何かの呼び声   作:クロル

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1-6 ネルソンの遺言

 八坂一太郎は魔術師である。

 その事実を知っている者は、共に神話的事件に立ち向かった仲間以外にも何人かいる。特命係に配属された者がそうであるし、義娘の八坂蓮もそうだ。時には彼らに世界に潜む神話的真実や魔術について講釈する事もある。大学時代の恩師、ルーカス・ネルソンも一太郎が魔術師だと知っている者の一人だ。

 

 四十代が間近になり、体力の衰えを感じはじめる一太郎の元にルーカスから手紙が来たのは、街路樹が枯れた葉を落とし始めた晩秋の日だった。

 ポストに入っていた手紙に懐かしい名前を見つけた一太郎は頬を緩めたが、中身を読むにつれて眉間に深い皺が寄っていった。

 手書きの文章は短く、文字は歪んでいて薄く、読みにくい。震える力の入らない手で書いたのではないかという事が伺えた。君の力を借りたい、という一文の後に翌日の日付と日時、ネルソンが開いている小さな診療所の住所が書かれているだけである。

 

 ネルソンは手紙で前置きも事情の説明もなく要求だけ叩きつける人間ではない。にも関わらずこんな手紙を寄越すという事は、相当切羽詰っているに違いない。

 急ぎならば電話をしないのはなぜなのかと考えながらも、一太郎は会社にしばらく有給を取る旨の連絡をした。直前の連絡だったため渋られたが、普段の勤務態度が良好で実績も優れ、急ぎのプロジェクトも抱えていなかったため、ゴリ押しで許可が降りた。

 

 先月二十歳になり、八坂屋敷から大学に通っている蓮が作り置きしていた夕食を温め直して食べた後、一太郎はさっさと眠り翌日に向けて英気を養う。

 幾度も神話的怪異との戦いをくぐり抜けた一太郎は、この時点でもうその臭いを嗅ぎとっていたのだ。これから数日はタフな仕事になるだろう。そして、やはり今回も命を賭ける事に躊躇いはまったく覚えず、それどころか、心のどこかで悍ましい神話知識や魔術を得られるチャンスに高揚すらしていた。

 それがヒトらしい健全な精神状態ではなく、ヒトならざる狂気の片鱗である事に疑いの余地はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、一太郎はネルソン診療所にやってきた。東京の郊外にある、二階建ての小さな診療所だ。ルーカスとは大学を出てからも年に一、二回程度の交流があったが、診療所を訪ねるのは始めてである。

 暗い顔をした中年の看護婦に要件を告げると、待合室に通された。ルーカスは今床に伏せっていて、本来なら面会も控えた方が良いほどだと思う。医者の不養生で片付けるには症状が重そうだ。まさか力を借りたい、というのは魔術で治療してくれという依頼だろうか。その場合はお断りするしかない。一太郎はどちらかというと治療より殺害の方が得意だ。

 

 待合室のソファには二人の男が座っていた。片方には見覚えがある。警視庁特命係の明智小次郎だ。枯れ草色のパナマハットとねずみ色のコートを膝に乗せた中年の男で、一太郎が入ってくると少し驚いた顔をした。失礼、とひと声かけて彼の腰を降ろす。

 

「お久しぶりです」

「お久しぶりです、その節はどうも。八坂氏もルーカスさんの依頼で?」

「そうです。先日手紙が来まして、どうもただ事ではないようでしたので」

「ふむ。きな臭いを飛び越えて既に何かが起きていると考えた方が良さそうですな」

「同感です。特命係と私の両方に依頼を出すとなると、よほどの――――」

「HEY、アンタらも呼ばれて来たん?」

 

 深刻な話をしていると、敢えて見ないようにしていたもう一人の男がタバコを床に捨てて足でもみ消し、口を突っ込んできた。目の前にある院内禁煙の張り紙は目に入っていないらしい。

 五十代の金髪の男で、顔立ちがどことなくルーカス・ネルソンと似ている。年甲斐のないアロハシャツにダメージジーンズを着ていて、腕には「さよ子」と明朝体の刺青が入れてある。ガラが悪い……のだが、体も服も酷くみすぼらしく、怖さはない。

 

「あ、はい」

「そうですが。あなたは?」

「俺? 俺は~、パーシー・ネルソン。パーシーでいいよ。あのさぁ……ここで知り合ったのも何かの縁だし、金貸してくれない? 最近困っててさ~」

「ええ……」

「百円なら」

「お、マジでぇ!? ありがてえありがてえ! 旦那ァ、この御恩はイッショー忘れねーから!」

 

 冗談のつもりで言った言葉に食いつかれ、一太郎はドン引きしながら媚びへつらって揉み手をしているパーシーに百円を渡した。頭脳明晰な一太郎は貸した百円が一生帰ってこない事を察したが、別に頭脳明晰じゃなくても分かっただろう。

 

「あの、パーシー、さんは、親戚の方ですか?」

「ん? ネルソンは俺の兄貴だよ」

「嘘だろ(素)」

「マジだよ~マジマジ。昔っから兄貴は凄くてさ~、比べられる弟にとっちゃたまったもんじゃねぇんだよなあ。十年ぐらい連絡とってなかったんだけどさあ、なんか手紙が来たから仕方ねぇなって感じで」

 

 言いながらパーシーはポケットに突っ込んでいたテキーラの小瓶を呷る。顎を上げると髭の剃り残しが目立った。

 これが真面目で誠実、好々爺という言葉の似合う、ルーカス・ネルソンの弟。まったく似ていない。酒臭い息を吐きながらパーシーは馴れ馴れしく小次郎と肩を組んだ。

 

「まあ聞いてくれよ~、実はな、俺がこんなんになったのもな、聞くも涙、語るも涙の事情があってな? あれは俺がベトナム戦争に徴兵されて狙撃手の観測手(スポッター)をやってた時の事だ。ベトコンゲリラの悪質なパンジステークをかいくぐって前線に塹壕を掘った俺は無線で司令部に連絡しようとして繋がらない事に気付いた。これが酷い雑音でな、ナチの残党狩りやってた時に聞いた電波妨害と同じだった。その時遠くで足音が聞こえた! 狙撃銃を設置している相棒の首を引っつかんで俺は小声で叫びながら撤退した、下がれ下がれ! やばいぞ見つかってる! 罠だァーッ! 必死に逃げてたら銃声が響いた。手が軽くなって生暖かいぬるっとしたものが頬についた。振り返ると相棒が首だけになってて、そこにはニヤリと笑うイスラム過激派の共産党員(アカ)がリボルバー構えて……」

 

 支離滅裂な語りを始めたパーシーに生返事をしていると、しばらくして看護婦が三人を呼びに来た。待合室から移動し、ルーカスのいる部屋へ通される。

 ルーカスはベッドの上に横たわり、痩せこけた青い顔をしていた。一太郎達がやってくると、白く濁った目を向け、弱々しく微笑んだ。隠しきれない死相に驚く。医者の不養生などというものではない。

 

 ルーカスがかすれた声で何か言おうとしたセリフに被せ、パーシーがベッド端にどっかり腰掛けて言った。

 

「お、久しぶり久しぶり~。ところで兄貴、金……貸してくれない? 一昨日さよ子ちゃんに逃げられてさあ、金持ち逃げされちゃったんだよ~。な、五万でいいからさあ、頼むよ~」

 

 クズぅぅぅ!

 一太郎と小次郎は心の叫びを一致させ、パーシーに白い目を向けた。さっきからこの男のせいでシリアスがぶち壊しだ。

 

「お前は何十年経っても……何も変わらないな……もう十回は恋人に……逃げられているだろう」

「三十四回目だよ~、な~頼むよ~、今財布の中身百円しかなくてさ~、ちくわしか買えないんだよ~」

 

 ルーカスは、哀れっぽく擦り寄ってくるパーシーを苦々しげにやせ細った手で追い払った。途切れがちな聞き取りにくい震える声で言う。

 

「私はもうすぐ死ぬ……いつまでもお前の尻拭いはできん……たまには人の役に立つ事をしたらどうだ……私の最後の頼みを……」

「え? 何? 十万貸してくれんの?(難聴)」

 

 ルーカスはコイツは駄目だという顔をして、申し訳なさそうに一太郎と小次郎に話を向けた。

 

「お見苦しいところをお見せして……申し訳ない。今日お呼びしたのは……頼みごとが、あるからでして……私の最後の患者を……どうか救って欲しい。しかし警告しなければ……魔術の影……這い寄る混沌……悪意ある、呪いが――――」

 

 そこまで話したところで、ルーカスは激しく咳き込んだ。咳はとまらずどんどん酷くなり、血を吐いた。体が電気ショックでも浴びたように痙攣し、全身の穴という穴から血が流れ出す。最後に白目を剥いて恐ろしい断末魔を上げ、動かなくなった。

 ルーカスは死んだ。

 

 病室は騒然となった。看護師が飛び込んできてルーカスの無残な死体を見てしまい金切り声を上げ、一太郎は顔に血を浴び、未知の病原の感染を恐れて大慌てで洗面台に走った。小次郎は警察に電話をかけて怒鳴りつけるように特殊部隊の出動要請をしたが、動揺し過ぎて呂律が回っていない。パーシーは金目のものを探しに足音を忍ばせてこっそり部屋を出た。

 

 混乱は化学防護服に身を包んだ警察がやってくるまで続いた。警察はネルソン診療所を封鎖し、一太郎達を追い出した。一人入院中の患者がいたため、その患者と看護婦も含め、検査のために警察病院へ輸送された。ルーカスの死因が感染性のある病気によるものなら、バイオハザードの危険がある。

