ラブライブ!~武闘派高校生とμ's II~ 作:ステア(STER)
期待を裏切って申し訳ありません。いきなり書きたくなったので書きました。
でも、にこにーの回も着実に進んでいるのでご安心を。
さて、今回はマジシリアスな海未ちゃん回です。
冬の海で海未と信翔が繰り広げる恋物語をご覧ください。
『本日、お暇でしたら…海に行きませんか?』
滑稽な話だが、海未にそう誘われた。俺は特に用事もないことから、その申し出を承諾した。
いきなりではあるため、すこし戸惑いを持っているが俺はそれでも準備をして家を飛び出し、現在自慢の愛車に乗って園田家前にいる。
園田家はかなり広く、年季がある。築7~80年ぐらいと見受けられる、純和風のまさに“武家屋敷”だ。今は海未のお袋さんが当主らしい。だが、秋葉原あたりで浮いてるこの物件も、我が家には大きく届かないのかと思うと、なんだか織田家がバカみてぇだ。
まぁ…織田家は親族を大切にする家だから、いっぱい親戚がいるし…仕方がねぇ事だよな…?
色々思いを巡らせている間に、正門から海未が出てきた。
「お待たせしました。」
そういって出てきたのは、無難な服装をした海未。そして海未のお袋さん。
「海未さん、くれぐれも暮れ時には帰ってきてください。世の中物騒ですから、気を付けて。」
「はい。大丈夫です。」
海未が助手席に乗り込むと、お袋さんが運転席の窓から覗き込んできた。
「織田様…明けましておめでとうございます。」
「明けましておめでとうございます。先日は年賀状をいただいて、本当にありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました…。私どもも、織田家の御曹司様とお手紙を交わせて光栄でございますわ。」
「こちらもです…。」
「本日は娘を、よろしくお願いいたします。」
「えっ…ああ、ハイ。」
お袋さんとそう挨拶を交わすと、俺はゆっくりとアクセルを踏む。車は発信し、サイドミラーから見えるお袋さんの姿はだんだんと小さくなっていった。
「で、どこ行くんだ?」
「海なら、どこでも構いませんよ。」
「大分大雑把だなぁ…。お前の方から誘って来たんだぞ…?」
「では、しばらくドライブしましょう。」
「ったく…。」
俺は上にやっていたグラサンを定位置に戻すと、両手でハンドルを握る。
「んじゃあ、楽しもうかねぇ。」
その後、俺はクラッチを踏みギアチェンジ。高速道路に入った時点で大幅にスピードアップするムチャをやって見せた。速い車に慣れてないのか、海未は大パニック。
「ちょ、ちょっと待ってください!! 事故ります!! 法定速度オーバーしてますよ!!!」
「こんくらい、バレないって♪」
「やめてくださいぃ!!! まだ死にたくないです!!」
「速い車から見える流れた景色もいいもんだぜ♪」
「そんなことよりスピード違反はやめてくださいい!! 警察に摘発されますよっ!! あぁ、後ろからサイレンの音が…。」
遂に幻聴が聞こえ始めてらしいので、俺はちょっとムスッとした顔でスピードを落とす。チッ、穂乃果や凛なら、ハイテンションになってくれて面白ぇのによ…。
「腹減ったな…。」
「え? 昼ごはんは?」
「食ってねぇよ。」
「だ、大丈夫なんですか…!?」
「大丈夫じゃねぇよ。あっ、いいところにサービスエリアが…すこし寄ろうかねぇ。」
そういって、サービスエリアの方にウィンカーをきる。流石に年明けすぐなので、サービスエリアに人は多めだった。そこで俺は軽く昼食をとる。
*
どこまで来ただろう。俺の勘が正しければ、ここは神奈川のハズだ。そして俺は未だあてもなく高速道路を走っている。海未はすこし酔い気味だ。
「ま…まだ着かないんですか…?」
「ったく、お前がちゃんと決めときゃよかったんだろが。」
「そんな意地悪言ってないで早く降ろしてください…。このままでは吐いてしまいそうです…ウップ。」
「そ、それは困るな…。取り敢えず、よくここまで耐えたな。ここからしばらくはサービスエリアねぇし、もう下りるか…。」
俺は、近くのインターチェンジへハンドルをきる。さすがに愛車に吐かれては敵わん。そろそろおイタはやめておこう。
そして俺たちは、湘南の海へとたどり着く。夏に湘南へは穂乃果、凛と来た事があるが、冬の海も、やはりいい。
俺たちの体に、冬の潮風が当たる。すごく寒い。親父に連れられ、冬の海で寒中水泳してた頃を思い出し、また体を震わせた。
「…寒いな。お前、こんな所に来たかったのか…?」
「海って、いいですよね…。大きくて、果てしない包容力があると、私思うんですよね…。」
「あ…あっそう…。」
俺の話をよそに、海未は感傷に浸っている。
「さて、本題に入りましょうか。」
