ベイビー・パニック   作:高嶺 蒼

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つなぎの話。
ちょっと退屈かもしれませんが(^▽^;)


ベイビー・パニック 9

 「よーし、じゃあ、レオ。そろそろ帰るか」

 

 「かえゆの?乙女ちゃんと、バイバイすゆ?」

 

 

 きょとんと首を傾げるレオに、同じく首を傾げる乙女。

 

 

 「ん?私とはバイバイしないぞ?一緒の家に帰るんだからな」

 

 「んーと、乙女ちゃんと一緒のおうち、かえゆの?おかあたんは?」

 

 

 そう問われてはっとした。

 なにせ今のレオは3歳なのだ。それはお母さんも恋しいだろう。

 以前、レオの母親が笑い話に聞かせてくれた事だが、小さい頃のレオはそれはもう母親にべったりで、乳離れも遅かったらしい。

 そんなレオが、母親のいない生活を耐えられるだろうか。

 否。

 耐えられるわけがない。

 母親がいないなどと言ってしまったら、それこそ火がついたように泣き出してしまうに違いなかった。

 

 (ど、どうやって納得させればいいんだ!?)

 

 困った乙女は、姫を見た。

 姫は明後日の方向を向いて、こちらを見ないようにしている。

 

 (くっ、姫め。裏切ったな)

 

 今度は良美の方を見た。

 彼女は乙女の困った光線を受けてわたわたした後、

 

 「あっ、そう言えばまだ片づけ残ってたな~・・・・・・」

 

 などと白々しく言い訳を口にしながら、流しの方へ行ってしまった。

 

 (さ、佐藤まで)

 

 ガーンとショックを受け、だが乙女だけは直面している問題から逃げる訳にも行かず、じっと乙女の顔を見上げているレオに目を移した。

 

 「あ~、レオのお母さんか・・・・・・お母さんは、出かけててな」

 

 とりあえず、居ないということを全面に押し出しつつ、柔らかな表現を試みてみた。

 

 「・・・・・・おかあたん、いないの?」

 

 みるみるうちにレオの顔が曇る。

 目に涙が浮かび、今にも泣き出しそうだ。

 

 

 「あー、やっぱり今のなし!レ、レオのお母さんな。えーと、お母さんは、だな……っそうだ、家だ!家に居る!ちゃんと家に居るから、大丈夫だぞ?泣くんじゃない」

 

 「・・・・・・おかあたん、いゆ?」

 

 「あっ、ああ・・・・・・」

 

 

 純真な瞳をまっすぐに見られない。そもそも、嘘は苦手なのだ。

 

 「・・・・・・あーあ。そんなすぐバレる嘘を」

 

 呆れたような姫の声。

 わかってる。そんな事はわかってるのだ。だが、こうする以外にどんな手があったというのか。

 少なくとも乙女には思いつかなかった。

 家に帰ればバレてしまう嘘だが、バレたらバレたで何とか対処するしかない。

 そう心を決めて、乙女はぎりぎりまでごまかし通す事にした。

 

 「さ、さあ。レオ、帰るとするか」

 

 だが、普段から嘘をつきなれていない乙女だ。態度がものすごくぎこちない。

 それを見た姫が、仕方ないわねというように、はーっと息を吐き出し、にこにこ顔を作ってレオの顔をのぞき込んだ。

 

 

 「あっれぇ?今日はレオが1人でお泊まりだって聞いたけどなぁ」

 

 「ひっ、姫。何を」

 

 

 姫の発言に、乙女の顔がひきつる。これじゃあ、自分が決死の思いでついた嘘が台無しじゃあないか、と。

 

 「1人で、お泊まり?」

 

 「うん。レオのお母さんから聞いたの。お母さん、レオが1人でお泊まりできるなんて嬉しいって喜んでたわよ?」

 

 「レオが1人でお泊まりできゆの、おかあたん、嬉しい?」

 

 「うん。嬉しいって。ちゃーんとお泊まりできたら、ご褒美くれるっていってたな~」

 

 「ごほうび?」

 

 「そ。レオの欲しいもの、なーんでも買ってくれるって」

 

 「レオの、欲しいの?なんでも?」

 

 「そう。なぁんでも。良かったねぇ、レオ。1人でお泊まり、出来るよね?乙女ちゃんが、一緒だし?」

 

 

 にんまりと、姫が笑う。

 「ごほうび」「欲しい物は何でも」の単語にほーっとしていたレオだが、姫の言葉にはっとして乙女の顔を見上げてきた。

 まだ、少しだけ不安そうな顔。

 姫が、乙女の腕を肘でつつく。

 何かいって下さいよ、というように。

 

 「だ、大丈夫だぞ。私が一緒だからな」

 

 はっとして、慌ててそんな言葉を絞り出す。

 だが、それでもレオはまだ少し不安なようで、

 

 「乙女ちゃん、ずっとレオと一緒?」

 

 そんな風に問いかけるレオの頭を優しくなでながら、

 

 「ああ。ずーっと、一緒にいてやる。だから、安心しろ」

 

 そう言って微笑んで見せた。

 そこでやっと、レオも安心したらしい。

 きりっとした顔で姫を見ると、

 

 「レオ、お泊まり、へーき!」

 

 そう宣言した。姫はにこーっと笑い、いい子いい子とレオの頭をなでてから、ちらりと乙女を見た。

 一つ貸しですよ、とでも言うように。

 それを受けた乙女は、重々しく頷き、

 

 「姫、助かった。姫はやはり頼りになる。この借りは、必ず返すぞ」

 

 そう返事を返す。

 思った通りの返事を聞いた姫は、さーて、乙女先輩に何をしてもらおうかな、と再びにんまりと笑うのだった。

 

 

 




小さいレオ君はマザコンです。
今後の展開の為に、フラグを立てておきたかったもので(笑)
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