 

 警察病院で採血など一通りの検査を終えた一行は、隔離病棟に入れられた。とはいっても閉じ込められた訳ではなく、病棟内ならば自由に出歩ける。

 一太郎と小次郎は病室の窓辺で夕暮れに朱く染まった街並みを眺めながら深刻に話し合う。

 

「八坂氏はルーカスさんの死因が魔術的なものだとお考えで?」

「断定はできませんが、恐らく」

 

 咄嗟の事で「透視」をし損ねたのは痛い。一応検死の前にルーカスの死体を視させてもらう事はできたが、もはや何のオーラも視えなかった。死亡したから呪いが解除されたのか、元々呪いがかかっていなかったのかも分からない。とはいえ、一太郎が知る限り、あそこまで急激で悲惨な死に方をする病は存在しない。未知の病気という線も無くはないが、ルーカスが最後に遺した言葉からして、神話的怪異絡みだと考えた方がよさそうだ。

 

「気になるところはルーカスさんの死因と……やはり彼女ですか。ルーカスさんの最後の患者らしいですがねえ」

 

 小次郎は病室のベッドの上で看護師に額の汗を拭われている少女を見た。手足はやせ細り、頬はこけ、青い顔をしている。早瀬小雪というらしいその少女は、看護師曰く一年近く意識が戻らないそうだ。細かい診察や治療は全てルーカスが行っていたため、看護婦も詳しい事は分からないという。一太郎は何故か小雪に見覚えがある気がしたが、思い出せなかった。

 

「カルテを見れば何か分かりそうですが」

「そういえば八坂氏は医学系でしたな。とはいえ診療所は今封鎖されているわけで。取り寄せるには手続きに時間が……」

 

 そこで物悲しげに腕の刺青を見ていたパーシーが懐から紙の束を出してひらひらと振った。

 

「カルテならここにあるで」

「えっ? 助かりますがなんで持ってるんですか」

「金目のものと間違え……げふん、金目のものと間違えた」

「言い直せてない」

「八坂氏、逮捕します?」

「いえ、やめておきましょう。昔の友人と同じ臭いがします。なんだかんだで役立つかと」

 

 一太郎がカルテを受け取ろうと手を伸ばすと、パーシーはさっと引っ込めた。

 

「タバコと交換な」

「あー、私はタバコは吸わないんですよ」

「ウォッカでも……ええんやで?」

「病院にあると思ってんのかジジイ。これでも飲んで健康になってろ」

「ガボボーッ!」

 

 一太郎はベッドのサイドテーブルに置いてあったペットボトルのお茶をパーシーの口に突っ込み、カルテを取り上げて読んだ。

 

 どうやら早瀬小雪は一年ほど前に高熱を伴う病を発症し、入院したようだ。検査の結果、なぜか感染源と接触する機会が皆無だったはずのマラリアに感染していると判明。その道の権威であったルーカス・ネルソンが小雪の実家に依頼され、治療に成功した。元々体が弱く体力が無かったため、一時は相当危なかったらしい。

 ところが衰弱した体を休めている最中、コレラを発症した。今度は間違いなくコレラ菌との接触は皆無だった。にも関わらず体内からコレラ菌が検出されたのだ。コレラは万全の治療体制の下ならば死亡率は2、3%の病ではあるが、病み上がりだったため、重篤化した。

 コレラが治った後も、結核、肺炎、日本脳炎と次々に罹患するはずのない病を発症していき、湯水のように金を使った最高峰の治療によって奇跡的に持ちこたえはしたものの、半年もする頃には余命幾許もないという状況まで追い込まれた。

 

 そこから一ヶ月ほど、カルテの筆跡が変わり、ルーカスから別人に主治医が交代していたのが分かる。交代中も悪化するばかりで、未知の感染ルートは特定できなかったらしい。

 一ヶ月後、早瀬小雪の症状が今夜が峠だという日、ルーカスが再び主治医に戻る。このあたりからカルテの記述が曖昧になるのだが、ルーカスが身につけてきた画期的治療法により、小雪の症状が劇的に改善したようだ。何の薬を使ったのか、手術をしたのか、病室を変えたのか。何も書いていない。

 とにかく、新しい治療法により、病は小康状態となった。相変わらず立て続けに発熱を伴う病を発症してはいくが、新しい治療法による回復と消耗が釣り合い、良くもならず、悪くもならず、という状況が今日まで続く。

 

 そして三日前、ルーカスが発病。喉の腫れ、手足の震え、高熱、嘔吐、脱水症状などの症状を示す。筆跡は震えていて読み取りにくかったが、ルーカスが自分で書いたもののようだ。自分以外の医者に頼った様子は読み取れなかった。

 

 カルテに目を通し終わった一太郎が眉を顰めていると、小次郎が話しかけてきた。

 

「何か分かりましたか」

「幾つか分かりましたが、分からない事も増えました」

 

 カルテの内容についてかいつまんで説明する。小次郎は首を傾げた。

 

「日本脳炎やらマラリアやらコレラやらの感染者が国内で見つかればニュースになりそうなものですがねえ」

「やっぱりそのあたりのニュースは聞いたことありませんよね。彼女の実家は随分治療に金を出したようですし、報道機関を口止めできるぐらいのパワーがあるのかも知れません」

 

 言いながらカルテの前半をパラパラ捲る。初期治療に使われた薬品はどれもまだ日本で正式に認可されておらず、海外から取り寄せられた非常に高価なものだ。ちょっと小金持ちなぐらいの家では三ヶ月で破産する。

 一太郎は看護婦に話を振った。

 

「すみません、彼女の実家はどういう家なのかわかりますか?」

「小雪ちゃんの実家ですか? 申し訳ありませんが、わかりません。ご家族の方が面会に来られる時はいつも私は外されていましたので……そういえば先生は極力私を小雪ちゃんの治療には関わらせないようにしていた節がありました。無理矢理にでも手伝っていればこんな事には……先生はいつもお疲れなご様子で」

 

 看護婦は鎮痛な面持ちで俯いた。嗚咽が漏れる。目の前で非業の死を目撃したばかりなのだから無理もない。

 一太郎は親しい者の死にすら冷静でいられるようになってしまった自分の心の摩耗を嘆く。しかし、正気をすり減らし、狂気の縁を歩き続ける事を決めたのは自分である。すぐに切り替え、情報収集のため、小雪に「透視」を使った。

 切り替わった視界に小雪のオーラが視える。一般人よりはそれなりに強いオーラを蝕むようにして邪悪なオーラが包み込んでいた。やはり早瀬小雪は呪われていた。ありえない病状の数々は魔術によるものだったのだろう。感染経路が特定できないわけだ。

 

「HEYにーちゃん、さっきから何してるん?」

「アンタが何してるんだ」

 

 パーシーは薄めた消毒液とレモンジュースでリキュールを調合していた。

 

「毒入れてないしヘーキヘーキ。それで何? 兄貴の遺言通りにすんの?」

「そうですね。恩師の最後の頼みですし。彼女を助けるために尽力するつもりです」

「え? それマジで言ってんの? 全身から血を噴水みたいに吹き出して死ぬってアレ相当ヤバイやつじゃん。やめた方が良くない? 逃げよ? いいじゃん遺言なんて」

「お前本当に弟?」

「まあまあ八坂氏、落ち着いて。パーシーさん、その消毒液とレモンジュース、どこから持ってきました?」

「売店に置いてあった」

「あなた所持金百円でしたよね。日本には『人のものをとったらどろぼう』という名言がありまして。私は泥棒を捕まえる警察でして」

「……何が望みだ? 俺の……ケツの穴か?」

「殺すぞ。ごほん、えー、平たく言えば、我々の調査に協力して下されば見逃します」

「しゃーないな、しゃーない。ええで。協力したるで(尊大)」

 

 パーシーを仲間に加えた小次郎は一太郎を不安げに見た。

 

「本当に大丈夫なんですかこの人」

「私も不安になってきたところです。ああそうだ、今夜は一緒に寝る事になると思いますが、私の体をベッドに拘束する手伝いをお願いできますか? 実は夢遊病を患っていて」

「それこのタイミングで言います? もう不安しかない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の昼、小次郎が上に掛け合った事もあり、三人は無事開放された。看護婦はこんこんと眠り続ける早瀬小雪に付き添うという。

 病院を出たところで、八坂蓮とばったり出くわした。二十歳になった蓮は相変わらず火傷を隠すために顔に包帯を巻いていて、通院中の患者にも見える。蓮は一太郎を見て驚いた。

 

「あれ? お父さんなんでいるの? 怪我、じゃなさそうだけど。っていうか帰らないなら連絡してよね。あ、昨日の晩御飯は冷蔵庫に入れてあるからあっためて食べて。後ろの人たちは? 会社の人?」

「知人の依頼の関係でちょっとな。連絡を入れなかったのは悪かった、帰ったら食べさせてもらう。今日からもしばらくは三食外で食べる事になる。後ろの人達は……まあ、依頼の関係者だ」

「あ、そうなの。父がお世話になっています。娘の蓮です」

「え? 八坂の娘さん? はえー、すっごい! それ怪我? 包帯とったらめっちゃ美人じゃない? ねねね、見せてよ見せてよ~」

「触らないで下さい」

 

 蓮はパーシーが伸ばした手を笑顔で払い除け、一太郎を少し離れたところへ引っ張っていった。パーシーは小次郎にアームロックをかけられて呻いている。

 声が届かないところまで来ると、蓮は真顔で言った。

 

