東方変幻録   作:大神 龍

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第九話

 扉の奥はとても開けた場所で、一番奥に階段の様なものと、その上に一つだけ大きな椅子が置かれていた。想像するときは謁見の間を思い浮かべてみるのが一番早いと思う。

 

 そして、その椅子に男が足を組んで座っていた。

 

「ククククク。ついにここまで来たのか。下の者達が随分と世話になったようだな」

 

 手を叩きながら愉快そうにそういう男に幻魔は怒りを感じるが、プレジールはそれを制し、

 

「こちらこそ、私の部下が世話になった。これはそのお返しというものだ。ありがたく受け取ってくれたまえ」

 

「フン。それは洒落のつもりか?つまらんぞ」

 

「何を言っているのだ。私は洒落のつもりなど毛頭ないぞ?さて、最後のお返しだ。心して受け取りたまえ」

 

 プレジールが右手の人差し指をクイッと動かすと、突如として椅子の周りから深紅の鎖が出現して男を拘束する。

 

「……何のつもりだ?」

 

「なに。今に分かる事さ」

 

 瞬間、プレジールは槍を作りだし、男に向かって投げ飛ばす。しかし彼は特に危機感を抱いている様子はない。

 

 そして、当たる寸前の事である。彼は全身を蝙蝠にして抜け出す。槍はそのまま椅子を貫きさらにその後ろの壁を砕いて外へと飛んでいく。

 

 分散した蝙蝠たちは椅子から少し離れた所に集まり、男は元の姿を取り戻す。

 

「あの程度の攻撃が通じるとでも思っていたのか?それならば、大分おめでたい奴だな」

 

「勝手に言ってるが良い。それより、かかって来ないのか?城主よ。私達は侵略者なのだぞ?」

 

「…後悔するなよ?」

 

「粋がってるが良い。雑魚が」

 

 プレジールが煽ると同時、男は音を置き去りにする勢いでプレジールの正面に立ち、爪が伸びてもはや凶器になっている右手を振るう。

 

 その右手がプレジールに当たる寸前。

 

 キンッ!という金属音と共に一本の銀色のナイフに受け止められる。

 

「――――幻魔。何をしている?」

 

「…すいませんご主人。思わず動いていました」

 

 手短に幻魔はそう言い、男を蹴り飛ばしてから一礼し後ろに下がる。

 

 一方吹き飛ばされた男は地面を何度もバウンドし、最終的には轟音を立てながら壁に埋まる。

 

「ガハッ!……ゲフッ、な、なんだ今の人間は…!」

 

「私の自慢の執事だ。中々に万能だぞ?戦闘面だけを見ても、この館の吸血鬼を壊滅させるほどだ。私の出る幕など全くないほどにな」

 

「ぬぅ…そこの人間……ただの人間ではないという事か」

 

「そうだが、これ以上貴様の声を聞くのはしんどい。早く終わらせようか」

 

 プレジールが左手を男に向けると、その手のひらから火球が生まれる。

 

 プレジールはそれを握りつぶし、火球は無数の小さい焔になるが、数秒後には元の大きさと同じかそれ以上の火球に変わる。

 

 プレジールが左手を引くと火球は少し後ろに下がる。そして左腕を思いっきり前方に出すと火球もその動きにつられるように男へと向かって飛んでゆく。

 

「ッ!」

 

 男は再度蝙蝠に変化するが、分解した蝙蝠と火球の数は偶然にも全く同じで、その上、その一つ一つが蝙蝠を追尾する。

 

 しかし、運の良い事に蝙蝠は火球より速く、何体かは逃げ切り、再び蝙蝠が一か所に集まり――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ズドンッ!という天井を打ち砕く轟音と共に集まった蝙蝠一体一体を赤い無数の槍が串刺しにする。

 

 

 

 

 

「ピギュアアアァァァァァァアァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 断末魔の甲高い声が聞こえ、だがしかし幻魔はそれにもかかわらず容赦なくカードを一枚投げ込むと、そのカードは光を発し、蝙蝠たちを灰燼にして消えていく。

 

「……終わりだ。帰るぞ」

 

「了解しました。我が主」

 

 冷めた眼をした二人は、悠然とした態度で戦闘によってボロボロになった部屋を出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人。ここ、地下室がありますよ?」

 

「む?地下だと?」

 

 幻魔の一言で、なぜかプレジールの目が輝く。

 

「はい。あそこに地下に続く階段があります。どうしますか?」

 

「ふむ。ここで寄り道すると後でクレアが怖いが……まぁ良いか。行こう。残党が残ってたらまた美鈴が傷を負いかねない」

 

「そうですね。じゃあ行ってみましょうか」

 

 少し寄り道――――じゃなかった。残党狩りの為に二人は地下へと降りて行く。

 

 

 

 地下室は暗く、照らしているモノは何もない。

 

「暗闇ですか。吸血鬼には良いかもしれませんが、人間には少し辛いですね」

 

「そうかもしれないな。しかし、お前は大丈夫だろう?」

 

「えぇ。このくらいなら問題ありません。どうとでもなりますよ。まぁここは明るくする方向で行きますけど」

 

 ナイフを取り出すと、能力を使って刃先から光を放つ。

 

「一応無害な光にしておきます。太陽光はちょっと目に悪いので」

 

「そこはお前の好きにしろ。それで、ここはどうやら地下牢みたいだな」

 

 長方形に切り取られた石を使って作られたその場所は、鉄の棒などが組み込まれており、地下牢そのものだった。

 

「一応紅魔城にも牢獄はあるが……もはや物置になっているしなぁ…こんな風に使う事はたぶん来ないんだろう」

 

「あ~……あそこ、そう言えば確かに牢獄みたいでしたね。というか、あのように使うのなら別に地下牢みたいにする必要は無かったような?」

 

「元々はしっかり使うつもりだったんだが…管理をするには人員が足りないから断念したのだ。かなり作るのに苦労したんだがな」

 

「それは…お疲れ様です。もしここに人が残っているのだとしたらあの地下室を使いましょうか」

 

「ふむ……いや、今は普通に働いてくれる人物の方が助かるな。お前達に苦労をかけんで済む。せめて門番はもう一人追加したいところだ」

 

「そうですか。なら、とにかく人を見つけないとダメですね」

 

「そうだな。では探そうか」

 

 二人は取り残された人を探し、地下室を進んでいく。

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