ベイビー・パニック   作:高嶺 蒼

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久しぶりなのに、何故かフカヒレが活躍……
なんでだ?なんでこうなった……



ベイビー・パニック 24

 テーブルの上には、ほかほかと湯気を立てたごちそうがたくさん。

 レオは目をきらきらと輝かせ、今にも涎を垂らしそうな勢いでそれを見つめていた。

 なごみは微笑ましそうにそんなレオを見つめ、その体を自分の膝の上へと抱き上げると、

 

 

 「レオ、どれが食べたい?」

 

 

 箸を片手にレオに問いかける。

 

 

 「えっとねー、えっとねー、あ!あれ!!」

 

 

 レオはごちそう達を見回して、その一つを指さした。

 そのぷりっとした指が示す食べ物を箸でつかみ取り、

 

 

 「これ?」

 

 

 と問えば、

 

 

 「それー!!」

 

 

 打てば響くようにレオの可愛い声が響いた。

 なごみは微笑み、その箸で掴んだごちそうをレオの口元へ近づけていく。

 

 

 「はい、レオ。あーん」

 

 

 その言葉に促され、

 

 

 「あ~」

 

 

 レオが雛鳥のように大きく口を開けた、その時。

 竜宮の入り口が勢いよくばーんと開いた。

 

 

 「見つけたわよ、なごみん!」

 

 「も~、エリィってば乱暴なんだから」

 

 

 現れたのは姫だった。その後ろにはもちろん良美も控えている。

 なごみは半眼でその二人を見つめた。

 レオは、驚きすぎて口も目も、まん丸になっている。

 

 

 「まったく、お膝の上であーんだなんて、見せつけてくれちゃって。もう、これは、あれよね?レオといちゃいちゃ現行犯で逮捕しなきゃだめかしら」

 

 「エリィ……なんだか色々意味不明だよ。うらやましいなら素直にうらやましいって言えばいいのに」

 

 「もう、よっぴーったら。うらやましいなんて誰も言ってないでしょ!?」

 

 「素直じゃないなぁ、エリィは」

 

 

 唇を尖らせた姫の文句をさらっと流して良美は微笑ましそうに見つめ返す。

 そんな慈愛に満ちた眼差しを受けた姫は、ほんのり頬を染めてますます唇を尖らせた。

 

 

 「ほら、素直にお願いしてみようよ。ね?」

 

 

 そんな風に促され、

 

 

 「う~、もう、わかったわよ……」

 

 

 そう言いながら、レオとなごみの方をちらりと見て目元を赤らめ、それから気を取り直すようにコホンと咳払い。

 

 

 「せっかくのランチタイムだし、私とよっぴーもお邪魔させて貰うわよ?」

 

 

 言い方はともかくとして、仲間に入れて欲しいと懇願するような眼差しに、なごみは大きくため息をつき、それから諦めた様に頷いた。

 

 

 「……別にいいですよ。どっちみち、乙女先輩とレオの分もって考えて、多めに作ってきたんで。好きなところ、座ったらどうですか?」

 

 「やたっ!!流石、なごみん。話が分かる女ね!!じゃあ、お言葉に甘えてレオの隣に……」

 

 「あ、エリィ。ずるいよぅ。そこは私が座ろうと思ったのに。じゃ、じゃあ私は反対側の隣に……」

 

 「却下。よっぴーの席は私の隣に決まってるじゃない」

 

 「も~、エリィってば、わがままなんだから……」

 

 

 姫が嬉々としてレオとなごみの隣に座り、その姫の横へ良美が渋々腰を下ろす。

 そんな二人の様子を見ながら、なごみは箸で掴んだままのごちそうを開いたままのレオの口へ放り込んだ。

 姫と良美の登場の為、お預けを食らっていたレオは、口の中に広がる幸せな味に顔を輝かせ、もむもむと幸せそうに口を動かした。

 そんなレオを見つめながら目を細め、その頭を優しく撫でながら、

 

 

 「……好きなのを適当にどうぞ」 

 

 

 と横の二人に視線を移し、無愛想に告げる。

 

 

 「ありがとね~、なごみん。お言葉に甘えちゃう。一応、デリバリーも手配してるんだけど、そろそろかしらね~?」

 

 「デリバリー?」

 

 

 姫が時計を見ながらそう言い、なごみが首を傾げたその時、再びバターンと扉が勢いよく開いた。

 

 

 「ふおっ??」

 

 

 その音になごみの腕の中のレオが驚いた声を上げ、なごみは落ち着かせるようにそっと腕に力を込める。

 そして、レオを驚かせた騒音の発生源をぎらりと睨んだ。

 

 そこにいたのは、肩で息をしながら両手に食堂のトレイを捧げ持つ一人の男子学生。

 彼はきりりと表情を引き締めて姫の前に進み出ると、二つのトレイを差し出しつつ、本人はかっこいいと信じている決め顔でキラリと歯を光らせた。

 

 

 「スペシャル・ランチ2丁、お待たせしました、姫!どーぞ、お納め下さい!!」

 