「またアレなの?」

「……すまんな」

「や、いいけどさ。お父さんの習性だし、止めようとも思わないけど。止められないだろうし。でもそっか、最近無かったと思ったら。そっかぁ。何か私に手伝える事ある?」

「いや。蓮は家で――――」

「ちょっとちょっと、私もう大人なんですからね。子供扱いしないで」

 

 蓮の真剣な目をじっと見る。しばらく見つめ合い、先に目をそらしたのは一太郎だった。

 

「分かった分かった。じゃあ西棟201号室の患者を見ていてくれ。看護師の人が一人ついてるから、交代で目を離さないように。異変があったら連絡してくれ」

「うん、わかっ……あれ、それ小雪ちゃんの病室じゃない?」

「知り合いか?」

「えー、忘れたの? 最近連れてこなかったけど、ほら、中学までよくウチに遊びに来てた小雪ちゃん」

「ああ」

 

 言われて思い出した。病室で眠る早瀬小雪の顔には、確かに昔見た事がある蓮の親友の面影があった。やつれ果てていたし、何年も会っていなかったため分からなかった、というのは言い訳だろう。蓮の口から何百回も聞かされた名前でピンと来なかったのは単にド忘れしていただけである。

 

「そういえば最近入院してるって言ってたな」

「うん、もう一年になるんだよね。いつもの診療所にお見舞いに行ったら警察がいて、事情話したらこっちだっていうから来たんだけど……うん? あれ、ちょっと待って、って事は、もしかして小雪ちゃんが巻き込まれてるの?」

「……そうなる」

 

 瞬間、蓮のビンタが飛んだ。快音が響き、少し遅れて一太郎の頬がじんじんと痛みだす。

 

「次、私を除け者にしたらグーだから」

 

 静かに怒る蓮をなだめて小雪の警護を任せ、三人はひとまず車で早瀬家へ向かった。住所は蓮から聞いた。

 恐らくルーカスの死因は呪殺だ。小雪はルーカスによる何らかの方法で進行が止まり小康状態を保っているようだが、呪殺が無理と判断した何者かが直接的に殺しに来ないとも限らない。それを防ぐための蓮である。

 蓮は《被害をそらす》と《食屍鬼との接触》の魔術を覚えていて、ちょっとやそっとの襲撃ならば対処できる。 相手が一人なら《被害をそらす》で防御しつつ大声を上げればたちまち警備員が飛んでくるし、相手が警備員で対処できないような人数なら《食屍鬼との接触》で食屍鬼の群れを呼び寄せて助けて貰えばいい。幼い頃に食屍鬼との交流があり、食屍鬼語を話せる蓮の頼みなら、食屍鬼も無下にはしないだろう。食屍鬼が皆いつかのキミタケのような人道的な怪物とは限らないので、あくまでも最後の手段になるが。

 

 小一時間車を走らせ、東京郊外の高級住宅街についた。広々とした邸宅の中でも一際大きな、ちょっとした城のような建物が早瀬家である。入口には門があり、守衛が立っていた。

 

「はえー、でっかい! どんな悪い事すればこんなに稼げるんですかねぇ……」

「早瀬家は資産運用で稼いでいるようですがね、黒い噂は少ないんですよ。ざっと調べた限りでは、ですが」

 

 驚嘆するパーシーに小次郎が説明する。移動中に特命係に連絡して警察のファイルを簡単に調べてもらっただけなので、深いところまでは分からないが、とりあえず訪ねた途端にドーベルマンに噛み殺されるような殺伐とした家ではないらしい。小雪が病に倒れる前は蓮もよく遊びに行っていた。

 連れて行くと話がややこしくなりそうだが車に置いていくのも不安があるパーシーを引き連れ、二人は守衛に話しかけた。三人はそれぞれ早瀬小雪の主治医の親族、警察、早瀬小雪の友人の親、と正直に身の上を説明し、早瀬家の人間に話したい事があると言ったのだが、どうにも守衛の反応がはっきりしない。

 

「お通しできますよ。できますが、そのー、やっぱりですねえ、早瀬家の方々はお忙しい方ばかりですし、いきなり押しかけるのは、そのですねえ」

「申し訳ありません。しかしこちらとしても急な話で。今はお会いできないんですか?」

「できますできます、できますけど、あー、こう、マナーとしてですね? まずアポをとって頂いて」

「……分かりました。では明日の朝お伺いさせていただきたいのですが」

「朝!? 明日の朝。あー、えー」

「駄目ですか? いつ頃なら都合がつきそうですか?」

「いつ頃……えー……あ、ちょっとちょっと! 何してるんですか!」

 

 煮え切らない守衛にイライラしていると、パーシーが少し離れた場所から塀をよじ登って中に入ろうとしていた。守衛が警棒を出して走って行き、パーシーの足を打つ。パーシーは悲鳴を上げて無様に落ちた。

 

「なんなんですかあなたは!」

「あっ、足が! 足がァー! 折れた! これ絶対折れたって! あーッ! これもう治療費百億万円かかるわ! イタタタタ! おまわりさーん! この人俺の足粉砕しましたァー!」

 

 パーシーが小学生並の痛がり方をして派手に騒ぎ、守衛の注意が引き付けられている隙に、小次郎と一太郎は互いに目配せして頷き合い、門の格子の隙間から中の様子を伺った。

 早瀬家の門の前には広いバラ園があり、温室と噴水も見えた。その奥には荘厳な大邸宅がどっしりと待ち構えている。絵に書いたような豪邸だ。

 守衛の態度から何か隠しているのではと疑った二人が怪しいものは無いかと見回す。すると、小次郎の目にバラ園の間を縫うように通っている石畳の道で誰かゴソゴソ動いているのを見つけた。バラの陰になっていて分かりにくいが、小柄で、随分猫背だ。帽子でも被っているのか頭部が奇妙に変形して見える。庭師かと思い目を離そうとすると、そいつと目が合った。昼間の太陽の下でもはっきりと分かるほど爛々と光る赤い瞳だ。

 

 小次郎は奇妙な寒気と目眩を覚えた。視線を通して体の中に氷でも入れられたようだ。漠然とした不安感が湧き上がる。目をこすった小次郎がもう一度バラ園の片隅を見た時には、既に誰もいなかった。

 温室のそばにタラの木を見つけ、天ぷらにすると美味しいウコギ科の落葉低木について無駄に知識を掘り起こしていた一太郎は、パーシーが守衛に連行されそうになっているのに気づき撤退する事にした。平謝りしながらパーシーの頭を掴んでコンクリートに擦りつけ、明日また来るという事だけを一方的に言って撤収。守衛は追うべきか迷ったようだが、深々とため息を吐いただけだった。

 

 三人は車で移動しながら情報を共有した。小次郎がバラ園に居た何者かについて話し、一応一太郎の「透視」チェックを受ける。一太郎はハンドルを切りそこね、車を電柱にこすってしまった。小次郎に魔術がかけられていたのだ。

 

「やられましたねぇ。今のところ寒気がする程度ですが……これは早瀬家が元凶という事ですかね」

「どうでしょう。小雪ちゃんの治療費は早瀬家が出しているようですし、その小雪ちゃんの為に動いている我々を妨害する理由は無いと思いますが。というか本当に大丈夫ですか? 休まれたほうが良いのでは」

「そうそう、俺に任せとけよ。パパッと解決してやるから見とけよ見とけよ~」

「これは休めませんねえ」

「なんかもうすみません……」

 

 不審な態度の守衛と、早瀬家に居た不審人物(推定魔術師)。早瀬家を疑う理由はあるが、小雪はその早瀬家の娘であり、今日まで相当手を尽くされている。イマイチ全容が掴めない。早瀬家内部に跡取り争いか何かがあり、小雪に生きていて欲しい者と死んで欲しい者がいるのではないか、という説を一太郎が言い出し、小次郎はそのあたりの調査を電話で特命係に頼んだ。

 

 一通り話すべき事を話し終わると、ルーカス邸に着いた。ネルソン診療所から車で五分ほどの場所にある、こじんまりとした二階建ての家だ。診療所が封鎖され、早瀬家で門前払いを喰らった以上、事件の手がかりがありそうなのはここぐらいだ。

 玄関には蜘蛛の巣が張っていて、窓は汚れている。しばらく帰っていないようだ。

 

 玄関の前で一太郎は小次郎に前を譲り、譲られた小次郎はパーシーを見た。

 

「え、何?」

「鍵を貸して下さい」

「え?」

「え?」

「え?」

 

 三人は顔を見合わせ、同時に頭を抱えた。鍵がない。

 一太郎がなんか昔もこういう事があったなーと学習しない自分に絶望していると、パーシーが新聞や雑誌がぎゅうぎゅうに詰め込まれているポストの下をまさぐった。

 

「でもなー、兄貴の癖が昔から変わってないなら多分……あ、あったわ」

 

 パーシーはポストの下にガムテープでくっつけられていた鍵を剥がし、ドヤ顔で玄関を開けた。やはりこの男、未弧蔵と同じ世界の住人だ。

 

 一応、親族(パーシー)の許可が下りているので、小次郎は遠慮なく家探しをした。廊下も室内も全体的に埃っぽく、歩くと薄ら足跡がついた。ルーカスが長いこと家を開けていた証拠だ。三人が来る前に訪問者が無かった事の証拠でもある。

 

 小次郎は寝室で折りたたまれた防弾ジャケットを見つけた。市販品の物のようだが、老齢の医者が持っているには違和感のある品だ。サバゲー同好会にでも入っていたのかと思い何気なく持ち上げると、背中に大きく三本の裂け目が入っているのが目に入り息を飲んだ。何かに引っ掛けて破けたような跡ではない。まるで巨大な鉤爪に引き裂かれたようだ。さらに、枕の下には強力な催涙スプレーがあり、押入れからは襟に血がついた白衣と半分溶解した医療カバンが見つかった。

