「あ?つまりは……どういうことだよ」
「選別ですよ。本当に必要な使徒のみの世界を造りあげる。その為の審判です。そして、それはもう、間近に迫っている」
「まさかとは思うけどよぉ……アンタ、その世界の神になる、なんざ言わねえよな?」
「神、ではなく、導き手ですよ、東さん」
「導き手ねぇ……子供一人も救えねえんじゃ話しになんねえなぁ」
安部は、ドキリ、としたのか唇をすぼめた。なんとも情けない面だが、餓鬼の戯言だと切り捨てるには、勿体無い頭のイカれ具合だ。少なくとも、これまで俺に会いに来た奴等のように、整然あろうとする様子はない。
……あくまで自身の信念を全面に出した姿勢、面白すぎんぞ、おい。
「なあ、アンタはどうすれば、その子供を救えるのか、そう悩んで、懊悩するあまりに俺に会いに来たんだよな?」
「はい、その通りです。ですが、私には……」
「言っただろう?馬鹿みてえなこと言うんじゃねえってよぉ、テメエの悩み全てに答えがあるとでも思ってやがんのか?勘違いしてんなよ?答えなんてもんは、一握りの人間しか得られるもんじゃねえんだ。だから、人間は行動する。アンタは行動して、俺に会いに来た。それだけでも良いんだよ」
安部は期待を抱いたのか、瞳に光が戻る。他と比べて、なんとも扱いやすい男だ、俺は若干、俯いてつり上がり気味の唇を隠して言った。
「さっきの症状、椅子にも座れないほど意識が混濁し高熱がある。そして、検査をしても原因が分からない」
「はい、間違いありません」
「なら、一つ加えてやるよ。頭髪が異様に抜けやすくなってるはずだ。違うか?」
雷にでも撃たれたかのような驚愕の表情を浮かべた安部は、右手で口を塞ぎ首肯した。
俺は肩を震わせ、鼻を鳴らした。
「そいつは、謎の奇病じゃねえよ。タリウムによる症状だ。アガサ・クリスティーの蒼ざめた馬に出てくる症状とよく似ていやがる。二人の女が取っ組みあい場面が出てくる小説だ」
オカルト扱いって点では、今回の話しも変わりはない。しかし、どうして医学が発達した現在で、こういった事例が発生するんだろうな。確かに、発見はされにくいらしいけど……ああ、なるほど、そういうことか。
「しかし、なぜ、そのようなものを……」
「大人ってやつは難儀だよな。成長の過程で不必要なものは排除してっちまう。例えば……危ういまでの好奇心、とかよ。アンタが言葉にするなら、子供の好奇心は未来を作るってとこかな?」
以前、俺が鈍器で頭を打った男がいたが、そいつと全く同じ顔をした安部が喉を鳴らして言った。
「解毒の方法はあるのですか?」