ちょっと退屈かもしれませんが(^▽^;)
「よーし、じゃあ、レオ。そろそろ帰るか」
「かえゆの?乙女ちゃんと、バイバイすゆ?」
きょとんと首を傾げるレオに、同じく首を傾げる乙女。
「ん?私とはバイバイしないぞ?一緒の家に帰るんだからな」
「んーと、乙女ちゃんと一緒のおうち、かえゆの?おかあたんは?」
そう問われてはっとした。
なにせ今のレオは3歳なのだ。それはお母さんも恋しいだろう。
以前、レオの母親が笑い話に聞かせてくれた事だが、小さい頃のレオはそれはもう母親にべったりで、乳離れも遅かったらしい。
そんなレオが、母親のいない生活を耐えられるだろうか。
否。
耐えられるわけがない。
母親がいないなどと言ってしまったら、それこそ火がついたように泣き出してしまうに違いなかった。
(ど、どうやって納得させればいいんだ!?)
困った乙女は、姫を見た。
姫は明後日の方向を向いて、こちらを見ないようにしている。
(くっ、姫め。裏切ったな)
今度は良美の方を見た。
彼女は乙女の困った光線を受けてわたわたした後、
「あっ、そう言えばまだ片づけ残ってたな~・・・・・・」
などと白々しく言い訳を口にしながら、流しの方へ行ってしまった。
(さ、佐藤まで)
ガーンとショックを受け、だが乙女だけは直面している問題から逃げる訳にも行かず、じっと乙女の顔を見上げているレオに目を移した。
「あ~、レオのお母さんか・・・・・・お母さんは、出かけててな」
とりあえず、居ないということを全面に押し出しつつ、柔らかな表現を試みてみた。
「・・・・・・おかあたん、いないの?」
みるみるうちにレオの顔が曇る。
目に涙が浮かび、今にも泣き出しそうだ。
「あー、やっぱり今のなし!レ、レオのお母さんな。えーと、お母さんは、だな……っそうだ、家だ!家に居る!ちゃんと家に居るから、大丈夫だぞ?泣くんじゃない」
「・・・・・・おかあたん、いゆ?」
「あっ、ああ・・・・・・」
純真な瞳をまっすぐに見られない。そもそも、嘘は苦手なのだ。
「・・・・・・あーあ。そんなすぐバレる嘘を」
呆れたような姫の声。
わかってる。そんな事はわかってるのだ。だが、こうする以外にどんな手があったというのか。
少なくとも乙女には思いつかなかった。
家に帰ればバレてしまう嘘だが、バレたらバレたで何とか対処するしかない。
そう心を決めて、乙女はぎりぎりまでごまかし通す事にした。
「さ、さあ。レオ、帰るとするか」
だが、普段から嘘をつきなれていない乙女だ。態度がものすごくぎこちない。
それを見た姫が、仕方ないわねというように、はーっと息を吐き出し、にこにこ顔を作ってレオの顔をのぞき込んだ。
「あっれぇ?今日はレオが1人でお泊まりだって聞いたけどなぁ」
「ひっ、姫。何を」
姫の発言に、乙女の顔がひきつる。これじゃあ、自分が決死の思いでついた嘘が台無しじゃあないか、と。
「1人で、お泊まり?」
「うん。レオのお母さんから聞いたの。お母さん、レオが1人でお泊まりできるなんて嬉しいって喜んでたわよ?」
「レオが1人でお泊まりできゆの、おかあたん、嬉しい?」
「うん。嬉しいって。ちゃーんとお泊まりできたら、ご褒美くれるっていってたな~」
「ごほうび?」
「そ。レオの欲しいもの、なーんでも買ってくれるって」
「レオの、欲しいの?なんでも?」
「そう。なぁんでも。良かったねぇ、レオ。1人でお泊まり、出来るよね?乙女ちゃんが、一緒だし?」
にんまりと、姫が笑う。
「ごほうび」「欲しい物は何でも」の単語にほーっとしていたレオだが、姫の言葉にはっとして乙女の顔を見上げてきた。
まだ、少しだけ不安そうな顔。
姫が、乙女の腕を肘でつつく。
何かいって下さいよ、というように。
「だ、大丈夫だぞ。私が一緒だからな」
はっとして、慌ててそんな言葉を絞り出す。
だが、それでもレオはまだ少し不安なようで、
「乙女ちゃん、ずっとレオと一緒?」
そんな風に問いかけるレオの頭を優しくなでながら、
「ああ。ずーっと、一緒にいてやる。だから、安心しろ」
そう言って微笑んで見せた。
そこでやっと、レオも安心したらしい。
きりっとした顔で姫を見ると、
「レオ、お泊まり、へーき!」
そう宣言した。姫はにこーっと笑い、いい子いい子とレオの頭をなでてから、ちらりと乙女を見た。
一つ貸しですよ、とでも言うように。
それを受けた乙女は、重々しく頷き、
「姫、助かった。姫はやはり頼りになる。この借りは、必ず返すぞ」
そう返事を返す。
思った通りの返事を聞いた姫は、さーて、乙女先輩に何をしてもらおうかな、と再びにんまりと笑うのだった。
小さいレオ君はマザコンです。
今後の展開の為に、フラグを立てておきたかったもので(笑)