ベイビー・パニック   作:高嶺 蒼

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さて3限目。
なごみんパートです。


ベイビー・パニック 22

 教室で3限目の授業の準備をしていると、教室の入り口の方がなにやら騒がしいことに気づいた。

 顔を上げそちらにちらりと目線を飛ばすし、そこに乙女の姿を認めたなごみはほんの少し目を見開いた。

 

 なごみのクラスメイトとにこやかに話す乙女より先に、その腕の中の小さな存在がなごみの姿を見つけてぱあああっと顔を輝かせる。

 クマの着ぐるみのフードをかぶったレオは、とんでも無く可愛いクマさんぶりを発揮していた。

 周囲の少女達が、その可愛い生き物に触れようと手を伸ばすが、レオはそんなことなどお構いなしに、なごみの所へいこうと乙女の腕の中で元気良く暴れる。

 

 

 「ん?レオ、どうした??」

 

 「なごみちゃん、いたの!あっち!!」

 

 

 レオのぷくっとした指が指さす方に目を向けた乙女は、自分が探していた人物を視界に納め、凛々しく微笑んだ。

 

 

 「なんだ、椰子。そこにいたのか」

 

 

 言いながらずかずかと教室の中に入ってきて、あっという間になごみの元へ。

 なごみはレオに柔らかく微笑みかけ、それから乙女の顔を見上げた。

 

 

 「なんか、用ですか?」

 

 「うむ。椰子に頼みたいことがあってな」

 

 「頼みたいこと?」

 

 「ああ。実は、昼間でレオを頼めないかと思ってな。色々あって1限目と2限目をほぼサボってしまったのだ。まあ、理由は色々とあるのだが、これ以上は流石にな。昼には必ず迎えに来るから、それまで頼めないか?」

 

 「いいですけど」

 

 

 なんだ、そんなことかと、なごみは即座に頷き答える。

 

 

 「もし、だめなら姫に頼むしか・・・・・・って、いいのか?」

 

 「ええ。いいですよ。お昼まで、レオと一緒にいればいいんですよね?」

 

 「ああ。頼めるか?」

 

 「はい」

 

 

 再度頷くと、乙女はほっとしたような顔をして、それからレオをなごみの腕に預ける。

 

 

 「じゃあレオ、少しの間なごみちゃんといい子にな?迷惑をかけちゃだめだぞ?」

 

 「レオ、いい子!」

 

 

 ぴっと片手をあげたレオの頭を愛おしそうに撫でて、

 

 

 「私は行くが、なごみちゃんがいるから平気だな?泣くんじゃ無いぞ?」

 

 

 そう告げる。途端にレオは、ちょっぴり不安そうな顔になって、

 

 

 「乙女ちゃん、行っちゃうの?」

 

 

 うるうるした瞳で乙女の顔を見つめる。

 

 

 「大丈夫だ。後で迎えに来るから、お利口にしてるんだぞ」

 

 「ん!お迎え、来てね?」

 

 「ああ。約束する」

 

 

 そう言って、乙女は名残惜しそうにレオの柔らかな頬をそっと撫でた。

 そして再びなごみの顔を見て、

 

 

 「それじゃあ、すまんが、しばらくレオのことを頼む」

 

 

 頭を下げた。

 

 

 「いえ。レオといるのは、私も楽しいですから」

 

 「そうか。そう言ってもらえると、私も助かる。じゃあ、昼には迎えに来るからな」

 

 

 乙女はなごみの言葉に破顔して、その頭をくしゃっと撫でた。

 思わず憮然とするなごみの顔を面白そうに眺め、それから再びレオの頭を撫でてから、ざわざわする教室を颯爽と出て行った。

 その後ろ姿をどこかしょんぼりした様子で見送るレオをぎゅっと抱きしめ、

 

 

 「私が一緒だから、大丈夫だよ。レオ」

 

 

 そう優しく声をかける。

 そしてレオの体を自分の方へ向けて座り直させて、改めてその瞳をのぞき込んで微笑んだ。

 なごみの何とも優しい笑顔を目にしたクラスメイト達がざわっとざわめく。

 レオは、ぽーっとその顔を見上げて、ほっぺを赤くした。

 

 

 「私と一緒なら、大丈夫だよね?」

 

 

 問われて、レオはコクンと頷く。

 乙女の事は大好きだし、離れるのはとても心細かったが、なごみのことも大好きだったから。

 

 

 「ん。レオ、大丈夫」

 

 「そう。いい子だね、レオ」

 

 

 レオの答えに目を細め、なごみはそっとレオの柔らかなほっぺに唇を寄せた。

 マシュマロのような感触を唇で堪能し、ちゅうっと軽く吸ってから顔を離す。

 おおおおおっとどよめく周囲の様子などお構いなしだ。

 