 一体ルーカスは何を相手にしていたのか。小次郎は戦慄しながら、それらの品を調べていった。

 

 書斎に入った一太郎は壁際を埋め尽くす本に圧倒された。五千冊近くあるのではないだろうか。大半は医学関係の本で、ファイル分けされた論文も多い。

 例によって「透視」で魔導書を探してみたが、反応なし。大量の本を一冊一冊チェックしていく。

 蔵書にはオカルト系の本も混じっていた。医学書と比べて真新しいものが多く、一太郎でも知っているようなメジャーなものや、パラパラ捲っただけでゴミ同然と分かるクズ本ばかりだ。最近になって手当たり次第集めた、といったところだろうか。無論、小雪の病状の改善のために違いない。

 一太郎の感覚では異常な病に対してオカルト的観点から考えるのは至極当然だが、普通は違う。医者が困難な病にぶち当たり、オカルトに傾倒し始めれば大抵頭がおかしくなったとみなされる。敢えてその道を行き、どうやら成功を収めたらしいルーカスは傑物と言える。

 

 神話的な冒涜的知識と、オカルト知識はほぼ別物である。ルーカスが死に際に口走った「這いよる混沌」=ニャルラトホテプは神話的知識に分類され、付け焼刃のオカルト知識で接触できる類の言葉ではない。ルーカスはどうにかして愚にもつかないオカルトから脱却し、その上位互換とも言える神話的知識にたどり着いたようだ。その代償か、怪死する事になってしまったが。

 

 二時間ほど本棚を検分すると、二冊の本が見つかった。「Elpis」と題された手書きの本と、ルーカスの日記だ。日記の方は文机の引き出しに入っていた。日記の方は言わずもがな、ルーカスが何故怪死するに至ったか、そしてどうすれば小雪を救えるのかを知る手がかりになるだろう。

 Elpisの方は中に魔術が記されている……らしい。百ページほどの黒いハードカバーの本で、表紙の裏に「治療系魔術手引書草案」と身も蓋もない文言が書かれていた。ルーカスの頭が正常だったのなら――――悲しい事に異常だった可能性も十分ある――――これに小雪の症状を小康状態に持っていったという手段が記されているのだろう。

 

 神話的怪異に日記や魔導書はつきもので、大抵は重要なキーアイテムになっている。一太郎はまずはElpisから読む事にした。他の二人に読ませるよりも、魔術知識の土台がある一太郎の方が理解は早いだろう。

 一太郎は自分がElpisを読んでいる間に日記を確認してもらおうと、パーシーを探した。本音を言えば小次郎に任せたいのだが、日記は英語の筆記体で書いてあったのだ。日本人が読むには難度が高い。

 

 パーシーは居間のワインセラーに入っていたヴィンテージワインを浴びるように飲んでいた。

 

「兄貴ィ……なんで死んじまったんだ……勝ち逃げしやがって……俺は駄目な弟だよ……結局、何一つ兄貴にゃ勝てなかった……」

 

 空き瓶を片手にパーシーは泣いていた。なんだかんだで兄弟なのだ。どんなに駄目な男だろうと家族の死はやはり辛い。

 今はそっとしておこう。一太郎は足音を忍ばせて踵を返した。

 

「本当になんで死んじまったんだ……借金六百万もあるんだぞ……この先誰を保証人にすりゃいいんだよ……やべえよやべえよ……」

「オラ、これでも読んでろ!」

 

 一太郎は助走をつけてパーシーの顔に日記を叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一晩かけて、一太郎はElpisをざっと読み通した。手引書草案というだけあって、かなりわかりやすく書いてあったので助かった。

 Elpisに記されていたのは、一週間の間対象の自然回復力を最大限に高める《癒し》と、多くの魔力(MP)を消費する代わりに即効性のある回復をもたらす《治癒》である。ゲーム的な表現をするならば、《癒し》がHPを毎ターン少量回復する魔法で《治癒》が一瞬(1ターン)でHPを大きく回復する魔法だ。ただし《治癒》は傷、病気、毒など、体の害になる要素に対してオールマイティに作用するらしい。死者は蘇らないが、失われた手足すら長期的に《治癒》し続ければ少しずつ生えてくるようだ。

 

 どちらも非常に有用である。早速習得して小雪に使用、と行きたいところだが、いくら分かりやすく書いてあっても、魔術の習得は簡単ではない。大抵の魔術は、長い詠唱の文言を正確に覚え、正確な抑揚で正確に発音し、正確な身振り手振りを交えなければならないのだ。

 一太郎は習得を詠唱の短い《治癒》に絞る事にした。《治癒》は魔術の発動にかかる時間は十秒ほど。覚える所作もそれだけ少ない。三日あればなんとかなるだろう。《癒し》は五分間の詠唱を必要とするため、覚えるには時間がかかりそうだった。

 

 小雪のカルテとElpisを読んだ一太郎は、小雪が現在ルーカスによって《癒し》を受けている事を理解していた。何者かによる呪いと、ルーカスの《癒し》が拮抗しているのだ。最近の小雪のカルテの記述が曖昧だったのは、まさか「魔術で治しています」とは書けないからだろう。

 ここで重要になるのが、《癒し》の継続時間である一週間だ。ルーカスは四日前に発症し、床に臥せった。あの状態では魔術の発動に必要な詠唱も身振りもできなかっただろうから、小雪に《癒し》がかけられたのは四日前が最後。あと三日で効果が切れる。三日のタイムリミットまでに《癒し》か《治癒》を習得できなければ、小雪に降りかかっている魔術の均衡が崩れ、たちまち死んでしまう。元々長期の闘病で弱りきっていたのだ。《癒し》が解けても持ちこたえるというのは希望的に過ぎるだろう。

 時間との勝負だ。一太郎は小次郎に手短に事情を説明し、書斎に篭って一心不乱に魔術の習得に打ち込み始めた。

 

 徹夜して兄の日記を読んでいたパーシーは不貞腐れていた。

 約一年前、ルーカスは古い友人の早瀬源蔵から孫娘の治療を頼まれた。ルーカスは手を尽くしたが、症状の根本的な改善には至らず、じわじわと悪くなるばかり。

 半年前、ルーカスはアメリカのアーカム市に住んでいる魔法のような治療をするという医者の噂を聞き、藁にもすがる思いで会いに行った。そして、そこで身の毛もよだつような恐ろしい怪物と対決するハメになったらしい。日記には怪物とその厳しい戦いについて克明に書かれていて、パーシーは打ちのめされた。

 アウトローな部分で勝負すれば兄に勝ると信じていたが、とんでもなかった。ルーカスはある意味ではマフィアの抗争よりも恐ろしい事件に巻き込まれ、生還し、治療魔術の習得に成功していた。やはり兄には勝てない。兄より優れた弟など存在しないのだ。

 

 劣等感に悶々としながら魔術を習得した後の出来事を読み進めようとしたパーシーは、居間にやってきた小次郎に邪魔された。

 

「――――という訳で八坂氏は動けませんので。早瀬家には我々だけで向かいます。用意しておいて下さい」

「あ、マジで? 日記読んでる途中なんだけど。っていうか眠いわ。昨日から寝てねぇ」

「あー……昼からという事でアポ取っているので、今から仮眠を取ってもらうという事で。日記には何が書いてありました?」

「兄貴

 めっちゃ

 すげえ」

「……特にめぼしい情報は無かったと。では昼に」

 

 肩をすくめて家宅捜査に戻ろうとした小次郎はタンスの角に足の小指をぶつけて悶絶した。背後でパーシーがバカ笑いしているのが腹が立つ。小次郎はコメディ時空に引きずり込まれる前にそそくさと退散した。

 

 昼になり、二人は再び早瀬家に向かった。渋い顔の門番に通され、使用人の案内で中に通される。

 応接間で早瀬雄太郎と面会した。四十代の壮健な男で、高級そうなスーツをを見事に着こなし、柔和な微笑みを浮かべている。それが本心からの笑みなのか、取り繕ったものなのかは二人には分からなかった。「透視」と心理学の併用で魔術的な正確さでもって人の心を読み取る事ができる人間はそうそういないのだ。

 

 雄太郎は当主である父は今都合がつかないため、自分が代わりに対応する事になったと最初に一言断った。当主の息子ならば恐らく次期当主。そんな人物が対応に出てきたのだから咎める理由はない。

 

「雄太郎さんもお忙しいでしょう。昨日の今日で急な訪問になってしまい申し訳ない」

「いえいえ、娘とルーカスさんのお知り合いと聞きましたので。重要な人物と会う時間を作るのは当然の事です」

「そう言って頂けると助かります」

 

 雄太郎と小次郎が話の枕に当たり障りのない話をしていると、メイドが紅茶とケーキを運んできた。ケーキは市販のもののようだが、紅茶は嗅いだことのない独特の香りがした。

 小次郎は早瀬家を疑っている。警察を名乗った以上、まさか短絡的に劇物を盛られる事はないだろうが、かつて起きた事件でヘビ人間が使ったような、人間をコントロールする特殊な魔術的毒の例もある。油断はできない。小次郎は口をつける前に匂いを嗅いで尋ねた。

 

「面白い香りですねえ。何か香り付けに使っているのでしょうか」

「はい。それは当家のバラ園で採れたバラから抽出したローズヒップティーなのですが、そのままでは酸味が強く好みが分かれるのが難点でして。飲みやすいようにハーブと蜂蜜を少々交ぜてあります。お口に合わないようでしたら別のものとお取替えしますが」