「え?」
そういって、潮風に髪をなびかす海未は俺の瞳を凝視する。鼓動が、次第に早くなってく。
「実は…お願いがあって信翔を呼び出しました。」
「はぁ? そのためにわざわざ俺と海へ?」
「海は、私にとって感慨深い所で、落ち着くのです。」
「そ、そうか…。」
海未は俺の瞳を凝視して微動だにしない。煌びやかに夕焼けの光を反射させながら、波はゆらゆらと揺れる。そんな景色が見える海岸に、たった二人でいる。
「穂乃果のことです。」
「ほ…穂乃果がどうしたんだよ…?」
「唐突で申し訳ないですが…穂乃果と今お付き合いしてますか?」
俺は吹きそうになる。
「真剣なんです! 真剣に答えてください!」
「いやぁ…すまん…。」
俺はにやける顔を変えた。こちらも、すこしシリアスな雰囲気を漂わせる。
「穂乃果とは付き合ってない。それがどうした?」
「気づいてます?」
「何が」
「穂乃果は…貴方のことが好きなんですよ…!!」
俺はすこし眉をひそめた。そして毅然たる態度で真剣な眼差しの海未に答える。
「あぁ…。知ってる。」
「えっ」
今度は海未が表情を壊した。だがすぐ、また元の眼差しを向ける。
「よかった…信翔も、そこまで鈍感ではありませんでしたか…。」
「いや…クリスマスの夜、告られた。ホラ、慰安旅行に行ったとき、俺と穂乃果が一緒に寝てたろ…?」
更に表情を崩す海未。そろそろ無理がでてきたのだろうか。
「そ…そうだったんですか…。」
「心配するな。無論手は出してない。」
「はい、それは分かってますが…。」
海未は「コホン」と体勢を整えた。
「では質問を変えます。」
「わかった。」
「信翔は、穂乃果のことが好きですか…?」
もちろん、俺の答えは―――
「当然だ。」
軽く、されど毅然な態度でそう答えた。するとすこし海未が声を荒げて次の質問をする。
「では…私のことは好きですか…!?」
「あぁ。」
「ことりは?」
「好きだ。」
「真姫は?」
「好きだ。」
「…もう一度聞きます。穂乃果は好きですか…?」
「あぁ、好きだ。」
すると、海未がこちらに寄ってくる。怒りの眼差しが伝わってきた。俺は少し戸惑った。
「貴方の言う好きは、“仲間”としての好き…じゃないですか!?」
「その通りだ。何か?」
「違います! 私は…穂乃果を異性…“一人の女の子”として好きかと聞いているのです!!」
俺は反論ができなくなった。
「もう一度聞きますね。穂乃果を異性として、恋愛対象として………好きですか?」
「………。」
俺が返答に困ってると、海未が詰め寄ってきた。
「どうなんですか…!?」
海未が催促してきた。俺は悩みに悩んだ末………出した答えを海未に伝えようとした。
「そうなってくると、違―――」
すると、その直後に、パチィン―――という音とともに俺は左側にあった岩の方を向いていた。右頬はヒリヒリと痛む。
俺が海未の方を向き返すと、海未が涙目になって俺にビンタしたということが分かった。
もちろん俺は、憤る。
「テメェ、何しやがんだ―――」
「嘘つかないでくださいっ!!!」
俺が怒鳴りつけるよりもずっと大きい声で海未は叫んだ。
「自分の気持ちに嘘を吐かないでください。貴方は…穂乃果のことを愛してるはずです!」
「俺は………。」
「何でしょうか…? ずっと観察させてもらいました。穂乃果の幼馴染として―――」
「はぁ?」
「貴方は、最近穂乃果に対する態度が変わりつつある。そうでしょう?」
心の中が、見透かされてる気がしてならなかった。海が、俺の心を映し出しているのだろうか…。
「この際正直に言ってください。恋愛が事情で邪魔されるようなことがあってはならないと思います。さあ、我慢しないで―――」
ここで、あの時…穂乃果が異常に詰め寄ってきた時のことを思い出す。それと今、同じことを言われた。
そして俺の心は、裏東京に君臨していた…あの最盛期から明らかに動いていると思った。
あのころの俺は冷酷に悪を狩る偽善者。だが、今は―――どうなのだろう。だがわかる。あの頃とは何かが違うと。
しかし、この期に及んで俺はそれを否定する。
「穂乃果は、別に異性として好きじゃねぇよ。俺は織田を継ぐ者。恋愛感情などあらずとも、いつかはそれ相応の女と結ばれるのだろう。なら、それでいい。俺はメンバーに恋愛の自由は言い渡してるはずだが…俺自身、恋愛は要らん。」
そして俺の言った最低の一言が、これだ。
「恋愛なんか、メンドくせぇ。」
これが、海未の
「………もういいです。」
「あぁ?」
「貴方が、そんな最低な人だとは思いませんでした。もし本当にそうだとしても、そうやって相手の気持ちすら思いやれない、最低な男だと…ね。」
「そ…そうじゃない」