 そうして、なごみはすっかりレオとの二人の世界を作り出した。

 クラスメイト達は、普段と違う様子のなごみや可愛いちびっ子について話しかけたいのに話しかけられず、授業開始まで随分やきもきしたのだった。

 

 

 

 

 

 担当教師がレオの事情を知っていたこともあり、特に問題もなく授業は中盤に差し掛かっていた。

 

 膝の上にレオを乗せたなごみは、授業そっちのけでレオに夢中だ。

 とくに何をするわけでもないのだが、黒板を見もせずにレオのことをじーっと見つめている。

 ちっちゃくなったレオは何をしていても愛らしく、ずっと見ていても飽きることは無かった。

 

 1人遊びをしているレオは時折顔を上げ、自分を見ているなごみと目が合うとにぱっと笑う。

 それに応えてなごみも優しい笑みを浮かべ、二人の周囲には何とも甘々な空気が振りまかれていた。

 

 面白くないのは担当教師である。

 一応レオの話は学長から聞いており、色々大目に見てやるようにとは言われているが、ここまで授業を無視されてなお、黙っていていいものだろうか。

 否、良くない。

 

 もともと椰子なごみという生徒は、真面目ではあるがちょっと問題児臭がする生徒だと、彼は常々思っていた。

 ここで甘い顔をするのはなごみにとっても良くないと、中途半端に熱血な担当教師は考えたのだ。

 彼は、教室内の注意を引くようにこほんと一つ咳払いをし、

 

 

 「あー、この問題を、そうだな、椰子、前に出て答えを書きなさい」

 

 

 そう指示をだした。

 流石に名指しをされて無視するのはまずいと思ったのか、なごみは心底忌々しそうな顔をして立ち上がる。

 もちろん腕にはきょとんとした顔のレオ。

 なごみは左腕にレオを抱いたまま前にでる。

 

 

 「椰子、その子は置いてくればいいだろう。甘やかしすぎも良くないぞ?可愛いのは分かるが」

 

 

 困った奴だなとばかり言い方に、なごみの鋭い眼光がぎらりと光る。

 

 

 「なにか、問題でも?」

 

 「・・・・・・いや、なんでも」

 

 

 慇懃無礼な問い返しに気圧されて、教師はもにょもにょ言いながら小さくなる。

 それをふんっと鼻で笑って、なごみはあえて教師が割り当てた難しい問題をさらさらと解き、かつっとチョークを置くと、

 

 

 「レオがトイレなんで、失礼します」

 

 

 そう言って後は後ろも見ずに教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 場所が変わって屋上。

 なごみは腕の中にレオをしっかりと抱きしめて座っていた。

 クラスで上手くやれない自分にほんのり自己嫌悪を感じながら。

 しかも、居心地の悪い授業から抜け出すのに、レオを理由に使ってしまったことも、なごみの自己嫌悪に拍車をかけていた。

 

 

 「なごみちゃん?」

 

 

 レオのつぶらな瞳がなごみを見上げ、大好きななごみの少し沈んだ様子にちょっと困ったように首を傾げた。

 こういう時はどうしたらいいのだろうかと考えるように。

 自分だったらどうだろうか。どうしてもらうと嬉しいか。

 レオはレオなりに一生懸命考えて、ちっちゃな両手をそっとなごみの頭に伸ばした。

 

 

 「なごみちゃん、いーこ、いーこ」

 

 

 言いながら、懸命になごみの頭を撫でる。

 自分はこうしてもらうと嬉しいからなごみもにこにこするに違いないと、大好きな人のきれいな顔を見上げるが、なごみは笑っていなかった。

 ちょっと驚いたような顔をして目を見張っている様子は、さっきほどどんよりしてはいないが。

 彼女が笑ってくれなければ、レオの作戦は成功したとは言えない。

 

 レオは眉毛をハの字にして再び考え込み、何かを思いついたようにはっと顔を上げ、即座に行動に移した。

 ぷよっとしたほっぺをなごみの滑らかな頬にすり寄せて、

 

 

 「大丈夫。レオがいるよ!」

 

 

 しばしすりすりした後、きりりとした表情でそう宣言する。

 そんなレオを見て、きつい角度を保っていたなごみの眉がほにゃんと緩んだ。

 だが、まだ笑うまでには至ってない。

 

 レオはもうちょっとだと頭を絞る。

 そうして再度はっとした顔をし、それからちょっぴりほっぺを赤くした。

 

 なごみはそんなレオをじっと観察していた。

 落ち込んだ気分は大分浮上してきている。

 今は、レオが次になにをしてくれるのかというわくわく感の方が大きいくらいには。

 

 さっき可愛らしい頬ずりをしてくれたときのように、レオの顔が近付いてくる。

 もう一回ほっぺかな?と、レオの柔らかな頬が触れるのを待ったが、触れたのはほっぺでは無かった。

 触れられたのは、なごみのほっぺで間違いは無かったが。

 