「では私はミネラルウォーターを。すみませんね、どうも紅茶は苦手で」

 

 小次郎は紅茶を回避して水を頼んだ。ミネラルウォーターなどと洒落た言い方で誤魔化したが、要するに毒を味や香り、色で誤魔化されないように無色無味無臭の水を選んだだけである。隣ではパーシーがケーキを貪りながら紅茶をお代わりしていた。

 

「それで本日のご要件は?」

「実は――――」

 

 小次郎は幾つか伏せながら事情を説明した。ルーカス・ネルソン医師の意向で、早瀬小雪が何者かに命を狙われている可能性を考慮し、警察病院へ移した事。ルーカスに依頼され、自分達が小雪を付け狙う何者かを追っている事。今日はその手がかりを探しに来たこと。

 ルーカスの死亡は言わなかった。早瀬家の一派が小雪の命を狙っているのなら、ルーカスは邪魔者だったはず。わざわざ邪魔者が死んだ事を伝えてやる理由はない。ルーカスは死に様が死に様だったため、一般に死亡の情報は伝わっていない。

 

「そうですか……やはり何者かが娘の命を」

 

 雄太郎は呟きながら小次郎の目をじっと見てきた。小次郎は雄太郎の反応から情報を読み取ろうとしていたが、逆に自分が観察されているような気がして落ち着かなくなった。多少の危険は承知だったつもりだが、もしかして虎の穴に飛び込んでしまったのでは。

 緊張で硬くなった小次郎は、隣で自分の分のケーキまで食べ終わり、ゲップをしているパーシーを見て脱力した。ここまで無警戒で我が家のようにくつろがれると自分の警戒が馬鹿馬鹿しくなってくる。

 

 小次郎は雄太郎自らの案内で、小雪の部屋に何か手がかりが無いか探したり、自宅で小雪が食べていた料理の食材の仕入先を見たり、厨房を調べたりした。どこにも怪しいものは無く、すれ違う料理人や庭師はどことなくよそよそしいものの何かしてくる訳でもない。

 絨毯の敷かれた廊下を歩きながらパーシーが聞いた。

 

「小雪ちゃんの見舞いに行ったりはせぇへんの?」

「……近頃は仕事が忙しくなかなか時間が取れません。心配ですが、ルーカスさんを信用していますので。あの方に任せておけば安心です」

「チッ」

 

 兄への劣等感を刺激され、パーシーは舌打ちした。

 最後に二人はバラ園へ案内された。色とりどりのバラが咲き、よく整えられたバラが腰ほどの高さで一面に広がっている。小次郎はざっと見渡したが、あの赤い目はどこにも見当たらなかった。パーシーは近くにいたメイドに頼んでバラの花束を作ってもらっている。

 

「見事なバラ園ですね。手入れもさぞ大変でしょう。専属の庭師を雇っているので?」

「普段は一人だけ。繁忙期には業者を入れています」

「ほう。昨日も業者の方が作業していたのですかね」

「いえ、昨日は来ていませんが」

「そうですか? 昨日尋ねた時、バラ園で誰か作業していたように見えたもので。庭師の方でも無いようでしたので、てっきり業者の方かと」

「……ふむ。料理人が料理に使うバラを摘んでいたのかも知れませんね」

 

 さらっと流されたが、あれは庭師でも料理人でも無かったと小次郎は確信している。雄太郎が何か隠している可能性は高い。まさかあの赤目の何者かが白昼堂々早瀬家の敷地に侵入した泥棒だという事はないだろう。

 疑いを深めていると、雄太郎は話を続けてきた。

 

「小次郎さんはバラに興味がお有りですか? よろしければ良いバラを扱っている園芸店を紹介しますが」

「……是非」

 

 バラといえばベルサイユのバラと青薔薇ぐらいしか思い浮かばない貧困な知識と興味しかなかったが、話に合わせて頷いておいた。雄太郎は手帳を出し、ささっとメモをしてページを千切り渡してきた。

 

「私の紹介だと言えば良くしてくれるでしょう」

「! ……どうも。時間を見つけて行ってみます」

 

 渡された紙には、園芸店のものらしい住所と共に、「トリカブトを探せ」という走り書きがしてあった。小次郎が雄太郎を見ると、雄太郎は目を逸らして歩き出した。

 

「もう夕方ですね。時が過ぎるのは早いものです。何か用がありましたらまたお越し下さい」

 

 二人は丁寧に礼をする雄太郎と守衛、メイドに見送られ、早瀬家を後にした。

 車の中で小次郎はパーシーにメモを見せた。

 

「こんなメモを受け取ったのですが。何か心当たりは?」

「ん? いや、兄貴はトリカブトとか育てたりはしてなかったなあ。トリカブトってアレだろ、毒草」

「そのトリカブトだと思いますが。ふむ。雄太郎氏の意図が読めませんね。パーシーさんは何か収穫ありましたか」

「おっ、そうだよ、見てくれよ~このバラ。これ小雪ちゃんの枕元に置いたら喜びそう……喜びそうじゃない?」

「あー、いいですね~」

 

 捜査とは関係なかったが、小次郎はパーシーの心意気に優しい気持ちになった。

 

「あと紅茶セットもらってきた。高く売れそう……売れそうじゃない?」

「それは盗ってきたと言うんです。今度訪ねる時に返しましょうか」

 

 いつの間にくすねたのか、懐に入れた紅茶セットを見せびらかすパーシーにため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更に翌日の朝。パーシーはルーカス邸の居間で日記を読み終えた。

 治療魔術の習得後、帰国したルーカスはすぐさま小雪に魔術をかけた。結果、病状の悪化は食い止められた。しかし快方へ向かう事はなかった。

 ルーカスは小雪が魔術によって苦しんでいる事を確信。一週間毎に「癒し」をかけ直して悪化を防ぎつつ、小雪に魔術をかけている犯人の特定のために奔走する。

 独自の捜査の結果、ルーカスは「銀の黄昏教団」というカルト集団にたどり着いた。

 

 銀の黄昏教団は謎の多い秘密組織である。短い調査では深いところまでは判然としなかったが、かつては世界規模で権勢を誇った邪神崇拝組織らしい。「ルルイエの主」クトゥルフ、「全てにして一つのもの」ヨグ=ソトース、「這いよる混沌」ニャルラトホテプなど、強大な邪神を奉じる古い組織だ。現在では衰退したものの、未だに生き残りの幹部達が世界各地で策謀を巡らせている。

 その銀の黄昏教団のメンバーの一人が、最近早瀬家に接触したらしい。目的は不明ではあるが、その接触と時期を同じくして早瀬小雪は病に罹った。無関係とは考えられない。

 早瀬家の財力を借り、より詳しく調査の手を伸ばそうとしたところで、ルーカスに小雪のものと同じ魔術がかけられた。病は喉に及び、詠唱ができなくなったため、魔術で自己治療もできない。自分の調査を勘付かれ、排除されようとしている事を察したルーカスは、銀の黄昏教団と無関係であると確信できる、信頼できる人物に後を託した。

 

 以上が日記に記されていた事である。

 銀の黄昏教団が首謀者らしいが、早瀬家の立ち位置がはっきりしない。日記には、早瀬家の内部調査を行ったという記述はなかった。ルーカスは早瀬家に全幅の信頼を寄せていたらしい。もしも、早瀬家と銀の黄昏教団が結託していたとしたら? いや、最初は敵対していて、途中で方針を変え手を結び、邪魔になったルーカスを排除したという可能性もある。

 

 そこまで考えて、タバコが切れたパーシーは、タバコを買いに行くついでに書斎で魔術を学習中の一太郎に日記の内容の要約を話した。

 

「銀の黄昏教団……?」

「知ってる?」

「いや知りませんが。似た言葉は聞いた覚えが」

「あ、そう? じゃけん俺タバコ買ってきますね~」

「あっはい」

 

 話の繋がりは分からなかったがパーシーはタバコを買いに行った。

 

 銀の黄昏といえば、前回の事件の銀の黄昏館を思い出す。しろがね館の前身であった建物の名前だ。前回の事件で戦ったアリッサ・シャトレーヌは魔術師だった。アリッサも銀の黄昏教団のメンバーだったのかも知れない。

 という事は、最悪あのレベルの魔術師や怪物とまた戦う事になる。一太郎の脳裏に街を瓦礫の山へ変えていく黒い竜巻がフラッシュバックした。吐き気がする。今度は間に合えば良いが……

 

 暗い気分になった一太郎は、隣の部屋で携帯の着信音が鳴っているのに気付いた。小次郎の電話だろう。気にせずに魔術の習得に戻ろうとしたが、着信音がなかなか消えない。小次郎が部屋に携帯を置き忘れたかと思った一太郎が隣の部屋を覗くと、ソファに横たわり、悪夢でも見ているのか青い顔でうなされている小次郎の手元に携帯があった。

 

「明智さん、携帯鳴ってますよ」

 

 声をかけて揺さぶるが、起きない。携帯のディスプレイを見ると、特命捜査係の左京からだった。少し迷ったが、一太郎は電話に出る事にした。

 

「はい」

「もしも……ん? 声が」

「八坂です。明智さんが寝ているので代わりに出させてもらいました。緊急ですか」

「緊急ではないが、まあ八坂さんでも構わないか。えー、頼まれていた早瀬家の内情調査結果だがね」

 

 左京曰く、早瀬家は早瀬源蔵を当主とする一族の財閥で、次期当主は源蔵の息子の雄太郎。雄太郎は優秀な男で、人望も厚く、特に跡目争いは起きていない。財閥傘下の会社には落ち目の企業もあれば、伸びている企業もあり、総合的に見て緩やかな登り調子。財閥に不審な点は無い。

