多くのカメラのフラッシュすら遮断される程の厚さがあるようだ。
こいつは、好都合だ。何をしようとも文句を言われることもない。警察も頭が悪い奴等が増えてきている。勉強が出来る出来ないよりも、もっと重要視するべきことがある。
相手の内側を読めるか読めないかだ。
目は口ほどに内面を語る。そのパーツが点いた顔を隠すということは、相手を理解することもないということだ。随分と余裕があるもんだな。
俺のせせら笑いは、袋の中で押し殺される。それすらも、こいつらには聞こえていない。要するに、世間ってやつは都合の悪いものには蓋をするのが上手いんだ。匂いがする前に塞いでしまう。
「おい、おっさんよお......ちょっと、小便したいんだけど?」
「......我慢しろ」
短く遠回しな拒否の言葉と共に、カメラのシャッター音が途切れた。どうやら小倉北警察署の地下駐車場に到着したようだ。手錠の再確認、顔に被せられた布、俺にとっては抵抗が出来ない条件は揃っている。なのに、なのにだ。不思議なほど、警察官は俺に対して警戒心を剥き出しにしている。
......これほど、滑稽なことがあるか?
俺は、アンドレイ・チカチーロのように特殊な体質や血液ではない。
デュッセルドルフの連続殺人犯、ピーター・キュルテンのように、捕まるように自ら 動いた訳でもない。たった一人の男に俺は追い詰められた。そいつが、俺からの復讐を恐れるというなら話しは分かるが、ただ動いただけの警察が果たして何をした?無能な組織ほど、よく吠えるもんだ。
車から降ろされ、警察官に先導されながら、俺は、暗闇の中を歩き始めた。久しぶりですの感覚は、俺に安堵をもたらす。
色がない世界は、所詮は紛い物だ。見繕っているだけにすぎない。返ってくる答えはいつも同じだ。
一度だけついた嘆息すらも、袋の中で僅かに響いただけに収まる。この世界は退屈だ。
「なあ、おっさんよお……アンタはどんな人生を歩んできたんだ?参考までに聞かせてくれよ」
隣で鳴っていた靴音が止まった。それで俺が語りかけた人物の位置を特定できた。
「……お前には理解できない人生だよ。人を守るために頑張ってきた俺の行き方なんざ、お前に理解できる筈も無いだろ」
「さあな……それはおっさん自身がそう決めてるだけかもしんないぜ?やめようぜ綺麗ごとはよ」
「逆に聞くが、お前はなんで容易に人を殺せるんだ?」
「なんで?なんでだと?そいつは、俺があんたに『人をまもることになんの意味があるんだ?』って訊くのとおなじだ」
おそくなりすみません