 

 へへーと頭を下げるフカヒレからランチのトレイを受け取り、それをテーブルの上へ。それから改めて姫はにっこりと微笑んだ。

 

 

 「はーい、ご苦労様。助かったわ、フカヒレ君」

 

 「なーに、姫のご命令とあれば、こんなのお安いご用!!……ところで、約束の報酬のほうは??」

 

 

 言いながら、フカヒレはチラチラと期待に満ちた目で良美を見る。

 そんなフカヒレの様子に良美は鳥肌を立て、姫は笑いをかみ殺しつつ鷹揚に頷いた。

 

 

 「そっちの手配は抜かりなし、よ。さ、フカヒレ君、目を閉じて?」

 

 「いやぁ~、出来れば、記念すべき瞬間を、目を見開いたまましっかり受け止めたいなぁ、なんて……」

 

 「だめよ。よっぴーは恥ずかしがり屋なんだから。目をつぶらないなら、約束は無かったことに……」

 

 「あ~分かりました!!つむる!つむりますから!!!」

 

 「よろしい」

 

 「あの~、エリィ?」

 

 

 フカヒレはぎゅっと目をつむって、良美は自分の名前が出されたことに不安を隠しきれない眼差しを姫へと注ぐ。

 姫は、唇の前に指を一本立て、静かにするように良美へ指示。

 それからそっと、懐から容器に入った大振りの梅干しを取り出した。

 それを指先でつまみ上げ、にまにまと笑いながら、

 

 

 「はーい、じゃあ、約束通りよっぴーがちゅうするから、目は開けないようにね?」

 

 

 と姫が言うと、

 

 

 「はいっっ!!……よっぴー、オレ、初めてなんだ。だから優しくしてね……」

 

 

 フカヒレは鼻息を荒くしつつ、くねくねと身を捩り、にゅうっと唇を突きだした。

 

 

 「……ぷっ……はいはい。じゃあ、よっぴー、よろしくね~」

 

 

 と言いながら、姫は指先で摘んだ梅干しをゆっくりとフカヒレの唇に近付け、そしてむにぃっと思い切って押し当てた。

 

 

 「あぁん。こ、これが、よっぴーの唇の感触……」

 

 

 それを感じたフカヒレが、再びなよなよと身を捩る。

 姫は腹を抱えて笑い出したいのを必死でこらえながら、ぐいぐいと梅干しをフカヒレの唇に押しつけた。

 

 

 「よ、よっぴー。結構強引なんだね。そ、それに思ったより唇がしわしわしてて、ちょっとしょっぱい??」

 

 「あー、それはあれよ。よっぴーってばさっき、梅干しを食べてたから、そのせいなんじゃないかしら」

 

 「そっかぁ~。よっぴーは梅干しが好きなんだね!それなら今度、オレが手塩にかけて梅干しをつけ込んで、シャーク印の梅干しを山盛りプレゼントするから、その暁には是非とも真剣な交際を……」

 

 「・・・・・・鮫永くん?どの口がそんな戯言を?」

 

 

 氷点下の声と共に、良美の手が音速で動いて姫が摘んだ梅干しをフカヒレの口につっこんだ。

 

 

 「うえっ、フカヒレ君のツバついちゃった!!」

 

 「※○△□っっっ~~~!!!」

 

 

 姫は思いっきり顔をしかめ、フカヒレは口の中に広がるあまりの酸っぱさに、声にならない悲鳴を上げる。

 

 

 「用が済んだらさっさと帰ってくれるかな?鮫永くん??」

 

 「よ、よっぴー??だって、さっきはあんなに情熱的に……」

 

 「……っていうか、帰れって言ってるのが聞こえなかった??」

 

 「っ!!はいぃっっ!!かっ、帰りますぅっ!!!!」

 

 

 地を這うようなよっぴーの声に震え上がり、フカヒレは転がるように部屋を出ていった。

 フカヒレの居なくなった部屋に沈黙が落ちる。

 聞こえるのは姫が執拗に手を洗う水音だけだ。

 

 ふうっと息をついて振り向いた良美は、ぽかーんと口を開けて見上げてくるレオと、唖然とした顔のなごみを見て、しまったぁぁと言う顔をする。

 あわあわと周囲を見回し、だがだれも助けてくれない現実に肩を落とした後、

 

 

 「な、なーんちゃって??」

 

 

 そう言って誤魔化すようにへらりと笑った。だが、そんなことでレオはともかくなごみが誤魔化されてくれるはずもなく、

 

 

 「……佐藤先輩って前から思ってましたけど、やっぱり黒いですよね」

 

 

 ぼそりともれたなごみの呟きに、良美はしくしくと涙を流すのだった。

 

 




読んで頂いてありがとうございました。
久しぶりに更新して、フカヒレで、放置はあまりにひどいので、
明日もしっかりアップします!
ベビパニ~きみある編~もupしてるので、興味ある方はそちらもどうぞ(´・ω・`)
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