんですか。それは単に貴女の毒耐性が強力なだけでしょう」

「え? そうなんですか? ん~…そんな気はしないんですけどね…まぁ良いです。とりあえずこの瓶の中に霧を詰め込んでおきます」

「……何に使うんですか?」

「決まってるじゃないですか! 武装製作です! 今は毒兵器を作るのにはまってるんです!」

「……そうですか…」

 

 一体何がリブラを駆り立ててるのか分からないが、とにかく毒兵器を作るらしい。

 対吸血鬼用の毒など作られたら困るのだが、まぁプレジールならなんとか出来るだろう。と高を括る。

 ただ、彼女の場合大体の事が出来る為、能力制限系統の道具もそのうち作る気がする。そうなったら完全に手を付けられなくなるのだが、今のところは心配はしていない。

 

「さて、ここにずっといるわけにもいきませんし、歩き回ってみましょうか」

「はいっ!」

 

 二人はそのまま路地から出ると、散策しようと歩き出した。

 

 

 * * *

 

 

 しばらく歩き回り、落ち着いた頃にはすっかり辺りは暗くなっていた。

 周囲が想像以上に暗くなっているからと言ってさほど大きな障害はない二人は、しかし夜までやっている店はほとんど無いため、そろそろ帰ろうかと思案する。

 

「それなりに見れましたし、帰りましょうか」

「えぇ~…探さないんですか? 稀代の大殺人鬼『切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)』さん」

「探しませんよ。というか、手がかりが皆無でしょう? それとも、それ用の探索アイテムでも作ったんですか?」

「おぉ! 流石幻魔さん。私のやろうとしてることを知ってたみたいですね! なら答えましょう! 持ってきましたとも!」

 

 さも当然のように、背中のバッグの中に手を突っ込むリブラ。

 幻魔は、この予想は外れていて欲しかったと思ったが、彼女がそんな事をするわけが無いというのを改めて理解した。

 ちなみに、正直彼女が青い猫の形をしたバッグを背負っていた時点で分かっていたのだが、何事も希望的に見たいものなのだ。現実とは、非情である。

 ついでに説明しておくと、彼女の背負っていたバッグは、紅魔館の図書館にある特殊な倉庫と繋がっており、その倉庫にある道具を出したり、バッグの中身を倉庫に送ったりすることも出来る優れものである。今日買った物も、全てそのバッグで紅魔館送りしているため、手ぶら探索ができていた。

 

「あ、ありました! 『探知コンパス』~!」

 

 そう言って取り出したのは、球体状で、真ん中に一本の針のようなものが入っている物体だった。針のようなものは、片方が赤く染まっていた。

 

「そんなもので見つかるんですか…?」

「うぐっ…! げ、幻魔さんが信じなかったら他に誰が信じるんですか…!? 私しかいないじゃないですか!」

「いえ、そんな事を訴えられても…」

「え、えぇい! もう良いですもん! 見せて上げますよ、このアイテムの力を! 『切り裂きジャック』を探してください!」

 

 物に対しても敬語なのは、ある意味彼女のチャームポイントかもしれない。

 ともかく、その言葉と共に掲げられた探知コンパスは、しばらく針がクルクルと回ったあと、ピタリと止まった。

 

 

 そう、ピッタリと、しっかりと、二人の背後を。

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