 ただし、ここ四、五日の間、当主の早瀬源蔵が公の場に姿を見せていないという。予定を全てキャンセルし、自宅に篭っている。軽い風邪だが大事を取っている、と説明されているらしい。

 

「ルーカス先生が倒れたのと同時期からですね」

「それは思わせぶりな符号だと思うね。そちらの調査の進展はどうかな」

「順調です」

 

 一太郎は左京にもざっと状況を説明し、銀の黄昏教団の調査を頼んで電話を切った。

 そこで違和感に気付いた。耳元で随分長く話し込んでいたのに、小次郎が目を覚まさない。近くで見てみると、顔色が悪いだけでなく脂汗をかいている。嫌な予感がして「透視」をしてみると、小次郎に二重に魔術がかけられていた。

 

 コンビニの自動ドアを潜ると同時にタバコが買う金を持っていない事に気づいてすごすご戻ってきたパーシーは、一太郎にもう一度早瀬家に探りを入れてくるよう頼まれた。

 小次郎は意識がなく、警察病院に搬送された後だ。小次郎が魔術にかかったタイミング的に怪しいのは早瀬家である。早瀬家でパーシーと小次郎は常に行動を共にしていたので、小次郎が魔術をかけられるのならパーシーもかけられていなければおかしい。パーシーが無事なのは、何らかの要因で魔術を回避できたからだ。

 今度も回避できるかは不明だが、ここはパーシーに託すしかない。放置すれば被害は広がる一方。小雪のタイムリミットもある。一太郎はますます治療魔術の習得が急がれるため手が離せず、特命係はまたしても別の案件に人手を割かれていて人を回せない。警察病院で小雪と小次郎の警護をしている蓮は論外だ。

 

「トリカブトを探せ、という言葉も気になりますが、早瀬家が怪しいこの段階では、罠への誘導の可能性も捨てきれません。早瀬家から行きましょう。正直不安ですが、任せます」

「任された」

 

 パーシーはドンと胸を叩いた。

 

 パーシーは寝室からルーカスの服と白衣をとってきて着替え、洗面台で髭を剃って髪型を整えた。押入れから引っ張り出してきた使いかけの絵の具で器用に皺を作り、キリッとした表情を作ると、驚く程パーシーの顔はルーカスそっくりになった。元々背丈も同じぐらいで、声も似ている。ちょっとやそっとでは気づかれないだろう。

 ルーカスに変装したパーシーは、鼻歌を歌いながら早瀬家へ向かった。ルーカスの姿を見て早瀬家の住人達がどう反応するのか見ようと考えたのだ。歓迎されるのなら良いが、敵対され襲われた場合どうするかはまったく考えていない。変装がバレた場合の事も考えていない。雄太郎が留守だった場合も考えていない。ガバガバな作戦である。

 

 パーシーは車も免許も持っていないので、のんびり歩いて早瀬家へ向かった。数時間後、襲撃もなく無事到着する。

 門の守衛はパーシーを見た瞬間、信じられない、という顔をした。

 

「ルーカスさん?」

「ああ、久しぶり~……です」

「おお……ルーカスさん! 貴方が死ぬはずがないと思っていました! さあ早くこちらへ! 源蔵様が大変なんです!」

 

 守衛は目に涙を滲ませ、ルーカスの手を取った。そのまま早足に屋内に案内される。パーシーは訳の分からないまま曖昧に相槌を打ち、それに着いていった。

 パーシーは幾つもの廊下と階段を通り、一つの部屋に案内された。

 

「さあ、雄太郎様と源蔵様がお待ちです」

「…………」

 

 あまり口を開くと口調でボロが出そうだったので、パーシーはおとなしく従って中に入った。

 部屋の中には、ベッドに伏せる今にも死にそうな老人と、その手を握り俯いている雄太郎がいた。雄太郎は胡乱げにパーシーを見て、目を見開いた。弾かれるように立ち上がり、駆け寄る。

 

「ル、ルーカスさん!? 死んだはずじゃあ……!」

「実は生きてた、んです」

「偽装死ですか? なるほど、たしかに一度死んだように見せかけた方が良かったかも知れませんね。いや、すっかり騙されました。そうだ、ルーカスさん、早く父に魔術を。前回からもう六日です、もう駄目かと」

 

 雄太郎はベッドの横の場所を空け、パーシーに譲った。パーシーは老人をじっと見つめるが、見覚えも無ければ、当然魔術も使えない。

 焦る。一気にダンジョンの最奥部まで来て、ひのきのぼうと鍋の蓋しか持っていない事に気付いた気分だった。冷や汗が流れる。

 

「ルーカスさん?」

 

 沈黙して動かないパーシーを雄太郎が訝しげに見る。パーシーの顔色を観察した雄太郎はハッとした。

 

「別……人? ルーカスさんじゃない!? な、なんて事を……!」

 

 雄太郎は顔を青ざめさせた。パーシーは素直に謝った。

 

「ごめんな?」

「ごめっ、お前ッ、自分が何をしたのか分かっているのか!」

「ままま、落ち着いて。俺は魔術使えないけど、魔術使える奴が来るからさ~」

「嘘をつくな! これが落ち着けるか! お前ッ、お前が余計な事を……! ああ、もうおしまいだ!」

 

 声を聞きつけた守衛が部屋に入ってきてパーシーと口論になり、それを聞いたメイドも入ってきて、大騒ぎになった。この世の終わりのような顔で絶望したりパーシーに怒鳴りつけたりと忙しい雄太郎と、のらりくらりと早瀬家の面々を煙に巻くパーシーで混沌とする。

 しばらくして落ち着いた後、パーシーは事態の変化についていけずまごまごしているメイドにねちっこく頼み込んで携帯電話を借り、ルーカス邸に電話をかけた。コール数度で一太郎が出た。

 

「はい、八坂です」

「もしもし? パーシーだけど」

「何かありました?」

「今早瀬家にいるんだけどさ~、ちょっと……あの、アレ、やばい」

「……やばいんですか」

「そそそ。ところで八坂は魔術覚えた?」

「今さっき覚えたところです。まだ試していないので効くかは分かりませんが」

「おっ、ナイスゥ! じゃあ早瀬家来て源蔵さん治してくれよ~、頼むよ~」

「えっ」

「源蔵さん、なんか魔術かけられてるらしいんだよ」

「えっ? ど、どういう状況?」

「いいからいいから、じゃ、頼むよ~」

「ちょっ」

 

 パーシーは電話を切り、唖然としているメイドににっこり笑って携帯を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車を飛ばしてやってきた一太郎の魔術は、無事に発動した。今にも死にそうだった早瀬源蔵の顔色は急激に良くなり、汗は引き、体の震えも止まり、安らかな寝息をたてはじめた。

 それを見た雄太郎は大きく安堵の息を吐き、両手で顔を覆った。

 

「良かった。はあ……もう駄目かと……」

「えーと、あの、すみません、押しかけて来ておいてなんですが、我々も事情を把握してなくてですね。できれば何が起きているのか話して頂けると助かるのですが」

 

 遠慮がちに尋ねると、雄太郎は疲れきった様子でパーシーと一太郎の椅子をすすめ、全てを語った。

 

 早瀬小雪が病にかかった直後、当主である早瀬源蔵に強迫があった。孫娘の病を治して欲しければ金を出せ、というものだ。

 当然、源蔵はこれを無視。誘拐したのならまだしも、病気を理由に強迫など訳がわからない。普通に治療をして、それで終わりだ。早瀬家は大財閥なだけあり、例年この手の頭がおかしい強迫がチラホラ来るのも一顧だにしなかった理由の一つである。

 

 ところが小雪の病は不自然に長引き、強迫も続く。病の媒介者を突き止めようと手を尽くしたが、原因は分からなかった。

 早瀬家の内密の親族会議では強迫に応じて金を払おうという意見も出たが、強迫と病の因果関係がはっきりしなかった。脅迫者と病の原因はまったく別で、と突発的な謎の病に便乗して強迫しているだけかも知れない。とはいえ、万が一という事がある。要求された金額は十分払える額だ。金を払ってそれで済むのなら、それが一番良い。大事な孫娘のために、源蔵は脅迫に屈しようとしていた。

 

 そこで源蔵の古い友人であり、小雪の主治医であるルーカス・ネルソンが治療魔術を引っさげて帰還。事態は好転する。

 ルーカスが語った神話的怪異、禍々しい魔術の存在を信じ、源蔵は調査方針を転換。科学捜査からオカルト的捜査に切り替える。元々が財力があり、コネもある財閥である。捜査は迅速に行われ、魔術をかけた犯人が東京近郊にいる事、《病をもたらす》魔術をかけるためには毒草が必要であり、どうやらトリカブトを使っているらしい事が分かった。

 並行して別ルートでルーカスが行っていた調査により、犯人が銀の黄昏教団に所属している魔術師である事が判明。犯人を追い詰めるのは時間の問題と思われた。

 

 ところが、あと少しというところで対魔術師の主要人物であったルーカスと源蔵が病にかかってしまった。

 指導者を失い、早瀬家は萎縮した。次期当主である早瀬雄太郎が急遽代わりに先頭に立ったが、源蔵と小雪、二人を人質に取られては苦しかった。

 ルーカスの死亡の報を独自の情報網で手に入れ、雄太郎は屈服。多額の金を支払う事になった。

 

 更に犯人――――魔術師は要求を突きつけた。今後、早瀬家に訪問してきた者は全て招き入れ、食器を使わせ、それを自分に渡す事。早瀬家の監視カメラを全てOFFにして、裏口を常に開けておく事。魔術や脅迫に関する情報は一切口外しない事。この三つだ。

