一体、いつになったら俺の理解者は現れるんだ?それとも、この世の中には、俺の理解者なんざ存在してねえのか?
「コミュニティーってのは、人間社会の比率を大きく占めてんだ。どれだけ歴史を重ねようとも、それは進化と同じく変わらねえ……そこから外された人間が、強い劣等感を抱くのは当然だろ?どうにか先にいきたい、そんな前向きな感情を歪ませたのは、周囲の奴等だ。麻薬を使う人間に原因なんざねえんだよ」
「しかし、本人の意思次第で……」
「本人の意思なんてもんが、なによりも強固なものだと言い張るのか?まあ、日本人と麻薬、そこに限定するなら間違いではない。国内でもっとも、古い麻薬の記録は、千八百年にまで遡る。そこから阿片大国にまで流れていったが、阿片患者の数は少なかった。しかしよぉ、どうにもおかしいとは感じねえか?ならば、なぜ、日本人と麻薬の関係がこうも顕著になったのか。答えは簡単、そこにも、やはり、発展ってやつが含まれているからだ」
長浜は、得心がいかない様子で唇をワナワナと動かしていた。それもそうだろう、人間の心は善で成り立っていると信じている内は、暗い井戸の中から這い上がってくるのは難しい。薄暗く、湿度が高く、居心地が悪かろうとも、たった一人でもがき苦しむしかない。それが、人間ってやつの本心に住まう魔物の正体だ。
「人間がなぜ麻薬を使うのか。それは、産み落とした奴等からのアンチテーゼだからだ。自身の生まれを恨むが、恨むべき者も分からない。そんな奴等のアンチテーゼ、それこそが麻薬の正体であり、もっとも麻薬の使用目的となっている部分だよ」
「……醜い嫉妬、とでも言えば良いかな?」
「どうとでも取りゃいい。ただし、本当にそれでテメエが納得できるんならなぁ」
踵を返した俺は、殺風景な室内を見回す。
人間のことを善人だとか、悪人だとか、そんなふうに区別するのはばかげたことだ。人というのは魅力があるか、さもなければ退屈か、そう言った詩人がいたな。確か、オスカー・ワイルドとかいうイギリス人だっただろうか。本当にその通りだ。悪人、聖人、魅力ってやつは、その二つにすら付随してきやがる。ただし、何者であるかは別問題だ。俺のように、こんな場所に放り込まれる奴もいれば、内面は俺と同じでも、世の中を闊歩している人間はごまんといる。
隠しているだけで、悪意ってやつは、世界中にいる一人一人に必ず存在しているんだ。何者であろうともな。