「何がですか? 今ハッキリ言いましたよね? 恋愛なんか面倒臭いって…。そんな最低な人に、穂乃果を渡すわけにはいきません。この件は穂乃果に報告させていただきます。」
海未は呆然とする俺に背を向けた。
「さようなら。」
そして、海未はゆっくりと歩きだす―――
俺は、それを呆然と見るしかできない。
海未の背を見て、俺の中では様々な俺が行きかい、口論をおこしてる。そんな気分だった。
俺は最低野郎。それでいい。今のも、俺の本性さ。ウン。所詮、穂乃果を愛する資格なんてねぇって訳だ。
だが…それで本当にいいのだろうか? 俺が本当に欲しいもの、それは―――
お見合いで出会い、一族のために結婚して、好きでもない女との間に子を作り、一族と会社を繁栄させる楽しみのない世界で死ぬか…。
客観的に見て、どちらがいいかは賛否両論だろう。俺自身、前者は金持ちのボンボンとして生まれた俺を待ってる“現実”、後者を“理想”だと思っている。
でも…一度しかない俺の人生だ。それならば、織田家といった社会に決めつけられた一生より、自分で決めた一生を送りたい! 疑似夫婦のような関係の奴なんかより、本気で愛し合った相手と添い遂げたい! 俺にもそんな感情があったのかとビックリするほど考え込んだ。
だが、もはや遅い。俺は、人の感情を持て余す犯罪者に成り下がってしまっていたのだ。俺は潮風でなびく黒髪を抑えながら、水平線に沈んでく太陽を見た。
ここで頭をよぎったのは、恋愛ごっこながらも小さい頃の俺と付き合ってくれた彼女だ。俺が穂乃果を愛して、怒らないだろうか…?
フン…今さらそんなことを思ったところで、遅いか………。
ふと、海未が去っていったところを見る。なんと、海未は海岸を上がった道路の所で、俺と同じく沈みゆく太陽を見ているではないか。ここで俺は思った。
あいつは、本当に俺を見捨てちゃいないのかも知れない。切羽詰まった俺は、その小さな可能性に賭けてみることにした。
「海未ー!!!!」
遠目でよく見えないが、海未はこちらを向いたのが分かった。
「俺!! もう自分の気持ちに嘘は吐かねぇ!!! 俺は穂乃果のことが!!! 異性として好きだー!!!! 本気で愛してるんだーっ!!!!」
俺はそう叫んだ。かなり心臓がバクバクしている。言い切ったという達成感に襲われ、俺は息を乱した。
すると、海未がもと来た道をすごいスピードで駆けて戻ってきた。そして、すごい勢いで俺に抱き着いた。
「うわぁっ…!!!」
「よくぞ言ってくれました…! 信翔なら、必ず自分に素直になれると信じていましたよ…!」
「スッキリしたけどさ…なんだか恥ずかしいな…。」
「それでいいのです…。」
「でもさ俺、まだ自分の気持ちに整理をつけられてねぇから、『付き合って』っつぅのはもうしばらく後でいいのかな…?」
「いいと思いますよ。それは仕方のないことですし。」
海未も走ってきたからか、少し息を乱している。そして一息つくと
「穂乃果のこと、どうかよろしくお願いいたします!」
そう言った。俺はすこしはにかんで返答する。
「あぁ!」
「さあ、帰りましょうか。」
ふと見ると、夕陽は既に沈んだ。
「ちょ…マジかよ!? ヤッベェ!!!」
俺たちは、車に飛び乗る。
「ちょっと飛ばすぞ!!」
「はい。夜更け前のドライブですね!」
「何言ってんだよ…。」
そして俺は、エンジンのキーを回す。
隣で海未がオエオエ言いながら腹を抱えている高速道路走行中の車のなか、俺は…穂乃果と結ばれ、堂々と恋人らしくデートができる日が来ればいいなぁ…と、そう思った。
そういえば、こころなしかさっきから海未の顔がすこし寂しさを帯びてる気がする………。
そ、そんなことより! 男は女をリードできる存在になれねばならん。俺もそうなれるように努力しようと思った、本当の俺の気持ちと向き合わせてくれた海未との帰りぎわのトワイライト・ドライブであった。
告白、いつしようか………。
はい、今回は信翔の恋心が十歩ぐらい進展しただけの回でした。
海未ちゃんのフォローはうまい気がする。多分、本人たちにとったら邪魔なだけかと思いますがw
さて、私の正月休みは今日を持ちまして終了となります。
多分、投稿ペースが一気にドンと落ちますが、予めご了承ください。
ご感想を、よければお寄せください! アドバイスでも結構です。私の励みになりますし、これからの参考にもなります。ただ、まことに勝手ではございますが、私が不快に感じましたご感想には一切関知いたしません。また、荒らし行為もどうかご遠慮いただけますようよろしくお願いいたします!
また、そのような行為を発見次第、削除およびブロックで対応いたします。
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