 雄太郎はその要求を飲めばますます敵が有利になる事は承知していたが、逆らえず、了承。守衛の態度がおかしかったのは、小次郎達を招き入れれば敵の手に落ちてしまうが、脅迫されているため招き入れるしかないというジレンマに苦しんでいたからだ。敵はどこで見ているか分からない。下手な対応は源蔵と小雪の死を招く。

 

 二度目の訪問で、小次郎の使ったティーカップは魔術師の手に渡った。受け渡しは助手を名乗るフードで顔を隠した男が行った。彼が本当に助手なのか、魔術師その人であったかは不明である。とにかく、その後に小次郎が病にかかったところからすると、ティーカップを媒体にして呪いをかけられたのだろう。古来から本人縁の髪や愛用品を介して呪いをかけるというのはよくある話だ。パーシーが無事だったのは、自分の使った紅茶セットをくすねたため、敵の手に渡らなかったからである。

 

 そして今日、パーシーが突撃をかました……という訳だ。

 

「パーシーさんだと分かった時はどうなる事かと思いましたが……なんとかなるものですね」

 

 そう言って雄太郎は力なく笑った。一太郎も苦笑いする。まったく同意だった。機転と運にかけてはパーシーは一太郎より上かも知れない。はた迷惑さも上だが。

 

 話が終わった後、雄太郎は電話を何本かかけ、魔術師の居所を突き止めるために全力で動き始めた。魔術師に唯々諾々と従っている間にも、逆襲の機会が訪れたらどうしてやろうかと頭の中で計画を練り続けていたらしい。私立探偵、警察、興信所、ちょっと口外できない情報機関。様々な者達が雄太郎のひと声で動く。

 財閥って凄い。一太郎は改めてそう思った。

 

 索敵の間、一太郎は魔力の回復と治療に時間を費やした。

 《治癒》の魔術は即効性・万能性・効果に優れる分、消費が重い。ゲーム的な表現をするならば、コストとして12MPを消費する。一太郎のMP最大値はPOWと同じ22で、MPは24時間で全快する。連続使用はできない。それでも小雪の治療と小次郎の治療は間に合った。

 何か危ない薬でも使ったかのような回復ぶりだったが、実際《治癒》の魔術はそれなりに危ない。現実では有り得ない急激な回復ぶりは、現実から逸脱した法則に基づいているからであり、それを行使する者もまたじりじりと現実から逸脱していく。一太郎の正気は既に相当の危険域に達している。この事件を片付けたら長期の精神的な療養が必要だ。もっとも、必要だからといって療養するとは限らないのだが。

 

 二人を治療してもまだ索敵と根回しが終わらなかったので、一太郎は自分と蓮の火傷痕に《治療》を使った。流石魔術というべきか、二人の火傷痕は綺麗さっぱりなくなった。《治癒》は古傷の類にも有効らしい。一生モノの呪いのような火傷から解放された蓮は静かに泣いていた。

 一太郎は幼い頃から引きずっていた火傷の後遺症が消え、体が軽くなったのを感じ、今更ながらどれほど火傷が重しになっていたのかを思い知った。鏡を見ると顔に醜い火傷の痕がなく、まるで別人を見ているような奇妙な感覚だったが、いずれ慣れるだろう。

 

 三日後、トリカブトの流通経路と銀の黄昏教団の噂などから、魔術師の住居が判明した。東京郊外の一軒家で、小さな庭にトリカブトが植えられているらしい。

 

「では私の手の者を向かわせます。司法の裁きに任せるのは不安がありますし、少々後暗い『処理』をする事になりますが、構いませんね?」

「ちょっと待ってください、私も行きます」

 

 電話で指示を出そうとした雄太郎に一太郎は待ったをかけた。訝しげにする雄太郎に説明する。

 魔術師や怪物の相手は非常に危険だ。物理攻撃が効かないような相手だった場合、オリンピック級の武術家や狙撃手でも敗北は必至である。解析役として一太郎の同行が望ましい。

 一太郎の説得に雄太郎は少し考えて頷いた。全幅の信頼を置いていたルーカスですら敗北したのだから、用心をしてしすぎる事はないと思ったのだ。

 

「私も行きます。決着をこの目で見届けたい」

「俺も俺も~」

 

 病み上がりの小次郎は決然とした目で言い切り、パーシーも気楽に便乗した。

 結局、一太郎、小次郎、パーシー、雄太郎配下三人の六人で向かう事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、魔術師の家である。何の事はない、どこにでもある一軒家だ。全体的に老朽化が進み、くたびれた印象は受けるものの、付近にある住宅も似たようなものである。配下の一人が確認を兼ねて説明する。

 

「昨晩部屋の明かりが消えてから誰も出ていません。まだ中にいるはずです。どうも二人で住んでいるようなのですが、外に出るのはフードを被った男だけのようです」

「フードの男が犯人かどうかは分からないんですよね?」

「はい。しかしフードの男は犯人の手足となって動いているようですし、二人とも『処理』するように指示されています」

 

 一太郎は頷き、家に向かって『透視』をした。始めて神話的事件に巻き込まれた時を思い出す。あの時も屋敷に向かって『透視』をしたものだ。

 家は半球形の膜のようなものにすっぽりと包まれていた。ちょうどお椀を被せたような形だ。

 

「結界……ですかね」

「結界?」

「家の敷地が魔術的な膜に包まれています」

 

 一太郎は試しに指先で触れようとして思いとどまった。内に入ったモノを感知する警報装置的な結界かもしれない。

 『透視』では結界があるのは分かってもそれがどんなものかまでは分からない。警報装置かも知れないし、侵入者を焼き尽くすかも知れないし、物理的な障壁かも知れない。

 

 一行は相談し、六方向から同時に突入する事にした。結界の効果がなんであれ、相手は二人。多方面作戦を強いるのが良策だろうと考えたのだ。

 こそこそと配置につき、六人は一太郎のハンドサインで同時に塀を乗り越え突入した。

 

「六人に勝てる訳ないだろ! ……オロローッ!」

 

 塀を乗り越え、結界内部に侵入した途端、パーシーの胃が痙攣した。強烈な嘔吐に見舞われ、その場に膝をついて吐瀉物をゲロゲロと吐き始める。

 同じような汚い音が三ヶ所からも聞こえた。結界は嘔吐トラップだったのだ。

 結界の効果をPOW(魔術的素養)で紙のように破り去った一太郎と、なんとか抵抗に成功した小次郎は顔を見合わせた。

 

「えー……これはどうしたものですかねえ。同時突入が完全に裏目に出ましたが」

「あー、吐いてる連中を回収して一度引きますか? あのままだと脱水症状になりそうな勢いですし。いやその間に逃げられるのも」

「八坂氏の見立てはどうですか? どうにも病を操る系統の魔術師のようですが、このまま二人で行って勝てると思いますか」

「ふむ。やってやれない事は――――」

 

 話し合っていると、家の玄関から二人の男が出てきて一太郎と小次郎は身構えた。

 片方は例のフードの男だった。身長が高く、そこそこ体格が良い。しかしフードに隠されているせいで顔は分からない。フードの端から見える口元はニヤニヤと嗤うように歪んでいた。

 もう一方は形容しがたい奇怪な小男だった。いや、男と表現して良いのかも分からない。膨れて楕円形に変形し、紫色のできものができた禿げ上がった頭部。垂れ下がった皮膚に半分埋もれた、憎悪に燃える赤い目。腕はガサガサに干からびているようで、指が六本あった。しかし骨格や全体の外観は人間そのもの。育ち損なった奇形児のようだ。

 二人は悍ましい外見にショックを受けたが、小男が犯人である事を確信し、体に力を入れた。 

 

「抑えておけ」

「御意」

 

 身構える二人を見下した目で見た小男は、低いガラガラ声でフードの男に命じると、パーシーの方へ歩いて行った。懐から鋭く光るナイフを取り出したのを見て二人が止めようとすると、フードの男が立ちふさがった。

 小男は明らかにパーシーを殺す気だ。そしてパーシーは嘔吐に忙しく抵抗できる状態ではない。配下三人組も役立たずになっている。もう撤退はできない。

 やるしかない。小次郎は拳銃を抜き、一太郎はどの魔術が有効か頭を巡らせた。

 

 パーシーの元に来た小男は、手の中でナイフを弄びながら憎々しげに吐き捨てた。

 

「ルーカス……まさか貴様が生きていたとは。死んだふりか? どこまでも小賢しい」

 

 お前は一体何を言っているんだ。

 パーシーはコイツ頭おかしいんじゃないかと思ったが、自分がまだルーカスに変装したままだという事を思い出した。白衣は着たままで、メイクも落としていない。ついでに言えば着替えていないし風呂にも入っていない。

 

「このニャルラトホテプ様に逆らった罪を永劫の宇宙の果てで償うが良い! さあ、今度こそ死ね!」

「オ、オロローッ!」

「うおっ!」

 

 ナイフで斬りかかってきた小男に、パーシーはゲロを浴びせた。小男は思わず避け、ナイフは空を切る。

 

「オボッ……オロローッ!」

 

 その間にパーシーはなんとか這って逃げようとする。しかし白衣の裾を小男に踏んで止められ、背中にナイフを突き立てられた。

 

「往生際の悪い! 死ね!」

 

