東方変幻録   作:大神 龍

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第六十七話

 投げるはナイフ。生まれるは獄炎。

 振るうはナイフ。断ち切るは獄炎。

 

 一進一退の攻防。しかし、精神的に摩耗しているのは幻魔だ。

 一向に攻撃は当たらず、しかし、相手は的確に嫌な部分を突いてくる。

 だが、大体効果範囲も分かってきた。手加減をしていたのだとしたら不味いのだが、なんとかなるだろう。と幻魔は賭けに出る。

 

 投げたナイフ。それは、ジャックの肩を狙い、飛んでいく。

 ジャックはここまでと同じように透過させてかわす―――――事はできなかった。

 

「ッ!?」

 

 驚愕に表情が染まる。

 左肩に刺さったナイフは、赤を纏い、存在を主張する。

 

「やっと一本だ。そして、暴いたぞ。ジャック・ザ・リッパー!」

「ッ! ……ふふ。なら、それがハッタリでは無いことを、私の死をもって証明してみなさい!」

 

 突き刺さったナイフを引き抜き、投げ返す。

 幻魔はそれをかわすと、三本のナイフを投げる。

 

 今まで透過させ続けていたジャックは、しかし、ここに来て伏せることで回避する。

 ニヤリと笑うジャック。直後、幻魔は視覚を、聴覚を、ノイズに狂わされる。

 ノイズが消えると、そこにはジャックはいない。だが、殺気は溢れている。

 

 背後にナイフを振るうと、金属音が響き渡る。

 敵意と殺意と狂気の宿る刃は、しかし。幻魔の振るった刃に押し返される。

 力では勝てないと悟ったのか、ジャックは素早くナイフを受け流すと、空いているもう一方の手に持っていたナイフを振るう。

 

 幻魔はそれを辛うじてかわすと、振るわれた腕を掴み、回避できないようにしてナイフを突き刺す。

 さすがのジャックも、至近距離で振るわれては対処が出来ないようで、右足にナイフを深く突き立てられる。

 

「くぅっ…!」

「降参しても良いんですよ?」

「アハハッ! 冗談!」

 

 笑いながら、彼女はナイフを二本、幻魔を挟むように投げつける。

 幻魔はそれを見て反射的に跳躍するが、ズボンの裾が浅く切れる。

 

「……ふむ。かわしきれないか…しかし、それよりも、だ。()()()()()()()()()()な?」

「ご名答! そして、貴方は変化と幻化が能力かしら?」

「ご明察。では、両者ともに能力を知ったところで、そろそろ決着と行こうか!」

 

 幻魔が指を鳴らすと同時、無数のナイフが周囲を取り囲む。

 やはり不敵に笑うジャック。

 ここまでやって来たように能力を使おうとし――――驚愕に表情を染める。

 

「気付いたか? 驚いただろう? 信じられないだろう? しかし残念。これが現実。不可思議で愉快な奇術師の特大マジックショーは、これにて終い。汝、その奇術を胸に刻み、朽ち果てよ」

「そんな…! 否、ここで終われない…!」

 

 しかし、その願いを否定するかのように、銀の群れはジャックを襲う。

 

 

 * * *

 

 

「……なんで?」

 

 紅魔館の一室。リブラやクレアの部屋よりも簡素だが、しかし、それなりの物は一通り揃っていた。

 

「敗者は勝者のモノになる。それが吸血鬼の鉄則です。私が吸血鬼の下僕なのですから、言いたいことはお分かりですね?」

 

 にこやかにそう宣言する幻魔。

 ジャックはその顔を見て、イラッとするが、手足が全くと言って良いほど動かないため、諦める。

 

「それで? 私に何をしろって?」

「今は特に。する事が無いわけではありませんが、任せたい事も特に無い。という感じですね。とりあえず私たちの仕事をしばらく見学してもらって、ある程度慣れてきたら何か仕事を任せるという感じでしょうか」

「それでも仕事はさせるのね」

「『働かざる者、植物園の餌』です。それと、しばらくは動かない方が良いと思いますよ? 体の傷が開きます」

 

 幻魔がそう言ったのを聞き、そこでやっと自分の状態を理解する。

 全身包帯。まるでアンデットのごとき姿だ。

 まぁ、それは仕方の無いことだろう。全身をナイフに切り刻まれ、右足に至っては深々とナイフが突き立てられたのだから。

 さすがに足の傷は後遺症が残らないように治癒させたが、その他の部分は自然回復を待っている。

 だが、それよりも。

 

「ねぇ、私の服は?」

 

 痛みに耐えながらも触った結果、着ていた服の感覚が全くなかった。

 全身包帯で服は一切無し。事実を直視したくない状況だった。

 

「あ~…えっと、その。私が手当てをしたわけではないのでそこはよく知らないというか、見ないし聞かないようにしてたので知らないんですよね。その毛布の下の状態」

「……そう。なら、回復したら真っ先にこんな辱しめを受けさせてくれた奴にはたっぷりお返ししないとね」

「ナイフはダメですよ?」

「分かってるわよ。別に、殺そうってんじゃないわ。やられたらやり返す。受けた傷を倍にして。肉体の傷は肉体で。心の傷は心へと返すのが基本よ。どんな形でも良いだなんて、ロマンに欠けるじゃない」

「……そうですね。確かにそれは、復讐者ではなく復讐鬼ですね。ふむ…しかし、つまりそれは、私も危うくなってきたのでしょうか?」

 

 やられたらやり返す。それを適応するなら、幻魔にも報復が来るというわけだ。

 

「当然。乙女の柔肌を傷付けたのだから、責任取りなさいよ?」

「ハハハ。女性を5人殺害してる殺人姫に言われても説得力等が無いですよ。まぁ、善処します」

 

 ニヤリと笑いながら言った殺人姫に対して、幻魔はそう言って苦笑するのだった。




 投稿が遅れてすいません!そして安定の構成グダグダです!
 予定ではすぐ終わるつもりだったんですけどね…想定外が色々重なって進みませんでした。すいません。

 次回は何話か小話を書いてから次の話に入る予定です。
 次回もよろしくお願いします。
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