ベイビー・パニック   作:高嶺 蒼

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ベイビー・パニック 5

 「それにしても、なごみんに負けるのもちょっとしゃくだわ」

 

 そんなことを言いながら、むーっと眉間にしわを寄せる姫。

 

 「えっ?負けるって、何が?」

 

 良美が尋ねると、レオの頭をなでくりなでくりしながら、

 

 

 「レオの反応よ。なごみんに笑いかけられたときのこのちびっ子の反応見た?いっちょ前に赤くなって、きれいなお姉ちゃんときたもんだ」

 

 「あー・・・・・・でも、確かに椰子さんの笑った顔、綺麗だったし」

 

 

 エリーの負けず嫌いが出ちゃった~と思いながら、良美はまあまあとなだめる。

 だが、姫の噴火は収まらない。

 

 「もうっ、よっぴーは悔しくないわけ!?女として。レオを取られちゃってもいいの!!」

 

 もうすっかりレオを呼び捨てにしている姫の、ムキになった様子に、どうしようかなぁと苦笑い。

 いつもであれば、こういう鬱憤をぶつけられるのは良美の役目だが、今日は小さなレオがいるので助かるなぁなんて思ったりしながら。

 

 普段通りであれば、襲いかかってくる姫をいなしきれずに好き勝手揉まれてしまうのだが、今日の姫はレオの頭を撫でたり、可愛いほっぺにちゅっとキスしたり、ほっぺたをすり寄せたりしていて忙しそうだ。

 今だって、怒ったふりをしながら、顔はとろけている。

 

 (もう、エリーったら可愛いものに弱いんだから)

 

 私だってもっとレオ君に触りたいのになぁ、などと思いながら羨ましそうにじゃれ合う姫とレオを見る良美なのであった。

 

 

 「うーん。エリーがそんなに気になるなら、本人に聞いてみたら?」

 

 「本人?」

 

 「うん。レオ君に」

 

 「レオにぃ~?」

 

 

 こんなちびっ子に私の魅力が分かるかしらと、何だかぶつぶつ言いながら、後ろから抱きついていた小さな体をひょいと抱き上げ、向かい合わせに座らせる。

 姫は猫のように目を細め、にこーっと笑いながら、

 

 

 「ねえ、レオ。私の事どう思う?」

 

 「んーと、お姫しゃま?」

 

 「ふむふむ。お姫様みたいに気高く美しいと言いたいわけね」

 

 「エリー、ちっちゃい子にそこまで求めても無理だから」

 

 

 自己解釈をしてにまーっと笑う姫に、テンポよく良美のつっこみが入る。

 

 「んもぉ、そんなことくらい分かってるわよ。ちょっと言ってみたかっただけ」

 

 唇をとがらせてそう言った後、きょとんとしたレオの可愛さがツボに入ったのか、丸っこくてつるっとしたおでこにちゅーとキス。

 それを受けたレオが、姫に向かって手を伸ばす。

 

 「ん?なあに?」

 

 いつもの姫からは考えられないくらい優しい、甘ったるい声。

 レオの要望に応えるようにそっと顔を寄せると、

 

 「レオも、お姫しゃまにチュー」

 

 と大胆にも、レオの方からも姫に口づけ。もちろん唇にではなく、ほっぺにだったが。

 そのままレオは、えへへーっとはにかむように笑い、

 

 「ボク、お姫しゃまがしゅきだからチューしたの。お姫しゃまも、レオの事しゅき?」

 

 そんな爆弾発言。

 ぼんっと音がするくらいの勢いで姫が赤面し、あうあうした後、

 

 「か、可愛すぎるわ、これ。ね、持って帰ったらダメかな」

 

 真剣な表情で、良美に問いかけた。

 

 

 「もー、ダメに決まってるでしょ?乙女先輩に怒られるよ?それに、ちっちゃい子の言うことをあんまり真に受けないの」

 

 「そ、そうよね。あんまり可愛くて、理性が飛んだわ」

 

 「まあ、気持ちは分かるけどね」

 

 

 そう言った後、良美は手を伸ばして、姫の膝からレオを抱き上げた。

 

 

 「あーん、よっぴー。ずるーい」

 

 「ずーっと独り占めしてたんだからいいでしょ?私も抱っこしたかったんだから」

 

 

 そう言ってぎゅーっと抱きしめる。姫は指をくわえて羨ましそうにその様子を見つめた。

 

 

 「ねー、レオ君。私にもチューして?」

 

 「よっぴーも?いいよ」

 

 

 おねだりをすると、レオはニッコリ笑って、結構あっさりと良美の頬に唇を寄せた。

 

 

 「あー、ずるいずるい!私も!!」

 

 「エリーはさっきしてもらったでしょ」

 

 

 だだをこねる姫にぴしゃりと言って、良美も可愛いほっぺにキスを落とす。

 大きなレオには恥ずかしすぎて出来ないが、小さなレオならいくらでも出来る。

 嬉しそうに笑うレオを見ながら、癖になりそうで怖いなーなどと考える。

 

 (今の内から私の事を刷り込んでおいたら、元に戻ったときも私のことを好きでいてくれないかな?)

 

 そんなあり得ないことを考えながら、キスをしたり、ほっぺをすりすりしたりしてると、くすぐったいのか、レオが可愛い笑い声をたてた。

 

 

 「レオ君、私のこと好き~?」

 

 「レオ、よっぴー、しゅきー」

 

 

 子供の素直さでそう答え、にぱっと笑うレオ。

 良美の瞳が怪しく光る。

 

 

 「あー、やばい。理性とんじゃいそう・・・・・・」

 

 「よ、よっぴー。落ち着いて!相手は子供!!まだちびっ子だから」

 

 

 そんな良美を見て、姫が慌てたようにレオを取り上げる。

 レオは再び姫の腕の中に落ち着いた。

 

 「はっ、私は何を」

 

 レオから距離を置き、正気に返る良美。

 姫はふぅーっと安堵の息を吐き、

 

 「小さい子って、危機感なく何でも出来るから、逆に何だか危険よね・・・・・・」

 

 少し良美を警戒しつつ、レオを抱きしめ、

 

 「ん、でも、ほっぺぷにぷにで気持ちい~い」

 

 と思う存分頬をすり寄せ、子供ほっぺを堪能する。

 良美はそれを見ながら、

 

 「エリー、ずるいよぅ」

 

 と可愛く頬を膨らませるのであった。

 

 

 

 

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