 一方、拳銃の安全装置を外した小次郎と一太郎、フードの男は奇妙な膠着状態になっていた。

 フードの男は口元に薄ら笑いを浮かべ、ニヤニヤと立っているだけで何かする様子はない。小次郎はカウンターの用意でもしているのかと警戒して撃つべきか迷っている。一太郎はフード男に魔術を使えば小男を倒す魔力が残らないと考え、どうするべきかと必死に考えていた。

 迷っている間に、パーシーの背中が刺された。それを見て二人は決意を固めた。

 

 小次郎が発砲した弾丸を、フードの男は軽くステップを踏んで簡単にかわした。

 

「おおおおッ!」

 

 そこに一太郎が叫び声を上げながら突進する。ダメージを与えるのが目的ではない。タックルをすると見せかけて上手く横をすり抜けようと考えたのだ。

 フードの男は突っ込んでくる一太郎をひょいとかわし、そのまま一太郎を見送った。が、勝機と見て組み伏せようと飛びかかった小次郎は腕を取られ、投げ捨てられる。

 

「おっと。流石に二人は通せないなあ」

 

 フードの男は深みのある良い声で愉しむように言った。地面に転がされた小次郎は素早く起き上がり、拳銃を構える。額からは冷や汗が流れた。

 フードの男はさきほど明らかに弾道を見切って避けていた。自分を投げた体術も並ではない。超然とした態度からも底知れない物を感じる。

 小次郎の本能が下手に手を出すのは危険だと囁く。コイツは……人の形をしているだけの化物だ。

 

 パーシーの背中に刺したナイフを高笑いしながらねじって傷口を広げている小男は、一太郎に突き飛ばされて地面に転がった。小男は舌打ちして一太郎を見る。

 

「チッ、あの役立たずめ。おい、貴様は魔術師だな? あの二人を殺せ。そうすればこのニャルラトホテプ様に仕える名誉をやろう。宇宙の真理を教えてやるぞ?」

「ニャル……! ……ラト……ホテプ?」

 

 その名前に一太郎は一瞬心臓が止まるかと思うほど驚いたが、語尾が疑問形になった。

 這いよる混沌、ニャルラトホテプは最も強大にして悪辣な邪神の一柱である。化身の一つ「黒い風」を見た事のある一太郎はその驚異を身を持って知っている。

 確かにニャルラトホテプは人型に化ける事があるというが、小男は違うように思える。見た目こそ不気味ではあるが、魂が凍りつくような恐怖は感じられない。何よりも全然「らしく」ない。有名なヤクザの名前を出してふんぞり返っているチンピラのようだ。

 

 ああ、コイツは頭がおかしいんだ。物理的にも精神的にも。一太郎は可哀想なものを見る目で小男を見た。

 

 哀れみの目を向けられ交渉決裂を悟った小男は、ナイフを持ち直し一太郎に切りかかった。一太郎は避けようとしたが、ゲロを踏んで足を滑らせ、脇腹を切り裂かれた。

 小男は血走った目でもう一度切りかかってくる。しかし横からパーシーがその顔を掴み、ディープキスをした。

 

 時が、止まった。

 

 一太郎は目を疑い、小男もあまりの事に思考停止して動けない。遠目に見ていた小次郎も思わず拳銃を取り落としそうになり、フード男はますます大きく口の端を釣り上げた。

 

 全員、こいつホモか!? と心を一致させていたが、パーシーはホモではない。考えあっての事だ。

 パーシーの吐瀉物が小男の喉の奥に強制的に流し込まれ、小男は慌てて突き飛ばした。

 

「貴様ッ、この……う……オロローッ! お、おい! この狂人をなんとかし……オロローッ!」

 

 文字通りの貰いゲロである。魔術や攻撃どころではない。

 それでも手で印を切って何かしようとしたので、一太郎は何か釈然としない気がしながらナイフを取り上げ、小男の首を掻き切ってトドメを刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、面白いものを見せてもらったよ」

 

 邪悪な魔術師は死に、喜んで良いはずなのに居た堪れない気分になっていると、フードの男が拍手しながら寄ってきた。

 一太郎は困惑する。結局、こいつは何だったのか。小男の指示に従っていたようだが、忠実というわけでも無いようだし……

 

「お前は何だ? この男の助手だと思っていたが」

「まさか!」

 

 とんでもない、という風にフードの男は首を横に振った。

 小男の死を面白い、と言っていたし、魔術的契約か何かで従わされていたといったところか。一太郎は勝手に納得した。

 

「君たち、怪我してるね。治してあげようか?」

「オロ、オロローッ!」

「ん? 治療魔術を仕えるのか。頼む」

 

 パーシーはまだ吐きながらガクガク頷き、一太郎も自分の魔力を温存するために頷いた。

 これは迂闊だった。魔術師を倒し、気を抜いていたのだ。

 

 フードの男がパーシーの頭に触れると、パーシーの嘔吐は止まり、背中の傷も一瞬で塞がった。が、パーシーは気を失い、その顔には何か恐ろしいものでも見たような恐怖が浮かぶ。

 それを訝しむ前に、振り返ったフードの男が一太郎の顔を鷲掴みにした。指の間から、フードの奥の顔が見える。絶世の美男子と言えるラテン系のその顔は、一太郎に恐怖しか与えなかった。その黒く澱んだ瞳が底なしの暗闇を湛えていたからだ。

 

 一太郎の脇腹の傷が瞬時に塞がる。同時に、脳みその中に恐るべき恐怖、目の前で自分の顔を掴んでいるモノの正体、受け入れがたい宇宙の冒涜的真理を流し込まれた。

 既に磨り減っていた一太郎の精神は容易く限界を超えた。顔を離された一太郎は、半開きの口の端から涎を垂らし、焦点の合わない目でその場に膝をつく。一太郎の精神はあり得ざる邪悪な知識と真実によって完膚なきまでに汚染され、破壊されていた。

 

「貴様、何をした?」

「やだなあ、プレゼントをしてあげただけだよ。愉快な茶番を見せてくれたご褒美さ」

 

 硬い表情の小次郎に頭に拳銃を突きつけられても、余裕の態度を崩さない。

 そして小次郎が引き金を引く前に、フードの男――――ニャルラトホテプはその場から消失した。

 

 




――――【鏤炊サ・Lシ・披 ケΤ6・・ア#・】

STR11 DEX14 INT18
CON12 APP13 POW22
SIZ14 SAN0  EDU19
耐久力13 db+1d4

文字化だ:
 繧ィ繝�ぅ繧ソ縺後ヰ


所有物:
 損傷の激しいエイボンの書(ラテン語版)
 エイボンの書(ラテン語版)
 屍食経典儀(フランス語原版)
 無名祭祀書(ドイツ語版)
 アフリカの暗黒の宗派
 エルピス
 コービットの日記
 魔法のダガー……命中率=現在MP×5%、ダメージ=1d6+2、コスト=1ラウンド毎に1MP
 アフォーゴモンのペンダント
 成長血清

呪文:
 透視、空鬼の召喚/従属、萎縮、被害をそらす、エイボンの霧の車輪、
 ビヤーキーの召喚/従属、ナーク=ティトの障壁の創造、空中浮遊、
 レレイの霧の創造、食屍鬼との接触、復活、門の創造、ナイフに魔力を付与する
 治療、ニャルラトホテプとの接触

技能:
 医学 80%、運転(自動車)30%、オカルト 50%、忍び歩き 25%、
 生物学 71%、化学 51%、聞き耳 55%、考古学 8%、信用 45%、
 心理学 72%、人類学 7%、精神分析 36%、説得 42%、図書館 85%、
 目星 85%、薬学 70%、歴史23%、こぶし 56%、
 英語 40%、ラテン語 22%、フランス語 21%、ドイツ語 44%、
 食屍鬼語 6%、古のものの文字(ナコト語)28%、イス人の文字 27%、
 ツァス=ヨ語(ハイパーボリア語) 24%、センザール語 24%、
 ミ=ゴのルーン 29%、アクロ語 29%、ナアカル語 24%、
 ルルイエ文字 21%、クトゥルフ神話 99%


――――【明智 小次郎(45歳)】リザルト

STR13 DEX10 INT12
CON14 APP10 POW14
SIZ13 SAN62 EDU16
耐久力14 db+1d4

技能:
 運転(自動車)40%、応急手当 50%、オカルト 45%、回避 40%
 コンピューター 51%、信用 65%、説得 65%、追跡 60%、
 図書館 75%、法律 35%、目星 45%、拳銃 60%


――――【パーシー・ネルソン(56歳)】リザルト

STR12 DEX14 INT9
CON10 APP11 POW10
SIZ12 SAN38 EDU11
耐久力11

技能:
 言いくるめ 65%、応急手当 40%、聞き耳 45%、忍び歩き 80%
 変装 18%、ギャング知識 50%
 英語 60%、ガバガバな日本語 99%


――――【八坂 蓮(20歳)】NPC/リザルト

STR9  DEX13  INT16
CON12 APP17  POW16
SIZ13 SAN52  EDU17
耐久力13 

所有物:
 キミタケの万年筆

呪文:
 血仙蟲、被害をそらす、食屍鬼との接触

技能:
 医学 15%、応急手当 50%、オカルト 35%、回避 40%、隠れる 60%、
 聞き耳 65%、忍び歩き 50%、登攀 60%、変装 41%、目星 50%、
 速読 60%、古書修復 70%、ラテン語 50%、英語 50%、
 食屍鬼語 25%、クトゥルフ神話 3%





二章は一章とは雰囲気がガラリと変わり「最初から犯人と動機とトリックが分かっている推理モノ」になります。
ただし犯人はドーピングコンソメスープを飲んでいるので、真正面から「あなたが犯人です(ドヤァ)」とかやると容赦なくゴシカァンされる
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