 なごみの頬に触れたもの、それはレオのちっちゃな唇だった。

 レオは可愛らしくちゅむっとなごみの頬に吸い付き、それからゆっくりと顔を離すと、

 

 

 「レオ、なごみちゃん、大好き!」

 

 

 そう言ってにぱっと笑った。

 そのあまりの可愛らしさに、頭がくらっとした。

 だが、すぐに持ち直し、期待に満ち満ちたレオの顔を見つめて、なごみはようやく微笑んだ。

 その笑顔をみたレオが、本当に嬉しそうに笑う。

 その様子があんまりにも可愛くて、なごみはそっとレオの唇に自分の唇を押し当てていた。

 

 最初は触れるだけ。

 でも少しずつ角度を変えて、自分より小さな唇をついばむようにして味わう。

 そして最後には舌先でレオの唇を優しく舐め、惜しむようにゆっくりと顔を離した。

 きょとんとしたレオの顔。

 その唇だけが、なごみの唾液にまみれ、てらてらと濡れていた。

 

 

 「んと、なごみちゃん、レオ、食べたの?お腹空いちゃった??」

 

 

 昨夜、ほっぺをなごみに食べられた事を思い出したのだろう。

 レオは首を傾げてそう問いかける。

 なごみは目の縁を赤くして、どこか艶っぽく微笑んだ。

 

 

 「そうだね。ちょっとだけ、ね。レオが、あんまり美味しそうだから」

 

 「んー、今日はお口を食べるの?ほっぺも食べる?なごみちゃんなら、食べてもいいよ?」

 

 

 なごみちゃんならーレオの口からでたそんな言葉に、胸が高鳴った。

 

 

 「なら、もうちょっと食べても、いい?」

 

 

 熱に浮かされたように、気がつけばそう口走っていた。

 にこっと笑ったレオが、

 

 

 「ん。いいよ。はい、どーぞ」

 

 

 そう答えて目をつむる。

 そんなレオの顔をじっと見つめながら、さてどこを食べちゃおうかと思案する。

 昨日のようにレオのマシュマロのようなほっぺたを味わうのもいいだろう。

 だが、今日はレオの唇をもう少し味わいたい気分だった。

 

 だから、その思いのままレオの唇に再び己の唇を押しつける。

 さっきのように思う存分ついばんで、それから再び舌を伸ばす。

 今度は表面だけでなくその内側へ。

 ほやんと閉じたレオの唇の防御力は無いに等しく、なごみの舌先が少しだけレオの唇の内側へ進入する。

 舌先に触れたレオの唾液は、なんだか甘い味がする気がした。

 

 そのまま夢中になって舌先でレオの口の中を探るように探索する。

 流石に舌を絡め合う様なキスは無理だが、レオの舌を探し出してそっと触れると、電撃が流れたような快感が背筋を走った。

 

 

 ちゅ、くち、ちゅ、ちゅ、ちゅる・・・・・・

 

 

 小さな水音を立てながら、穏やかながらも激しいキスがしばらく続き、そしてちゅっと小さなリップ音と共に唇が離れた。

 お互いの唇を透明な糸が繋ぎ、ぷつんと途切れるのをみながら、なごみは愛おしそうに目を細めた。

 

 

 「美味しかったよ、レオ」

 

 「んと、えっと、ちゅーみたい、だね?」

 

 

 思ったより激しかった刺激に、レオは今日乙女と交わしたキスを思い出し、そんな風に答える。

 もちろん、乙女とのキスはこれほど激しいものでは無かったが。

 

 

 「そうだね。レオは私とちゅーするのは、イヤだった?」

 

 

 なごみはどこか真剣に、そう問いかける。

 レオはほんの少し考え、すぐに首を横に振る。

 

 

 「んーん。レオ、なごみちゃんとちゅーするの、好き」

 

 「そう?良かった。じゃあ、もう一回、してみようか」

 

 「ちゅう?いいよ」

 

 

 レオの答えになごみがほっとしたように微笑み、それから色っぽく目元を染めてそんな問いかけ。

 レオはなんの疑問もなく、にっこり笑う。

 そんなレオの顔を熱に浮かされたように見つめながら、なごみはきゅっと小さな愛おしい体を抱きしめる。

 そして、その甘美な唇に自分の唇をすり合わせ、熱を持ち始めた己の体を密かに震わせるのだった。

 

 




読んで頂いてありがとうございました。
やっている事は乙女パートの方が進んでいるのに、なごみんパートの方がなんかえっちぃのはなんでなんでしょうね。
小っちゃいレオが元に戻って一番寂しがるのはなごみんかもしれません。

さて、以前ここにも書いてたベビパニ~君が主で執事が俺で~、ついに書いちゃいました。まだ1話だけですけど。
なにせ、まだクリアしてないもので(笑)
そっちも今後並行して更新していく予定なので、気が向いたらどうぞ!
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